エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


第20幕 理由

 

 

 

 

 

信女が観柳邸の屋敷の森で四乃森と戦っている中、恵は昼間、観柳と接触し、観柳相手に逃げ切る事は無理だと悟ると同時にある決意をした。

そして、神谷道場に置き手紙を残し、観柳の屋敷へと帰って行った。

恵が残した置き手紙は薫が見つけた。

そしてそこに記された内容に皆は静まり返った。

 

前略 誠に勝手ながら黙って去ることをお許しください。

観柳の追手も途絶えたようですので私たちはそろそろ会津に帰ることにします。

十日間程でしたが本当に有難うございました。

                                  草々 高荷恵 

 

恵の置き手紙にはそう書かれていた。

 

「なんか拍子抜けしちゃうなぁ…」

 

手紙を見て薫が小さくつぶやく。

そこには喧嘩相手を無くしたような喪失感に悲しみを滲ませた表情があった。

 

「しまった‥‥」

 

しかし、剣心はその手紙に込められた意図を見抜き、悔しげにグシャリと手紙を押し潰す。

彼の顔には焦りが露わになっている。

 

「剣心?」

 

そんな剣心の態度に薫は不思議がっている。

 

「会津には今、恵殿を待つ者は1人もいないはず……!観柳の奴がいつの間にか恵殿に接触して脅しをかけたに間違いない!」

 

手紙の文字は以前弥彦に穿たれた毒を解毒する材料を書いた字と比べるとわずかに震えていた。

 

「左之、観柳邸の場所はわかるな!行くぞ!」

 

剣心は焦りから声を荒げる。

だが、反して左之助は至極冷たく言い放つ。

 

「行きたかったら、勝手に行けよ」

 

「っ!?」

 

「あの阿片女のために何で俺が動かなきゃなんねーんだよ?」

 

「左之助!?」

 

その場に居合わせた剣心、薫、弥彦の三人は息を呑む。

人一倍人情の厚い筈の彼がそんなことを言うなんてあまりにも意外だった。

弥彦はそんな左之助の態度が気にくわず左之助に食ってかかる。

 

「てめぇいつからそんなダセェこと言うように‥‥!!」

 

剣心はそれを手で制した。

 

「剣心」

 

弥彦が剣心の顔を見ると、剣心の顔からは焦りが消え去り、ありありと浮かび上がるのは紛れもない怒りであった。

 

「いい加減にしろ、左之。お前らしくもない」

 

「…るせえよ。あの女の作った阿片で俺のダチが1人死んだんだぜ。それなのに何で俺が動かなきゃなんねー理由があるんだよ。俺はお前程お人好しでも、ましてや流浪人でもねェーんだよ!!

 

剣心は小さく溜め息を吐く。

左之助の中の葛藤も困惑も、全て見抜いたまま‥‥

 

「左之、お前‥恵殿の瞳をよく見てなかったでござろう」

 

薫とのやりとりや、これまでの恵との日常生活の中、いつも気丈にふるまっているが時にほんの一瞬見せる寂しそうな瞳。

あれは心を許せる家族に等しい仲間を探している目であった。

大切な人と会いたくても会えない辛さは左之助も分かっていた。

左之助だって助けたい‥でも、彼女のせいで友人が死んでいる。

それがどうしても許せない。

彼が動けないのは、そうした理由もあった。

 

「そうか‥‥しかし、拙者は恵殿を救いに行く。人が動くにいちいち理由が必要ならば、拙者の理由はそれで十分でござる」

 

左之助は剣心の言葉を聞きは言葉を失った。

静かに歩き出す剣心の後ろを弥彦が追って行く。

 

「ちょっと弥彦、アンタどこに行くつもりよ!?」

 

「決まってんだろう!!剣心と一緒に恵を助けに行くんだよ!!!」

 

「何言っているのよ!?アンタが行っても足手まといにしかならないわよ!!」

 

薫が足手まといになるだけだから止めろと言うが、

 

「うるせえ!俺は一度あの女に命助けられてんだ!ここは命懸けでも助けに行く!それが出来ねーで何が活人剣の神谷活心流だ!」

 

(そうだな、理由はどうあれ、アイツは弥彦を助けたじゃねぇか‥‥)

 

弥彦の言葉を聞き、左之助はポンと薫の肩に手を乗せ、口を開く。

 

「こいつぁ多分徹夜仕事になる。五人分の朝食と朝風呂の用意忘れんなよ」

 

「左之助!!」

 

「四の五の考えんのはもう止めだ。ここは俺らしくひと暴れして来るぜ!」

 

そんな左之助の様子に、剣心は「よし」と満足気に微笑む。

 

「行くぞ!!」

 

「「おう!!」」

 

剣心達は恵を助けるために観柳の屋敷へと向かった。

 

 

その頃、観柳の屋敷では、観柳の前にはほぼ無表情の恵が立っていた。

 

「お帰りなさい、恵さん。必ず帰ると思っていましたよ。あなたの帰る所はここしかありませんからねェ」

 

クスクスと不敵に笑う観柳。

 

「さっそくですが新型阿片『蜘蛛の巣』の在庫が切れそうなんですよ。作って頂けますね?」

 

しかし、恵は返事をしない。それをみかねた観柳は溜息を吐きながら彼女へと歩み寄る

 

「どうもあなたはいつも反抗的だ。私はいつもあなたを可愛く思っているんですけどねェ」

 

「可愛く思っているのは私が作った阿片の利益でしょ」

 

「ええ。ですから、そのついでにあなたも可愛がってあげているんですよ」

 

恵の顎に手を添えたまま、観柳は冷たくそう言い放つ。

 

「そう…でも生憎、私は阿片を作りに来たんじゃないの」

 

「は?」

 

スラリと恵の背後から煌めく短刀の刃が見えた。鞘がカラン、と音を立て床に落ち、刃先は観柳へ向けられていた。

 

「武田観柳を殺しに来たのよ」

 

恵がそう言い放つと、

 

ザシュッ

 

恵は観柳に斬りかかった。

彼女の渾身の一撃はまず観柳の左腕を傷付けるに止まった。

観柳はみっともなく悲鳴を上げながら後ろに飛び退く。

 

「安心なさいな、あんたと私は一蓮托生。私もすぐ後死んであげるから」

 

恵は再び短刀を振りかざす。

 

「言ったでしょう?ここに戻るくらいなら死んだ方がマシだって」

 

そして、恵は観柳に短刀を振り下ろすが、

 

「そこまでにしとけ…」

 

恵の手からは観柳に刺したはずの短刀が消えており、その短刀は、彼女の後ろにいる四乃森が盗っていた。

 

「こ…このっ、くそアマ!!」

 

観柳が恵の頬を拳で殴った。

武器が無くなったと思うと強気になる。悪党の中でも小物っぽい観柳であった。

 

「私兵団を呼べ!拷問にかけて精製法を吐かせてやる!」

 

声を荒げ四乃森に私兵団員を呼ぶように命じる。

 

~side信女~

 

その様子をじっくり見ていた信女

 

(なるほど...新型の阿片か...それに高荷恵..やっと思い出した...)

 

(会津の医者の名門家‥‥高荷家‥‥あの人は其処の家の人だったんだ‥‥)

 

(後はこの屋敷の裏を知りどうやって連中を捕まえるか...)

 

(1、全員斬る‥‥ダメだ派手に動きすぎる 2、とりあえず阿片ができたらそれを証拠に捕らえる、時間がかかるしさっさと此処から出ていきたい、3、暗殺...警察がそんな事...でも、それが手っ取り早い‥‥うーん、でもそれだと真相が全て闇の中‥‥どうすれば‥‥)

 

そんな事を考えていると外が騒がしくなってきた。

 

(なんか、うるさい、ケダモノ達が酒を飲んで花火でもしているの?)

 

と外を覗き始めた。

すると、其処には信じられない光景が広がっていた。

 

 

~side観柳~

 

時は同じく外の様子を知った四乃森が口を開いた。

 

「小姓隊以外は出払っているさ」

 

「何?」

 

「耳を済ませてみろ」

 

観柳が四乃森の言われた通り、耳を澄ませると、

 

ピィー!!ピィー!!

 

庭先から笛の音が聴こえた。

 

「こ、これは…非常用の呼子……!」

 

「あの男が…来た!」

 

四乃森がポツリと呟いた。

観柳が急いで窓から庭先を見ると、剣心と左之助が庭に居た剣客隊とヤクザ隊をボコボコにしながら、屋敷に向かって進撃して来る。

 

剣客隊とヤクザ隊を倒すと、

 

「銃士隊打ち方用意!!」

 

剣心達の前に整列し、拳銃を構えた男達が居た。

観柳の銃士隊だった。

しかし、拳銃如きに怯む剣心ではなく、銃弾が放たれる前に銃士隊の前衛を突き崩す。

 

「此奴、怯むどころか加速しやがった」

 

銃士隊のリーダーは剣心の行動に思わず苦虫を噛み潰したような顔をする。

前衛は突き崩してもまだ銃士隊全員を片付けた訳ではなく、

 

「止まったぞ!!撃て!!」

 

動きが止まった剣心に狙いをつける銃士隊。

そこへ、

 

「弥彦」

 

「ん?」

 

「飛べ!!活躍して来いよ!!」

 

すると、左之助が弥彦を銃士隊の所へと投げ飛ばし、弥彦は銃士隊のリーダーと衝突する。

 

「き、貴様」

 

銃士隊のリーダーが突然自分に飛んできた弥彦に拳銃を向けようとしたが、その拳銃は弥彦の手の中にあり、突然の弥彦の乱入に唖然としていた銃士隊は剣心と左之助の手により片付けられた。

 

「こら、左之助、よくも人を放り投げたな!!」

 

「お前の出番をやったんだ。感謝しな」

 

「なんだと!?」

 

主力となる私兵団員が全滅した中、弥彦と左之助が言い合っている。

その様子を見た観柳は困惑していた。

 

「わからん何故だ?いったい何の理由があって緋村抜刀斎が……何の得があってあの女のためここまで動くと言うんだ!」

 

「人斬り抜刀斎が損得で動く様な男であれば今頃奴は陸軍の幹部にでもなっているさ。実業家のあんたには理解できんだろうが、維新志士というのはわれわれとは立場は違えど己の理想に殉じていった、そういう連中だった‥。明治の世になって多くの志士達は見る影もなく腐っちまったが、あの男はまだ活きが良さそうだ。十年ぶりに大物が姿を現した!あの男‥人斬り抜刀斎はおれたちの獲物だ」

 

「じょ、冗談じゃない…あの伝説の人斬りを敵にするなんて危ない真似できるか!!」

 

観柳は自分の屋敷へ近付く剣心達を見てガタガタ震えていた。

 

「そう言うな、御庭番衆は戦いたいんだ」

 

四乃森は不敵に笑みを浮かべる。

 

「観柳!!」

 

「ひっ!」

 

屋敷の外から剣心のデカい声が聞こえ、観柳はビクッと震える。

 

「っ…」

 

「…年貢の…納め時だ、武田観柳。恵殿を連れて降りて来い」

 

剣心は観柳を睨みつける。

すると、観柳は突然笑い出した。

 

「素晴らしい!私兵団五十人余りを息もつかぬ間に倒すとは、流石は伝説の人斬り抜刀斎!!私兵団五十人分の報酬を払いましょう。どうです、是非とも私の用心棒に!!」

 

観柳はつらつらと彼の事を褒め称え、剣心を勧誘し始めた。

 

「降りて来るのか来ないのか、どっちなんだ?」

 

剣心の低い声を出し、一歩一歩屋敷へと確実に近づく。観柳はどんどん報酬額を上げ彼に迫るが、剣心からの返事は勿論無い。

 

「わからん奴だな。金で懐柔しようったって無駄だ。緋村抜刀斎は損得で動く男ではないと言っただろう」

 

「わかった、私の負けだ、降参する。高荷恵は手放そう!だが一時間だけ時間をくれ!こちらの方でも何かと準備が居る!一時間後に必ず届ける!頼む!この場は大人しく退いてくれ!!」

 

観柳は剣心に交渉を持ち掛け、一時間の内に恵から新型阿片の製法を聞き出そうとしたが、

 

ドゴォッッ!!

 

剣心は庭にあったガス灯を切り、

 

「一時間以内にそこへ行く!心して待っていろ、観柳!!!」

 

「姑息な奸計は火に油か。成る程確かに激情家だ」

 

「お…御頭、御庭番衆の配──」

 

「もう済ませた。玄関につながる大廊下とそのつきあたりの階段に俺の右腕と左腕を配置した。俺は階段を登ってすぐのダンスホールで殿を勤める。この女は3階の展望室に幽閉しておく」

 

「いいか癋見や火男この様な役立たずのクズはもう真っ平だぞ!高い給金に見合うだけの働きをせん奴はこの私が許さんからな!!」

 

観柳がそう言った瞬間、

 

「『この私が許さん』とは、どういうコトだ?勘違いするなよ。御庭番衆を束ねるのはお前じゃない。俺の御庭番衆だ。何人たりとも卑下することは許さん!」

 

四乃森が観柳の胸倉をグイッと掴み上げた。

観柳を降ろした後、四乃森は恵を抱えて部屋から出て行った。

 

 

剣心が庭先で私兵団員を相手にしている時、

 

 

~side信女~

 

「間違いないあの姿‥‥緋村‥‥」

 

まさか、自分の探し人が向こうから現れた事に驚愕する信女。

 

「斎藤からの頼まれ事も果たせそうね」

 

窓の外で剣を振り、私兵団員をなぎ倒している剣士を見て、信女はそう呟いた。

ただ、その前に証拠品を抑える事にした。

今は、御庭番衆は自分の近くには居ないし、私兵団も屋敷の外で伸びており、屋敷内には居ない。

絶好のチャンスだった。

そして、観柳の書斎にて、新型阿片の精製方は分からなかったが、阿片による売り上げや、密売兵器の保管場所が書かれた書類を発見し、それらの証拠の品を抑えると、刀を持ち、剣心を出迎える準備をした。

 

 




ではまた次回。
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