けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
お待たせしました。

今回で、本章は終了となります。
次章もまた原作の章になりますが、できる限りアレンジを加えていく予定です。

そして、今回序盤のほうに魔法要素がありますので、苦手な方はご注意ください。


第107話 結果

新歓ライブも無事成功という、最高の結果で幕を閉じた。

 

「ぷはぁ! 今日のライブはとても良かったな!」

「梓と唯と浩介の絡みもばっちりだったしな」

「本当ですか!」

 

互いに労う中、僕はといえばあまり釈然としていなかった。

 

(唯のやつ、やるなといったのにやるんだもんな)

 

原因は唯が最後の曲である『ふわふわ|時間≪タイム≫』で行った演奏方法だ。

 

「まあ、肝心の唯が完全に燃え尽きているけど」

 

そんな律の指摘通り、机に突っ伏している唯の姿は、某ボクシング漫画の主人公のごとく真っ白に燃え尽きていた。

 

「ウィンドミルなんてするからだ」

 

ぐるぐると腕を振り回していた唯に、会場中がざわついたのは記憶に新しい。

それがいいのか悪いのかは定かではないが。

「だめですよ先輩。これからビラ配りに行くんですから」

「えぇ~!? あずにゃんの鬼ー」

抗議をするも梓に引っ張られていく唯は、そのまま部室から去って行った。。

 

 

 

 

 

それからさらに数日が過ぎた放課後。

この日も新入部員を獲得するべく、待っていたが来る兆しは一向になかった。

 

「来ませんね……」

 

机に突っ伏すように顔を載せていた梓が力なくつぶやいた。

 

「まあ、まだ時間はあるから」

「今月いっぱいは様子を見よう」

「そうですね」

 

澪と僕の言葉に、梓は力なく笑みを浮かべると席を立った。

 

「ビラ配り?」

「あ、いえ。ちょっとお手洗いに」

 

ムギの問い掛けにそう答えた梓は、そのまま部室を後にした。

 

「後でもう一度、みんなでビラ配りに行ってみるか」

「そうだな」

「行くんなら、普通の格好で頼むよ」

 

ビラ配りに行くことを提案した律に、僕は心からそう頼んだ。

あのぬいぐるみは確実に逆効果になるのは確実だ。

 

「うーん」

「どうしたんだ?」

 

そんな中、一人腕を組んで唸り続けている唯に、僕は問い掛けた。

 

「ちゃんと入ってきやすいようにしておいたんだけどな」

「………」

 

唯のボヤキに、僕は無性にやな予感を覚えた。

ろくでもないことをしているのではないかという、予感が。

自分の恋人にそのような疑いをかけてしまうのは少しばかり気が引けるが、唯ならばやりかねないのだ。

そんなことを思っていると、ドアが大きな音を立てて開け放たれた。

見ればお手洗いに行ったはずの梓が、血相をかいた様子で戻ってきいた。

その脇に抱えられている置物が、いやでも目に入った。

 

「唯先輩! これを片付けてください!!」

「あぁ~、私のケロ~」

 

それはカエルの置物だった。

お世辞にもかわいいとは言えない置物の首元には『ようこそ、軽音部へ!』と書かれたボードがかけられていた。

どうやらこれが唯の言う”入りやすい方法”らしい。

 

「唯、この置物はやめておけ」

「ぶーぶー、浩君とあずにゃんのケチ」

 

僕の指示に、唯が頬を膨らませながら抗議をしてくるが、僕はそれには取り合わなかった。

 

(あれ? そういえば梓はお手洗いに行ったんじゃ?)

 

そんな疑問が頭をよぎったが、さすがに聞くのはまずいので頭の片隅へと追いやった。

だが、梓はすぐさま部室を後にしたので、おそらくはお手洗いに行ったのだろう。

 

 

 

 

 

「そういえば、浩介先輩ってもしかして入部希望者の人を門前払いにしてませんか?」

「なに? 藪から棒に」

 

梓が戻ってきて少ししてから突然聞かれた言葉に、僕は首をかしげずにはいられなかった。

 

「実は純が”浩介先輩が、入部希望者を次々に切っている門番だ”みたいなことを言っていたので」

「どうやら彼女とは今一度、話をしなければいけないようだな」

 

梓の言葉を聞いた僕は、指の関節をぽきぽきと鳴らしながらつぶやいた。

 

「お、落ち着けって!」

「そ、そうですよ! いくら純でもそれは危ないですから!」

「冗談のつもりで言ってたんだけど」

 

冗談のつもりで言ったはずが、なぜか律たちがものすごい勢いで静止してきた。

この二人がふだん僕のことをどう思っているのかがわかりやすかった。

 

「それで、その噂って本当なの?」

「本当だけど」

 

そして麦の改めての問いかけに、僕は隠さずに答えた。

 

「あっさりと認めた!?」

「って、何をやってるんだよ!」

「そうですよ! せっかくの入部希望者なのに!」

 

すんなりと僕が認めたことに驚きをあらわにしている澪をよそに、律と梓が僕を問い詰めた。

 

「普通の入部希望者だったらいいんだけど、普通じゃない奴らばっかりだったから」

「どういうこと?」

「楽器経験もないくせに経験者だとか、明らかに特定人物と組むのを狙っているような嘘をつくし」

 

あまりにもわかりやすいウソのため、ため息すら漏れてくる。

 

「でも、それくらいだったら平気でやってるやつもいたぞ」

「…………」

 

誰がとは言わなかったが、視線を唯のほうに向けていたのでおそらくは唯だろう。

 

「そういうやつを簡単に言うと……」

「言うと?」

「”澪たん萌え萌え~”とか、”あずにゃんぺろぺろ~”とか言ってるような連中」

『……』

 

僕のたとえ話に、全員が目を細めて僕のことを見ていた。

 

「な、なに?」

「い、いやぁ~浩介の口からそんな単語が出てくるなんて思ってもいなかったから」

「一応念のために言うけど、例えであって僕が言っている言葉じゃないからな?」

 

苦笑を浮かべる律の言葉に、僕は念押しするように言った。

 

「それはともかく、こんな奴らと一緒に部活をしたいと思う?」

「「絶対にいや!(です)」」

 

答えはすぐに出たようだ。

 

「だからそうならないように、振り分けただけ」

「そうだったんですか」

 

事情を説明すると、梓は納得した様子で頷いていた。

結局この日は、入部希望者が来ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ浩介」

「なんだ?」

 

数日後の放課後。

部室に行こうとした僕を呼び止めるように声をかけてきた慶介のほうに、面倒くさいと思いつつも顔を向けた。

 

「俺は今、とても重大な問題を抱えているんだ」

「問題? それはいったいなんだ?」

 

慶介の表情から、ふざけた内容ではなく真剣なものであると悟った僕は、慶介に詳しく話を聞尋ねた。

 

「それはだな」

「それは?」

 

かなりもったいぶっているが、それだけ緊張感が増していく。

 

「浩介が俺に構ってくれる時間が、日を追うごとに減っているということだ!!」

「……………」

 

慶介の言葉に、教室が一瞬凍りついた。

まるで氷点下の世界へと紛れ込んだような冷たさを感じた。

 

「新入部員獲得で忙しいのは分かるけど、もう少し俺にも構っても――「高の月武術・圧っ!!」――ゲボルビン!?」

 

慶介が言い切るよりも早く、僕は体術(正確には魔法を使用した体術だけど)で慶介を吹き飛ばした。

 

「何が重大な問題だっ!」

「な、なんだか、最近この鉄拳制裁が快感になりつつある、俺だった……ガクッ」

 

そんな背筋の凍りつく言葉を残して慶介は気絶した。

 

「そろそろ、こいつをどこかに隔離でもした方がいいかな」

 

腕を組みながら、そんなことを考えてしまう。

 

「この時、慶介とあのような関係に至ってしまうということを、彼はまだ知らないのであった」

「おいこらそこ! 勝手なナレーションを入れるな!!」

 

おかしなナレーションを入れてきた、明るい茶髪のロングヘアーのクラスメイト(確か立花さんだったような気がする)に、僕は声を上げた。

 

「本当に仲がいいよね、二人とも~」

「頼むから、変な目で見ないで。というか勝手な妄想は絶対にしないで、佐伯さん」

 

どういう縁か、今年も同じクラスになった佐伯さんに、僕は必死に懇願した。

 

「わかってるわかってる」

 

(絶対にあれは分かってない)

 

たぶん口だけだと思いながら、僕は部活に向かっていく佐伯さんを見送るのであった。

 

「お幸せに~」

「おいこら! にやにやしながら言うな! というか、慶介と僕の関係を勝手に解釈……ってこら、人の話を聞けっ!!」

 

にやにやと笑みを浮かべながら意味深な言葉を残して去って行く立花さんに、ツッコむがそれを聞くことなく立花さんは教室を去って行った。

 

「っと、そうだった。早く部室に行かないと」

 

なんとなく、変な目で女子に見られそうな気がしていた僕は、また律に文句を言われるのも嫌なので、早々に教室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も来ないな」

「これ、今月中に来なかったらあきらめた方がいいぞ」

 

夕日が差し込む部室で、ぽつりとつぶやいた澪の言葉に、僕はいつの日にか言ったことを口にした。

梓は用があるのかまだ部室に来ていない。

 

「そうだな……にしても、何か悪いことをしたかな?」

 

(しまくりだろ)

 

律の漏らした言葉に、僕は心の中でツッコんだ。

不気味なぬいぐるみや、かなり違うがデート商法の手口のような勧誘方法などなど。

 

「でも大丈夫よ、きっとなんとかなるって」

「いつも前向きなのがすごいよなムギは」

「ありがとう、高月君」

 

いろいろな意味を込めて感心しながらつぶやいた僕の言葉に、ムギが笑顔でお礼を言ってきた。

 

「こうなったら、虫取り網大作戦で部員を獲得するか!」

「………律、それはどういう作戦だ?」

 

律が提案した作戦に、澪が内容を尋ねた。

 

「それはだな、新入生を虫取り網で捕まえて―――」

「それじゃ、ただの拉致だろ!」

 

作戦の内容を聞いた僕は、思わずツッコみを入れてしまった。

 

「それじゃ……――「私はこのままでもいいと思う」――はい?」

 

律の言葉をさえぎるようにして告げられた言葉に、全員が唯のほうへと視線を向けた。

 

「今はあずにゃんがいないけど、こうして6人で集まってお茶を飲んだりお話をしたり、練習をしたりするのってとても楽しいと思うんだ。だから、このままずっと6人でいいと思う」

「……放課後ティータイムは6人。それ以上でも以下でもない、か」

「それでいいか。1年のうちに部員のことは考えようぜ」

 

唯の言葉は、もしかしたらただの諦めた言葉にも聞こえるかもしれないが、もしかしたら最善の選択だったのかもしれない。

それは目には見えないものだが、いつの日にかはっきりとわかる日が来るはずだ。

とはいえ、このまま何もしないというのはだめだが。

 

「あなたたち、一年は短いわよ?」

「え? だって、365日もあるのに……あ、もう何日かすぎちゃった」

 

山中先生の重みのある言葉に反論する唯の言葉は、唯らしいものだった。

きっとそれがわかるのはかなり先になるような気がする。

 

「そういえば、ムギ今日のお菓子は?」

「タルトを持ってきたの」

 

律の問いかけに、ムギは笑みを浮かべながらケーキが入っている箱を取り出した。

中に入っていたのはイチゴやバナナなどの7種類のケーキだった。

 

「あ、あずにゃんはバナナだと思うんだ。だからバナナは取っといてあげよう」

「それじゃ、私は―――」

 

唯の言葉を受けて、全員が好きな味のケーキを手にしていく。

ちなみに僕は、狙っていたかのように用意されていたチーズタルトを選んだ。

 

(にしても、一体ドアの前にいる奴はいつになったら入ってくるんだろう?)

 

先ほど(とはいっても、唯が新入部員の勧誘をやめることを口にしたあたりだけど)から感じる梓の気配に、僕は心の中で首を傾げながらチーズタルトに口を付ける。

そこで、ドアが開いて梓が姿を現した。

 

「「っ!? げほっ! ごほ!」」

 

その梓の姿を目の当たりにした律と唯が、大きく咳き込んだ。

それは口の中の物を噴き出さないだけ、ましだったのかもしれないと思えるほどの驚きようだった。

 

「ご、ごめん! すぐにビラを配りに行くからっ」

「ムギ先輩、ミルクティーをください。後、バナナタルトも」

 

慌てて席を立った唯が、梓の横を通り抜けた時に、梓が珍しく自分から紅茶とお菓子の催促をした。

 

「私、今年はこの6人でやりたくなりました」

「梓……」

 

唯の話を聞いて、彼女の中で何らかの心境の変化でもあったのかもしれない。

それがどういったものかまでは、僕には分からないが。

 

「あずにゃ~―――」

「唯先輩、これからはもっと厳しくいきますからね」

 

そんな梓の言葉に感動したのか、いつものように抱き付こうとしたところで、唯のほうに振り向いた梓がきっぱりと宣言した。

 

「はい、ギター出して」

「え?」

 

その梓の言葉に、唯はぴたりと両腕を前に突き出した姿で固まった。

 

「そりゃそうなるわな」

 

新入部員の獲得をやめればそこから生じた時間が、練習に回されることになるのは当然のこと。

 

「こ、浩君?」

「その視線は、助けてとでも言いたいのか?」

 

僕に救いを求めるような視線を投げかけてくる唯に聞いてみると、必死に首を上下に振って頷いた。

 

「梓、せっかくなんだからケーキでも食べたらどうだ?」

「浩君!」

 

それを受けて僕の言葉に、唯が明るい表情を浮かべる。

 

「でも、浩介先輩」

「そのあとに練習をすればいいんだし」

 

あまり浮かない顔をする梓に、僕はそうつづけた。

 

「それもそうですね」

 

その僕の言葉を聞いた梓は、先ほどとは打って変わってすんなりと頷いた。

一方唯はといえば、裏切られたといわんばかりに固まっていた。

かと思えば、僕たちに背を向けて

 

「やっぱり、新入部員カモ~ン!!」

 

と、いう切実なる願望を口にしていた。

これが、新入部員獲得を目指していた僕たちの顛末であった。

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