遊戯王GX―はぐれはぐるま― 作:ロジェさんマジかっけぇ
今回デュエルはほんのちょっとだけです。
「……であるからシーテ、この場面デーハこのカードを使うことが推奨されるノーネ」
クロノス先生の行う実技の授業。実技とはいえ毎回デュエルをしているわけではなく、デュエル中の行動や基本的なルールについても授業が行われている。
「……何ヤーラ、神聖なる授業で居眠りをしている生徒が居るみたいナノーネ」
クロノス先生が見つめているのは……私!?
「むにゃむにゃ……ゅぅはぁ……」
……の隣で盛大に鼻提灯を作っていた悠乃だ。
「ちょっと、悠乃。起きなって」
「んにゃ……?」
「この私の授業で居眠りだナンーテ、随分と良いご身分ナノーネ。シニョーラ悠乃」
悠乃は寝ぼけた目で周囲を見渡し……もう一度眠りに落ちた。
「キーッ!ナンナノーネそのタイードは!シニョーラ悠乃、起立ナノーネ!」
悠乃はしぶしぶと立ち上がる。
「それデーハ、あなたに簡単なクイズを出すノーネ。レアメタル・ナイトが相手モンスターに攻撃されたトーキ、攻撃力は1000ポイントアップするノーネ!?」
レアメタル・ナイト
融合・効果モンスター
星6/地属性/機械族/攻1200/守 500
「レアメタル・ソルジャー」+「レアメタル・レディ」
モンスターとの戦闘のダメージステップ時、攻撃力1000アップ。
フィールド上のこのカードと融合デッキの「レアメタル・ヴァルキリー」を交換できる。 (このカードが特殊召喚されたターンは不可)
デュエルモンスターズ初期からあるカードだ。今のカードと比べると明らかにカードパワーが低いため、余程の愛好家でも無い限りはこのカードを使っている人は居ないだろう。
効果のテキストを見る限りは、相手に攻撃された場合でも発動出来そうだけど……。
「えっと……出来る……と思います?」
「ブッブー!残念デシータ!答えは……『調整中』ナノーネ!」
その答えに授業を受けていた全生徒がずっこける。まさかの引っかけ問題だった。
「この授業デーハ、そう言ったルールについての概論も行うノーネ。いざ実技試験の時にジャーッジキルを食らいたくなけレーバ、しっかり授業を聞いておくノーネ!」
そう言ってクロノス先生は悠乃を座らせ、授業を再開した。
ちょっと意地悪かもしれないけど、やっぱり授業を聞いておくことは大切だ。悠乃も何とか眠い目を擦りながら、居眠りせずに授業を受けていた。
「……ふーむ。今日の授業はこの辺で終わりデスーノ。次の授業ーハ、いよいよ第一回実技試験ナノーネ。各自、しっかり準備をしておくノーネ」
これで今日の授業は終わり。普段なら悠乃と一緒にオベリスク・ブルーに直行するところなんだけど、今日の私には行くところがある。
「ふぃー……おわったぁ……。さ、帰ろっか、優葉」
「ごめんね、悠乃。私ちょっと行くところがあるの」
「……どこ?」
一瞬、悠乃の瞳が暗く濁った気がした。だがやましいことは無いので真実をありのまま伝えるだけだ。
「えっとね、(クロノス先生の仇を討つために)どうしても会いたい人がいるの」
「……へ?」
悠乃の顔が能面のようになる。と言うかハイライトが完全に消え瞳が濁っているため若干怖い。
「今日会いに行く約束してて。これから(デュエルするために)その人の寮まで行くんだ」
「……それって、男?」
心臓に響くような低い声。何か彼女を怒らせることをしてしまったのだろうか。
「良く分かったね。男の先輩だよ」
「……さ……ない」
「……うん?」
「許さないよ。絶対に」
えっ、まさか悠乃は、クロノス先生の仇のファン……!?だから私が戦うのは許せないと……!?で、でも告白とかそう言うことじゃなくて、私の目的は――
「で、でも私は先輩と(デュエルを)やるだけだよ!やましいことなんて1つも……!」
「や、やるって、ぁあ……っ!?」
「悠乃も来る?見ててよ、私が先輩と(デュエルを)やるところ」
まるで充電が切れたかのように悠乃が頭を下げる。しばらく何かを呟いた後、『ぐりん』と顔を上げて言った。
「あたしもついていくよ。優葉には指一本触れさせない。その男にも言って聞かせてあげなきゃ……!」
様子のおかしい幼馴染みに戸惑いつつも、取りあえずはおんぼろアパートの前へ。クロノス先生の仇とやらは、この
「あら、来たのね。優葉――ひっ!」
既に到着していたらしい明日香先輩は、私を見ると何故か小さな悲鳴をあげた。
「どうしたんですか?天上院先輩?」
私の後ろから声がした。
振り向けば笑顔の悠乃が居るだけだ。明日香先輩には何か恐ろしいものでも見えたのだろうか。
「……何か、怖いものでも見えたんですか?」
冗談混じりにそんなことを聞いてみる。すると明日香先輩は悠乃から目を逸らしながら首を横に振った。
「いえ……何でもないわ。もうすぐ来ると思うから、あとちょっと待って頂戴ね」
噂の仇とやらは時間にルーズな人なのか、中々やって来なかった。その間私たちは明日香先輩から、去年起きた事件の話を聞いていた。
「三幻魔……ですか」
「えぇ。それを打ち破ったのが……来たわね」
校舎から誰かがやって来る。その人の姿が見えた途端、明日香先輩の表情が心なしか明るくなった気がした。
「おー、わりぃわりぃ。居眠りしてたら居残りさせられてさー」
「もー、僕も巻き添え食らっちゃったじゃないっスか!」
「翔先輩も爆睡してたザウルス」
「剣山くんもでしょ!っていうか何で1年生の君が2年生の授業を受けてるんスか!」
居眠り、ねぇ。まるで悠乃みたいだ。
やって来たのはオシリス・レッドの男子生徒が1人と、ラー・イエローの男子生徒が2人。
……というか、やけに筋肉のついたラー・イエローの男子は何処かで見たことがある気がする。
「俺も居るぞ!」
あ、もう1人増えた。どうやら筋肉男の影に隠れて見えていなかったみたいだ。
「あなたねぇ、どれだけ人を待たせたと思っているの?」
口調は厳しいし、視線も鋭いが、明日香先輩は少し楽しそうだった。
「いやぁ、ほんとにゴメンな!それで……あれ、明日香の言ってた後輩は……どっちだ?」
「アニキ、明日香さんの話ちゃんと聞いてたんスか?」
明日香先輩は頭を押さえてため息をつく。そして私の肩に手を乗せた。
「銀髪の子って私、話したわよね?」
するとオシリス・レッドの男子生徒は私に向き直り自己紹介を始めた。
「そうだったな。俺は遊城十代。よろしくな!……えっと……」
遊城先輩は何か言いたげに私の方を見ている。
「私は萩野優葉です。よろしくお願いします。遊城先輩」
「おう、よろしくな!優葉!」
「あ、僕は丸藤翔っス!」
ラー・イエロー3人組の内一番背の低い生徒。眼鏡をかけた、大人しそうな印象を受ける。
「俺の名前は剣山ザウルス。えっと……どっかであったことあるドン?」
本当の意味での『決闘』ができそうなムキムキの男子生徒。そうだ。この特徴的な語尾。入試会場で彼の咆哮を聞いたことがある。
「俺は三沢大地。君の噂は聞いているよ。何でも、あのクロノス先生の秘蔵っ子だってね」
3人組の中では一番普通な――悪く言えば存在感のない男子。
「君のデュエルを、是非とも見せてもらいたい」
だが3人の中では一番まともそうではある。……非常に失礼な考え方だが。
「そういや、優葉の後ろに居るお前は……」
遊城先輩は私の後ろにいる悠乃に目を向けた。
「あたしは壊道悠乃。優葉の幼馴染みです。よろしくお願いしますね!先輩方!」
そう言った悠乃はにこやかだったが、何故か目だけは笑わずに遊城先輩を睨んでいた。だが遊城先輩はその視線に気付かず、デュエルディスクを構える。
「それじゃあ、早速始めようぜ?明日香を倒したデュエリスト……どれだけ強いのか、ワクワクしてくるぜ!」
「私もです。クロノス先生の仇、ここで討たせてもらいます」
「「デュエル!」」
「……あ、『やる』ってそっちか」
十代 LP4000
VS
優葉 LP4000
何かに納得した悠乃の声と同時にデュエルが始まる。先攻・後攻はデュエルディスクによって決められる。今回の先攻は――
「俺の先攻だ!ドロー!」
遊城十代。明日香先輩の話によると、去年この世界を救った英雄。クロノス先生を打ち破ったのは入学試験の時らしい。
「行くぜ、俺はE・HEROクレイマンを守備表示で召喚!」
HEROデッキか……。ヒーローは融合を得意とするテーマ。そのためモンスター1体1体のパワーは低い。だが豊富なサポートカードは警戒するに越したことはないだろう。
遊城先輩のフィールドに現れたのはガタイの良い、ファンタジーに出てくる『ゴーレム』の様な戦士。見た目だけで考えれば、間違いなく岩石族だろう。
DEF2000
LV4
「これで俺はターンエンドだ!」
十代 LP4000 手札5
E・HEROクレイマン
「私のターン、ドロー」
「十代のフィールドには守備力2000のモンスター。さぁ、どう出る新入生……?」
守備力2000。下級モンスターでそれを越える攻撃力を持つモンスターは少ない。
私の手札にあるのは古代の歯車機械、古代の合成獣、速攻のかかし、
「……それなら、私は古代の歯車機械を守備表示で召喚します」
歯車に手足のついたような古代の機械が飛び出す。クレイマンと同じ守備力を持つ優秀なモンスターだ。
DEF2000
LV4
「あれがアンティーク・ギアザウルス?……」
「ガジェットに似てるっスね」
「なるほど、同じアンティーク・ギアでも、クロノス先生とは全く違うデッキと言うことか」
そう言いながら、三沢先輩はノートに何かを書き込んでいる。勉強熱心な生徒だ。
「頑張れー!優葉ぁ!遊城先輩なんかやっつけちゃえー!」
「『なんか』は失礼だよ悠乃。私はカードを2枚セットして、ターンエンド」
優葉 LP4000 手札3
古代の歯車機械
セット2
「俺のターン、ドロー!行くぜ、ヒーロー達の結束の力を見せてやる!魔法カード、融合を発動!俺はフィールドのクレイマンと、手札のスパークマンを融合!」
手札から現れた電光を纏う戦士が、クレイマンと混ざり合う。
「来い!E・HEROサンダー・ジャイアント!」
現れたのは、上半身が格段に発達したスパークマン。
ATK2400
LV6
「これが、E・HERO……!」
「格好良いだろ?行くぜ、サンダー・ジャイアントの効果を発動!手札を1枚捨て、このカード以下の攻撃力を持つモンスター1体を選択して破壊する!俺が破壊するのは歯車機械だ!ヴェイパー・スパーク!」
電撃が歯車機械を襲う。歯車機械は煙をあげながら動作を停止し、爆発した。
「くっ……」
「バトルだ!サンダー・ジャイアントでダイレクトアタック!」
稲妻を纏いながら、巨人が私の元へと走ってくる。攻撃力は2400。この攻撃を受けるわけには行かない。
「リバースカードオープン。永続罠、古代の機械蘇生。自分フィールドにモンスターが存在しないとき、墓地からアンティーク・ギア1体を蘇生させる。戻ってきて、古代の歯車機械」
地の底から、私を守るために歯車機械が蘇る。これで戦闘は巻き戻る。
DEF2000
LV4
「サンダー・ジャイアントで、古代の歯車機械を攻撃!ボルティック・サンダー!」
再び電流を食らった歯車機械はショートし、その場に崩れ落ちる。
「ごめんね、ありがとう」
「中々やるな!俺はこれでターンエンドだぜ!」
十代 LP4000 手札3
E・HEROサンダー・ジャイアント
「私のターン、古代の機械蘇生の効果を発動。蘇れ、古代の歯車機械」
3度目の特殊召喚を迎えた古代の歯車機械。何度も修理された影響でその体はボロボロだ。
今遊城先輩のフィールドに伏せられたカードは無い。そしてサンダー・ジャイアントが居る限り私のモンスターは破壊され続けてしまう。サンダー・ジャイアントは、このターンで仕留めなくては。
「へへ、楽しいデュエルをしようぜ!」
心底楽しそうな表情で遊城先輩は笑う。そこには負けるかもしれない、なんて思いは感じられない。
「はい、楽しみましょう。遊城先輩」
デュエルはまだ、始まったばかりだ。
「今!回!のっ!」
「えっ、何?そのテンション」
「いやぁ、特に意味はないんだけどね」
E・HEROサンダー・ジャイアント
融合・効果モンスター
星6/光属性/戦士族/攻2400/守1500
「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
「遊城先輩が使っているカードだね。手札を捨てて表側表示のモンスターを破壊することが出来るよ」
「でも自分よりも元々の攻撃力が低いモンスターにしか使えないんだね」
「うん。だからこのカードは強化されて高い攻撃力を得たモンスターだったり、攻撃力は低いけど戦闘破壊されないモンスターを除去することが仕事になるかな」
「あとはさっきみたいに単純に壁を取り除いたりね!」
「それにしても、E・HEROか……」
「融合体も何種類もいるよ。ちょっとでも隙を見せればそこから逆転されそうで怖いなぁ」
ここまでお読みいただきありがとうございます。お気に入り数とかも増えててビックリです。本当に感謝です。
さて、感謝したところで申し訳無いのですが、書き溜めて置いた分がきれたので次回の投稿からはさらにゆっくりになっていくかと思われます。
それでは、また次回お会いできることを心待にしております。