エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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こっちも久々の更新です。


第40幕 追い剥ぎ

 

 

 

剣心と信女は小田原へと着いていた。

しかし、京都までの旅を急ぐ2人は小田原の宿でのんびり一泊なんてする余裕はなかった。

このまま歩けば箱根の山で野宿となるだろう。

だが、今は時間が惜しい。

箱根の山で野宿して日の出と共に京都へと向かう予定だ。

小田原の宿場町につく少し前、剣心は信女に宿場町に着いたら、自分よりも2,3歩離れて歩くように言った。

信女は一応、理由を尋ねた。

剣心が自分を撒くためにそんな事を言ったのではないかと思って‥‥

すると、剣心は、

 

「信女に恥をかかせないようにするためでござる」

 

と言った。

信女は剣心の言葉に意味が分からず、首を傾げたが、とりあえず、剣心が自分を撒こうと考えている訳ではなさそうなので、剣心の言葉に従って宿場町では剣心の2,3歩後ろを歩いた。

 

「お泊りは当宿 おだやで!おだや 安いですよ、おだや!」

 

呼び込みの女が声を張り上げる中、剣心の姿を目に留め声を掛けてくる。

 

「そこ行く剣客さん!どうです?」

 

流石は宿場町、どの旅館もお客をとろうと必死に呼び込みをかけている。

それは明治の世に腰に刀を帯びている者も例外ではない様だ。

反対に警官の制服を着ている信女には声をかけて来ない。

警官なので、警察署に行くのだろうと思っているのか?

それともぼったくりでもしており、ソレを摘発されるのを恐れているのか?

 

「いや、拙者は先を急ぐから」

 

と、剣心が笑顔ながら困った様に手を振りやんわりと断りを入れる。

 

「先を急ぐってもう夕暮れだよ。今からじゃ箱根の山ん中で夜になっちゃうよ」

 

(流石は宿場町となると刀持ちも珍しくなくなるか‥‥しかし、ヘタに宿泊りをすれば、宿の人間や宿泊客に迷惑をかけかねん。出来るだけ人との接触を避けねば‥‥それに今は時間が惜しい)

 

剣心としては宿の人間に気を使っての事だが、当然それを知らない宿の人間から返ってきたのは、

 

「なんだい文無しかい」

 

と、東京で斎藤や信女に言われた言葉と同じ言葉だった。

舌打ち付きの答えに思わずこけた剣心。

覚悟していたとはいえ、往来で堂々と言われるとやっぱりちょっとショックである。

 

「そこいく剣客さん!!」

 

別の宿の人間が剣心を呼び止めるが、

 

「あぁ~みっちゃん、ダメダメ、それ、文無し」

 

「なぁんだ~」

 

他の宿の人間も文無しには用は無いと剣心に呼び込みをしなくなった。

信女はそれを見て、剣心の先程の言葉を理解しつつ指を差して笑っていた。

 

 

「さてと、野宿は久しぶりでござるな…」

 

「そうね、私は箱館から多摩に戻る時が最後ね‥‥」

 

山中まで来ると、周りの小枝を拾い焚火をし 剣心は木の根元に腰を降ろした。

そして信女は剣心の向かいに座り、焚火をジッと見つめた。

 

「‥‥」

 

「緋村」

 

「おろ?なんでござるか?信女」

 

「‥もしかして、東京に残してきた人の事を思っているの?」

 

「‥‥」

 

「‥女々しいわよ、緋村。そんなに気になるなら、最初からこの依頼を受けなければよかったのよ」

 

「うっ‥‥」

 

「そんなに東京に残して来た人の事が心配なら、1日でも早く志々雄を倒す事に集中しなさい。他の事に気を逸らしていると、緋村‥‥貴方、死ぬわよ‥‥」

 

信女の赤い無機質な瞳が剣心を貫く。

 

「‥そうでござるな」

 

ガサっ

 

その時、近くから音がして咄嗟に剣心と信女は刀を構える。

聞こえてくるのは女の声と複数の男の声が聞こえてきた。

 

「志々雄一派ではないな…」

 

「そうみたいね」

 

「山賊か追い剥ぎの類か、人との接触はなるべく避けるべきだが‥‥」

 

「そうも言ってられないみたいね」

 

剣心は声がした方へと向かって行く。

 

「ちょっ、緋村!!火の後始末!!‥‥ったく」

 

剣心は焚火をそのままにして行ってしまった。

信女は砂をかき集め、焚火にかけて、火を完全に沈下してから剣心の後を追った。

そして剣心に追いつくと、眼前では15、6歳の短パンの様な履き物に奇抜な衣装を着た女子が数人の男相手に戦っていたが、全員を倒すと男達が持っていたお金を奪っていた。

 

(何あの子、コスプレイヤー?)

 

あまりの奇抜すぎる衣装に信女はちょっと引く。

 

「こりゃ驚いた、追い剥ぎには違いないが 思っていたのとは逆で女の追い剥ぎでござるか!」

 

剣心が声を上げると、剣心の声にビクッと驚いた追剥少女が振り返る。

 

「誰よ?あんた達?女が追い剥ぎしちゃいけないっていうの?」

 

「いやいやいや、追い剥ぎ自体ダメだから。って言うか、緋村、貴方、ちゃんと火の始末ぐらいはしなさいよ。山火事になったらどうするつもりなの?」

 

「あっ、すまぬ」

 

「ちょっと!!あたしを無視するな!!」

 

「「ん?」」

 

「あら、まだ居たの?」

 

「ムカッ、あんた達 このあたしを無視するなんていい度胸じゃない。面白い、あんた達からも‥‥と、思ったけどなんか 緋い髪の方は貧乏っぽいわ…ひょっとして文無し?」

 

追剝少女からも哀れな視線を向けられる剣心。

 

「ったく、どいつもこいつも」

 

大勢の人から文無し扱いされて少しいじける剣心。

 

「それにしても貴女、警官の前で堂々と追剥予告をするなんていい度胸」

 

「はぁ?警官?女のアンタが?」

 

追剝少女は信女を見て、信じられないと言う顔をする。

 

「なに口から出まかせ言っているのよ、女の警官だなんて聞いたこともない」

 

どうやら、信女は警官だと知れ渡っているのは剣心達が住んでいるあの町ぐらいの様だ。

一応、信女は今、警官の制服を着用しているのだが、この追剝少女は信女の衣装を警官のモノマネだと思っている様子。

 

「それじゃあ腰に帯びている その日本刀。お金の代わりに剥いであげる!」

 

「はぁ?」

 

「おろろ?刀?」

 

「ええ この廃刀令下の御時勢にわざわざ腰に帯びているからには結構 値の張る刀なんで、しょッ!?」

 

「っと」

 

言葉尻と共に襲い掛かって来た追剝少女を避けるが、振り向き様に当て身を喰らう信女。

男の剣心よりも女の信女の方が倒しやすいと思ったのだろう。

 

「どうだ!」

 

「いや、『どうだ』って言われても‥‥」

 

得意気な追剝少女を見て信女は溜息を吐き、哀れんだ目で追剝少女を見る。

 

「貴女の様な軽量での当て身は威力が低いから当たっても痛くも痒くもないのだけれど?」

 

と言いながら、追剝少女から取り上げたお金の袋を持ち上げる。

 

「あー!!返せ!それはあたしのだ!!くらえ!"貫殺飛苦無"!!」

 

自分が奪ったお金を奪われた事に気付きそれに怒った追剝少女が どこから取り出したのか苦無を構え信女に向かって投げつけた。

信女は刀の柄に手をやって苦無を叩き落とした後、この追剝少女も斬ってやろうかと思った中、剣心が信女の前に立ち、地面に落ちていた外套で自身と信女を守る様に咄嗟に翻す。

 

「あーーーーッ!!あたしの外套ォ!!」

 

「あっ、すまぬ、つい‥‥」

 

剣心の手には苦無が刺さり、ボロボロになった外套があった。

 

「返せーあたしの外套とお金!!」

 

剣心の胸倉を掴んで更に怒る追剝少女に信女は完全に呆れ返って、もうこの追剝少女を斬る事さえ、馬鹿馬鹿しく思った。

 

「はぁ~だいたい、貴女がそんなモノ投げるから悪いんでしょう?外套がボロボロになったのは自業自得! それにお金は違うでしょう?」

 

「あたしが手に入れたんだからあたしのもんだ!!」

 

「じゃあ、今は私が手に入れたから、私のモノ」

 

「ぐぬぬぬ‥‥ああ言えばこう言いやがって」

 

信女との舌戦に不利なのか追剝少女が信女に敵意剥き出しで睨みつける。

 

(まるで躾のなっていない犬ね)

 

追剝少女は唸りながら信女を見るが、信女はあくまで冷静な表情。

 

(先程はギリギリ間にあったでござるな‥あのままだと信女はこの女子を斬っているところだったでござる‥‥)

 

一方、剣心は自分が間に合い、信女は人を斬らずに済んだことにホッとしていた。

 

「とりあえず、信女‥‥」

 

「分かっている。このお金を元の持ち主の所へ返すんでしょう?」

 

「ああ」

 

お金の入った袋を調べると、其処には店の名前が入っていた。

 

「うわぁ、折角ここまで来たのに戻るわけ?めんどい」

 

「そう言う訳にもいくまい」

 

「はぁ~しょうがないわね」

 

信女は面倒そうに踵を返して歩きはじめる。

 

「これからはもう 追い剥ぎなど 止すでござるよ」

 

「あ!ちょっと待て だから それはあたしのだって!」

 

結局振り出しに戻った遣り取りに剣心も呆れて踵を返した。

これから自分達はお金を返す役割があるので、これ以上この厄介な追剝少女と付き合いきれなかった。

 

「待てコラァ!!」

 

着いてくる追剝少女の後ろから先程倒された男達の内、1人が去って行く追剝少女を見ていた事は信女しか気付かなかった。

 

 

追剝少女から奪ったお金を返す為、また小田原に戻ってきた剣心と信女。

2人はお金の袋に書かれていた店に到着し、聞き耳をたてる。

「小田原宿 両替屋 田村屋、ここでござるな。どうやら盗みがあった事自体 まだ気づいてない様でござるな、返って好都合か」

 

聞き耳を立てると、店の中は静まり返っており、先程泥棒が入った事を知らない様子。

 

「はぁ~結局小田原まで逆戻り‥‥今日は貫徹ね」

 

信女は、今日は貫徹になる事にやれやれと言った様子。

 

「それじゃあ、さっさと返すでござる」

 

「はいはい」

 

剣心と信女はお金が盗まれた店の外壁の瓦へと飛び乗った。

 

「へえ 結構やるじゃない、あ わかった、実はあんた達も盗賊なんでしょ?」

 

どうしたら そこまで突飛な発想が出てくるのか?

それに信女は一応警官の制服を着ている。

追剝少女は信じていない様子だが、信女はれっきとした警官である。

追剝少女の破天荒な思考に信女は額に手をやり、剣心も呆れきっている。

 

「緋村‥‥」

 

「なんでござるか?」

 

「あの子、なんで付いて着ているの?」

 

「信女が持っているお金がどうしても諦めきれない様でござる」

 

「‥‥めんどいし、斬っていい?どうせ、追剝していたんだし」

 

「止めるでござる」

 

外壁の上で剣心と信女がこのようなやりとりをしていると、

 

「でもそのくらい あたしだって、ヤッ!!どう?」

 

追剝少女も外壁の上に飛び乗って来た。

そして、追剝少女が得意気に剣心と信女を見ると剣心は驚いたのか僅かに目を見開いた。

 

(先程の拳法めいた動きといい飛苦無といい…この娘ちょっと只者ではござらんな。いや恰好からして既に只者ではござらんか…)

 

追剝少女を観察していた剣心が 『年頃の娘が太もも出すなでござるよ…』とボソッと呟いたのが聞こえたので、信女は、剣心に拳骨を喰らわせ、

 

「緋村。貴方は、年頃の娘のどこを見ているの?」

 

と冷たい目で剣心に問う。

 

「い、いや‥拙者は‥‥それよりも早くお金を返すでござるよ」

 

剣心は必死に信女に小田原へ戻って来た要件を言う。

確かに剣心の言う事も最もであるので、信女はとりあえず、今はその怒りを引っ込めて、お金を返す事にした。

 

 

「これで良し」

 

泥棒が入ったと思われる蔵にお金の袋を置き、フッと息を吐く。

 

(まったく、とんだとばっちりだわ。緋村ったら早速フラグを回収したわね)

 

東京を出るときに今回の志々雄一派との一件に剣心は誰も巻き込まないと言うが、志々雄とは関係ない厄介事に巻き込まれた。

 

「これで良し!」

 

「ん?」

 

剣心と信女が振り返ると泥棒スタイルでお金を担ぐ追剝少女に剣心は転け、信女は呆れる。

しかも手に持っているのは最初に追剝をした量よりも多い。

 

「何考えているでござる、お主はもう!ほら 用が済んだらさっさと出る!」

 

「やっぱり斬る?」

 

信女は刀の柄に手をやる。

 

「信女も止すでござる」

 

「だってお金がないと京都に帰れないじゃない!」

 

「「京都?」」

 

追剝少女のその言葉に剣心と信女は思わず目を見合わせた。

 

お金が盗まれた両替屋を出て剣心、信女、そして追剝少女は町外れの橋を渡っていた。

その間、剣心は追剝少女に何故、追剝をしたのか、事情を尋ねる。

 

「つまりお主は京都に家があって‥‥」

 

「そ!それで 東京までの旅の帰りにお金がなくなっちゃったから追い剥ぎしていた訳、なのにあんた達が邪魔したから!」

 

「計画性のない子ね」

 

「なに~」

 

信女の一言を聞き、信女に噛みつこうとする追剝少女。

 

「まぁまぁ」

 

そこを剣心が仲裁に入る。

 

「それにしても娘1人で東京まで なんでまた」

 

剣心は追剝少女に何故1人で東京へ行ったのかを尋ねる。

 

「ちょっとね 、人を探しているんだ。私ね、生まれてずっと天涯孤独の身だったの。だけどね、育ててくれた人が居たんだ。もうずっと昔‥幕末の頃‥‥」

 

「その人を探しているでござるか?」

 

「そう、その人とその仲間。みんなで一緒に全国を旅していたんだけど、ある時、私1人だけ京都の老爺に預けられたの。でも やっぱりどうしても会いたくて、その人達の噂を聞きつけるたび 家を飛び出して探しているんだ。ところが毎回カラ振り!今度も会えなかった」

 

「まあ 事情は大体 飲み込めたでござるが、ええっと‥‥」

 

剣士は此処で追剝少女の名前を知らない事に気づく。

 

「ああ 名前?操だよ。巻町 操」

 

「いくら お金に困ったからといっても 人から盗るのはいかんでござるよ」

 

「じゃあ どうやって京都まで帰れって言うのよ!」

 

剣心の首を締めて八つ当たりする追剝少女こと、操。

そんな操に信女は手刀をいれて剣心から離す。

 

「持っているお金で遣り繰り出来ないなら無暗に旅になんかに出ない事ね。それで大勢の人に迷惑掛けるなんて本末転倒よ」

 

「なっ!そんな事言ったって…」

 

「しょうがないでござるな」

 

そう言って剣心は財布からいくらかのお金を出し、操に手渡すと、

 

「これで郵便を使って京都の老爺とやらに迎えにきてもらうでござるよ」

 

「おお、成程」

 

「緋村、相変わらず甘いわね」

 

「それと もうひとつ、先程操殿が倒した男達。あの手の連中は 大抵その宿場のヤクザ達とつるんでいるから 早いうちにこの宿場町から出た方が‥‥」

 

「もう遅いみたいよ」

 

「「えっ?」」

 

「いたぞ!!」

 

剣心が操に小田原から離れる様に言おうとした瞬間、数多くの足音が近付いてきたのが聞こえた。

しかも橋の両方から‥‥

 

(やれやれ、面倒な事になったわね)

 

信女は近づいてくる足音に面倒くささを感じた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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