エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第47幕 張

 

 

 

 

 

 

葵屋からの使いの知らせを聞き、信女は警察署を飛び出した。

青空の息子、新井伊織が志々雄一派に拉致され、剣心は赤空最後の一振りが納刀されている白山神社へと向かったのだと言う。

操の話では伊織を拉致した志々雄一派の者も赤空最後の一振りを狙っていたと言う。

今の剣心は逆刃刀が折れており、満足に戦える状態ではない。

そんな状態にも関わらず、剣心は伊織を助けに向かった。

相手は一人だったと言うが、その者の実力がもし、宗次郎並みの凄腕だったら‥‥いや、今の剣心だと尖角レベルの相手でも苦戦、もしくは敗北だってありえる。

 

「あのバカ‥‥」

 

兎も角、信女は剣心が向かったであろう白山神社へと急いで向かった。

そして、この日、京の人々の間で、おまわりさんがものすごい勢いで道を走り、壁を登り、屋根の上を駆け抜けて行ったと噂と目撃談があがった。

 

「ここか…」

 

剣心が白山神社へ着くと其処にはまだ誰もいなかった。

伊織を拉致した志々雄一派の者はまだ到着していない様子だった。

 

(ふむ、何とか間に合ったみたいでござるな)

 

そして、剣心は本殿の前で伊織と伊織を拉致した志々雄一派の者を待った。

その時、不意に人の気配を剣心は感じた。

 

(むっ、来たか!?)

 

剣心は志々雄一派の者が来たのだと警戒心を高めると‥‥

 

「ひぃ~むぅ~らぁ~」

 

やって来たのは志々雄一派の者ではなく、息を切らせた信女だった。

 

「の、信女!?」

 

(刃衛の時の薫殿よりもおっかないでござる)

 

「貴方、何をしているの!?」

 

白山神社に着いた信女は速攻で剣心に食って掛かる。

 

「信女こそ、どうして此処に?」

 

「葵屋の人から連絡を受けたのよ」

 

「葵屋から?」

 

「そうよ、剣心が鍛冶屋の息子が志々雄一派に拉致された事を聞いて飛び出していっちゃったって」

 

「そ、そうか‥‥」

 

「貴方、今の自分の状況を分かっているの!?逆刃刀が折れている中、どうやって戦うつもりだったの!?まかさ、鞘だけで勝てる相手だと思っているの!?」

 

「‥‥」

 

「相手がもし、あの宗次郎みたいな手練れだったら、鍛冶屋の息子を助ける以前に貴方は死んでいたのかもしれないのよ!!分かっているの!?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

信女が剣心に対して説教を始めると、剣心は先程警戒心を高めた剣客としての面影はなく、ただただ信女のお説教に対して相槌をうったりしている。

その姿は母親に叱られる子供の様だった。

 

「京都はほっそい路地や入り組んだ道ばかりで、ややこしい所や‥‥さて、赤空最後の一振り、どんな殺人刀か‥‥ん?」

 

信女が剣心に説教をしている中、青空の息子、伊織を拉致した志々雄一派の中でも指折りの実力者、十本刀の一人、沢下条張、通称“刀狩”の張が白山神社に辿り着くと警官の服装をした女が赤毛に腰には刀を差した着物姿の小柄男に説教をしていた。

剣心と信女が張よりも先に白山神社に来る事が出来たのは、張が京都のきめ細かい地理に迷った為であった。

 

(な、なんや?アイツら?廃刀令違反の取り締まりか?)

 

2人の姿に張は唖然としたが、いつまでもこの場で唖然としている訳にはいかない。

それに男の方はあの抜刀斎と特徴は一致する。

張が声をかける前に伊織が剣心の姿に気づき、声をかける。

 

「ごじゃる~~~!!」

 

「どうやら、来たみたいね」

 

「ああ」

 

伊織の声に気づいた信女が剣心への説教を止めて声のした方に顔を向ける。

 

「神社の参拝客やないな、あんたら誰や?」

 

「見て分からないの?おまわりさんよ」

 

信女はこの制服の仕事が分からないのかと張に問う。

 

「へぇ~女のおまわりさんなんて初めて見たわ。んで、そっちは?」

 

張は剣心に念の為、確認をとる。

すると、剣心は頬に貼ってあった十字傷を隠していた貼り薬を剥がすと、冷たい声で一言張に言い放つ。

 

「その子を放せ」

 

「左頬の十字傷…、成程 あんたが有名な人斬り抜刀斎さんかいな」

 

「ごじゃる~~」

 

「なんや思っていたより小さいんやなァ、なんか女子みたいなカンジや。そっちの女のおまわりさんよりもチビやんけ」

 

「背の事は言わないであげて、彼、結構気にしているの」

 

「の、信女~」

 

シリアスな空気をぶち壊す様な信女の発言は本当にこの場のシリアスな空気をぶち壊した。

 

「‥‥まぁええ、で、あんたも赤空の最後の一振り 取りにきたんか?」

 

信女がぶち壊したシリアスな空気を張が何とか取り繕った。

 

「…生憎 拙者が求めているのは別の刀でござる、赤空の最後の一振りが欲しくば持っていけ。ただ その前にその子を放せ」

 

「それは不要の闘いは避けたいって事でっか?そりゃそうでっしゃろう。頼みの逆刃刀とやらが折れて闘いたくとも十分 闘えへんのやさかい。まっ わいもそんな男を倒してもおもしろうないけど、敵と遭遇しときながら闘いもせんと済ませたら わい志々雄様に殺されてしまう。それに!」

 

張は鞘に引っ掛けていた伊織を包んだ風呂敷を枝に引っ掛けると共に抜刀して剣心に切っ先を向ける。

 

「せっかく 最後の一振りを手に入れても試し斬りの素材がなければ楽しさ半減。前から一度"赤ン坊斬り"やってみたかったんや」

 

(赤ん坊って言う歳には見えないけど‥‥)

 

「最低」

 

「あん?」

 

「子供は国の宝よ。無暗に殺めていいモノではないわ」

 

「へぇ~なんや、よう見ればエラい別嬪さんやなぁ!抜刀斎の女かいな?どや?そんな小さい男よりもわいに乗り換えへんか?」

 

「...そうね、とりあえず子供を離してその以下にも自慢みたいな頭を刈り上げて、地面舐めて『俺は犬や』って言うなら踏んであげなくはないわよ」

 

信女はそう言いその言葉に張は、

 

「何やと...女が舐めた事言うなボケが!!」

 

張は左手に持っていた刀の鞘を信女に投げつけ、その隙に信女に接近し突き技を繰り出して来た。

 

「もろうた!」

 

正面に来た張を避け鞘で背中を打ち付けると背負っていた2本の刀を砕き尚も振り切るとその反動を利用して信女は伊織のいる方へと跳ぶ。

信女としては切り殺してもよかったが、小さい子の居るまで人殺しはしたくないし、見た所、コイツも志々雄一派の中では幹部クラスの人間、生きて捕縛出来れば、得る情報もあるだろうと判断し抜刀せず鞘のままで張に刀を叩きつけたのだった。

 

「私を突き殺したいなら、牙突以上の技を繰り出しなさい」

 

倒れている張に信女は捨て台詞を吐き、

 

「ごめんね、怖かったでしょう?」

 

伊織に笑顔で話かけると伊織は嬉しそうに笑う。

 

「のぶねぇ~」

 

剣心が信女と呼んでいたのを覚えたのか伊織は信女の名を口にする。

 

「なんや、女子のわりに結構やるやないか。背中の愛刀がなかったら危ないトコやったわ。けど、この代償は高ぅつくで」

 

張は両手に持っていた刀をくっつけた。

今彼が持っている刀はただの刀ではなく、赤空が作った作品の1つで連刃刀と呼ばれる前期殺人刀だった。

刃と刃の間隔が短く、この連刃刀で切られると例え死ななくとも、傷口の縫合が上手くできず、傷口が化膿し、腐食して死に至らしめると言う刀だった。

張は連刃刀を振りかざし信女に切り込みをかけるが、信女と張の間に剣心が割って入り、連刃刀の刃と刃の間に鉄拵えの逆刃刀の鞘を割り込ませる。

 

「なっ!?」

 

突然の剣心の乱入に驚く張であるが、人質をとった張に対して正々堂々の勝負何て付き合ってやる義理もない。

今は一刻も早く伊織を助ける事、それが剣心にとって最優先事項だった。

 

「どうした?拙者が目的では無かったのか?」

 

そして、剣心は張の連刃刀をへし折り、人体急所の1つ、水月に龍翔閃を叩きつけた。

 

「緋村!!」

 

「またせたでござるな、今 降ろすでござるよ」

 

「ごじゃる~」

 

信女と伊織の方へと歩き始めると後ろではゆらりと張が立ち上がる。

 

「はっはっは‥‥どうやらわい、少しふざけ過ぎていたようや」

 

(水月に打ち込んだのにもう立てるのか?)

 

剣心は人体急所に打ち込んだにも関わらず張がこの短時間で何事もなかったかのように立ち上がったのを見て彼も左之助同様、打たれ強い身体の持ち主なのかと思った。

 

「ごじゃる~のぶねぇ~」

 

張が立ち上がった事で不安を感じた伊織が怯えた声を出す。

 

「すまんな、伊織。少し長引きそうでござるよ」

 

「へぇーこの子、伊織って言うんだ」

 

剣心は伊織を不安にさせない様に伊織に笑みを浮かべて、ちょっと時間はかかるが必ず助けると約束し、信女は此処で初めて伊織の名を知った。

 

「ガキと喋くっとらんとこっち向かんかいこのダボが!なめてっとそのガキ解体すぞ コラ!」

 

張は怒声を上げて、上着を脱ぎすてる。

すると、張の胴体には白銀色の防具の様なモノが巻かれていた。

 

(そうか、あの防具で、コイツは直ぐに起き上がったのか‥‥)

 

剣心は何故張がこの短時間で起き上がれたのか分かった。

張は左之助の様に打たれ強い訳では無く、あの胴体に巻かれている白銀色の防具によって事なきを得たのだと判断した。

張の『ガキ解体すぞ』の発言を聞き、剣心も信女も張を鋭い眼光で睨みつける。

一般人や三流の剣客では、恐れをなしてしまう様な中でも張は怯える事無く、むしろ興奮している様子だった。

 

「十本刀、刀狩りの張、此処からが真骨頂や」

 

張は左手を背中に回し、素早く前に出すと、剣心に向かって銀色の線の様なモノが襲いかかる。

そこへ、操、翁、伊織の父、青空が来る。

青空の話では、張が胴体に巻いていたのは防具ではなく、薄刃乃太刀と呼ばれる赤空の後期殺人刀で可能な限り刃を薄く鍛えた刀なのだと言う。

張が薄刃乃太刀を振ると剣先が方向を変えて後ろから迫る。

紙一重で避けた剣心に薄刃乃太刀が再び剣先を変えて突っ込んで行く。

 

「くっ、緋村!!」

 

信女が咄嗟に躍り出て刀を弾くが、薄刃乃太刀の剣先は信女の右足を掠めて張の元へと戻った。

 

「信女!!」

 

「大丈夫、かすり傷よ。それより緋村、貴方は伊織を助けて下がって、逆刃刀の無い今の貴方は足手纏いよ」

 

張が再び薄刃乃太刀を振るう。

鞭のように変幻自在にうねりながら動く薄刃乃太刀に翻弄される信女。

そして、信女の言葉がショックだったのか剣心の動きは若干鈍る。

その隙を逃さず、張の薄刃乃太刀は剣心の太ももを貫く。

薄刃乃太刀を見切る為に避け続ける剣心に張は、

 

「往生際が悪いなあ、状況わかってへんのか?ガキ一人に命張っている場合やないで」

 

その時、青空が神社の本殿に向かって走って行く。

 

「待っていろ!!伊織!!必ず助けてやるからな!!もうちょっと辛抱だぞ!!」

 

「なに観客が勝手に舞台の上に上がっとるんや!!」

 

張は青空に向けて薄刃乃太刀を放つ。

 

「飛天御剣流、飛龍閃!!」

 

信女は青空に迫る薄刃乃太刀を撃ち落とす。

その隙に剣心が張の間合いに入り込み、張の額に肘鉄をくらわすが、張の巻いていた鉢巻も鉢鉄の鉢巻きで張を完全に倒す事が出来なかった。

信女も飛龍閃で刀を飛ばしてしまい、拾いに行っている時間は無かった。

そんな時、本殿から赤空最後の一振りを手にした青空が、

 

「緋村さん!父の最後の一振りです、使って下さい!!」

 

と、父の最後の刀を剣心に向かって放る。

反射的に受け取ってしまった剣心は見て躊躇ってしまう。

 

(くっ、やっぱり今の緋村じゃあ‥‥)

 

「おい、あんた…人斬り抜刀斎やろう?人斬るのに何そんなに躊躇しとんのや?ええで、『人を斬る悦びを忘れました』言うんならこのワイが思い出させてやるわ。実演を踏まえてな」

 

チラリと横目で後ろに居る伊織を見る男に信女は鞘を構えると走り出す。

 

「そうはさせない!!伊織は‥‥この子は絶対に無事返す!」

 

薄刃乃太刀を避けて一足飛びで間合いに入ると横薙ぎの攻撃を払い脇下を狙うが奇しくも紙一重で避けた張に信女は舌打ちする。

その間に薄刃乃太刀は戻ってくると、今度は信女の左肩を掠り、血を滲ませる。

 

「くっ‥‥」

 

「次はその首、叩き切ったるわ!!」

 

張が再び薄刃乃太刀を構え、信女に止めを刺そうとする。

 

「信女‥‥おおおおお!!」

 

信女が斬られた事、そして信女が斬られそうな姿を見て剣心は我を忘れ、抜刀姿勢のまま俊足で張に接近する。

張が信女ではなく、剣心に向かって薄刃乃太刀を放つが、剣心は張に向かって飛びながら体を捻りそれを避け、続いて後ろからの剣先も超反応で躱すと、

 

「飛天御剣流 龍巻閃"旋"」

 

(な、なんや?今の超反応は!?まるで別人やんや‥‥)

 

を張に叩き込み、剣心の渾身の一撃を喰らった張はその場に大の字で倒れた。

張を斬った時の剣心の目はまさに人斬り抜刀斎の目であった。

人斬り抜刀斎となった剣心の技を見た操は唖然としていた。

 

「緋村‥その刀‥‥」

 

「っ!?」

 

信女の声に反応した剣心は改めて自分の手にしている刀を見ると、その刀は‥‥

 

「逆刃刀!?」

 

殺人刀ばかりを作っていた赤空の最後の一振りは剣心がこれまで使用していた逆刃刀と同じ刀だった。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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