エリート警察が行くもう一つの幕末 作:ただの名のないジャンプファン
志々雄討伐の為京都を目指していた剣心と信女。
その度の道中に出会った追剝少女改め、御庭番衆見習い?の巻町操は森の中で瀕死の男に出会う。
男は警視庁の密偵、三島栄一郎。
斎藤の部下の1人で信女の同僚の男であった。
その男は自らの弟と出身地の村を剣心と信女に託し、息を引き取った。
三島の弟が言うには彼の村は2年前から志々雄の領地になっており、明治政府は既に村を見捨てていた。
そして今、志々雄は村に滞在中であると言う。
志々雄が居ると言う事で村へとやってきた剣心と信女。
そこで見たのは村の広場に吊るされた三島の両親の惨殺死体。
志々雄の部下の兵との戦闘後、剣心と信女は吊るされた三島の両親の遺体を降ろしてやろうとすると、そこに村人が待ったをかけたのであった。
「何言ってんのよ!同じ村の仲間でしょ、その人達がこんな目にあっても まだあんた達は その尖角とやらに従うっての!」
操が老人の言葉に怒りに村人に向かって叫ぶが、老人はあくまでも冷静に返される。
「尖角に刃向かえば死…じゃが…刃向かわねば生きる事はできる!これ以上事を荒立たせぬよう村のためじゃ。お前ら他所者と三島の者は今すぐこの村を出ていってもらう。栄次、いいな」
自分達の保身のためにまだ元服前の少年を村から追放した老人の態度に再び怒りを露わにした操の頭を斎藤が掴んだ。
「怒るな。自分の命を賭けてまで人間の誇りと尊厳を守ろうと出来る者などそうはいないもんだ。ただ 生きるだけなら家畜同然、誇りも尊厳も必要ないからな」
斎藤が言葉通り、村人たちを人ではなく動物を見る様な蔑んだ目で言い放つ。
彼の言葉に村人は、
「何とでも言え」
「他所者に何がわかる」
「大体 お前ら警察がだらしないからだ」
「そうだそうだ」
と口々に避難を浴びせる。
しかし、その態度はまさしく負け犬の遠吠えにしか見えない。
「とにかく遺体を降ろすのは許さん、お前等余所者はさっさと出ていけ!」
斎藤や操と村人の遣り取りを黙って聞いていた剣心と信女は吊るしてある縄の下に行き、剣心は逆刃刀を返し、三島の父親を吊るしていた縄を斬り、信女は母親を吊るしていた縄を斬った。
三島の両親の遺体を降ろすと村人が騒ぎ立てた。
中には再び三島の両親の遺体を吊るそうと近づく村人も居たが、剣心と信女の眼光にビビっているしまつである。
「この村が滅んだらお前達のせいだからな!!」
「この人殺し!!」
村人のこの罵声に信女は、
「あら?そんな事を言っている余裕があるのかしら?」
「なんだと!?」
「遺体を下ろす前に私達は志々雄の部下の兵隊を斬ったのよ」
(斬ったのは信女、お主と斎藤だがな‥‥)
剣心はあくまで不殺しを貫いたため、殺してはいない。
「それを貴方達は黙って見ていた‥‥志々雄や尖角とやらが、それを知ったらどう思うかしら?」
「‥‥」
「村の連中は、『反乱の意志あり』と見なされても仕方ないわね」
「っ!?」
信女の言葉に村人に戦慄が走った。
「貴方達がとる選択肢は4つ、1つは私達と一緒に志々雄と尖角と戦う。2つ、志々雄と尖角に滅ぼされる。3つ、村を捨てて逃げる。4つ、志々雄側について私達と戦う‥‥もっとも4つ目を選ぶなら、志々雄一派と見なして容赦はしないけどね‥‥」
信女は刀の柄に手をやり、村人に選択肢を突きつける。
すると村人たちはぞろぞろと自分達の家に戻って行った。
去って行く村人を尻目に剣心達は三島の両親の遺体を荷車に乗せて山へと向かった。
「これがこの村の現状だ。そしてこれが、志々雄が造る新時代の日本の姿だ」
「斎藤、政府は本当にこの村を見捨てたのか?」
剣心が斎藤に新月村についての政府の対応を尋ねる。
「この村だけじゃない。既に10の村が見捨てられ志々雄の領地になっている。警察は既に村の奪回から手を引いている」
斎藤曰くやはり政府はこの新月村を見捨てており、その他にも既に10個の村が志々雄に占領されており、政府はいずれの村の奪還を諦めている。
「何かよくわからないけど 警察がダメなら軍隊を使えば」
操が、警察が村の奪還を諦めているなら、軍隊を使えば村は奪還できるのではないかと言う。
「阿呆、西南戦争からまだ半年だぞ。国の内乱にまた再び軍が出動しては内政の不安を諸外国に露呈するだろ」
列強諸国に日本の内情が不安定な事がバレるかもしれない。
万が一バレたりしたら、列強諸国が介入し、日本は志々雄ではなく列強諸国の植民地にされるかもしれない。
政府の政治家はそれも恐れていた。
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
「仮に軍隊を使えるとしてもだ。まず上の政治家の連中が承諾しないさ」
「なんで!?」
政治家も軍隊も動かない事に操は驚くが、仕方ない事と信女は思う。
「操、さっきの村人の態度を見たでしょう?」
「は、はい」
「政治家連中も村人と同じ、志々雄からの報復を恐れているのよ。大久保の様になりたくない‥それが政治家の本音」
信女の言葉に剣心が続く。
「成程 軍隊を使えば村の奪回は可能だがその後の"暗殺"という報復は必至」
「政府要人にとって"暗殺"がいかに防ぎ難く恐ろしいモノがお前等ならわかるだろ。政府の連中も結局は人間、我が身かわいさのあまり"問題は誰かがどうにかしてくれる"と思っているんだよ」
「誰かって誰よ!誰がこの村をまともにするのよ!いったい誰が、いったい誰があのコの無念を晴らすっていうのよ!」
操は悔しそうにそう言った。
「後は俺がやる‥‥」
兄を葬った場所へと来ると、少年は鍬で両親を葬る為の穴を掘り始めた。
この時の少年は、家族を失った悲しみと家族を奪われた悔しさその2つが混ざった表情をしていた。
「村も警察も軍隊も政府も、そして何もかも このままでは志々雄の思いのままになる。だからこそ今、俺達の様な人斬りが必要なんだよ。志々雄の館の場所はわれている、京都より早まったが行くか?」
「ああ」
「元々志々雄を斬ることが今回の目的だしね」
剣心と信女は志々雄の館へと向かうと言う。
「待ってよ、あたしも行くよ!」
操は自分もついて行くと言うが、
「お前はダメだ、ここにいろ」
斎藤は却下した。
「なんでよ!あたしだってあんな事をする奴、絶対許せないわよ!」
着いてこようとする操を宥める様に説き伏せる。
「操」
「何よ!いくら信女様が何と言おうとあたしだって‥‥」
「操は栄次のそばに居てあげて」
信女は操に三島の弟、栄次の傍にいてくれと言いながら、チラッと穴を掘っている栄次の姿を見る。
操も信女につられて栄次の姿を見る。
栄次は天涯孤独の身となってしまった。
自暴自棄にならないか信女は心配だった。
故に操には彼の傍についてやって欲しいと操に栄次を託したのだ。
納得したのか、信女にそう言われた 操は頷くと栄次の側へと駆けて行った。
そして、3人が向かうは志々雄の居る志々雄の館。
その頃、志々雄の館では‥‥
屋敷内にある脱衣所では、1人の男が土下座をしていた。
「も、申し訳ございません。は、箱根の山で抜刀斎達は突然山中に入り、み、見失ってしまいました‥‥目下全力で行方を捜索中で‥‥」
土下座をしていたのは東京から東海道に渡って剣心と信女を尾行していた志々雄の工作員であった。
操を撒くために剣心と信女が東海道の山道においていきなり山中に入った為、彼は剣心と信女を見失ってしまったのだ。
その報告を彼は志々雄にしていた。
しかし、剣心と信女を見失った失態により、自分は志々雄に粛清されるかもしれない。
その恐怖が彼を支配していた為、彼は顔色が悪く体は声同様に震えていた。
「どうしますか?」
同じく脱衣所に居た宗次郎が風呂に入っている志々雄にこの男の処分を尋ねる。
自分は殺される。
男はそう思っていた。
だが、意外にも‥‥
「いいさ、許してやるよ」
志々雄は彼の失態を許した。
「半年ぶりの湯治で今は気分がいいんだ‥‥気が変わらない内に抜刀斎を探して来な」
「あ、ありがとうございます!!」
志々雄が許してくれたことに自分の命は助かり、彼はバッと頭を上げ、志々雄に礼を言う。
「よかったですね」
そんな男に宗次郎がゆっくりと近づき、彼の耳元で、
「でも、今度こんな失態をしたら、僕が許しませんから」
次は無いぞとさりげなく警告を入れた。
「は、はい‥‥」
男は顔を更に青くして脱衣所から出て行った。
「瀬田様!!」
男と入れ替わって別の男が脱衣所へと入ってきた。
「騒がしいな、何です?」
「そ、それが‥‥」
男が宗次郎に耳打ちする。
「へぇ‥‥」
耳打ちされた内容を聞き、宗次郎は志々雄に伝える。
「志々雄さん、志々雄さん」
「うるせぇな、今度はなんだ?」
「左頬に十字傷のある男と日本刀を帯びた警官2人が、どうやらこの館に向かっているみたいです」
「へぇ~俺が挨拶する前に出向いてくれるとは流石、先輩‥宗次郎、お前出迎えてやれ」
「はい」
「それと尖角に戦闘準備をさせておけ」
「尖角でしたら、もう準備は出来ていますよ。それじゃあ行ってきますね」
志々雄から来客を出迎える様に言われた宗次郎は脱衣所から玄関へと向かった。
(まさか、こんなにも早く貴女と再会するとは思っても見ませんでしたよ。総司さん‥いや、今井信女さん)
廊下を歩いている宗次郎はこの館に向かっている信女との再会に胸をときめかせていた。
その頃、山では栄次と操が3人の墓に手を合わせた後、栄次は兄の形見とも言える刀を持ち、歩き始めた。
「ちょっと、待ちなさい。アンタ、そんなもん持ってどこ行くつもり?」
「志々雄の館‥敵討ちだ」
「何言ってんのよ、アンタじゃ無理だって」
「出来る出来ないの問題じゃねぇ‥やるかやらないかだ!!俺はもう1人だ‥命なんて惜しくねぇ」
信女の見立て通り、栄次は半ば自棄になっていた。
「待ちなさい」
そんな栄次を操が呼び止めた。
「なんだよ?邪魔する気かよ、テメェ」
栄次は操が自分の敵討ちを邪魔するつもりかと操を睨みつける。
「スカタン、志々雄の館には尖角だけじゃないでしょう?志々雄って親玉も居るし、当然さっきの覆面の兵隊も居る筈よ。アンタなんて門前でボコボコにされるのがオチよ」
「だからって‥‥」
「だから、あたしが助太刀してあげる」
(気持ちはわかるよ‥あたしだってもし御庭番衆の皆が殺されたら命を捨てても仇を討つ。信女様、申し訳ないけど、あたしはこの子に力を貸すよ)
「着いてくるのは良いけど、足手纏いにはなるなよ」
ブチッ
栄次のこの一言にキレた操は、
「うりゃあ!!」
彼に跳び蹴りを喰らわせた。
剣心、信女、斎藤が志々雄の館に着くと、門前に1人の青年が立っており、やって来た3人を出迎えた。
「っ!?」
その青年の姿を見て、信女は顔には出さなかったが驚愕した。
「緋村抜刀斎さんに、斎藤一さん、それから‥‥今井‥信女さん‥‥ですね?」
「気をつけろ‥信女、斎藤。あれが大久保さんを暗殺した男だ」
「嫌だなぁ~今日はただの案内役ですよ。ほら、武器は一切持っていませんから」
宗次郎は笑顔で両手を振り丸腰である事を証明する。
「奥の間で志々雄さんが待ちかねています。さあ、どうぞ」
「‥‥」
剣心は何か罠があるのではないかと警戒するが、
「警戒した所でどうにもならんさ、行くぞ」
斎藤は『虎穴に入らずんば虎子を得ず』の言葉通り、門前で立っていても何も解決しないと促す。
志々雄の館に足を踏み入れた3人を宗次郎は志々雄の下へと案内した。
「まさか、志々雄の仲間だったなんてね」
宗次郎の案内の下、廊下を歩きながら信女は宗次郎に話しかける。
「貴女もまさか、偽名を使っているなんて思いもよりませんでしたよ」
「偽名ではないわ。私の最初の名を知っているって事は私の事を色々調べたのでしょう?それなら、私が名前を変えなければならない理由もわかると思うけど?」
「ええ、斎藤さんと共に新撰組の一員であの箱館戦争まで官軍と戦い抜いたのですから、政府としては信女さんをお尋ね者として手配してもおかしくはないですからね。でも、志々雄さんがこの国をとれば、もうお尋ね者として手配されませんよ」
宗次郎は安易に信女を志々雄側へと誘う。
「うーん‥折角の誘いだけど、遠慮するわ」
「どうしてです?」
「志々雄のやり方が気に入らないから‥それだけよ」
「そうですか‥でも、僕は諦めが悪い方なんですよ」
「私が欲しいと言うのなら、私を倒しなさい。勝者には敗者の生殺与奪の権利があるわ。今の政府の様にね」
「勿論そうするつもりです」
「‥‥」
信女と宗次郎の会話を剣心は面白くないと言った表情で見ていた。
やがて、志々雄が待つ奥の間へと到着した。
・・・・続く
ではまた次回