遊戯王GX―はぐれはぐるま― 作:ロジェさんマジかっけぇ
遊城先輩とのデュエルから一週間後。先週予告されていた通り、今日は第1回実技試験が行われる。オシリス・レッドやラー・イエローの生徒はここでよい結果を出せれば上の寮への昇格が認められる。まぁ、元からオベリスク・ブルー寮の私にはあまり関係のない事だが。
実技試験ではクロノス先生の他にも手助けとして何人かの教師が来ているが、皆険しい顔をしていた。……当然だ。昨日のあのデュエルを見てしまったからには。
私が入学する前、アカデミアにはカイザーと呼ばれた男がいた。強大な力を持つサイバー流のデッキを操るデュエリストで、もう1人の、吹雪とか言う男子生徒と共にアカデミアの双璧と呼ばれていたようだ。
そんな彼が先日、プロリーグで惨敗した。相手はエド・フェニックス。アカデミアで3年間学んできた生徒が、最年少のプロデュエリストに敗北。それはデュエル・アカデミアの名前に大きな傷を残した。
「うわー……先生達の目が怖いよ……」
「うん……」
今回の実技試験では、同じ学年から選ばれた生徒とデュエルを行う。デュエルを行う順番も完全にランダムだ。悠乃は既に試験を終わらせている。それもノーダメージで。そしてもうそろそろ、私がデュエルをする番だ。
「よぉ!僕の相手は君か!」
スプレーか何かで固めているのだろうか、立ち上がった特徴的な髪の男子生徒が私の前に歩み出る。確か名前は、五階堂宝山だ。
そういえば先日、彼のデュエルを見た。相手は黒い制服を着た2年生。なんとか……サンダー……?良く分からない人だった。
「僕は万丈目さんとのデュエルに負けた……。そして学んだんだ!デュエルはレベルの高さだけじゃない!それをお前に見せてやるぜ!」
デュエルコートに立ち、互いにデュエルディスクを構える。確か彼は、中等部をトップの成績で卒業した生徒。悠乃程では無いにせよ、彼も相当な実力者だった筈。油断は禁物だ。
「おい見ろよ!オシリス・レッドのクズに負けた五階堂と、1年最強の萩野がデュエルするみたいだぜ!」
「ははっ、そんなん見るまでもねーよ」
「やっちまえ萩野ー!オシリス・レッドのゴミに負けた雑魚をぶっ潰せー!」
対戦相手に向けられるのは悪意ばかり。罵声を浴びせているのはオベリスク・ブルーの生徒ばっかりだ。
「それでは、準備は良いですか?」
髪の長い男性の教師……佐藤先生が言った。私たちが黙って頷くと、先生がデュエル開始の合図を出す。
「お互い、正々堂々戦うように。始めっ!」
「「デュエル!」」
優葉
VS
宝山
「私の先攻、ドロー」
手札のアンティーク・ギアは1体。この手札なら……こう行こうか。
「フィールド魔法、歯車街を発動。さらに古代の機械射出機を発動して、歯車街を破壊する」
突如現れた歯車の古代都市は、完成されてすぐに取り壊されてしまう。
「射出機の効果で特殊召喚、古代の機械猟犬。そして歯車街の効果でデッキから現れよ、古代の機械巨竜!」
2枚のカードの効果で、自分のフィールドに2体のモンスターが現れる。
ATK1000
LV3
ATK3000
LV8
「くっ、いきなりでかい獲物が来やがったか……!」
「そして古代の機械猟犬の効果を発動。融合魔法を使わずに、アンティーク・ギアと名のつくモンスターを融合召喚出来る。私は、フィールドに存在する古代の機械猟犬と、手札の古代の歯車機械を融合。古の魂受け継がれし機械仕掛けの猟犬よ。駆動の源と交じり会い、新たな力と共に生まれ変わらん!融合召喚!現れよ、レベル8!私の相棒、古代の機械魔神!」
2体のモンスターが渦の中で融け合い、私のフィールドに古代の悪魔が生まれる。魔神は産声をあげる様に、天井へ向け砲撃を放った。
DEF1800
LV8
「古代の機械魔神の効果を発動。1ターンに一度、相手に1000ポイントのダメージを与えるよ」
まだ煙の出る砲塔を五階堂へ向け、古代の機械魔神が砲弾を打ち出した。
「ぐっ……へっ、効かないぜ!」
LP4000→3000
「カードを1枚セット。これで私はターンエンド」
優葉 LP4000 手札2
古代の機械巨竜 古代の機械魔神
セット1
「僕のターン!ドロー!」
五階堂が勢い良くカードを引く。そして引いたカードをそのままデュエルディスクに置いた。
「僕はカードを1枚セットして、魔法カード、手札抹殺を発動!お互いは手札を全て捨て、その枚数分カードをドローする!」
私の2枚の手札……トレード・インと工作列車シグナル・レッドが墓地へ送られていく。そしてドローしたカードは古代の機械要塞と、地獄の暴走召喚。
「へへっ、悪くない引きだぜ!僕は魔法カード、トライワイトゾーンを発動!」
と、トライワイトゾーン……?
確か、レベル2以下の通常モンスター3体を墓地から召喚する効果を持っていた筈。モンスターを一気に展開して、それを生け贄かコストにするつもりなのだろうか。
「来い!海皇の長槍兵、マーダー・サーカス・ゾンビ、D・ナポレオン!」
「はははっ!雑魚ばっかじゃねーか!」
「雑魚デュエリストにはお似合いのカードだな!」
相手のフィールドに現れた3体の通常モンスターは、どれも同じレベルにしては攻撃力の高いモンスターだ。
ATK1400
LV2
ATK1350
LV2
ATK800
LV2
だが、どれも古代の機械魔神すら倒すことのできない低攻撃力。一体何を狙って……?
「さらに僕は魔法カード、魔の試着部屋を発動!ライフを800払ってデッキの上からカードを4枚めくり、その中のレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚するぜ!」
……なるほど。彼のデッキは、『ローレベル』か。レベルの低い……俗に言う弱小モンスターを軸にしたデッキだ。ロックや湿地草原、ワイトデッキなど様々な戦術がある。彼の戦法は……?
「1枚目、団結の力!2枚目、きのこマン!3枚目、凡骨の意地!そして4枚目――怨念集合体!」
ATK800
LV2
ATK900
LV2
4枚中通常モンスターは2体。2体とも平均以上の攻撃力を持っている。そして団結の力……彼のデッキはきっとビート型。
「行くぜ!僕は装備魔法、魂喰らいの魔刀を海皇の長槍兵に装備するぜ!」
長槍兵の手に握られた槍が、黒く禍々しい刀へと変わる。
魂喰らいの魔刀―長槍兵
「魂喰らいの魔刀はレベル3以下の通常モンスターにしか装備できない。そして発動時に他のモンスターを喰らい、使用者の力を高めるぜ!僕は長槍兵以外の全てのモンスターを生け贄に捧げる!」
魂喰らいの魔刀を握った長槍兵の瞳が妖しく光る。そして長槍兵は、自らの味方である筈のモンスター達に斬りかかった。
ATK1400→5400
「攻撃力……5400だって!?」
「弱小モンスターの癖に……!」
「これで終わりじゃないぜ!僕は2枚の装備魔法を長槍兵に装備する!まずは一枚目、手札から下克上の首飾り。そして2枚目はセットしておいた魔導師の力!」
魔導師の力―長槍兵
下克上の首飾り―長槍兵
魔導師の力は、自分の魔法・罠カード1枚につき攻撃力を500ポイントアップさせる効果を持っている。今相手のフィールドには3枚の装備魔法。よってその攻撃力は……。
ATK5400→6900
「バトル!海皇の長槍兵で古代の機械巨竜を攻撃!魂魄魔刀斬!」
長槍が無くてもカード名は長槍兵……いや、そんなことを考えている場合ではない。
「長槍兵に装備された下克上の首飾りの効果を発動!装備したモンスターの攻撃力は、戦闘を行う相手モンスターとのレベルの差1つにつき500ポイントアップするぜ!」
低レベルであれば低レベルであるほどその力を発揮する装備魔法……!
「長槍兵のレベルは2、古代の機械巨竜のレベルは8、その差は6!長槍兵の攻撃力は3000ポイントアップする!」
ATK6900→9900
「攻撃力、9900……!?」
「どうだっ!いっけぇ、長槍兵!」
このまま攻撃が通れば、私は6900のダメージを受けることになる。それは避けなければ……!
「っ、リバースカードオープン。ガード・ブロック!戦闘ダメージを0にし、1枚ドローする」
邪悪なオーラを纏った刀が、古代の機械巨竜を頭から真っ二つにする。小さなモンスターが巨大なモンスターを破壊するさまは英雄譚の様で、会場が大いに盛り上がる。
ATK9900→6900
「すげぇ!レベル2の雑魚モンスターが攻撃力3000をやっつけた!」
「な、なんだよあいつ!やるじゃねぇか!」
ガード・ブロックでドローしたカードはメテオ・ストライク。貫通効果をモンスターに与える装備魔法。
「僕はこれでターンエンドだ!」
宝山 LP3000 手札0
海皇の長槍兵
魂喰らいの魔刀 魔導師の力 下克上の首飾り
「私のターン」
……さて、どうしたものか。相手のフィールドには攻撃力6900のモンスター。相手のレベルによって攻撃力を高めるおまけ付きだ。あの攻撃力では、魔神を自爆特攻させても反射ダメージで負けてしまうだろう。……とりあえず、ドローするしかない、か。
「ドロー」
……!このカードなら!
「私は、古代の機械要塞を発動。そして墓地の古代の機械射出機の効果で今発動した要塞を破壊し、古代の歯車トークンを特殊召喚」
歯車街の時と同様に、現れた鋼鉄の要塞が一瞬の後に崩れ去っていく。
DEF0
LV1
「そして古代の機械要塞の効果を発動。このカードが破壊されたとき、手札または墓地からアンティーク・ギアと名の付くモンスターを特殊召喚できる。私は手札から、このモンスターを特殊召喚」
要塞の残骸をドリルで突き破り、人型の機械兵が地の底から這い出てくる。
「来て――
ATK1500
LV5
「そして手札から速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動!」
このカードは相手のフィールドにモンスターが表側表示で存在し、自分が攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚したときに発動できるカードだ。自分の特殊召喚したモンスターと同名のモンスターを手札・デッキ・墓地から特殊召喚し、相手も同様に自分のモンスターの同名モンスターを呼び出す効果を持っている。
「デッキより現れよ、2体の古代の機械工兵」
「僕は長槍兵を召喚するぜ」
ATK1500
LV5
×2
DEF0
LV2
×2
地獄の暴走召喚で特殊召喚する自分のモンスターは攻撃表示でなければ行けないが、相手モンスターにはその制限はかからない。……そう。相手は間違いなく守備表示で特殊召喚してくるだろう。攻撃力はこちらに劣っているのだから。
「そしてそれが、命取りになる」
「何っ!?」
「まずは古代の機械魔神の効果で、あなたに1000ポイントのダメージを与える。そして私は装備魔法、メテオ・ストライクを、古代の機械工兵に装備するよ」
LP3000→2000
メテオ・ストライク―古代の機械工兵
これで古代の機械工兵は、貫通能力を手に入れた。
「古代の機械魔神を攻撃表示に変更し、バトル。メテオ・ストライクを装備した古代の機械工兵で、守備表示の長槍兵を攻撃。
2体の古代の機械工兵が互いの腕を組む。そしてメテオ・ストライクを装備した工兵がそれを踏み台にして跳躍し、天空から隕石のごとく長槍兵を貫いた。
LP2000→500
「くっ、メテオ・ストライクの効果か……!」
「そして古代の機械工兵の特殊能力を発動。このカードが戦闘を行ったダメージステップ終了時、相手フィールドの魔法・罠カードを破壊する」
「なっ!?」
「今宝山のフィールドにある魔法カードって……!」
「魂喰らいの魔刀を打ち砕け、古代の機械工兵!」
古代の機械工兵は長槍兵から魔刀をひったくると、様々な工具を使いあっという間に解体してしまった。
ATK6900→2900→2400
「そして2体目の古代の機械工兵で、守備表示の長槍兵を攻撃」
もう一体の長槍兵もドリルに貫かれ、そのついでに下克上の首飾りが破壊される。
ATK2400→1900
「3体目の古代の機械工兵で、長槍兵を攻撃!」
攻撃力はこちらの方が低い。先陣を切った2体に続こうと古代の機械工兵は嬉々としてそのドリルを長槍兵に向けるが、魔導師によって僅かながら強化された相手に返り討ちに合い、爆散する。
LP4000→3600
「戦闘破壊されても、ダメージステップ終了時に発動する効果はちゃんと機能するよ。最後の1枚、魔導師の力を破壊する」
爆散と同時に、ミサイルのごとく放たれたドリルが、長槍兵の纏う魔法の力を引き剥がす。
ATK1900→1400
「そ、そんな……」
「攻撃力9000が出たときには、どうしたものかと思ったよ。私は古代の機械魔神で、海皇の長槍兵を攻撃。
音も無く長槍兵の背後に回った魔神は、自らを巻き込んで大爆発を引き起こす。
LP3600→3200
「そして古代の機械魔神が戦闘で破壊されたとき、デッキからアンティーク・ギアと名の付くモンスターを特殊召喚することが出来る。おいで、古代の機械合成竜」
魔神の残骸が一人でに動きだし、結び付き、4つの頭を持つ機械竜へとその姿を変える。
ATK2700
LV7
「これで、終わりだよ。古代の機械合成竜で、海皇の長槍兵を攻撃!」
4本の光が1つに集まり、極太のレーザーとなって長槍兵を焼き払った。
「う、ぐわぁぁっ!?」
LP500→0
「勝者、萩野優葉さん!」
これで成績は安泰だろう。それにしても危なかった。もしガード・ブロックがなければ、あのままワンターンキルを決められていただろう。
「なんだよ!結局負けてんじゃねーか!」
「やっぱ雑魚は雑魚だな!」
私に向けた賞賛の言葉と共に、五階堂君に向けて言葉のナイフが投げられる。
五階堂君は、あまり気にしている様子は無かった。だけどその光景は、いつかの悠乃に重なって見えてしまう。
「……ふざけないで!」
喉が痛い。こんなに大声を出したのは、生まれて初めてかもしれない。
「オシリス・レッドに負けたからクズ?弱いカードを使うから雑魚?ふざけないで。私だって、オシリス・レッドの先輩に負けたよ!」
そんな私の言葉に、会場がざわめく。
「嘘だろ?萩野がオシリス・レッドなんかに?」
「冗談だろ?五階堂を庇ってんだよ」
確かにオシリス・レッドは最底辺の寮だ。だけど私は知っている。そんなところにも、強いデュエリストがいることを。そして今回経験した。元々の攻撃力が弱くたって、強大なモンスターを撃破できると。
「オシリス・レッドなんかに。雑魚モンスターなんかに。そんな風に相手を見下すことしか出来ない奴は、私にも、オシリス・レッドの先輩にも勝てないよ」
それだけ言って、五階堂君の手を取り、起こす。
「くーっ、負けたか……」
「楽しかったよ、このデュエル。……あ、私は勝ったからそれは当然で、えっと……」
「はははっ、気にするなよ!僕も楽しかったぜ!」
心の広い相手でよかった。あまり、デュエル以外でのコミュニケーションは得意じゃない。
「おっ疲れー!優葉ー!」
観戦席から走ってきた悠乃に抱きつかれる。
「走ってこられると痛いんだけど……」
「あ、ごめんね。……そうだ!あっちのデュエルコート見てみなよ!宝城さんがデュエルしてるよ!」
デュエルに集中していて気がつかなかったが、隣のデュエルコートでは宝城さんがデュエルをしていた。相手は……やけに背の低い男子。男の子、と言った方が良いかも知れない。
「……相手は、誰?」
「あたし、見たことないなぁ……」
「なんだ、君達知らないのか?」
私達が記憶を辿っていると、五階堂君がデュエルから視線を外さずに言った。
「デュエルアカデミア中等部の超優等生、響楠葉。本当なら中等部2年生なんだけど、特別に飛び級して、僕達の学年に入ってきたらしいぜ」
「へー……」
響楠葉、か。2人はデュエルに集中しているようで、私の話は聞いていなかったようだ。
映見 LP2500
VS
楠葉 LP500
一見宝城さんの方が押している様にも見えるけど、宝城さんのフィールドは空っぽだ。
「映見姉のエンドフェイズ、亜空間物質転送装置によって除外されたボクのモンスターはフィールドに舞い戻る」
ATK2500
LV8
響君のフィールドに現れたのは、氷を纏った戦士だ。
「行け、E・HEROアブソルートZERO!
アブソルートZEROを中心に冷気が広がって行き、宝城さんが氷付けにされる。
LP2500→0
「……うーん、負けてしまいましたわ……」
ソリットビジョンであるため氷は直ぐに溶け、消え去る。
「あ、危なかったぁー!」
わざとらしく胸に手を当てた響楠葉は、無邪気で明るい笑みを宝城さんに向けた。
「えっと……あ、そうそう!がっちゃ!楽しいデュエルだったよ!」
「「今回の、最強カードは?」」
効果モンスター
星5/地属性/機械族/攻1500/守1500
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
このカードを対象とする罠カードの効果は無効化され破壊される。
(2):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
(3):このカードが攻撃したダメージステップ終了時、
相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
その相手の魔法・罠カードを破壊する。
「レベルの割りには攻撃力が低めのモンスターだね」
「うん。でもそのお陰で暴走召喚にも対応してくれるんだ」
「魔法・罠の発動を封じる効果と合わせれば、攻撃宣言さえ出来ればほぼ確実に相手の魔法・罠を除去できるんだね!」
「それに加えて罠カードへの耐性があるから、召喚時にサンダー・ブレイクとかを撃たれても平気だね」
露骨に怪しい新キャラクター登場。なお次の出番は相当後の模様。
それと前回番外編書くよーみたいなことを書きましたが、色々と考えた結果もう少し後に投稿することになりました。楽しみにしてくださった方がいらっしゃったら申し訳ありません。