エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第27幕 役者

 

 

 

 

由太郎が行方知れずとなり、塚山家の屋敷は完全に雷十太達真古流の拠点となっていた。

ロビーにあった美術品は全て消え、使用人達も姿を消し、居るのはむさくるしい男達だけ‥‥。

そんな中、

 

「‥‥以上が吾輩の計画である」

 

雷十太は伊豆の地図を背に独立国家の構想を説明する。

 

『おおおおー!!』

 

「最強の男達よ、失われし誇りを取り戻す時が来た。剣のみが我等を不滅にするのだ!!立て!!精鋭よ!!戦い取れ!!野望の国を!!」

 

『おおおおー!!』

 

雷十太の演説で真古流の士気は大いに高まった。

そんな塚山の屋敷を単眼鏡で遠目に見る一団があった‥‥。

 

「それで、今案山子‥もとい、真古流の連中はどこに集まっているんですか?」

 

信女は浦村署長に真古流の連中が伊豆の何処に集結しているのかを尋ねる。

聞いた話では、真古流の人数は数十人以上いると言う。

そんなむさくるしい大勢の男連中が隠れられる場所は限られる。

 

「かの地には塚山と呼ばれる大地主が屋敷を構えている。情報では雷十太達真古流は其処を拠点としている様だ。既に静岡県警の機動隊がその屋敷を見張っている」

 

「緋村は今どこに?」

 

「小国ハナと呼ばれる塚山家に出入りしている使用人の家らしい。其方は私が出向く。佐々木警部試補は塚山の屋敷へと出向き、静岡県警と合流し、開戦を少しでも送らせてくれ‥‥」

 

「わかりました。しかし、向こうが先に戦端を開くかもしれませんよ」

 

「その時は、やむを得まい‥政府の命令を実行する。君も参戦してくれ」

 

「わかりました」

 

信女は口元をほんのわずかに緩めた。

 

真古流の方も自分達が伊豆に武士の為の独立国家の建国を宣言すれば、明治政府が必ず自分達を攻撃して来ることは読んでいた。

その為、真古流も政府の動きを探知するために彼方此方に斥候を放っていた。

そしてその斥候が静岡県警の機動隊を発見し、雷十太へと報告した。

 

「何?警察の機動隊だと?」

 

「我々の動きを嗅ぎつけたらしいのです。銃撃部隊を発見したと斥候から伝令がありました」

 

「くそっ、予定より早すぎる」

 

「フフフフ‥‥望むところよ‥‥迎え討て!!打ち砕け!!奴らに知らしめるのだ!!鍛え抜かれた剣の技こそ、最強無二の殺人兵器だとな!!遂に我が王国の幕開けだ!!」

 

雷十太は真古流全同志に戦闘準備を命じた。

真古流と政府との戦いはすぐそこまで迫っていた。

 

塚山の屋敷が戦場になるかもしれない中、剣心達は川へ釣りに出掛けていた。

ハナの家に来てから由太郎は、初めてのことばかりを経験した。

剣術の稽古に薪割り、雑巾がけ、大勢の人と一緒に食事、そしてこの魚釣りもそうであった。

釣った魚を焼いて外で食べる。

普通の人にとっての当たり前が由太郎にとっては初めての事で屋敷を出てから見聞する何もかもが新鮮に見えた。

食事が終わった後、まだ時間があったので、この時間を無駄にするわけにはいかなかったので、折角なので、竹刀を振ろうとしたら、肝心の竹刀を忘れた。

由太郎はハナの家に竹刀を取りに戻ると庭先には警官の制服を着た男が1人立っていた。

 

「あの‥‥」

 

「失礼、警視庁の浦村です。緋村殿が此処に居ると聞いて東京から来たのだが‥‥」

 

「剣心なら今、川に居ますけど‥‥」

 

「君は?この家の者かね?」

 

「いえ、僕はこの近くの屋敷に住んでいる塚山由太郎と言います」

 

「塚山!?では、君か!?渦中の屋敷の‥‥騒動を避け此処に‥‥」

 

「何のことですか!?何かあったんですか!?僕の屋敷に!?教えて下さい!!」

 

由太郎の剣幕に思わず、浦村署長はある程度の概要を教え、事が終わるまで此処に居る様に言うと、剣心が居る川へと向かった。

 

「あれ?アンタは‥‥」

 

「警察署長さん」

 

「なんで伊豆に?」

 

「実は緋村殿にお伝えしなければならない事がございまして」

 

「なんでござるか?」

 

「少々内密な内容なのですが‥‥」

 

「分かった」

 

剣心達はハナの家に戻り、剣心と浦村署長は居間の障子戸を閉め、2人っきりで話をした。

 

「警察の機動隊が真古流を攻撃!?」

 

「新聞にも漏らせぬ機密です。政府が真古流の動向を探っていたのはご存知かと思います。此処で息の根を止めろと言う判断が下りました」

 

「山県殿も同じ御意見でござるか?」

 

「ほぼ‥‥」

 

 

士族を疎んじている山県にとっては武士の集団である真古流は西郷軍に次いで悩みの種であった。

総帥である雷十太を始め、日本中に散っていた彼らが伊豆に集結している今こそ、一気に殲滅するチャンスであった。

 

「しかし、緋村殿が真古流と接触したと言う情報を聞き、『ぜひ、意見を聞いてこい』と私は仰せつかってきた次第です」

 

「今、力で奴等を刺激すれば無駄な血が流れるのは必至‥‥」

 

剣心は何とか真古流と警察の機動隊が戦端を開く前に事態の収拾をつけねばと思った。

そんな時、

 

「剣心大変だ!!」

 

「由太郎君が居ないの!!何処にも!!」

 

弥彦と薫がハナの家にいる様に言った筈の由太郎の姿が消えた事を伝える。

その事実に剣心は慌てて浦村署長に尋ねる。

 

「由太郎殿に何か話したでござるな」

 

「すべて話したわけでは‥‥」

 

「どうしたんだ?剣心」

 

「まさか‥‥」

 

剣心と左之助の脳裏に最悪の事態が過ぎる。

 

「間違いない屋敷に帰ったでござる」

 

剣心達は大急ぎで由太郎の後を追った。

 

その頃、由太郎の屋敷の近くの森では静岡県警の機動隊がいつでも真古流を攻撃できるように待機していた。

その機動隊の指揮官に信女は接触し、山県からの指示を伝えた。

 

「ほぉ、東京からの‥‥」

 

「はい。全権は委ねられていませんが、その全権のある浦村署長からの指示で『真古流への攻撃は緋村剣心の意見を聞くまで待ってくれ』との事です」

 

「しかし、今、奴らを取り逃がすわけには‥‥」

 

「ですが、コレは山県陸軍卿からの指示でもあります」

 

「分かった‥‥だが、此方も真古流を殲滅せよと命令を受けている。午後4時まで浦村署長から連絡が無ければ、此方は総攻撃をかける。よろしいな?」

 

「‥わかりました」

 

指示と命令では、やはり命令の方が、強制力があるため、機動隊の指揮官はタイムリミットを条件に総攻撃を少し延期した。

しかし、タイムリミットの午後4時を回っても浦村署長も剣心も現れなかった。

 

「時間だ‥‥」

 

「‥‥」

 

信女は無表情のまま成り行きを見守る事にした。

ただ、浦村署長からはもし、真古流と戦闘になった時は参戦せよと指示を受けていたので、信女も参戦する気満々であった。

 

「前衛部隊、前へ!!」

 

ライフルを持った機動隊員達が塚山家の門を蹴破り、屋敷の庭へと進撃していく。

すると、

 

『うわぁぁぁ!!』

 

屋敷の窓という窓から剣を持った剣客達が機動隊員めがけて斬りかかって来る。

 

「撃て!!」

 

機動隊員は斬りかかって来る剣客達にライフルを発砲する。

少なからず被害を出しながらも真古流の剣客達は機動隊の懐へと飛び込み、斬りかかる。

西南戦争同様、近距離での戦闘にライフルは不向きであった。

 

「うっ‥‥」

 

前衛が突き崩され、後退りをする機動隊。

そこへ、

 

「ハハハハハ!!思い知ったか!!真古流の力を!!剣の力を!!」

 

真古流総帥、雷十太が前に出てきた。

 

「怯むな!!射撃用意!!」

 

機動隊が再び射撃体勢をとる。

 

「銃などなんの役にも立たぬわ!!この飯綱の前ではな!!」

 

ライフルに狙われているにも関わらず雷十太はひるむことなく、剣を振った。

すると、真空刃が機動隊を襲う。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「一時後退!!」

 

「怪我人を運び出せ!!」

 

「支援部隊を投入させろ!!」

 

雷十太の一撃で機動隊の前衛は門の外まで後退した。

しかし、雷十太は秘剣・飯綱を一発打った後、真古流の四天王の双刀の男と僧兵の様な男と共に何処かへと姿をくらました。

だが、機動隊を退けたことで真古流の士気は高く、門外の機動隊に追撃をかけてきた。

そこへ、

 

「飛天御剣流、土龍閃!!」

 

信女が土龍閃を放ち、真古流の剣客達に土石をぶつけて足並みを乱れさせると、一気に彼らに接近し、

 

「双龍閃・雷!!」

 

追撃を仕掛けてきた真古流の剣客達を斬り伏せた。

 

「す、すげぇ‥‥」

 

信女の剣撃を見た機動隊員は唖然とする。

そんな機動隊員を尻目に信女は剣を振り、真古流の剣客達を倒していく。

 

「我等も続くぞ!!突撃!!」

 

「おおおおー!!」

 

雷十太の飯綱が真古流の剣客達の士気を高めたのであれば、信女の飛天御剣流が機動隊の士気を高めた。

 

雷十太と信女、2人の剣が士気を高め合う中、真古流の一部は近代兵器、そして信女の振るう剣に恐れをなして裏から逃げようとする者達がいた。

だがそれを見逃さないのが、

 

「逃げられると思っているの?」

 

この女である。

信女はあらかた斬り倒してから裏から逃げた者達を追いかけた。

序に先程から姿が見えない真古流総帥の雷十太の捜索も行った。

 

「はぁはぁ、バケモノが、ここまでくれば‥‥」

 

「な、なんなんだよ、あの女」

 

「あんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ」

 

正面の戦場から命からがら逃げてきた真古流の剣客達。

一旦止まり呼吸を整えていると、

 

ズドーン!

 

いきなり近くの木が倒れた。

 

「人斬りは 一度定めた標的を 斬るまでは 鞘にはおさまらない そうでしょう 人斬りさん?」

 

「な、何!?」

 

「げぇ、来やがった!!」

 

「貴方達、敵前逃亡?それは士道不覚悟で切腹よ。武士の王国を作りたいのならまずは士道を学びなさい」

 

「ま、待ってくれ‥‥」

 

「お、俺達は‥‥」

 

「問答無用」

 

信女はそう言って逃亡を図ろうとしていた真古流の剣客達を斬って行った。

そして、最後の1人なった時、

 

「た、頼む、命だけは‥俺は雷十太の野郎に無理やり‥‥」

 

ザシュッ

 

「ぐあぁぁー!!」

 

残った剣客が剣を捨て、信女に言い訳と言う名の命乞いを行うが、信女は容赦なくその剣客を切り捨てた。

 

「やっぱり、ただの案山子ね‥‥」

 

「そこのお前!!何をしている!!」

 

信女が振り向くと其処には1人の少年が息を切らせながら立っていた。

 

「誰?」

 

「僕は塚山由太郎だ!」

 

「塚山?ああ、あの屋敷の御坊ちゃんね...私は警視庁の警官よ」

 

と信女は自分の身分証を出して、自らが警視庁の警官である事を由太郎に証明する。

 

「貴方の屋敷を取り戻してあげているの」

 

「僕の.....?」

 

由太郎が信女と話している中、

 

ガサっ

 

森の中で物音がした。

信女と由太郎がその音がした方を見ると、1人の男が倒れていた。

 

「た、助けてくれ‥‥」

 

男は丸腰の状態で倒れており、その恰好から真古流の剣客達でも警察関係者でもない事が窺えた。

ならば、この戦いに巻き込まれた一般人かもしれない。

信女と由太郎はその男に近づいた。

 

「足、撃たれちまった‥‥」

 

流れ弾が当たったのだろう。

男の右足からは出血が見られた。

 

「あっ、お前は!?」

 

由太郎が男の顔を見て、声を上げる。

 

「知り合い?」

 

「僕を誘拐しようとした山賊‥‥」

 

「山賊?」

 

由太郎の話ではこの男は一般人などではなく、以前自分を誘拐しようとした山賊の1人だと話した。

 

「賊?じゃあ、斬る?」

 

一般人でなければ、容赦する必要はない。

信女は剣を抜き構える。

 

「ま、待ってくれ!!あ、あの時は悪かった‥‥で、でもな、俺達は頼まれたんだ雷十太の奴に‥‥アンタを襲えと金を貰って‥‥」

 

「先生に?」

 

怪訝な顔をした由太郎は山賊を睨みつけて山賊は見逃してほしいのかペラペラと由太郎にあの時の誘拐が雷十太による狂言誘拐だと話し始めた。

 

「あれは雷十太の芝居だったんだ、あいつはあんたに恩を売りたかったのさ」

 

「う、嘘だ」

 

「本当だ、俺達も騙されーー」

 

と山賊が言っている時に信女は何かを感じたのか由太郎の後ろ襟を掴んで引っ張り後ろに下げた。

 

「な、何を!」

 

「死にたくなかったら黙っときなさい、」

 

その瞬間、雷十太の飯綱が飛んできて山賊の男を一撃で葬った。

 

「見つけた、真古流の総帥、石動雷十太」

 

「何者だ?貴様」

 

「見て分からない?ただの警官よ。‥‥どうやら役者が揃ったみたい。」

 

と言うと信女は後ろを見た。

 

「何?むっ!?」

 

雷十太も信女の視線を追うと其処には‥‥

 

「あぁ、剣心」

 

由太郎も視線を向けると其処には剣心の姿があった。

 

「の、信女」

 

「あ、あの女は...」

 

「あの時の女中(メイド)

 

左之助と弥彦は観柳邸で1度信女を見た事があるから誰かを知っていた...だが

 

「えっ?誰?」

 

この前の観柳の時には居なかった薫はまだ信女とは初対面で首を傾げていた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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