けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
オリジナルの章に入ります。
大体のベースは前の章と同じですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

最近、本作に登場する梓と別の作品の人物でもある”梓”と混合しそうになります。
微妙に口癖も同じですし(汗)


2年生編 『セカンドステップ』
第99話 応募!


新学期も始まり、いよいよ学期末に向けて走り出した僕たちであったが、この時期は僕はいろいろと忙しかった。

 

「今日も浩介はまっすぐ帰るんだ?」

「ああ。本当に最近忙しくて困るよ」

 

HRも終わり手早く荷物をまとめた僕は、慶介に相槌を打ちながら鞄を手にする。

 

「でも、それも今日で終わりだろ?」

「まあね。厄介なことが終わるから」

 

慶介の問いかけに答えた僕は、そのまま駆け出すように教室を出ると学校を後にするのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

時をさかのぼり、新学期が始まって少し経った日のこと。

この日も軽音部の部室ではティータイムが繰り広げられていた。

 

「浩介も大変だよなー。ライブの準備で休むだなんて」

「でもライブって来月なんだよね? なのに、どうして準備を始めてるの?」

 

ひと月前からの準備に、首をかしげる唯に、声を上げたのは梓だった。

 

「それは当然ですよ! セッティングや音響確認の打ち合わせとかいろいろ大変なんですから!」

「しかも、浩介はバンドを引っ張っていく影のリーダー。責任だってあるんだぞ!」

「み、澪ちゃんも!?」

 

梓に続いて澪までもが声を荒げたことに驚く唯。

 

「澪はDKのことが絡むと人が変わるからな~」

「梓ちゃんもね」

 

からかいの意味を込めた視線を澪に送りながら相槌を打つ律に、紬も続いた。

 

「あ、すみません」

 

ふと我に返った梓はしゅんと小さくなって謝った。

 

「でも、この間のライブ楽しかったねー」

「そうだな。いい経験だったよな」

 

唯の感想に、澪も頷いた。

大みそかに開かれた、ライブハウスでのライブは彼女たちにいい影響を与えていたようだ。

 

「そんなあなたたちに朗報よ!」

「にゃ!?」

「うわ!? いつの間に……」

「あ、お茶入れますね」

 

梓の横から大きな声で叫ぶさわ子に、驚きをあらわにする梓達。

尤も、紬は驚くこともなく落ち着いていつものように、お茶を入れるべく立ち上がったが。

 

「ありがとね。ムギちゃん」

「いいえ」

 

いつもの席(浩介と梓の机の横の部分)に腰掛けたさわ子は、紅茶を淹れた紬に労いの言葉をかけた。

 

「それで、朗報って?」

「あ、そうそう。さっきネットでこんな催しを見つけたのよ」

 

律の問いかけに思い出したのか、さわ子は得意げな表情で告げるとどこからともなく一枚の紙を取り出した。

それはサイトの内容をそのまま印刷したものであった。

 

「えっと……『NEW STARS PROJECT』?」

「これって、一体……」

 

そこに記されていた名称に首をかしげる唯たちに、さわ子はにやりと笑みを浮かべた。

 

「腕はいいけど、デビューの場がない。ライブをする場所や機会もないという人たちに光を当てるための企画らしいわよ。有名バンドとの合同ライブという形にはなるけど所定の時間は参加希望バンドだけで、ライブができるのよ」

「へぇ……」

 

興味を持った律は、印刷された用紙に目を通し始めた。

 

「これまでは15分という短い時間だったけれど、今回はそれが4倍の1時間まで拡張された」

「おぉー、それはすごいどすなー」

 

4倍という数字に、唯が感嘆の声を上げる。

 

「1時間の使い方や曲の構成は自由。しかも、なんと! オリジナルの楽曲を相手のバンドの人に売ることもできるという特典付きっ!!」

「誰?」

 

興奮のあまりに、席を立ちあがって力説するさわ子に律が目を瞬かせながらツッコんだ。

 

「あ、書いてある。曲の演奏契約を結ぶことによって、契約バンドへ演奏するごとに演奏料を支払うんだって」

「参加方法は?」

 

紙に目を通していた澪に、紬が疑問を投げかけた。

 

「えっと、演奏した楽曲を下記住所に送付するだけだって。あとは選考があって、採用なら連絡が行くらしい」

「選考ってあるんだね」

「それはもちろんよ。新人バンドにとってみれば、一躍有名になれるチャンスだからね。応募者が増えるのは当然。倍率はかなり高いわよ。それに、有名なバンドも自分たちの看板を汚さないようにある程度のレベルは求めるだろうし」

 

唯の言葉に、再びさわ子が説明を始めた。

 

「どうする? これに出てみるか?」

「私は賛成」

「私もです」

「一応、応募するくらいなら」

「賛成~」

 

律の問いかけに、全員が賛成票を入れた。

 

「それじゃ、応募ということで。あ、どうせだから浩介には内緒にしておこうぜ」

「そうだね! 浩君をびっくりさせてみたいもんね!」

 

そんな律の提案に、唯が真っ先に食いついた。

 

「……全く」

 

そんな二人にため息をつく澪だったが、すぐに紙の方に視線を落とす。

 

「えっと、応募資格で下記事項にあてはまる方は応募できないって」

「どんなどんな?」

 

澪の言葉に、唯たちは澪が見えるようにおいた紙の方に集まる。

 

 

―――応募資格―――

 

・以前に当企画に参加したことがある者(選考落ちを除く)

・当企画の参加権を応募者の落ち度で剥奪された場合

・応募者の中に一名でも18歳に満たない者がいる場合(ただし部活動などの正規活動であり、なおかつ学校名や部活動名を明記し、監修者である顧問の承認を証明する書類が添付されている場合は可とする)

・当企画に応募する以前にライブを開いた場合、または応募から企画出場までの間に開く場合(部活動や合同ライブなどは除く)

・コピーバンドの場合(1曲でもオリジナル楽曲がある場合は除く)

 

――以上――

 

 

「うへぇ、厳しいなぁ~」

「それだけしっかりとしてるってことだな」

 

応募資格の一覧を読み終えた律のため息にも似た言葉に、澪が相槌を打つ。

 

「でも、応募ってどうやってするんでしょう?」

「そう思って、書類を作っておいたわ!」

 

梓の疑問を予想していたのか、にやりとほくそ笑むと再びどこからか一枚の紙を取り出した。

そこには”応募用紙”と書かれていた。

 

「それじゃ、梓書記な」

「別にいいですけど」

 

まるで流れ作業のように梓にゆだねた部長の律に、梓は複雑そうな表情を浮かべるものの、鞄から筆記用具を取り出した。

 

「えっと、バンド名は放課後ティータイム……この責任者住所ってどうするんですか?」

「バンドの責任者って、順当に考えると部長のはずだから律の住所でいいと思う。住所の方は私が書くから、貸してもらってもいいかな?」

「あ、はい。どうぞ」

 

住所を書く項目で手が止まった梓に、澪はそう口にすると梓からボールペンを受け取り、律の家の住所や連絡先を記載していく。

 

「バンドメンバーの氏名住所を書かないといけないみたいだから、みんなも書いて」

 

先に書いたのか、澪はそういいながら隣に座っていたムギに応募用紙を渡した。

 

「それじゃ……」

 

ムギはボールペンを受け取るとさらさらと必要事項を明記していく。

 

「はい、梓ちゃん」

「あ、ありがとうございます」

 

ムギから応募用紙とペンを受け取った梓は、お礼を言うと再び必要事項に記載していく。

 

「最後は唯先輩ですね」

「ありがと~」

 

最後の唯も必要事項に記入を済ませた。

 

「えっと、最後は楽曲情報ですね……えっと、これ全曲書いていくんですよね?」

「そうみたい」

 

応募の仕方の紙に目を通していた澪が頷いた。

 

「演奏する曲目が決まっていればその曲を。そうじゃない場合は自分の持ち曲を全部書き出すんだって。その際に作詞作曲者も記載すること」

「えっと、それじゃ、まずはふわふわ時間(タイム)ですね」

 

こうして、梓たちは自分の持ち曲を書いていく。

 

「ふぅ。やっと終わった~」

「こうしてみると、少ないですよね」

「確かに」

 

梓のつぶやきに、律が頷く。

書き上げられたのはわずか6曲分だった。

 

「あ、でも参加者には一~五曲の楽曲の演奏課題が与えられるそうですから、大丈夫だと思います」

「後はMCとかで時間が削れるだろうし」

 

応募用紙に記載されていた内容を、梓が告げたことで、問題はとりあえず解決となった。

 

「後は、承認を証明する用紙を――「それならあるわ!」――ほ、本当に手際がいいな」

 

律の言葉を遮って書類を取り出すさわ子に、律は目を瞬かせながら口を開いた。

そんなこんなで、応募用の書類が出来上がり、これまたさわ子が事前に用意していた茶封筒に応募用の書類一式を入れて封をした。

 

「よっしゃ、帰る時にポストに投函しようぜ!」

「あ、投函するのは私がやってもいい? 昔から郵便物を投函するのが夢だったの!」

「うん、いいよー」

 

律の言葉に、手を上げて懇願する紬に、満面の笑みを浮かべながら唯が答えた。

 

「選ばれるといいね」

「そうだな」

 

そんな希望に胸を躍らせるようにして、彼女たちはお茶に口をつけるのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「おはようございます」

「おう、今日はオフモードか」

 

事務所に入ると、僕の姿を見たYJがつぶやいた。

オフモードというのは変装などを一切していない状態のことを指す。

 

「オンにした方がいいならするけど?」

「いや、そのままでいい。今日は最終選考だからな」

 

YJの返事を聞いて、僕はソファーに腰掛けた。

テーブルの上には最終選考にまで上り詰めた5組のバンドがピックアップされていた。

 

「それじゃ、それぞれの組の提出した音源を聞いた結果、どこが相応しいか。一人ずつ言っていこうか。まずはMR」

「この中にはないね。どれも曲はいいが、パンチに欠ける」

 

YJに促される形でMRは首を横に振りながら答えた。

 

「僕も、ちょっと”これだっ”というものは」

「私もです」

「俺もだ。浩介はどうだ?」

 

ROやRKに続いてYJが答えると、こちらの方に振ってきた。

 

「僕も同意見。よさそうではあるが、いささかパンチに掛ける。盛り上がらなければ、それは失敗だ」

 

満場一致で不合格という結果になった。

 

「しかし、どうするんだ? このままだとプロジェクトの参加団体がいなくなるけど」

「それは心配には及ばない。俺たちの方で極上のバンドを見つけておいた。浩介以外の全員がそいつを合格にしている」

 

僕の疑問に返ってきたのは、意外なものだった。

 

「そうだったのか。僕は何も知らないが?」

「ちょっと事情があってな、俺達だけで選考を進めてたんだ。浩介がどうしても嫌だと言うならそこも落とすが、どうする?」

 

真剣な面持ちで投げかけられたYJの問いかけに、僕は頭の中で考えをめぐらせる。

 

(プロジェクトがご破算になるくらいなら、乗ってみてもいいか)

 

それに、僕以外の皆が満場一致で合格にしているのだから、間違いはないだろう。

 

「僕の答えは決まっている。みんなの耳を信じるよ」

「よし。それじゃ、そのバンドへの通知はこっちの方でするから、不合格通知の方を浩介の方でやってもらっていいか?」

「分かった」

 

YJの指示に頷いた僕は、さっそく落選した5組のバンドに不合格通知を作成して発送手続きに入るのであった。

だが、この時気付くべきだった。

皆が企んでいることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浩介、今日も……またですか」

「そう言うこと。まあ、今日は家の掃除だから。例の関係で散らかってるから片づけようと思って」

 

翌日の放課後、ジト目で話しかけてくる慶介に、僕は苦笑しながら答えた。

本当は先日ですべてが終わっているはずなのだが、1次と2次選考の時の参考資料がまだ散らばっている状態なので、今日はそれを片づけようと思っていたのだ。

 

(後、壊れかけた棚の修理も)

 

いい加減、歩いただけで崩壊する食器棚を何とかしたかったため、僕はついでにということで食器棚の修理を一緒にすることにしていたのだ。

 

「本当、大変だよな浩介」

「全くだよ。おかげでここ最近唯とも話せてないし」

 

話せるのは昼休みのほんの数十分だけ。

そう言う意味では唯には非常に申し訳ないことをしているような気がするが、これも今日までの辛抱。

明日からはたっぷりと唯と話をすることにしよう。

 

「くそぉ~。こうなったらアタックをかける!」 

 

僕の言葉を聞いた慶介は悔しげに声をあげると、なぜかそんなことを言い出した。

 

「浩介、見ててくれ! この俺が成功する姿を!」

「はいはい」

 

拳を握りしめ、宣言する慶介に適当に返事をする僕のことを気にした様子もなく慶介はたまたま近くを歩いていた佐伯さんの方に声を掛けた。

 

「佐伯さんっ!」

「な、なに!?」

 

大声で叫んだため、飛び上がるほど驚いた様子で慶介の方に振り向いた。

 

「この俺と忘れられない素敵な一夜を共にしないか?」

「お断りします」

 

ダンディな声色で誘った慶介に、佐伯さんは清々しいほどきっぱりと断りを入れた。

 

「………っ!?」

「じゃあね」

 

一瞬で石と化した慶介に、佐伯さんはそれだけ告げると教室を去っていった。

 

「慶介。大丈夫だ。お前にも春は来るさ」

 

慶介の肩に手を置いて、僕は思いつく限りの励ましの言葉を贈る。

 

「ぢぐじょう~。それが一番頭にくるっ!」

「………じゃあ、勝手に固まってろよ」

 

じたばたじたばた暴れる慶介に、僕は冷たい視線を送りながら突き放すと立ち去ろうとした。

 

「のわっ!?」

「行かないでくれ! 無視しないでくれ!!」

 

いきなり足にしがみついた慶介によって、僕は勢い良く地面に倒れた。

 

「…………ふんっ!」

「ぎゃごっ!?」

 

僕はそんな慶介に向けて捕まれていない足で勢いよく蹴り飛ばした。

 

「何しやがるッ! 一生そこで眠ってろ! このタコ野郎!!」

 

慶介に罵声を浴びせた僕は、そのまま教室を後にするのであった

 

「クク……浩介のキック……いつもより、強い――――ガク」

 

教室ではそんなことを呟いて沈む慶介の姿があったとか。

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