遊戯王GX―はぐれはぐるま―   作:ロジェさんマジかっけぇ

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遅くなってしまって申し訳ありません。元々1話完結の予定だったのに前後編になりました。悠乃視点の悠乃回です。

それともう1つ、GX放送時点では存在していないカード(強欲で貪欲な壷とか)が登場していますが、この作品では一部を除いてGXの世界に存在しているものとして扱っています。壊獣映画が存在していたり。

それでは長くなってしまいましたが、本編をどうぞ!


優葉アイドル化計画!?

「コソコソ……コソコソ……ノーネ」

「何をしているでアールか?クロノス臨時校長」

「りんじーは余計ナノーネ。今やっているノーハ、スター計画の第二弾ナノーネ」

「そのポスターは……ふむふむ。マドモワゼル明日香と、マドモワゼル優葉でユニットを組ませるのデアールか?」

「その通りナノーネ」

「しかしクロノス臨時校長、マドモワゼル明日香のパートナーとなるのは、ムッシュ吹雪の筈では……」

「そう考えていた時期もあったノーネ。しかし人気を手に入れるニーハ、アイドルグループの性別は揃えた方が良いことに気がついたノーネ」

「なるほど。ムッシュ吹雪はムッシュ万丈目と組ませれば……」

「アカデミア発、二大アイドルユニットの完成ナノーネ」

「「ふふふふふ……」」

 

 

 

「へぇ!宝城さんと響君って、知り合いなんだ!」

 

「えぇ。親同士の仲が良くて」

 

 オシリス・レッド寮へ向かう道中。今回は宝城さんも一緒だ。

 

「歓迎会があることを教えてくれたのも、楠葉君なのですわ」

 

「そうだったんだ」

 

 3人でそんなことを話しながら進んでいく。

 

「……それで、お二人は何故レッド寮に?」

 

「知らずについて来たの!?」

 

「えぇ。流れで」

 

 そういえば授業が終わった後、お話ししながら自然と優葉について来たんだった。まぁ、優葉の目的は大方あの人だと思うんだけど……。

 

「私、もう一回遊城先輩とデュエルするんだ。今度こそはクロノス先生の仇を……!」

 

 メラメラと闘志をその目に宿す優葉。……まぁ、あの先輩は悪い人じゃ無さそうだけど……。

 だけど、もし、万が一。優葉があの男に惚れてしまったとしたら。

 あたしが見るに、あれは生粋のデュエルバカだ。多分デュエルの事以外ほとんど考えていないだろう。そうなると惚れられている事に気づかずに、優葉を傷つけてしまうだろう。

 そんなことはさせない。あたしの優葉は、優葉を幸せにできる人間にしか渡せない。

 

「悠乃さん?大丈夫ですの?」

 

 宝城さんの声で、思考が現実に戻ってくる。随分と考え込んでしまったみたいだ。

 

「あぁ、うん。へーきへーき」

 

 気が付けばオシリス・レッド寮の前だ。相も変わらず、今にも倒れそうな外観をしている。

 

「……遊城先輩の部屋ってどこかな?」

 

「あぁ、そういえば聞いてなかったね」

 

 寮は2階建て。いくつもある部屋の中からピンポイントで遊城先輩の部屋を当てるのは至難の技だ。

 どうしたものかとあたし達が悩んでいると、ギターらしき音がどこからともなく聞こえてきた。

 ギターの音は、ボートの上に立つ青年から発せられていた。

 

「な、誰ですの??あの突き抜けたお方は」

 

「あたし達より、年上みたいだけど……」

 

 あたし達が見知らぬ人物を見て首をかしげていると、ギターの音に誘われたのか見知った人達がレッド寮から現れた。

 

「あれ、明日香先輩だ」

 

 レッド寮から出てきた天上院先輩を見て、優葉が呟いた。そういえばここのところ、女子寮で彼女の姿を見ていない。ってことは天上院先輩はここにいたのか。

 

「あら、優葉。どうしてここに?」

 

「遊城先輩にデュエルを挑もうと来たんですけど……」

 

「おーい、みんなー」

 

 優葉と天上院先輩の会話は、ボートの上でギターを鳴らす謎の人物に遮られた。

 

「兄さん?」

 

 ……かつてここまで似ていない兄妹がいただろうか。

 顔とかじゃなくて、その、性格的な意味で。

 

 

「兄さん、どうしてここに?」

 

「明日香、君を連れ戻すためだ!一緒に帰ろう、ブルー寮に!」

 

 アロハなシャツを着た男性は、芝居がかった大袈裟な身ぶり手振りでそう言った。

 

「……剣山君、あの人が誰だか知ってるの?」

 

「年長さん、らしいザウルス」

 

 優葉が剣山君に何か聞いていたけど、正直人選ミスだと思う。

 

「天上院吹雪……あの丸藤亮と並び、アカデミアの双璧と呼ばれていた人だ」

 

 三沢君が(何故か嬉しそうに)話をしてくれる。そうか、彼が噂の吹雪か。何と言えば良いのか……イメージと全然違う。

 

「まさか、兄さん!」

 

「そのまさかナノーネ」

 

 どこからともなくクロノス臨時校長の声が聞こえた。

 

「ヨイショ、ヨイショ……」

 

「「クロノス先生(臨時校長)!?」」

 

「おぉ、シニョーラ優葉も居たノーネ?良いタイミングナノーネ」

 

 崖から這い上がってきたクロノス臨時校長は、何やら凄まじい格好をしていた。全身をピッチリと包むダイビング用の水着。そして彼が背負っているのは……。

 

「まさかさっきのボートを動かしていたのは、クロノス臨時校長ですの……?」

 

「臨時は余計ナノーネ。……コホン、シニョーラ明日香、そしてシニョーラ優葉。貴女達ニーハ、ブルーのアイドル養成コースに移籍してもらうノーネ」

 

 ……は?

 

「あ、アイドル……ですか?」

 

「その話はお断りしたはずです!」

 

 アイドル養成コース……?そんなものあったっけ?

 

「アカデミアの名前を世界に轟かせる為ニーハ、2人の力が必要ナノーネ」

 

 ふむ……アイドルかぁ。

 優葉には無理だろうなぁ。顔も良いし、歌も上手い。ダンスだって出来ないこともないだろう。だけど優葉は基本的に人見知りだからなぁ……。

 ……でも、フリフリな服を着て恥じらう優葉。顔を真っ赤にしながら群衆の前で歌う優葉。有象無象達にその姿を見せるのは癪ではあるけど……。

 

「「良い!」」

 

「「よくない!」」

 

 黒い服の男……万丈目先輩と声が被る。彼の視線を見る限り、理由はあたしとは違うみたいだけど。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいクロノス先生!明日香のパートナーは僕じゃなかったんですか!?」

 

 クロノス臨時校長の話に、天上院先輩(兄)が詰め寄る。

 

「良く良く考えてみるノーネ!兄妹アイドル……話題にはナレード、ファンが定着するとは考えにくいノーネ」

 

 ……まぁ、確かにね。兄弟とか姉妹とか、グループの性別が一致していないとアイドルとしての人気は伸びにくいだろう。歌手や芸人ならともかく。

 

「そういうワケーデ、シニョーラ明日香の相方にはシニョーラ優葉こそ相応しいノーネ」

 

 ……今、ちょっとカチンと来ちゃったかな。

 

「天上院先輩には優葉が相応しい……?」

 

 まるで、優葉がオマケみたいじゃん。

 

「そんなの許さない!優葉がアイドルになるなら、パートナーの座はこのあたしのものだよ!」

 

「そうですクロノス先生!確かに彼女からもアイドルとしての素質を感じます……ですが!明日香の、いやアスリンのパートナーになるのはこの僕です!」

 

「ちょ、ちょっと2人とも、落ち着くノーネ!」

 

 これが落ち着いていられるものか。こうなったら、絶対に優葉と2人でアイドルになってみせる!

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふ!天上院先輩!あたしとデュエルだよ!」

 

「良いだろう!」

 

 天上院先輩(兄)は、髪をファサッとかき上げる。

 

「僕とアスリンがアイドルになるのか、それとも君と優葉ちゃんがアイドルになるのか。デュエルで決着をつけようじゃないか!」

 

 こうして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

「……なんで、こんなことに……」

「本当だわ。兄さんったら……」

「被害者2人の様子が痛々しいザウルス……」

「え、えっと……気を落としてはいけませんわ」

 

 ざわめく会場。授業じゃないから観戦は自由なのだが、デュエル場にはかなりの人数が集まっていた。

 

「えー、これカーラ、シニョール吹雪対シニョーラ悠乃のデュエルを始めるノーネ」

 

 会場が暗転する。スポットライトを浴び、空中ブランコを操りながら天上院先輩(兄)が華麗に現れる。

 そして観客達(主に女子)達へ向け、天井を指差して問い掛けた。

 

「僕の指差す先にあるものは?」

 

「「「天!!」」」

 

「ん~~JOIN!」

 

「キャー!」

「しびれるぅー!」

「ブッキー!」

 

 ……え、今のって黄色い歓声をあげるところなの?

 何と言えば良いのか……盲目過ぎやしないだろうか。ちゃっかり女子寮長の鮎川先生も混じってるし。

 一通り黄色い歓声を浴びた天上院先輩は、今度はこちらの番だと言わんばかりに視線を向けてきた。

 

「じゃっじゃーん!」

 

 ならば見せてあげよう!このあたしの優葉と壊獣への愛を!

 あたしはドゴランの模型に乗ってデュエル場へと入場する。当初の予定ではスワンボートだったらしいけど、勝手に改造しておいた。

 

「さぁ、デュエルだよ!天上院先輩!」

 

「かかってきたまえ!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

吹雪 LP4000

VS

悠乃 LP4000

 

 

「僕の先攻だ!ドロー!」

 

 天上院先輩(兄)の一挙一動に、観客席の女子達が盛り上がる。……本当にこんな人がアカデミアの双璧なのだろうか。

 

「僕は、グリズリーマザーを攻撃表示で召喚!」

 

 水しぶきと鮭を吹き飛ばし、吹雪先輩のフィールドに3メートルはあろうかと思われる巨大な熊が現れる。

 

ATK1400

LV4

 

「どでかい熊さんだドン」

「確かあのモンスターって、巨大ネズミとかと似た効果を持っていたっスよね?」

「えぇ。戦闘によって破壊されたとき、デッキから攻撃力1500以下の水属性モンスターを特殊召喚することが出来るわ」

「流石は天上院君だ!」

 

 リクルーターと呼ばれるモンスター。同名モンスターを呼ぶことも出来るから、擬似的な戦闘耐性とも考えられる。

 

「そう!このグリズリーマザーは倒れても再び立ち上がるのさ!いいかい?アイドルに必要なものは、どれだけ負けたって諦めない、グリズリーマザーの様なタフな心さ!」

 

 いきなりアイドル講座が始まった。だけどリクルーターは初手の様子見としてはピッタリなカード。ただのちゃらんぽらんな男だと思っていたら、痛い目を見そうだね。

 

「さらに僕はカードを2枚セット。ターンエンドだ!」

 

 

吹雪 LP4000 手札3

グリズリーマザー

セット2

 

 

「あたしのターン!ドロー!」

 

 うーん……?攻撃力の高い壊獣が手札に居ないなぁ。どっちをあたしのフィールドに出すかは悩みどころだけど、あんまり相手のフィールドにモンスターを残したくないんだよなぁ……。

 

「まずは永続魔法、壊獣の出現記録を発動。さらにフィールド魔法、KYOUTOUウォーターフロントを発動するよ!」

 

 地響きと共に、デュエルフィールドに海岸沿いの都市が生える。

 

「これは……あの映画の舞台じゃないか!」

 

 天上院先輩(兄)はKYOUTOUタワーを見上げ、感激したような声をあげる。

 

「ドゴラン対サンダー・ザ・キング。数ある壊獣映画の中でも、屈指の名作。なるほど、君は壊獣デッキの使い手か」

 

 ……へぇ。この人、中々見る目があるみたいだね。天上院先輩(兄)から天上院先輩に格上げしてあげよう。その代わりもう一人の天上院先輩が天上院先輩(妹)になるんだけどね。

 

「そう、原点にして頂点!あの永遠のライバル達がその巨体をぶつけ合った街です!」

 

 ドゴランとサンダー・ザ・キングは他の映画でも度々激突している。だけど同じく登場率の高いガダーラとは違って、一度も共闘したことはない。

 

「さて、いっくよー!手札の壊獣モンスターは、相手フィールドのモンスター1体を生け贄に捧げ、相手のフィールドに特殊召喚することが出来る!」

 

 ウォーターフロントの天気が急激に悪化し始める。それは嵐の前兆。厚い雲が太陽の光を遮り、都市は夜のように暗くなっていく。

 

「海を守りし古き獣よ!今嵐を纏い、混沌たる地上へ降り立て!」

 

 嵐の勢いは大きくなり、波が荒れる。逆巻く海流はウォーターフロントの大地を薙ぎ、巨大な母熊を海の中へと引きずり込む。

 

「そんなっ、グリズリーマザーが!」

 

「現れよ!海亀壊獣ガメシエル!」

 

 そして深き海の底より、水の守り神が姿を現した。

 先程の母熊が小さく見える程の、山のような体躯。甲羅からは4つのヒレが生えている。

 

ATK2200

LV8

 

ウォーターフロント0→1

壊獣の出現記録0→1

 

「ガメシエル!古来よりこの国の海を守ってきた壊獣だね!」

 

「そう!でも今回は敵役を演じて貰うことにしたんだ。壊獣の出現記録の効果で、手札または墓地から壊獣が特殊召喚される度に壊獣カウンターが1つ乗るよ。そして相手のフィールドに壊獣が存在している場合、手札の壊獣モンスターは特殊召喚出来る!」

 

「何っ!?それじゃあこのガメシエルの様な大型モンスターを幾らでも展開できるのかい?」

 

「ううん。残念だけど、壊獣達の共闘は中々見られないんだよ。壊獣はお互いのフィールドに1体ずつしか存在できないからね」

 

 KYOUTOUタワーの足元の地面が割れ、何本もの糸が触手のごとく這い出し、地面を埋めていく。

 

「地の底より現れよ、本能のままに全てを貪れ!粘糸壊獣クモグス!」

 

 地面の裂け目より吐き出される糸は、KYOUTOUタワーを白く染めていく。さらにタワーの頂点から辺りのビルへと糸が伸び、ウォーターフロントは暴食の館へと姿を変えた。

 そして緩慢な動きで、奈落の底から巨大な蜘蛛が顔を覗かせた。

 

ATK2400

LV7

 

壊獣の出現記録1→2

 

「おぉ、そんなマイナーな壊獣もいたんだね!」

 

「クモグスはマイナーじゃないです!確かに出演数は少ないですけど、ドゴランを後一歩まで追い詰めたんですよ!」

 

 うん。ドゴラン対クモグス対ガメシエル。唯一クモグスが出演した作品だ。クモグスが糸で網を作って海の生き物を食い荒らしたんだったね。それをドゴランのせいだと勘違いしたガメシエルが――。

 

「おーい、デュエルの最中だよ?」

 

 ――そしてクモグスを倒して海の平和が……おっと。つい映画の内容を回想してしまった。

 

「あ、あはは。ごめんね!それじゃあ遠慮なく行かせて貰うよ!クモグスでガメシエルを攻撃!スティックルストリングス!」

 

 蜘蛛の糸。現実の蜘蛛の糸でも、鋼鉄を越える強度を持つと言われている。

 ただでさえ頑丈なそんな糸が、クモグスのサイズに合わせて巨大な鞭となってガメシエルに襲いかかる。

 

「ぐっ……」

 

LP4000→3800

 

ウォーターフロント1→2

 

「「「ぶ、ブッキー!?」」」

「「「良いぞー!やれやれー!」」」

 

 女子からの悲鳴と男子からの歓声が混じり合い、混沌とした空気になる。まぁ、そりゃ目の前でこんなモテっぷりを見せられたら嫉妬するのも分かるけどね。こんなのに優葉を取られた日には……いや、優葉はこういうタイプの人間は苦手そうだし心配はないかな。

 

「カードを1枚セットして、ターンエンドだよ」

 

 

悠乃 LP4000 手札1

粘糸壊獣クモグス

KYOUTOUウォーターフロント 壊獣の出現記録 セット1








「「今回の、最強カードは?」」

粘糸壊獣クモグス
効果モンスター
星7/地属性/昆虫族/攻2400/守2500
(1):このカードは相手フィールドのモンスター1体をリリースし、手札から相手フィールドに攻撃表示で特殊召喚できる。
(2):相手フィールドに「壊獣」モンスターが存在する場合、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。
(3):「壊獣」モンスターは自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
(4):相手がモンスターを召喚・特殊召喚した時、
自分・相手フィールドの壊獣カウンターを2つ取り除いて発動できる。
次のターンの終了時まで、そのモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。

「粘糸壊獣クモグス。ガダーラと同じく昆虫族モンスターの壊獣だよ!」
「相手がモンスターを呼び出したとき、その攻撃と効果を封じるんだね」
「その通り!ドゴランもこの糸に苦しめられたんだ。攻撃が低めだから相手のフィールドに出す壊獣の候補としても挙げられるよ」
「でも相手のターンに使える効果を持っているし、効果を発動するために必要な壊獣カウンターも少ないからそこが少し怖いかな……」
「うん!だからフィールドのカウンターの数をよく考えて使っていきたいね」
「そういえば、クモグスの活躍について語ってたけど……」
「そう!この子は凄いんだよ!数ある壊獣映画の中でも一回しか出てきていないんだけど、この壊獣が無ければ壊獣映画はまた違った道に進んでいたかもしれないね」
「それって?」
「次の作品の、ガメシエル対ラディアン・壊獣捕獲大作戦でね、このクモグスの糸を再現した鋼糸網が使われるんだ。そして捕獲に成功したラディアンや他の壊獣のデータを元に、対壊獣用決戦兵器の――」
「な、長くなりそうだね……」



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本当にありがとうございます!これも一重にこの作品を読んでいただいた皆様のお陰です。この様な作品ですが、これからもお付き合いいただけたら幸いです!
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