エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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すいません、中中更新しなくて久しぶりの更新です。


第48幕 不殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍛冶屋、新井青空の息子、新井伊織を誘拐した志々雄一派でも指折りの剣客部隊、十本刀の一人、刀狩りの張を倒した剣心。

殺人刀ばかり作っていた刀匠新井赤空の最後の刀は以前、剣心が使用していた逆刃刀と同じ逆刃刀だった。

その場にいる皆が唖然としている中、白木の柄が剣心の技の威力に耐え切れずに粉々に砕けた。

しかし、刀身には損傷は見られず、壊れたのは握りの柄の部分だけだったので柄を変えればすぐに済む程度の事だった。

 

「それが逆刃刀ってことは‥‥」

 

操は剣心が倒した張を見ると、彼は意識を失っていたがちゃんと呼吸をしていた。

 

「生きている!!緋村、あんたは不殺を破っていないよ!!」

 

操の言葉を聞いて剣心は不殺を破っていなかったことにホッとしていた。

そして逆刃刀の刀身には、赤空が遺した句が彫られていた。

 

 

我を斬り

 

刃 鍛えて

 

幾星霜

 

子に恨まれんとも

 

孫の世の為

 

(赤空って刀匠は刀を作り続ける事によって自分の子供に恨まれても孫の時代には平和な時代が来ると願って刀を打っていたのね‥‥)

 

信女は赤空の辞世の句を見てそう思った。

幕末の時代、新時代を夢見て戦っていたのは武士だけではなかったと言う事だ。

 

その後、倒した張をどうするか?と話し合った。

翁は事情を聞く為に葵屋へと運ぼうと提案した。

しかし、剣心は張の身柄を警察に引き渡すと言った。

その理由は、既に斎藤は京都へとやってきている筈‥彼ならばコイツから志々雄一派の情報を上手く引き出し警官を使って志々雄一派の行動を抑止してくれるだろうと信じていたからだ。

張を倒した後、木にぶら下げられた伊織を信女が器用に木を登り助けた。

 

「のぶねぇ!!」

 

「怖かったでしょう?もう大丈夫よ。さあ、お父さんとお母さんの所に帰りましょう」

 

伊織を抱いて木から降りると信女は伊織を父親である青空へと手渡す。

 

「伊織!!良かった!!本当に良かった!!」

 

青空は息子の無事な姿に思わず涙を流し伊織をギュッと抱きしめた。

その様子を見て信女達はホッとして表情をする。

そして警官隊が白山神社へと到着すると張は意識が無いまま警察署へと連行された。

 

「逆刃刀・真打‥‥」

 

張を警察に任せた後、一同は葵屋へと移動し、剣心は新たな逆刃刀を前にジッとソレを見つめる。

剣心の脳裏にはあの日‥‥鳥羽伏見の戦いの後、赤空と最後に出会った時のことを思い出した。

息子の青空も父のこの辞世の句を見て父、赤空の真意に気づくことが出来た。

 

「お受け取り下さい、緋村さん。父もそれを望んでいると思います」

 

(赤空殿‥‥俺はまだ、貴方と同じく甘い戯言にかけてみたい‥‥だから‥‥)

 

「逆刃刀・真打‥‥有難く頂戴致す‥‥」

 

剣心はこの新時代を生きるこの国の人々を守れる道を探す為、逆刃刀・真打を貰った。

新たな逆刃刀を受け取り青空夫妻が帰る間際、伊織が剣心に向かって手を伸ばす。

 

「ごじゃる~あくす~あくす~ばいばいのあくす~」

 

リクエストに答え伊織の手を取った剣心。

すると伊織は信女にも手を伸ばして来た。

 

「のぶねぇ、抱っこ、抱っこ」

 

伊織は何と信女に抱っこを要求してきた。

どうすればいいのか対応に困った信女であったが、

 

「抱いてあげてください」

 

青空夫人が伊織を信女に差し出す。

 

「そ、それじゃあ‥‥」

 

信女は青空夫人から伊織を受け取り抱き上げる。

 

「さようなら、伊織‥元気でね」

 

伊織を抱いた信女は微笑みながら伊織に別れの挨拶を言う。

 

「「「‥‥」」」

 

伊織を抱っこしてあげる信女の姿を見て剣心、操、翁は‥‥

 

(子供を抱信女のも中々良いでござるな‥‥)

 

(あ、あの信女様が子供を抱っこして、微笑みながら子供と戯れている‥‥)

 

(ふむ、なかなか絵になるのう‥‥ワシも後3~40年若ければ‥‥)

 

剣心と翁は信女の姿に見とれ、操は信じられないモノを見た様な顔をしていた。

 

「あら?何だか、意外そうね?」

 

当然三人の視線に信女は気づいていた。

 

「あっ、いや‥その‥‥」

 

「だって信女様の性格から考えられないもん」

 

剣心は口ごもって誤魔化すが、操は馬鹿正直に感想を述べた。

 

「操‥後でちょっとお話しましょうね?」

 

信女が操に微笑むがその後ろには般若が見えた。

 

「ひぃっ!!」

 

信女のその笑みに操は思わず後ずさりをする。

 

「「今のは、操(殿)が悪い」」

 

剣心と翁が口を揃えてお仕置きされても仕方がないと言う。

 

「私はこう見ても子供好きなのよ。昔、ある人とよく近所の子供相手に遊んでいたんだから」

 

信女は幕末‥新撰組に居た時、沖田と共に屯所の近くのお寺で近所の子供らと遊んでからは子供好きになっていた。

 

「‥‥」

 

信女の話を聞いて彼女の言う『ある人』が新撰組の沖田であると悟った剣心は面白くないのか顔を僅かに歪ませる。

それから新井一家が去った後、

 

「ぎょぇぇぇぇぇー!!」

 

葵屋から操の絶叫が響いた。

信女の折檻を受けて魂が抜けた操の屍を見た剣心と翁が男同士だが、互いに体を抱き合い震えていたという。

操への折檻が済んだ後、

 

「緋村‥‥」

 

信女は周りに人がいない事を確認して剣心に声をかける。

剣心は頂いたばかりの逆刃刀・真打に鉄拵えの柄をつける作業をしている。

 

「ん?何でござるか?」

 

「‥‥貴方、あの人の居所が分かり次第、此処を出て行くつもりでしょう?」

 

この葵屋の従業員は皆、忍‥自分達の会話も恐らく筒抜けとなっているだろうが、信女は気にせずに剣心に語り続ける。

 

「‥‥」

 

「沈黙は肯定と見なすわよ」

 

「‥やはり、お主に隠し事は出来ぬな」

 

「はぁ~大方、今回の一件で此処に居ればいずれ此処の人達にも迷惑がかかると思っているんでしょう?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

「いいわ‥それなら私も付き合ってあげる」

 

「信女‥‥」

 

「それに喧嘩別れしたあの人の居場所を知りたいって事は緋村‥あの人から奥義を習いたいんでしょう?」

 

「なぜ、それを‥‥」

 

「私は緋村よりも長くあの人の元に居たのよ‥貴方が奥義を習う前に貴方は山を降りたからね。それに志々雄の強さを考えていくら逆刃刀・真打を手に入れても今のままでは志々雄には勝てない‥あの宗次郎にも‥‥だから志々雄に勝つ為にあの人に奥義を習おうと言うのでしょう?」

 

「‥‥」

 

「でも、あの人の性格から喧嘩別れをした貴方に奥義を教えるとは思えない‥だから、私もあの人を説得するのを手伝ってあげる」

 

「信女‥‥」

 

「だから、絶対に奥義をモノにしなさい。緋村」

 

「元より拙者はそのつもりでござるよ」

 

剣心は覚悟を持った目でそう答える。

 

(良い目をしているわ緋村‥でも、飛天御剣流の奥義の取得は生半可なものじゃないわよ‥緋村、貴方にはまだ志々雄を倒す目標がある。だから、絶対に死ぬんじゃないわよ)

 

既に奥義を取得している信女は自分の経験則を踏まえて剣心に死ぬなと心の中で声援を送る。

此処で言ってしまっては奥義取得の差支えになる。

飛天御剣流の奥義の取得は文字通り命を懸けて行うものなのだから‥‥

 

「それじゃあ、緋村。私は一度警察署に顔を出すけど、あの人の居場所が分かったら、私の下に一度いらっしゃい‥忘れたりしたら‥‥承知しないからね」

 

「あ、ああ‥‥」

 

操への折檻を見ても‥忘れたりしたらそれ以上の事をされる。

それに信女の言う通り自分が師匠に頼み込んで素直に奥義の伝授をしてくれるだろうか?

15年前に喧嘩別れして一方的に山を降りた自分に‥‥

それならば自分よりも師匠の下で剣術修業をしていた信女が一緒に来てくれた方が説得しやすいだろう。

そう判断した剣心は、

 

「わかった。居場所が分かり次第、会いに行く」

 

「約束よ。緋村」

 

そう言って信女は警察署へと向かった。

警察署へと着くと信女は斎藤が京都に到着しているかを尋ねると斎藤はまだ京都へと到着していなかった。

 

(意外と遅いわね。何をモタモタしているのかしら?)

 

斎藤が到着していないでは仕方ないので信女は署長に伝言を残した。

まず、剣心が捉えた刀狩りの張の取り調べは斎藤が京都に着くまで待ってもらい、彼に直々に行ってもらう事。

それまで張は特別房に入れた後、彼の奪還または口封じの恐れがあるので24時間の監視対象にする事。

そして自分はここ数日の間に所用で暫く警察署を留守にする事を伝えた。

警察署を留守にする事に関して署長はいぶかしむが、信女が緋村抜刀斎の修業の為と言うと快く承諾してくれた。

それから自分達の師匠、比古清十郎の居場所は意外と早く見つかり、張を捕らえた翌日、剣心が警察署へと信女を迎えに来た。

 

「約束通り迎えに来たでござるよ。信女」

 

「‥‥」

 

剣心が約束通り来た事に意外性を感じる信女。

 

「ん?どうしたでござるか?」

 

「いえ‥緋村がちゃんと約束通りに来るなんて‥明日は雨を取り越して嵐かしら?」

 

「ひ、酷いでござるよ信女。折角約束を守ったのに‥‥」

 

「ふふ、冗談よ。さぁ、行きましょう。懐かしき師匠の下へ」

 

「ああ」

 

信女と剣心の二人は比古清十郎が居るとされる山を目指した。

 

 

その頃、京都の市街地では‥‥

東京から剣心を追いかけてきた薫と弥彦の二人が階段に腰を下ろして行きかう人の波を見ていた。

この中に剣心が居るかもしれないと言う期待を胸にして‥‥

しかし、二人が京都に入ってすでに3日が経っていた。

 

「京都に来てもう3日経つのに影も形も見えねぇ‥‥一体何処に居るんだ?剣心の奴」

 

弥彦は眼前の人波をジッと睨みつけながら赤毛に十字傷を探している。

 

「やっぱり無理かも‥この街で人一人探し出すなんて‥‥」

 

弥彦は諦めずに剣心を探していたのだが、薫の心境にやや諦めが見え始めた。

そんな薫に、

 

「喝!!」

 

弥彦が竹刀で薫に斬りかかる。

 

「なにすんのよ!?弥彦!!」

 

しかし、薫も伊達に神谷活心流の師範代ではない。

弥彦の切込みに対して白刃取りをして防ぐ。

 

「また頼りねぇ事言ってんじゃねぇよ!!剣心は必ず見つかる!!」

 

「そんなこと言ったって‥‥」

 

「しょぼくれた事言ってんなら往来でも眺めていろ。運が良けりゃ剣心が‥‥」

 

カチャ‥‥

 

弥彦が「剣心が通りかかるかもしれねぇだろう」と言おうとした時、カチャと鍔鳴りの音がした。

反射的にその音に反応した弥彦は音がした方を見ると長身にコートを羽織り、手には長刀を持った1人の男が目の前を通り過ぎて行く。

 

「アッ‥‥」

 

弥彦はその男に見覚えがあった。

 

(四乃森蒼紫‥‥なんでアイツが京都に!?)

弥彦の目の前をかつて観柳邸において剣心と死闘を繰り広げた御庭番衆お頭、四乃森蒼紫が居たのだ。

蒼紫の姿を見つけて弥彦は急いで階段を降りる。

 

「ちょっと弥彦!!何処に行くのよ!?」

 

突然階段を降りた弥彦に声をかけながら薫も慌てて弥彦の後を追う。

もしかして弥彦が剣心を見つけたのかもしれないと思って‥‥

 

「くそっ、もういねぇ」

 

人波に消えた蒼紫に思わず悪態をつく弥彦。

元々御庭番‥忍びのお頭である蒼紫を今の弥彦が追いかけ追いつくのが無理な事だった。

 

「どうしたのよ!?弥彦。まさか、剣心が居たの!?」

 

「いや、剣心じゃねぇ、蒼紫だ。あの四乃森蒼紫がいたんだ!!」

 

「蒼紫ってあの御庭番衆の‥‥」

 

薫も蒼紫と直接の面識はないが弥彦や左之助、恵や剣心から彼がかなりの手練れの剣客だと聞いていた。

そして剣心と戦かった事も‥‥

 

「おうよ、こちとら何の手がかりも掴んじゃいねぇんだ!!アイツを辿っていきゃなんか剣心に繋がるかもしれねぇだろう」

 

「あっ、待って!!」

 

弥彦の言葉を聞き薫は慌てて弥彦の後を追った。

弥彦と薫の反対方向からは操が走って来た。

剣心が信女を迎えに警察署へと来る少し前‥‥

 

「緋村君。頼まれていた比古清十郎の居場所じゃ‥‥」

 

翁が剣心に比古清十郎の居場所が書かれた紙を手渡す。

 

「翁殿、かたじけない」

 

「行くのじゃな?やはり」

 

翁の問いに剣心は頷き、

 

「操殿の事よろしく頼むでござる。蒼紫の事何も語ってやれずすまぬと‥‥」

 

「任せておけ」

 

「では‥‥」

 

剣心としては新井一家との事件の後、すぐに師匠の居場所が分かりホッとしていた。

葵屋に長居すればする程此処が志々雄一派からの攻撃を受ける危険性を高めるからだ。

 

「緋村君」

 

葵屋を去ろうとする剣心に翁が背後から声をかける。

 

「これだけは忘れんで欲しい。この先も儂は常に君の味方じゃ」

 

「かたじけない」

 

玄関を目指していた剣心だが、運悪く朝食の準備が出来たと言いに来た操と廊下で鉢合わせしてしまった。

 

「ああ、緋村。もうすぐ朝ご飯だよ」

 

「‥‥」

 

しかし、剣心は何も答えず廊下を歩いていく。

その様子から操は何かを感じ取った。

 

「待って、どこ行くの?緋村」

 

操は剣心を呼び止める。

 

「アンタ、まさかここを出て行く気じゃないでしょうね?」

 

「‥‥もうこれ以上、誰一人危険に晒したくはない‥これから先は拙者の戦いでござる」

 

「何か緋村、急によそよそしくなった。自分が人斬り抜刀斎って知れたから?」

 

操は張と剣心との戦いで剣心がかつて幕末の京都で暗躍した人斬り抜刀斎である事を知った。

剣心があの人斬り抜刀斎と言う事を知った時には驚いたが、操はその後も剣心に対して変わらずの態度をとっていた。

 

「そんなこと関係ないのに‥アンタがどうであろうと、アタシがあったのは人斬りのアンタじゃなくて流浪にのアンタなんだから」

 

操の言葉を聞き剣心は薫と出会った時のことを思い出した。

 

「ハハ‥」

 

「何がおかしいの?」

 

「東京で別れた人もまるで同じような事を言ってくれたでござるが‥‥まさか、古巣の京都に来てまでその言葉を聞くとは思ってもみなかったでござるよ」

 

そう言い残し剣心は葵屋を後にした。

追いかけようとした操を翁がいさめるが、操はどうしても納得が出来ずに剣心を追いかけた。

その最中、操は弥彦と正面衝突した。

 

「気をつけなさいよ!!チビ!!」

 

「何だと!?ぶつかって来たのはそっちじゃねぇか!!」

 

「弥彦!!女の子に何て口をきくの!?ごめんなさい急いでいたから」

 

「それよりも見失ったじゃない!!もう~緋村のバカ!!チビ!!男女!!」

 

操の発した緋村と言う苗字に弥彦と薫は反応した。

ふたたび操が剣心の後を追いかけようとした時、薫が操の帯を引っ張り、操は再び地面にダイブした。

 

「ぐはっ!!」

 

「貴女、今なんて!?剣心の事知っているのね?」

 

「‥‥」

 

「教えて、剣心は何処!?」

 

(もしかして、この人が緋村が言っていた東京で別れた人‥‥で、でも緋村は信女様が‥‥ど、どうしよう‥‥)

 

操は何か厄介事に首を突っ込んでしまったと今更ながらそう思った。

その頃剣心は信女を迎えに警察署へと向かっていたのだが、あの時、信女の折檻を受けて屍と化していた操はその事を知らなかった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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