エリート警察が行くもう一つの幕末 作:ただの名のないジャンプファン
~side???~
方治さんから許可をもらい、僕は横浜の町を練り歩いていた。
「う~ん色々あるなぁ~」
そして、今は食べ物関係のお店を見ている。
折角横浜に来たのだから、志々雄さんや由美さんに土産でも買って帰ろうかと思っていたからだ。
アンパンやドーナツと言われている菓子パンなるものならば、少し時間が経っても大丈夫だろう。
ただ、商品を見ていると、ある棚の商品だけがごっそりと無くなっていた。
「あれ?この棚の品だけなくなっている‥‥」
僕がジッと商品が無くなった棚を見ていると、
「あっ、お客さん。すいません。そこの商品は先ほどある客が全部買っていってしまって...」
と、店主がすまなそうに謝る。
「そうなんですか‥‥」
棚一つの商品を全部買い占めるなんて一体どんな人なんだろう?
沢山買ったとなると外国の人かな?
それとも嫌味ったらしいお金の持ちの人かな?
結局気に入った品が見つからなかったので、僕はその店を出た。
すると今度は骨董屋の近くが何やら賑わっていた。
何か珍しいモノでもあるのだろうか?
僕は気になり骨董屋に近づき店の周りに居る野次馬の1人に何があったかを聞く。
「すみません。何かあったんですか?」
「ん?さっき女の人が1人で異国の連中をのしちまったのさ」
「えっ?女の人が‥ですか?」
「ああ、流暢な英語を喋っている女の人だったよ」
「英語を話していたって事はその女の人は外国の人なんですか?」
「いや、日本人だったよ。黒みがかった藍色の髪をした綺麗な女の人だった」
「英語が堪能な日本人の女の人‥ですか‥‥」
「ああ、イギリス人共があの骨董屋の主に難癖つけて店の商品を奪っていこうとしたのさ、其処を颯爽と現れて、英語で何を言ったかは、分からなかったけど、臆せずイギリス人共に立ち向かっていったんだよ。見ていて気持ちが良かったよ。外国人共の狼藉はここ最近でも目に余る行いだったからね」
「へぇ~」
僕は正直驚いた。
ただでさえごつい異国の人相手の面倒事はだいたいの者が関わろうともしないのに...
「ふ~ん、何か面白い話ですね。その人は何処に?」
「ツレの女の人と一緒にあっちに行ったよ」
野次馬の人は女の人が去って行った方を指さした。
「どうもありがとう」
と僕は笑顔でその野次馬の人に返した。
僕は土産を探す序にその女の人を一目見ておきたかった。
~side信女~
「あ、信女さん、ビールですってどんな飲み物何でしょう?」
「西洋のお酒よ。あっ、時尾。ごめん、これを食べたら行くから先に行っていて」
と手に持っていたドーナツの紙袋を見せる。
「そうですか、わかりました。」
時尾は一足先にビヤホールへと向かい、時尾を信女の2人は一旦別れた。
「時尾は意外と呑兵衛だから、つき合わされたら、次の日が大変なのよね~それよりも待ちに待ったドーナツ‥‥早速、いただきましょうか?」
時尾と別れた後にドーナツを食べようと思ったら、何やら近くが男達の怒声が聞こえていた。
信女の目の前には大男2人に囲まれた1人の青年の姿が目に入った。
「おい、てめぇ、何処に目ぇつけてやがる!?人様にぶつかっておいて謝りもしぇねぇで!!」
「やだなぁ~どこって此処じゃないですか。そんなの見ればわかるでしょう?それとも目が見えないんですか?」
と青年は自分の指で目を指した。
ガラの悪そうな大男2人に絡まれているにもかかわらず、その青年は笑みを浮かべていた。
「てめぇ、ふざけてんのか!!ああ?」
(ああ、めんどくさい人達だな‥‥殺っちゃてもいいかな?あっ、でもあまり事を荒立てるなって志々雄さんや方治さんに言われているし‥‥)
「さっきからニタニタしやがって!!俺達を舐めているのか!?ああ?」
「おい、有り金全部出しな。それで許してやらァ」
当たり屋の男達はそんな事を言って青年にいちゃもんをつけている。
しまいには脅しのつもりか短刀まで取り出した。
しかし、短刀を出されても青年は笑みを崩さない。
それを見た信女は、
「何をしているの?こんな往来のど真ん中で‥‥邪魔よ」
「あん?なんだ?テメェは?関係ない奴はすっこんでいろ!!」
「まぁ待て、見ればなかなかの上玉じゃねぇか」
信女を見るや目の色を変えたがそのすぐにまた目の色を変えた。
男達の目に入ったのは信女が腰に差している刀だった。
「なっ!?」
「テメェ廃刀令違反じゃねぇか!?」
「私はちゃんと許可を得て帯刀している。これ以上騒ぎを起こすようなら...」
とドーナツを口に咥え、そして袋を置き、刀に手を置いて、
「私が相手になろうか?」
殺気を込めて言う。
信女の殺気にあたった当たり屋はたちまち、
「ひ、ひ~」
「この女やべぇぞ」
「に、逃げろ~」
猛ダッシュで逃げて行った。
「ありがとうございます。女の方なのにお強いんですね」
青年は相変わらず、笑みを崩さず、信女にお礼の事をかけてきた。
「別に...」
素っ気ない態度とっていた信女であったが、絡まれていた青年を見ると、信女は驚いた表情となる。
「っ!?‥‥総司?」
「えっ?どうかしたんですか?」
「.....あっ、いや、知人に似ていたから‥‥あなた名は?」
「宗次郎、瀬田宗次郎です。そういう貴女は?」
「佐々木総司よ」
「総司‥‥女の方なのに変わった名前ですね」
「よく、言われるわ‥‥でも、私にとっては大切な名前なの」
「そうですか。あっ、さっき、総司さんは帯刀許可を持っているって言っていましたけど、もしかして、警官なんですか?」
「え?そう...だけど何か?」
「いえ、特には...ただ、何か貴女に興味が出たなぁっと思って‥‥」
「そ、そう‥‥」
宗次郎は瞑っていた目を開いて信女に言う。
(警視庁に放っていた諜報員から報告があったけど、この人が警察初の女の警官か‥‥)
(この宗次郎って言う子、血の匂いがする‥‥それになんだか、雰囲気が昔の‥‥奈落に飼われていた頃の私に似ている‥‥)
互いに互いを探り合う中、
クゥ~
宗次郎お腹が鳴った。
(あっ、そう言えば朝から何も食べていなかった)
此処で宗次郎は朝から何も食べていなかった事を思い出した。
「‥‥えっと‥‥これ、食べる?」
信女は紙袋からドーナツを一つ取り出す。
「ん?なんですか?それ?乾パン?」
信女から受け取ったドーナツを見て首を傾げる宗次郎。
しかも形状が乾パンに似ていたのでドーナツを乾パンと見間違える。
「ドーナツよ」
信女は宗次郎にあげたモノがドーナツである事を言うと、そのまま口に咥えていたドーナツを食べ始める。
「‥‥」
信女がドーナツを食べているのを見て、宗次郎もドーナツを食べ始める。
ドーナツを食べながら宗次郎はチラッと信女の様子を窺うと、
「~♪」
信女は微笑みながら、ドーナツを食べており、彼女の周りには桃色の光球が浮かんでいる‥‥様に見えた。
「やっぱり、ドーナツは最後の一口がおいしいわ」
そう言って手についていたドーナツのカスを舐めとっている。
「‥‥」
その姿に艶っぽいものを感じた宗次郎。
自分が尊敬し敬愛する志々雄の傍には駒形由美と言う元花魁の遊女がいるのであるが、目の前の女の警官はそれとは別の艶っぽさを持っていた。
元々、女性には大して興味を抱いていない宗次郎であったが、目の前の女の警官は別だった。
「ん?どうしたの?」
ドーナツ一つを食べ終えた信女は自分の事をチラチラ見ていた宗次郎と目が合った。
「い、いえ‥なんでもありません」
宗次郎は崩れかけた『楽』と言う名の仮面を再び着けて、信女にそう言いかえすと、ドーナツを食べた。
「そう?」
信女は宗次郎の事を気にかけつつも紙袋から二つ目のドーナツを取り出してまた食べ始めた。
「あっ、時尾の事をすっかり忘れていた!!」
信女は二つ目のドーナツを食べ終えた時、ビヤホールに先に行った時尾の事を思い出した。
「それじゃあね、またね。またどこかで会いましょう」
信女はドーナツが入った紙袋を手にして、宗次郎に別れの挨拶をした。
「は、はい‥‥またどこかで‥‥」
信女からの別れの挨拶を貰い、宗次郎も挨拶をかわし、2人は分かれた。
またどこかで‥‥か‥‥志々雄さんがこの国を取れれば、またあの人とあえるだろうか?
いや、あの人は警官‥‥
志々雄さんの国盗りが始まれば自分とあの人とは敵対関係になる。
次に会うのはもしかしたら戦場かもしれない。
そんな思いを抱きつつ、宗次郎は方治と合流する為、合流地点へと向かった。
「ん?先に来ていたのか、宗次郎」
「あっ、方治さん」
方治は宗次郎の他に来ていた護衛の兵に自分が買った大量の書籍を持たせており、先に宗次郎が待っていた事にちょっと意外性を感じている様子だった。
「ん?どうした?何か、機嫌良さそうだな?」
「えっ?そうですか?」
方治はいつもニコニコと笑みを浮かべている宗次郎であるが、この時ばかりは普段通りの笑みとは何だか違うように見えた。
「ああ」
「そうですね‥‥面白い人と会った‥‥そんな所ですね」
「面白い人?」
「はい‥いずれその人と剣を交えるかもしれません」
「ん?」
宗次郎はやはり笑みを絶やさず、方治にそう言った。
しかし、方治の方は宗次郎の言葉の意味が分からず首を傾げていた。
一方、時尾が待つビヤホールへと来た信女は、店内を見渡し、時尾を探す。
そして、
「あっ、信女さ~ん!!」
信女の姿を見つけた時尾が声をあげて信女を呼ぶ。
時尾の座っているテーブルには沢山のビヤグラスの他にワインのボトルやシャンパンの瓶があった。
「‥‥」
信女はそのテーブルの惨状に呆れる。
(時尾がお酒に強いのは知っていたけど、まさか、此処までとは‥‥)
信女も時尾が居るテーブルに座る。
「信女さんも一緒に呑みましょうよぉ~」
「ほどほどにしなさい、この後、また陸蒸気に乗って帰るんだから」
「は~い。あっ、お姉さん!!此方の方にもビールを下さ~い!!」
「は、はい」
時尾は近くのウェイトレスを呼び止めて信女の分のお酒を注文する。
ただ、ウェイトレスも時尾の吞兵衛状態にはちょっと引いていた。
「それじゃあ、かんぱ~い!!」
「乾杯」
時尾と信女はビールが注がれたグラスを軽く打ち合い、ビールを飲んだ。
こうして時尾と信女の横浜への遠出は様々な出会いや出来事がありながらも無事に終わった。
一方、方治と共にアジトへと戻った宗次郎。
「ご苦労、方治」
ソファにふんぞり返る様に座る包帯だらけの男が方治に労いの言葉をかける。
この包帯男こそ、剣心から影の人きり役を引き継いだ、もう1人の長州藩維新志士、志々雄真実その人だった。
彼は戊辰戦争当時、剣の腕と頭の切れは剣心と互角と評された実力者だったが、底知れない野心と支配欲を持っており、その欲とこれまで行って来た影の人斬りの功績を味方の維新志士達に危険視され、戊辰戦争の混乱に乗じて味方から奇襲された。
そして、倒れた後、全身に油をかけられ火に焼かれながらも密かに生き延びていたのだった。
以来、彼は明治政府への復讐を誓い地下で一斉蜂起の機会をずっと窺っていたのだ。
今回の方治の横浜への出張はその蜂起の下準備の1つでもある。
「首尾はどうだ?」
「ハッ、志々雄様の指示通りのモノは無事に発注できました」
「そうか、ご苦労だったな」
「恐縮であります」
「宗次郎も方治の護衛、ご苦労だったな」
「いえ、なかなか楽しめましたよ。あっ、コレお土産です」
宗次郎は横浜土産を志々雄に手渡した。
「‥‥おい、宗次郎」
志々雄は宗次郎からの土産を見て怪訝な顔つきをした。
「はい?」
「なんだ?コレは?」
「ドーナツです」
宗次郎が志々雄に土産として渡したのは沢山のドーナツだった。
「ドーナッツは最後の一口がとても美味しいんですよ」
「そ、そうか‥‥」
宗次郎は相変わらず笑みを絶やさず、志々雄にドーナツについて語るが、志々雄は大量のドーナツにちょっと引いた。
ではまた次回。