エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第11幕 降伏

 

 

 

 

 

 

 

五稜郭に到着し、作戦室にて待てと言われて榎本を待っていた土方と信女。

しかし、やって来たのは榎本ではなく、大鳥だった。

 

「そろそろ来る頃かと思っていたよ」

 

「アンタと話している暇はない。至急榎本さんと会わせてくれ」

 

「総裁は部屋で休んでいる」

 

「火急の要件だ」

 

「要件ならば私が承る」

 

大鳥はそう言うが、信女は、

 

(嘘ね、多分土方からの話を榎本に話す事無く、握り潰す気ね‥‥)

 

ここ最近、土方と大鳥との間にも溝が深まりつつある中、大鳥が土方の言葉をすんなりと榎本に伝えるのだろうかと疑問視する信女。

 

「アンタじゃダメだ」

 

「私は陸軍奉行だ」

 

「‥‥ちっ、今日、薩長の奴等に夜襲をかけて来た時、兵の数が異常に少なかった‥敵はこの数日以内に総攻撃を仕掛けるハラだ。それについて、総裁、陸軍奉行はどのような策を練っているのか?をお聞きしたい」

 

土方は大鳥に新政府軍の箱館総攻撃についてどのような作戦を練っているのかを尋ねる。

すると、大鳥からは耳を疑う様な言葉が返ってきた。

 

「その事なんだが、我等は降伏する事に決めた」

 

「「っ!?」」

 

降伏と言う言葉を聞き、土方と信女は目を見開く。

 

「降伏‥‥そんな‥‥それじゃあ、今まで死んでいった仲間は何だった‥の!?」

 

「今井‥‥」

 

信女は声を上げて大鳥に詰め寄る。

 

「今更降伏なんて、虫が良すぎる!!」

 

信女としては降伏するのであれば、何故もっと早く降伏しなかったのかと言う言い分が含まれていた。

もっと早くに降伏すれば‥‥宇都宮城での攻防戦で敗れたあたりで降伏すれば、沖田は暗殺者の手にかかって殺されることはなかったのだ。

そう思うと信女には、今の大鳥達のやり方は到底我慢できるものではなかった。

 

「降伏する事が陸軍奉行のやる仕事か!?どうやれば、助かるかより、少しは勝つ策を練ったらどうなんだ!?」

 

「今井!!‥‥下がれ‥‥」

 

土方に言われてすごすごと大鳥から下がる信女。

これ以上信女を止めずにいると、彼女はそのまま大鳥を斬ってしまうかもしれないと思ったからだ。

 

「大鳥さん、俺も今井と同じ意見だ。アンタらはどう言うつもりで降伏する?」

 

「全滅を避けるためだ」

 

「全滅などさせない」

 

「しかし、総裁の心は既に決まっている」

 

「だから、総裁に会わせろ!!」

 

「今更決定に異を唱えられても道理に合わん。今夜、総裁は君を待っていたのだぞ、何故会合に来なかった?」

 

「俺はてっきり、今夜はな、アンタらが死ぬ覚悟で別れの盃を交わしているのかと思っていた。ところがどうだ?降伏を前にして助かる事を喜ぶための宴じゃねぇか!!」

 

「好きに言え、だが、状況を見て見ろ、日に日に悪くなっている。状況を見極め、采配を振るうのが我々の役目である。ただ斬り込むだけの戦好きとは違うのだ」

 

大鳥が立体模型の駒を動かしながら言う。

 

「その状況を此処まで悪くしたのは誰だ?」

 

信女は大鳥に冷めた言葉を投げかける。

 

「新撰組が二股口で勝ったにも関わらず、貴方達のせいで、撤退を余儀なくされた‥‥」

 

「次に攻撃を受けたら、危なかったから私は君達に撤退を薦めた」

 

「しかも聞いた話では、敵のありもしない反撃に怯えて撤退したそうじゃないか?おかげで、此方も折角勝って守った陣を手放す結果になった‥‥それが貴方の言う采配か?随分と立派な采配です事‥‥」

 

「口が過ぎるぞ、今井君!!それに君が言っているのは言いがかりだ!!」

 

「戦は勢いが必要‥敵に恐れていては勝機を失う。前に出ないで戦に勝てると思っているのか!!」

 

信女の修羅の様な雰囲気に思わず後退る大鳥。

 

「‥‥土方君、君は一体部下にどんな教育をしているのかね?」

 

「悪いが、俺も今井と同じ意見だ。大鳥さん」

 

「‥‥では、戦好きの新撰組の君達に一ついい事を教えてやろう」

 

「どうせ、くだらない事だろう‥‥」

 

「まぁ、聞いてやろうじゃないか、今井」

 

「ふん‥‥」

 

土方にそう言われて黙って大鳥の言ういい事を聞くことにした信女。

 

「降伏は申し入れるが、薩長の出方次第では、私は再び奴等と戦うつもりでいる」

 

「策はちゃんとあるんだろうな?」

 

土方が大鳥の策を‥‥どうやって薩長の連中と戦うのかを尋ねる。

 

「まず、この蝦夷地の民を味方につけ、武器・弾薬、兵糧を整え、五稜郭の地の利を利用して、敵を食い止める。そうすれば、あと半年は此処で粘る事が出来る」

 

「籠城か‥‥」

 

「此処で半年粘ればやがて、冬になる。敵がまだ経験した事のない厳しい冬だ。敵は兵を引いて出直すしかなくなる。その間に薩長に不満を持つ者達を声をかけ、再びこの蝦夷地へと集めるのだ」

 

大鳥は自信満々で策を披露するが、

 

「甘い!!」

 

「無理だ‥‥」

 

土方と信女は直ぐに大鳥の策を否定する。

 

「なっ、無礼であろう!!」

 

大鳥は自分の立てた策が否定され少し不機嫌だ。

 

「学者さん、もっと人の心を読めよ」

 

「どういう意味かね?」

 

「ちっ、今井、説明してやれ」

 

「‥‥会津も長岡も落ち、奥羽越列藩同盟は解散‥‥一度、大敗北を経験した人がこの蝦夷まで来る筈がない。奥州は政府軍が目を光らせている。その警戒網を破って、海を越えて蝦夷まで来るのは至難の技‥‥それにこの蝦夷の民だって完全には信じられない‥‥新政府軍が優勢な中、劣勢な此方に何時まで味方でいてくれていると思うのか?」

 

「そんな事を一々気にしていた何も出来ん!!」

 

「常に最悪な場合を想定して考えるのが策の筈‥‥鳥羽伏見の戦いの後、幕府から新政府軍へ寝返った藩や人が一体どれくらいいると思っているんだ!?」

 

「って、事だ。世の中、机の上で立てた紙の計算通りにはならねぇって事だ。よって打つ手は一つしかねぇ」

 

「参考までに聞かせてもらおう」

 

「打って出るんだよ」

 

土方の策を聞き、大鳥は目を見開いて驚く。

要塞があるにも関わらず、その要塞から出て野戦で戦う。

普通に見れば愚策にしか聞こえないからだ。

 

「ハハハハ!!」

 

土方の策を聞いて笑う大鳥。

 

「全軍でぶつかる訳では無い。小さな戦を何度も仕掛けるんだ。何度も出て小さく勝つ。海がヤバければ、山で敵を押し返し、敵の注意が山に向けば、海で敵を押し戻す」

 

(テロリストかゲリラみたいな戦い方ね‥‥)

 

信女は土方の策が前の世界での攘夷志士の様なやり方だと思った。

 

「そんな事をしてどうなる?」

 

「どれほどの大軍で押し寄せても、俺達が決して降伏しないと知った時、敵には恐怖、不安が生まれる。この戦が永遠に続くかもしれないと言う恐怖と不安だ。そうなりゃ、こっちのモノだ」

 

「そんな策があるか!!その先に待っているのは全滅だ!!」

 

「全滅はさせねぇ‥俺が約束する」

 

「土方、私も居る‥‥」

 

「ああ、心強いぜ、今井」

 

「‥‥もういい!!全ては決定した事である!!今更変えることは出来ん!!」

 

「だから、俺が此処に来ている!!」

 

「土方君!!‥‥君は此処では陸軍奉行並だ。新撰組では、近藤勇の影で好き勝手やっていたみたいだが、此処では我々の指示に従ってもらうぞ」

 

土方と信女は大鳥のその言葉を聞いて、無言のまま、作戦室を後に知る。

 

「こら、待て!!何処に行くつもりだ!?」

 

「総裁の所だ!!」

 

「私は陸軍奉行だぞ!!」

 

「お前では話ならん」

 

「『お前』とはなんだ!?」

 

「いいからどけ!!」

 

「邪魔‥‥」

 

「榎本と私の思いは一緒だ」

 

「じゃあ、榎本を斬って、その後、貴方も斬る‥‥貴方、ちょっと目障りだったしな‥‥」

 

信女が物騒な事を口走る。

 

「だ、誰か!!」

 

大鳥が大声で叫ぶと警備の兵たちが集まって来た。

味方同士で同士討ちが始まるのではないかと言うピリピリした空気の中、

 

ガチャ、

 

キィィィィ‥‥

 

榎本が居る総裁室のドアが開いて。

 

「土方君‥‥」

 

榎本は姿を現した。

 

「どうぞ、私の部屋に‥‥」

 

そして、榎本は土方を自らの部屋に招き入れる。

 

「し、しかし、総裁‥‥」

 

「いいから」

 

「それでは、私も‥‥」

 

大鳥は榎本を土方と信女の3人だけだと不安に思い、自らも付き合うと申し出るが、

 

「いや、君は外してくれ」

 

「えっ?」

 

榎本に断られて( ゚д゚)ポカーンとする大鳥。

 

「ワインとグラスを用意してくれ。ああ、後何か摘まめるモノを‥‥そうだな、サンドウィッチがいい」

 

「はい」

 

榎本は近くの警備兵にそれらを頼む。

 

「榎本さん、今井は連れて行くぞ、コイツは俺、専属の小姓だからな」

 

「好きにしたまえ」

 

「では、総裁がお呼びなので、行って来ます。」

 

土方は大鳥に皮肉を込めて言う。

信女も土方について行く中、

 

「あっ、そうだ‥‥」

 

何かを思い出したように呟く。

 

「去年、五稜郭に入った時のこと、覚えてるか?」

 

突然、大鳥に五稜郭入城の時のことを尋ねる。

 

「それがなんだ?」

 

「あの後、誰を総裁にするか、入れ札で選んだ‥‥」

 

「それがなんだ?」

 

「アメリカや欧州ではそうやって偉い人を決める制度らしい‥榎本がそう言っていた‥‥外国かぶれのあの人らしいやり方‥‥」

 

「それがなんだ?」

 

大鳥はもはや信女の言葉に同じ言葉しか出て来ていない状態となっている。

 

「結局、総裁は榎本に決まった‥でも、あの時、貴方にも1票だけ入っていた‥‥」

 

「そ、それが‥‥?」

 

「貴方、自分で自分に入れたんじゃないのか?」

 

「っ!?//////」

 

「貴方の行動‥‥とっても滑稽だったよ‥‥」

 

「ふっ」

 

信女と大鳥のやり取りを聞いていた土方も微笑して榎本の部屋に入って行った。

後ろでは大鳥が騒いでいるが、信女もそれを無視して、土方と共に榎本の部屋に入って行った。

 

「君達と大鳥のやり取りは見ていて面白い」

 

「総裁には申し訳ないが、あの男は‥‥」

 

「まぁ、そう言うな。アイツは君達がいつも予想外の策で勝利をおさめている事にやっかんでいるんだよ。アレも実は根っからの戦好きなんだよ。まっ、何はともあれ、君達が居てくれたおかげで、此処まで来ることが出来た‥‥私は君達が率いる新撰組は日本最強の軍隊だと思っている」

 

「最強の軍隊だと?」

 

「そうだ。後は天気さえ味方になってくれていたら、こんな事にはならなかった」

 

確かに榎本の言う通り、宮古湾海戦の時、天気が味方してくれていれば、甲鉄を奪えたかもしれなかった。

 

その後、土方は今回の降伏についての異議を唱えようとするが、榎本はワインについて、トランプ、サンドウィッチについての外国話を交えたうんちくをかたり続け、土方の言葉に耳を貸そうとしない。

 

「‥‥」

 

信女はお腹が空いたのか、サンドウィッチをジッと見る。

しかし、彼女は土方の小姓‥土方の許可なしに手を付けることは出来ない。

そんな、信女の様子に気づいた土方は、

 

「今井、腹が減っているなら、食べて良いぞ」

 

信女にサンドウィッチを食べる許可を出し、信女はサンドウィッチを食べ始めた。

 

(おいしい‥‥けど、やっぱり、ドーナツが食べたい‥‥)

 

モキュモキュとサンドイッチを食べる信女。

その間、土方と榎本の会話は白熱し、土方は、榎本に降伏をとり下げる為に等々抜刀し、榎本に刃を突きつけた。

それでも榎本は怯える様子もないし、助けを求める様子もない。

案外、この男、肝が据わっているのかもしれない。

土方は自分に100の兵を貸してくれたら必ず勝ってみせると豪語する。

そんな中、榎本のこの一言が信女に衝撃を与える。

 

「アンタ‥‥死にたいんだろう?」

 

「っ!?」

 

(土方が死にたがっている‥‥?やっぱり、さっきのあの表情は間違いなかった‥‥でも、土方、今貴方が死ねばそれこそ、新撰組までもが死んでしまう‥‥残念だけど、土方‥私が傍にいる限り、決して貴方を死なすわけにはいかない‥‥)

 

「お前さんは、戦場で死ぬことを誰よりも望んでいる‥‥口では勝つ様なことを言っているが、この戦、天地が引っくり返っても俺達が勝つことは無理だ。だからこそ、戦が終わる前に戦場で死にたい‥‥そう思っているんだろう?そんな奴に俺の兵を貸せるか!!」

 

「‥‥」

 

「分かってくれ、もう無駄な戦死者は出したくねぇんだ」

 

それでも土方は納得できず、終いには、兵は要らないから自分一人で斬り込ませて、自分が死んだ後に降伏しろと榎本に本音をぶちまけた。

 

「‥‥」

 

信女は土方の本音を聞き、サンドウィッチを食べていた手が止まる。

しかし、それでも榎本は土方の提案を受け入れない。

熱くなった土方に改めて榎本はワインとサンドウィッチを薦める。

榎本と土方は床にどっかりと座り、サンドウィッチを肴にワインを飲む。

 

「今井君、君もどうだ?」

 

「‥‥頂く」

 

榎本は信女にワインを勧め彼女もグラスを傾け、榎本と土方の話に耳を傾けた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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