けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。
第108話になります

掃除するといいことがあるといいますが、こういうことは早々ないと思います。
なんだかんだでお気に入り件数が400件を超えました。
ご愛読していただき感謝の極みでございます。
これからも面白いと仰っていただけるような話を書いていきたいと思います。


第109話 掘り出し物

「それにしても、こうしてみるといろいろありますね」

 

連絡通路内のすべての荷物を部室のほうに運び終えたのを見た梓が、しみじみとした様子でつぶやいた。

 

「何かあるたびにとりあえずということで置いていたからね」

 

ムギの言うとおりだ。

 

『置く場所がないからとりあえずここに』や『使うかもしれないからとりあえず』

 

そんな感じで連絡通路に置いていったのだが、気づけばまるでジャングルのような惨状となっていた。

フォローするのであれば、これが三年かけてであるということぐらいだろうか。

 

「それにしてもなんだ、このぬいぐるみの山は? お店でも開くつもりか?」

「それ、私が200円で取ったやつだよ!」

「知るか。とっとと持って帰れ」

 

胸を張りながら答える唯に僕は一周して近くにあったレモンか何かのぬいぐるみを唯に手渡した。

 

「ぶーぶー」

 

そんな僕の反応に、頬を膨らませながら抗議してくるが、僕はそれを無視した。

 

「あ、これも持ってけ」

 

そう言って律が渡したのは、お世辞にもかわいくもなんともないおじさんの頭だった。

おそらくはキーホルダーか何かだろう。

 

「それは私のじゃないよ」

「へ? それじゃあ、誰の」

 

唯の返事に、律はキーホルダーのようなものをまじまじと見つめながら首をかしげていると、それを強奪する人物がいた。

強奪した人物……澪は大事そうに抱えるとすたすたと自分のカバンのほうに向かっていく。

 

「あんたのかよ!!」

 

律がそうツッコみたくなるのもわかるような気がした。

 

「あれ、そっちのほうまで片づけるのか?」

「うん。使うことがなかったからついでにね」

 

連絡通路ではなく食器棚と化した場所の整理をしているムギに声をかけるとそんな答えが返ってきた。

そして次々にテーブルの上に置かれていくお皿やグラスの数々。

 

「こうして見てみると豪華だよなー」

 

テーブルの上に置かれた売れば数百万の値は下るであろう者の数々に、律は感嘆の声を上げた。

そんな中、唯はおもむろに一つの箱を手にした。

それはムギが箱の中に詰めていたものなので、中に入っているのは何らかの食器だろう。

 

「ムギちゃん、これっていくらぐらいするの?」

「それを聞きますか」

 

ある意味禁断の質問に、僕は驚きながらもムギの答えを待った。

 

「えっと、値段は分からないけれどベルギー王室で使われていたものと同じだったはずだけど」

「王室」

 

ムギの答えは僕の予想の斜め上を行くものであった。

 

(確実に万はいくな)

 

価値は分からないが、割ったらシャレにならないのだけは分かった。

そんな中、王室という衝撃の単語を耳にした唯は唖然とした様子で手に持っている王室御用達(?)の食器が入った箱を落とした。

 

「のわぁ!?」

 

間一髪のところで滑り込んだ律が箱をキャッチしたことで難を逃れた。

 

「ゆ、唯。心臓に悪いことをするな」

「ご、ごめんなせえ。わい、つい驚いちまって」

「誰?」

 

注意する律の言葉に、誰かのキャラを演じながら謝る唯に、僕は思わず小さな声でツッコむのであった。

 

「これは誰のだ? バケツに石とかが入ってるやつ」

「あ、それは僕のだ」

 

澪が見えるように掲げたのは、僕がよく使う道具だった。

 

「いったい何に使うんだよ?」

「何って、研ぐんだけど」

 

そうでなければ石(正確には研ぎ石だけど)を置いておかないはずがない。

 

「いや、そんな”常識だろ”みたいな感じで言われても」

「でも、何を研ぐんですか?」

 

律のツッコみをよそに、梓が疑問を投げかけてきた。

 

「魔導媒体……わかりやすく言えば魔法使いの杖のようなもの。形は色々あるから杖や水晶玉に剣とか。その中で剣の場合は威力を落とさないようにするために定期的研いで切れ味を維持する必要がある」

「なんだか大変なんだね」

 

僕の説明を聞いたムギが感心したような口調でつぶやいた。

 

「大変なのは最初のうちだけ。少しすれば全く苦にもならないよ。メンテナンスはいつも酷使していることに対する感謝の気持ち。そう思えば、どのようなメンテナンスも大変だとは思わなくなるもんだ。毎朝顔を洗ったりするのと一緒だ」

「へぇ……」

 

そんな僕の言葉に、間の抜けたような声で相槌を打つ律に僕は言うのも野暮だということを悟った。

 

「ほら、早く片付けの作業を進めるよ。これじゃいつまでたっても終わらない」

『はーい』

 

僕の催促にみんなはうなづきながら返事をすると再び片付け作業へと戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか片付いたな」

「一仕事をした後のお菓子はうまいなぁ」

 

片づけの作業も一通り終えた僕たちは、いつものようにお菓子を食べていた。

 

「一仕事って……そもそもだらしなくしていたのが原因だけどね」

「そいつは言わねえお約束だよ」

「だから誰だよ」

 

僕の言葉に、渋い声で言ってくる律に、何度目になるかわからないツッコみを入れた。

 

「でも、私たちの物ではない私物もあるよな」

 

澪の視線の先にあるのは床に置かれt数箱の段ボールだった。

中身は音楽関係の雑誌などで、軽音部らしさを感じることができるものだった。

 

「真面目に活動していた頃もあったんですね」

「あずにゃん、今の軽音部が異常なだけで、過去の軽音部がいい加減な活動をし続けているわけじゃないからね」

 

梓がポツリと漏らした言葉に、僕は苦笑しながら口にした。

 

「高月君、それフォローになってないわよ」

「しかも、浩介が”あずにゃん”っていうのはものすごくあれなんだけど」

 

そんな僕にムギと律から指摘されてしまった。

 

「言うな律。僕もそう思ってきたところだ」

「だったら言わないでください!!」

 

僕の言葉に、梓から怒られてしまった。

なんだかんだ言って梓も僕から”あずにゃん”と呼ばれるのは嫌なのかもしれない。

 

(とはいえ、このあだ名は実に彼女を正確にとらえていると思うんだけど)

 

そういう理由で今後も呼び続けそうだった。

 

「ねえ、見てみて!」

「ん?」

 

そんな時、連絡通路のほうに入っていた唯が若干興奮気味に大きな声を上げながら戻ってきた。

両手にはアルミ製かどうかは分からないがケースがあった。

 

「お、もしかして金目の物か!?」

「意地汚く聞こえるぞ、それ」

 

興味津々で唯に近づきながら声を上げる率に、僕はぼそりとツッコんだ。

それはともかく、唯の持っているケースの中身が気になった僕たちは、ベンチの上に置いて中を見てみることにした。

 

「ギターだ」

 

中に入っていたのは茶色を基調にしたボディーでやや小さめなギターだった。

 

「少し古いけどかなり高そうなギターですね」

「そうだな……値段は分からないけれど、数万はいくと思う」

 

梓の言葉に頷きながら僕は値段の予想をした。

とはいえ、ほとんど適当だったりするが。

 

「なぁんだ、つまんない」

「もっと面白いものを期待したのに」

 

そんな中、あっという間に興味を失ったのか律と唯は不満げに言葉を漏らしながらギターケースから離れていった。

 

「軽音部なんですからもっと興味を持ちましょうよ!?」

「本当に分かりやすいよな、二人とも」

 

梓のツッコミに続くように苦笑していると、部室のドアが開いた。

入ってきたのは顧問の山中先生だった。

 

「あら、懐かしいわね」

「これ、先生のですか?」

 

梓の手にあるギターに気付いた山中先生の言葉に、梓が尋ねた。

 

「そうよ、父親の友人にもらったギターなの」

「もしかして、先生は軽音部だったんですか!?」

 

山中先生の返答に、梓はもしやといった感じで先生に問い掛けた。

 

「ええ、そうよ。言ってなかった?」

 

(まあ、言えるわけないけど)

 

山中先生の軽音部時代はある意味タブー扱いとなっているのだから、話せるはずがなかった。

何せ、話してしまえば、”そういった部分”も触れることになるのだから。

 

「やっぱりそうだったんですね! 学園祭の時うまいなって思ったんです!」

「まあ、かなりブランクはあったけど今の唯ちゃんよりはうまいわよ」

 

(久々の尊敬モードだ)

 

最近はなくなったが、尊敬のあまりに興奮した様子で目をキラキラと輝かせている梓の姿に、僕は懐かしさを感じていた。

最近はしなくなったが、最初はこんな感じだった。

まあ、どちらかといえば変に尊敬されるよりは普通に接してもらった方が僕としてはそれほど苦痛にはならないのでいいのだが。

 

「今度教えてもらってもいいですか?」

「いいわよ」

 

とんとん拍子で話が進んでいくが、一つだけ問題があった。

 

「唯、例のやつを」

「ラジャー」

 

僕は唯に声をかけてあるものを用意させた。

 

「梓」

「何ですか? 浩介先輩」

 

そんな中、僕は梓に声をかけた。

 

「確かに山中先生は、ギターがかなりうまいから別にかまわないんだけど……」

 

梓が怪訝そうな表情をうかべる中、僕はそう告げると

 

「これが学生時代のさわちゃんです」

 

と言って、唯が卒業アルバムにあった軽音部時代の山中先生の写真を掲げた。

 

「だけど、いいのか?」

「……やっぱりいいです」

 

梓の判断は取り下げだった。

 

「何でよ!!」

「まあそうなるわな」

 

頬を膨らませている山中先生に、僕は小さな声でつぶやくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私物は持ち帰ることになっているので、持って帰ってください」

「えぇ……」

 

唯からギターを手渡された山中先生は若干戸惑ったような表情をうかべながら、ギターを受け取った。

だが、その表情が一瞬歪んだ。

 

「うーん……弾く時間がないのよね」

「え? それじゃ、どうするの?」

 

山中先生の言葉に、尋ねた唯に、先生はギターをもとのギターケースにしまうとそれをベンチのほうに立てかけた。

 

「これを売って部費の足しにでもして頂戴」

「おぉ、太っ腹!」

 

山中先生の判断は、それを売るというものだった。

 

「いや、太っ腹というより……」

「押し付けられてるだけだろ!」

 

ただ、その真意を見抜いていたのか、澪と律の反応は冷ややかだた。

 

「でも、いいんですか? かなりいいギターですけど」

「ええ。保存状態も悪いし、ちゃんと弾いてくれる人に買ってもらった方がこのギターも幸せだと思うの」

 

梓の問いかけに答えた山中先生の言葉には嘘花あった。

 

「あ、そういえば、楽器店での買取額アップのクーポンがあったから、それ使って」

「おぉ~、浩君も太っ腹だ!」

 

ふと、僕は自宅に届いていた買取額上昇クーポン(2割)のことを思い出したので、僕は快くそれを提供することにした。

まさか、これが飛渡でもない珍騒動へと発展するとは知らずに。

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃ行きますか」

「なあ、このケース誰が持つんだ?」

 

すべての始まりは、律のその問いかけだった。

今日は誰も荷物がやや多めだ。

多めとはいっても、どっさりといった様子は見受けられない。

もっとも唯だけは別だが。

ムギの大量の食器などについては深く考えないようにした。

きっと何らかの方法で持って帰るのだろうから。

それはともかく、問題になっているのは、誰がギターケースを持っていくかということだ。

見つかったギターはレスポールに比べれば重さは軽い方だ。

だが、それも持つのが非力な女子だとそれも大きく異なる。

 

(まあ、僕が持てばいいか)

 

唯一の男手なのだから、僕が持っても問題はない。

そんな結論に至った僕は、自ら立候補しようと手を上げようとした時だった。

 

「だったら僕が――「ちょっと待ったぁ!」――」

 

僕の声を遮るように律が待ったをかけたのだ。

 

「じゃんけんで負けたらケース持つゲームやろうぜ!」

「意味が分からない」

 

律の提案に、僕は速攻でツッコんだ。

いったいどんなゲームなのだろうか?

 

「いや、だからな。みんなでじゃんけんをして、負けたら決められた間はそのギターを持つっていう遊び。じゃんけんなら公平に……あ」

 

言葉通りに受け取ったのか、内容を説明する律は何かを思い出したようで言葉を止めた。

 

「浩介って、心を読むのって使えたりするのか?」

「当然。人の嘘を見抜くのに必要だから常時使えるようになってる」

 

”魔法”の二文字を口にしなかったのは非常にありがたかった。

部室内とはいえ、出入り口に近いところで口にされるのは非常に危険だ。

軽い魔法を使っているところを見られても、手品や見間違いなどといくらでもごまかしはいくが言葉はそうはいかない。

 

(まあ、どっちも目撃されれば危険なんだけど)

 

だからこそ部室では魔法のたぐいの話はあまりしないのだ。

 

(いつかこの部室に対盗聴盗撮の結界魔法でも展開しておくか)

 

そんなことを考えているあたり、僕にはもしかしたら隠す気など全くないのかもしれないが。

閑話休題。

 

「それって、解除は」

「できない。今のように出力を弱めることはできるけど、それでも少しでも集中すれば律たちがその時に強く考えていることは分かる。対策には真逆のことを思えばいいんだけど、そんなことをするのは難しいだろうし」

「それじゃ、ずるじゃないですか!」

 

梓からもっともな抗議の言葉が返ってきた。

 

「だったら、目を閉じればいい。僕のこれは目に入った人物の心を読み解くんだから。じゃんけんで全員がグーやチョキを出すまで目を閉じておけばいい」

「それじゃ、それでいこう」

 

(まあ、一番手っ取り早いのはやらないことなんだけど)

 

それを言うのはちょっとばかり空気を読んでいないと思ったので、僕は心の中にとどめておくことにした。

そして僕は目を閉じた。

 

「それじゃ、行くぞー!」

「本当にやるんですか?」

 

乗り気ではない梓が、律に尋ねる。

 

「おやおやー、梓ちゃんは負けるのがいやなのかなー?」

「む?! そんなことないです! やってやるです!」

 

律の挑発に見事乗せられた梓は、いつかの合宿の時に口にした言葉を言い放った。

 

「それじゃ、最初はグー」

 

(適当に出すか)

 

律の掛け声を耳にしながら、僕はそんなことを考えていた。

 

「じゃんけんポンっ!」

 

そして僕は適当にグーの手を出すのであった。

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