エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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お久しぶりです。
そして更新です。


第49幕 帰路

 

 

 

 

 

葵屋の翁を通じて剣心はかつての剣の師匠、比古清十郎の居場所を掴み信女と共に比古の下を訪れた。

暫く山の中を歩いて行くと山中の拓けた場所に出た。するとそこには陶芸の窯がポツンとあり、その釜の前に座る見覚えのあるマントの後姿‥‥。

間違いない比古清十郎である。

彼の姿を確認するといきなり抜刀し斬りつける剣心。

それを大きく飛躍して避けた比古は振り返り剣心を見た。

 

「一介の陶芸家にいきなり斬りつけるとは随分無粋な輩だな」

 

一介の陶芸家ならば剣心の先程の不意打ちを躱すことなど出来ずにノックアウトされていてもおかしくはない。

 

「『比古清十郎』は一介の陶芸家ではないでしょう‥‥?」

 

「なんだ、お前か‥‥」

 

「お久しぶりです、師匠」

 

「ん?おお!久しぶりだなあ!どうした、何年振りだ?」

 

「師匠?」

 

比古清十郎では有りえない歓迎振りと急に変わった態度に剣心は怪訝な顔をするが、近寄って来た比古が話し掛けていたのは‥‥

 

「久しぶり‥比古」

 

ペコッと比古に一礼し微笑む信女だった。

 

「『後は好きに生きろ』と言ったのに戻って来るとはな‥やはり俺が恋しくなったのか?それにその恰好は何だ?」

 

「おまわりさん」

 

「お前、警官になったのか?よくなれたなぁ‥‥」

 

信女の肩をポンポンと叩きながら笑みを浮かべる比古。

今の彼のこの姿も十分に考えられない。

そして剣心を尻目に話し始める比古と信女。

 

「し、師匠!!」

 

このままでは完全に無視されてしまうので剣心は大声で比古に声をかける。

 

「なんだ?五月蝿い奴だな」

 

折角の信女との再会に水をさされてちょっと不機嫌そうな顔の比古。

 

「比古‥とりあえず緋村の話を聞いてあげて」

 

「‥‥いいだろう‥兎に角家に入れ」

 

信女の態度を見て何か訳ありだと判断した比古は剣心と信女を家の中に誘った。

 

 

比古の家は住んでいる山を変えたとは言え、剣心と信女が修行していた頃とあまり変わらず家の中にはモノが少ない。

あるとすれば最低限の生活用品のみだ。

ただ昔と違いがあるとすれば比古が焼いたと思われる焼き物が棚に置いてあるくらいだ。

信女は比古に酒を用意するために盆に徳利を置く

 

「さて‥と、今頃になってノコノコ姿を現しやがってこの俺に一体何の用だ?」

 

比古は早速剣心に自分を訪ねてきた要件を聞く。

 

「『新津覚之進』といえば陶芸界でちょっとした注目の新人だそうですね。なんでまた陶芸家に?」

 

剣心がまず、比古の現状について比古本人に尋ねる。

比古は剣客の身分を隠し、偽名(ペンネームみたいなもの)で今は陶芸家となっていた。

 

「別に陶芸家でなくてもかまわないさ、ただうざったい人付き合いをせず暮らすには芸術家が一番てっとり早い」

 

生活するうえで明治のこの世の中、どうしても手に職をつけなければ食ってはいけない。

だが、剣客なんて既に時代遅れの代物となりつつある今、比古は最小限の人付き合いと言う理由で陶芸家になった様だ。

 

「随分と簡単に言いますね」

 

芸術家なんてそう簡単に芽が出る訳ではない。

この国以外でも世界中の彼方此方で芸術家を試みて挫折している者が大勢いるのに比古はあっさりと注目されている陶芸家になっていた。

だが、その内に潜む剣気はまだまだ現役の剣客だ。

陶芸家に身をやつしてもブランクは一切感じさせない。

まさに現代における最強の剣客の雰囲気だ。

 

「まあな、真の天才は何でもこなしてしまうものさ」

 

髪をかき上げてポージングしながら自画自賛をする比古。

だが、彼が言うと嫌味っぽく聞こえるのだが、腕が確かな分、反論できない。

 

(比古の自信家ぶりは相変わらずね‥‥)

 

比古の発言に信女は苦笑いしながら比古の隣に酒を置いた後、剣心の隣に座った。

 

「それで15年前、勝手に俺の所から出て行ったお前が突然戻って来るとは‥‥お前 何か言い辛い事を話に来ただろう?」

 

「っ!?」

 

まだ何も言っていないのに比古は剣心の心中を既に読んでいた。

 

「俺はお前の師匠だぜ。バカ弟子の考えなどすぐにお見通しさ」

 

「それでは‥‥」

 

剣心は逆刃刀を腰から抜いて両膝をついて比古に頭を下げると、

 

「単刀直入に言います。15年前にやり残した飛天御剣流奥義の伝授今こそお願い致したい‥‥」

 

比古に奥義の伝授をお願いした。

しかし、比古は‥‥

 

「断る」

 

剣心の頼みを一蹴りした。

 

「あの時 勝手に出ていったのはお前の方だぜ、それをなんで今更‥‥」

 

外套を翻し部屋を出て行こうとするその裾を掴んで剣心は比古を仰ぎ見るがその目は焦りが含まれている。

 

「お願い‥致します‥‥」

 

「私からもお願いするわ。比古‥‥」

 

信女もジッと比古を見つめる。

信女のその真剣な眼差しから何か切羽詰まった事情があるのだと判断した比古は、

 

「どうやら相当切羽詰まった事情の様だな。いいだろう、聞くだけ聞いてやる」

 

比古は剣心の話を聞いてやると言って再び踵を返して、先程座っていた木箱に再び腰を下ろす。

剣心が今回の一連における志々雄一派の話を比古にして居る頃‥‥

往来で偶然にも出会った薫と弥彦は操の案内の下、翁から探し人である剣心の居場所を聞くことに成功し、今まさに剣心の下に向かっていた。

 

「剣心の師匠?そんなのがいるのか‥‥」

 

「そう‥比古清十郎。飛天御剣流の技の全てを会得した者がその名前を代々受け継いでいるんだって」

 

「‥って事は、剣心はまだ会得していない技があるって事か‥‥」

 

「きっとそれを会得するために比古清十郎に会いに行ったのよ」

 

「なら、ソイツを教われば剣心は‥‥」

 

「そうよ、今よりさらに強くなるのよ」

 

「スッゲェぜ!!やっぱアイツは人間じゃねぇや!!」

 

「化け物よ!!化け物!!」

 

「「ハハハハ‥‥」」

 

この場に剣心が居ないのを良い事に好き勝手に言っている操と弥彦。

 

「あっ、そう言えば‥‥」

 

その時、弥彦が思い出したかのように声を出す。

 

「なに?」

 

「剣心の同門で今井信女って言う同門の奴が居るんだが‥‥」

 

信女の名前を聞いた途端、ビクッと体を震わせる操。

そんな操の事を知らずに弥彦は語り続ける。

 

「以前、剣心は信女って奴の事を『剣客の中でも文句なしに認める実力者の1人』って言っていたけど、そうするとアイツも化け物並みに強いって事か?」

 

弥彦が信女の強さを予測している中、操はガタガタと体を震わせている。

そこで弥彦もようやく操の異変に気付いた。

 

「ん?お前、何震えてんだよ?寒いのか?」

 

「の、信女様は化け物じゃないわよ‥神様よ‥仏様よ‥‥」

 

虚ろな目で震えながら操は決して信女は化け物ではないと言う。

 

「おい、一体どうしたんだよ?お前」

 

操の態度が余りにも妙なので弥彦はちょっと引いた。

 

 

志々雄一派の話を一通り聞いた比古の反応は微妙で15年前剣心と喧嘩別れした事を後悔していた。

あの時、剣心をふん縛ってでも山を降りる事を阻止しておくべきだったのかもしれない。

 

「やはりお前に飛天御剣流を教えたのは間違いだったかもな‥‥信女は間違いではなかった様だが‥‥」

 

「比古‥‥」

 

「なんだ?」

 

信女は真っ直ぐに比古を見ると剣心同様、腰に差した刀を床に置き、姿勢を正し三つ指を着いて頭を下げた。

 

「無理は承知の上です。ですが、今回はどうしても緋村に奥義の伝授を‥‥」

 

信女が比古に土下座までして剣心に奥義の伝授を頼み込んだ瞬間、

 

「コラァ!!」

 

「誰に向かって言ってんのよ!?」

 

「何だ?お前ら?」

 

「操殿、弥彦‥‥っ!?」

 

バンッと大きな音を立てて開かれた戸と同時に中に入ってきたのは操と弥彦そして‥‥薫の姿があった。

信女は来客である操達にスッと視線を外して姿勢を正す。

 

「知り合いか?」

 

「ええ‥‥」

 

「やれやれ、今日は千客万来だな。望んでもねぇってのに‥剣心、お前一走り沢まで降りて水汲んでこい」

 

「は?」

 

比古の言った事が理解できずに首を傾げる剣心。

 

「水だよ、水」

 

「何で拙者が?」

 

「ここには1人分しか蓄えがねぇんだよ。お前はともかく朝まで信女もこのガキ共も飲まず喰わずにしとく訳にいかんだろう」

 

「それなら師匠が行けば?」

 

「相変わらずいい度胸だな?いいからうだうだ言ってねぇで行ってこい!!」

 

「なら、私が行って来るわ」

 

信女は空気を呼んだのか?

それともこの場に気まずさを感じたのかは分からないが自分が行くと言う。

立ち上がって桶を探すと掴んだ取手ごと剣心に包まれて信女は剣心を見る。

 

「信女、余計な事は考えないで欲しいでござるよ」

 

「はぁ~好きにしなさい」

 

信女はもう1つ別の桶を手に取り沢まで下りて行く。その後を剣心が追いかけて行き、薫は神妙な面持ちだった。

薫の横を剣心が通り過ぎても薫は剣心に声をかけられず、剣心もまた薫に声をかけなかった。

 

「薫、なにボォッとしているんだよ?折角剣心に会えたのに」

 

弥彦が薫に何故剣心に一言も声をかけなかったのかを問う。

すると、薫は

 

「一目‥会えたから‥‥」

 

「かぁ~肝心な時にこれかよぉ~」

 

普段は男勝りな薫が肝心な時に乙女心一杯で動けない事に呆れる弥彦。

そして、弥彦と操の2人は比古へと目をやる。

 

(コイツが剣心に技を教えた師匠‥‥)

 

(飛天御剣流の継承者‥しかし、この男一体‥‥)

 

「おい、お前ら‥‥」

 

比古が薫たちに声をかけた時、

 

「「はい」」

 

操と弥彦はそろって手を上げる。

 

「その前に質問」

 

「アンタ一体何歳よ?」

 

「あん?43だ。それがどうした?」

 

「「えぇぇぇぇぇぇー!!」」

 

比古の年齢を聞いて驚く操と弥彦。

 

「この顔で43?」

 

「剣心もあれで28だ!!」

 

「28!?」

 

操は此処で初めて剣心の年齢を知りやはり驚いている。

 

「おう、28だ!!28!!」

 

「飛天御剣流は一体‥‥」

 

「「どうなっとるんじゃぁぁぁー!!」」

 

見た目と年齢が一致しない現実に混乱する操と弥彦。

 

「で?お前らは一体何しに来た?」

 

比古は改めて薫達に来訪目的を尋ねる。

 

「何って?‥剣心に会いに‥‥」

 

「それで?」

 

「えっ?」

 

比古の追加の質問に薫は答えられない。

 

「だから、会ってどうしたいんだ?東京へ一緒に帰りたいとか?告白したいとか?一緒に戦いたいとか?あるだろうが!!」

 

弥彦が薫に詰め寄るが、

 

「い、いや‥ただ‥ただ‥会いたかったから‥もう一度会いたいと思ったから‥それだけで‥‥」

 

「ほぅ~あのバカ弟子の何処が良いのか分からんが結構人気があるんだな」

 

薫の言葉を聞いて意外そうに言う比古。

 

「おい、お前!!ずっと前に分かれたくせに剣心の事を何も知らないくせに!!」

 

弥彦が比古の剣心に対するあまりに発言にキレる。

 

「それだ。そこの所を聞かせてもらおうか?」

 

「「「えっ?」」」

 

「明治になって10年‥あのバカ弟子が俺の教えた飛天御剣流で何をやっていたのか?俺の知りたいのは其処なんだ‥アイツ本人からではなく、アイツを知る者の口から聞きたい。まぁ、信女の方はあの恰好を見た通り警官をやってちゃんと働いている様だからいいが、あのバカ弟子は今職に就いているのか?」

 

比古は薫達が知る剣心について尋ねてきた。

そこで、薫達は比古に自分達の知る限りの剣心を話した。

その頃、沢まで下りて水を汲みに来ている剣心と信女は‥‥

 

(薫殿と弥彦が京都に来た‥とすれば、恐らく左之助も‥‥また一つ志々雄との戦いが困難になる‥なのに‥‥)

 

剣心が志々雄との戦いの中薫たちを巻き込まずに戦えるのかと思っていると、

 

「随分、あの人に好かれている様ね、緋村」

 

「えっ?」

 

信女が剣心に声をかける。

 

「態々戦場になるかもしれないこの京都に貴方を追いかけてくるなんて余程あの人は緋村の事を想っているのね」

 

信女の言う「あの人」は薫のことをさしているのだろうが、なぜか彼女の言葉は刺々しく感じられる。

 

「戦いに巻き込まない様に無理に引き離して京へ来たのに貴方の行為は無駄に終わったみたいね‥」

 

「信女」

 

「折角の機会だし、あの人を連れて東京に戻れば?」

 

「えっ?」

 

「葵屋で貴方はあそこの人達を巻き込まない様にと葵屋を出た。それなのに今度は東京から緋村の事を想ってあの人が来た‥‥あの人を守りながら志々雄と戦えるの?」

 

「‥‥」

 

信女の問いに剣心は「出来る」とは即答できなかった。

彼女からの問いは今まさに自分も心の中で抱いていた疑問だったからだ。

 

「緋村、私は貴方に言った筈よ。『迷っているならこの仕事を断りなさい』って‥‥あの人に会って緋村にはまだ迷いが生じている‥迷いは力を半減させるし、緋村が思っている通り、守りながらの戦いは不利になる。伊織みたいに人質にされるかもしれない」

 

「‥‥」

 

「だから、緋村‥あの人を連れて東京に帰って!!」

 

「信女」

 

「比古は貴方に奥義を教えるのは否定的だし丁度いいじゃない!!後は私と斎藤で何とかするから!!」

 

そう言って信女は剣心にそっぽを向く。

 

(あれ?私なんでこんなにイラついているの?)

 

信女の言葉とは裏腹に彼女は妙にイラついていた。

剣心が東京に帰れば、剣心は志々雄と戦わなくて済む、不殺を貫ける。

その筈なのに一方で剣心と離れたくない。

剣心が他の女の人といちゃついている事に何だか面白くないモノを感じる。

 

(何、考えているのよ、私は‥‥修学旅行に来た学生じゃないのよ)

 

信女は苛立った心を鎮めようとする。

その時、

 

「信女」

 

「えっ?」

 

信女は突如、剣心に抱きしめられた‥‥。

 

 

 

・・・・続く

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