エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第33幕 赤報隊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数日の間、大きな商家の蔵が強盗に襲われて、家の者が皆殺しにされ、蔵の金品や美術品が盗まれると言う強盗事件が多発した。

犯人達の特徴は深夜、商家の敷地内に侵入し、炸裂弾を使用し、蔵の扉や壁を壊し、中の貴金属や高価な美術品を奪い、刀で商家の家の者を殺すと言うモノだ。

犠牲者の近くには刀に着いた血を拭ったと思われる錦絵が捨てられていた。

錦絵に描かれているモデルは、赤報隊一番隊隊長、相良総三で、警察では赤報隊の残党の仕業であると判断し、犯人の行方を追っていた。

そんなある日、信女が勤務する警察署では‥‥

 

「また、アンタか?」

 

警察署の受付係の警官が呆れた声を出す。

 

「どうかした?」

 

夜勤明けでこれから帰ろうとしていた信女が受付に現れると其処には‥‥

 

「緋村」

 

「信女‥‥」

 

「‥‥緋村、貴方何か犯罪でもしたの?」

 

剣心は確かに幕末、多くの人を斬ったが、それは維新の為と合法的な殺人とされ、明治の世では、剣心が幕末に行った人斬りは裁かれない。

そんな剣心が何故、警察署に来ているのだろうか?

 

「ああ、思い出した。緋村、貴方たしか廃刀令違反だったものね。だから自首をしに警察署に来たの?」

 

信女はポンと手を打つと剣心が現在進行中でしている違反について指摘する。

今日の剣心も警察署に来ると言う事で逆刃刀は置いててきたが、信女は観柳の時も伊豆の雷十太の時も剣心が逆刃刀を所持しているのを見ている。

例え、逆刃であっても刀であることにはかわらないので、許可がなければ廃刀令違反となる。

そして、剣心は政府から帯刀許可を貰っていない‥‥。

故に剣心には廃刀令違反が当てはまるのだ。

 

「ち、違うでござるよ!!」

 

「じゃあ、何?」

 

「それは‥‥その‥‥」

 

剣心は信女から視線を逸らし、おろおろする。

すると、

 

「この人、この前も来て、『佐々木警部試補に会わせてくれ』って言って来たんですよ」

 

剣心に代わって受付係の警官が信女に剣心が警察署に来た理由を信女に話す。

 

「私に?」

 

「‥‥//////」

 

剣心は恥ずかしかったのか、顔を赤くする。

 

「はぁ~わかった。今日はもう仕事が終わったから、付き合ってあげる。色々話したいこともあるでしょう?」

 

「ほ、本当でござるか?」

 

信女の回答に剣心はまるで子供の様に喜んだ。

 

「ええ、じゃあ行きましょう」

 

信女と剣心は、警察署を後にした。

その頃、赤べこで友達と一緒に牛鍋を食べていた左之助は、そこの店主の娘の妙からお使いを頼まれた。

 

「錦絵?」

 

「ええ。ウチ、どうしても仕事で抜けられへんさかいに‥‥」

 

「で、代わりに買に行ってほしいってか?」

 

左之助は妙の頼みを聞いて、錦絵を買いに行く事になった。

その際、ついでに赤べこで働く店員、三条燕の分も含めて、月岡津南と言う名前の絵師が書いた錦絵を2枚買いに行った。

左之助が妙のお使いで錦絵を買いに出た頃、

剣心と信女は東京の町を歩きながら、今の信女の現状を話していた。

 

「では、信女は今、名を変えているでござるか‥‥」

 

「元新撰組‥それも箱館戦争まで戦ったから、新政府にとって私はお尋ね者になってもおかしくはなかったから‥‥」

 

「成程、それで、今井の姓ではなく、佐々木の姓を‥‥」

 

「ええ」

 

「名も変えたでござるか?」

 

「変えたわ。今は佐々木総司と名乗っている。でも、今までの名前を捨てた訳じゃないから、緋村も好きな方で呼んでいいわ」

 

「では、これまで通り、信女と呼ばせてもらうでござるよ」

 

(総司‥‥恐らく新撰組一番隊組長、沖田総司からとったのだろうが、その名をあまり口にはしたくない‥‥)

 

剣心は死んだ沖田への嫉妬心からか信女をこれまで通り、『信女』と呼ぶことにした。

信女と剣心、2人が連れ添って東京の町を歩いていると、絵草紙屋の前に剣心が見慣れた男の姿があった。

 

「うぃっす」

 

「いらっしゃい」

 

左之助が絵草紙屋の店主に一声かけた時、

 

「おう、左之」

 

「ん?」

 

左之助は別の方向から声をかけられ、その方に視線を向けると、其処には剣心と信女の2人が居た。

 

「おっ、剣心と‥‥えっと‥確か、信女?だったか?」

 

「ええ。それで貴方の名前は?二、三度会っているけど、私は貴方の名前をまだ聞いていない」

 

「あん?そうだったか?まあいいや、俺は相良左之助。剣心のダチの1人だ」

 

左之助は信女に自己紹介をするが、

 

(やべぇ、何でよりにもよってこんな時に会っちまうんだよ、俺‥‥こんな所、嬢ちゃんにでも見られたら、マジ、修羅場確定だぞ。剣心も嬢ちゃんの性格を知っているならそれぐらい分かっているだろうが‥‥ともかく、嬢ちゃんや弥彦に見つかる前にさっさと妙の使いを済ませて帰ろう‥‥)

 

もしこの場に薫が現れでもしたら、修羅場になり、剣心は死ぬのではないかと思う左之助。

また、弥彦がきてもいずれは彼の口から薫に伝わるのは時間の問題。

故に鬼(薫)が来ぬ間に自分はさっさと逃げようと決めた左之助だった。

 

「お?錦絵でござるか?‥左之にそんな趣味があったなんて意外でござるな‥‥美人画でも買いに来たでござるか?」

 

「ぶー」

 

「緋村、察しなさい。左之助だって年頃の男性なのよ。きっと春画よ、春画」

 

信女がそう言うと、

 

「信女の春画なんて拙者は絶対に認めぬでござるよ!!」

 

剣心は絵草紙屋の店主に掴みかかっていた。

 

「な、何の事だ?兄さん」

 

「緋村、どうしたの?」

 

(コイツ、剣心の気持ちに気づいていないのか!?)

 

「それで、何を買いに来たの?まさか、本当に春画を?」

 

信女は左之助に何の錦絵を買いに来たのかを尋ねる。

 

「ばっ、ちげぇよ!!知り合いに頼まれたんだよ。親父、月岡津南の伊庭八、2枚あるか?」

 

「えっ?あ、ああ‥津南の伊庭八ですかい?‥運がいいね、其処にあるのが最後の2枚だ。津南の絵は人気ですぐに売り切れちまうんだよ」

 

「へぇー」

 

「2枚で10銭だね」

 

「あっ、金持ってねぇや‥‥剣心、貸してくれ」

 

「お、おろ!?」

 

予想外の出費をしてしまった剣心であった。

 

「ほぉ~錦絵と言っても色々な絵があるんだな」

 

左之助は妙からのお使いを済ませた後、商品の錦絵を見て行くと、ある錦絵を見て固まる。

そして、その錦絵を手に取る。

 

「っ!?‥こ、これは‥‥相良隊長‥‥」

 

「ん?ああ、その錦絵かい?同じ津南の絵でもその絵だけはさっぱり売れんのさ。でも、あの人は必ず書くんだよね、偽官軍の親玉の絵を‥‥」

 

店主がそう言うと剣心は慌てて店主の口を手で塞ぐ。

 

「‥‥月岡は何処に居る?津南って奴は何処にいる!?教えろ!!」

 

左之助はムキになった様子で店主に相良の絵を描いた月岡津南の居場所を尋ねる。

 

「と、隣町のドブ板長屋だよ。けど、あの人、人間嫌いだから、行っても会えないよ」

 

「会うさ、アイツが俺に会わない筈がねぇ‥‥」

 

左之助は偉い自信でその月岡津南とやらに会いに行った。

そして、左之助は教えられた長屋の月岡家を訪ねた。

左之助の様子が心配になった剣心は彼の後を追い、信女も面白そうなので、剣心と一緒に左之助の後を追った。

 

「緋村、あの人、随分と相良総三の事を気にかけているみたいだったけど、何か関係があるの?同じ苗字だし‥‥」

 

「左之は元赤報隊の生き残りでござるよ」

 

「赤報隊の‥‥」

 

世間では偽官軍と言われている赤報隊であるが、その実情は世間一般に知られている物とは違い、赤報隊は当時の新政府軍に利用されるだけ利用され、偽官軍の汚名を着せられた隊であった。

警察にいる信女もその事を知っていた。

やがて、長屋の中から月岡津南が出てくると、左之助と何やら話し始めた。

その会話の内容から月岡津南も元赤報隊の生き残りの様だった。

 

「帰るでござるか?」

 

「そうね」

 

剣心も信女も彼らにとって赤報隊は特別な思い出がある部隊。

そこに部外者が入りこむのは余りにも無粋だった。

 

左之助の行き先を見届けた剣心と信女は再び幕末の京都の時の様に2人で東京の町を歩き、とある茶店に入ってお茶を飲んだ。

そんな中、信女がウトウトし始めた。

 

「ん?信女、眠いでござるか?」

 

「‥‥ん?うん‥少し‥‥夜勤明けで、昨日はあまり寝ていないから‥‥」

 

信女は目をこすりながら言う。

そして、

 

「緋村‥‥」

 

「おろ?なんでござるか?」

 

「‥その‥‥肩貸して‥‥」

 

信女はそう言って、剣心の返答を聞く前に剣心の肩に自らの頭を乗せ、そのまま寝てしまった。

 

「の、信女‥‥」

 

至近距離で静かに寝息を立てる信女を最初は驚いた顔で見ていた剣心であったが、信女の寝顔を見て、まるで我が子の寝顔を見守る父の様に暫く信女に肩を貸した。

そして、信女が起きたのは夕方であり、この日はその場で別れた。

剣心としては信女を家まで送りたかったが、信女は今ある人の家に居候させてもらっており、現在、其処の家主が仕事で遠出しており、家にはその家主の奥さんと自分の2人なのだが、男である剣心が来ては、近所に浮気を疑われるかもしれないとの事で、丁重に断った。

それ以前に、家主が斎藤であると知ると一悶着起きそうだったから、断ったのだ。

 

そして、その日の夜‥‥

 

とある商家の敷地内にある蔵で炸裂弾が炸裂した。

家の者が爆発音を聞き、起き出して庭に行くと、黒い詰襟を着た男達が次々と蔵の中の金品を運んでいく姿があった。

 

「な、何者だ!?」

 

「と、盗賊だ!?」

 

家の者の存在に気づいた賊の1人が、

 

「新時代を築く我等、赤報隊の軍資金としてお宝は頂戴するぜ」

 

そう言って腰に差してある刀を抜刀する。

 

「せ、赤報隊!?」

 

家の者が逃げ出そうとしたら、赤報隊と名乗るその男は家の者を刀で切り殺した。

 

ザシュ

 

ブシュ

 

「ぐぁっ!!」

 

「がはっ!!」

 

「フフフフ‥‥」

 

そして血で汚れた刀を相良総三が書かれた錦絵で拭った。

この事件は翌朝の新聞に掲載された。

信女は警察署の資料室にて新聞を広げ知った。

 

(これで、7件目か‥‥犯行手口は全て同じ、炸裂弾を使用し、現場には相良総三の錦絵が捨てられていた‥‥)

 

(赤報隊か‥‥)

 

信女の知る赤報隊はあの相良左之助と月岡津南の2人。

まさか、あの2人が‥‥と考えられなくもないが‥‥

信女は新聞を折りたたんで、町へと出て情報収集をしようとしたら、

 

「信女」

 

警察署の近くで剣心と出会った。

 

「緋村‥‥貴方も例の赤報隊の事件が気になるの?」

 

「ああ、左之は兎も角、あの絵師‥月岡津南の事が気になってな‥‥」

 

「私もよ」

 

信女と剣心は昨日訪れたあの絵草紙屋を訪れた。

 

「ん?相良隊長の錦絵?事件の事ですかい?」

 

「ええ、何か知らないかしら?」

 

「事件が起こる前に相良隊長の錦絵が大量に売れた店とかを知らぬでござるか?」

 

「うーん‥‥そう言えば、隣町の絵草紙屋でまとめ買いがあったって、仲間内で騒いでいましたね‥‥あんな絵を一体何に使うやら?」

 

「緋村」

 

「ああ、その絵草紙屋の者に聞けば、何か分かるかもしれないでござるな」

 

「さっき、津南さんも来て同じ事を聞いていきましたよ」

 

「月岡津南が?」

 

信女と剣心は互いに顔を見合わせたが、兎も角、事情を聴く為、その相良隊長の錦絵が売れた絵草紙屋へと向かった。

そして、ある人物に辿り着いた。

それは何と警察官僚の進藤帯刀と言う名の男であった。

進藤家の塀の上から話を聞くと、彼は警察官僚でありながら、不知火党と呼ばれる盗賊団と結託して商家を襲い、金を蓄えて、将来政界への道への軍資金としようとしていた。

そして、その罪を赤報隊に着せていたのだ。

一方、左之助の方も独自の情報網で進藤に辿り着き、剣心と信女より先に進藤の家に押しかけていた。

進藤家の庭で左之助は偽赤報隊こと、不知火党の連中と殴り合っていた。

すると、連中の1人が閃光弾を使い、左之助の視力を一時的に奪う。

 

「加勢する?」

 

信女が刀の柄を握り、剣心に尋ねる。

 

「いや、大丈夫でござるよ」

 

左之助がピンチとなった時、炸裂弾が投げ込まれ、不知火党の連中を吹き飛ばす。

しかし、火薬の量が上手い事調節されていた様で、死んでは折らず、吹き飛ばされて失神している。

左之助のピンチに現れたのは左之助と同じく元赤報隊の生き残り、月岡津南だった。

同じ赤報隊の生き残り同士、左之助と津南は息の合った動きで不知火党の連中と進藤をボコボコにのした。

まだ寝静まる前の時間に炸裂弾が破裂し、近所の住人がその爆音を聞いて警察に通報したのだろう。

遠くから、

 

ピィーピィー

 

と、警察の警笛の音が聞こえる。

左之助と津南は警察が来る前に進藤家から退散した。

 

「此処は、私に任せて、剣心は先に戻っていて」

 

「すまぬ」

 

その後、信女が駆けつけてきた警官に事情を説明し、進藤と不知火党の連中は全員逮捕された。

こうして、偽赤報隊強盗事件は犯人の全員逮捕で幕を下ろした。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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