けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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お待たせしました。
第39話です。
題名で内容が分かるかもしれませんが、今回は歓迎会がテーマです。

もしかしたら恋愛描写は3年生編を予定していますが、もしかしたら2年生編から始めるかもしれません。
尤も、今はこの章を無事に終わらせることが先決ですが(苦笑)


第39話 歓迎会

「…………」

 

突然だが、僕にはとても重大な悩み事がある。

衣替えも終わり、徐々に夏に向かっていくこの季節。

梓が軽音部に入部してそろそろ2か月が経とうとしていた。

それ自体はいいのだ。

問題は……

 

「はぁ、楽しかった~」

「練習していないのに疲れました」

 

満足げの唯とは対照的に疲れた様子で肩を落とす梓だった。

そう、梓の言うとおり、練習が問題なのだ。

時間が経つにつれて唯たちの梓に対する歓迎ぶりはさらに拍車をかけて強くなっていた。

例えば、ティータイムの際には素早く飲み物が並々まで注がれたり、お菓子は僕たちよりも多めだったりなどなど。

例を挙げればきりがない。

それに比べて、練習の時間はほぼ0だ。

”オー”ではない、ゼロだ。

これまでも練習は全くと言っていいほどしていなかった。

それでも今までは練習とティータイムの比率は2:8の状態だった。

だが、現在はどうだろうか?

比率は0.1:9.9という、最低値ぎりぎりを記録している。

ちなみに、0.1は”これからの演奏をどうしていこうか”と言う内容の律のティータイムで出された疑問でもある。

これも数十秒後の唯の『このケーキおいしいよ!』で幕を閉じた。

これにはさすがに開いた口が塞がらなかった。

ちなみに、この二か月で僕と梓の方にも若干の変化はあった。

それが

 

「まああずにゃんには同情を禁じ得ないね」

 

梓への呼び方を唯が名づけたあだ名”あずにゃん”にしたことくらいだ。

 

「あの、浩介先輩。アズにゃんって呼ぶのはやめてくれませんか?」

「嫌だ」

 

後輩のお願いを、僕はバッサリと斬り捨てた。

 

「どうしてですか?!」

「僕のあだ名を笑ったから」

 

前にティータイムの際に唯が語った”浩ちゃん”というあだ名に、梓が吹き出しそうになっていたのを僕は見逃さなかった。

それから報復で僕も彼女にはあだ名で呼ぶようにしたのだ。

 

「あー、浩介って一度こうと決めると絶対に変えないからあきらめたほうがいいぞ」

「そんな……」

 

律の言葉に、青ざめる梓。

 

「まあ、あだ名で呼ぶときには、TPOを弁えるから大丈夫」

「お願いします」

 

学校を出たところでは梓という呼び方に戻しているのが、いい例だ。

さすがに吹き出しそうになっただけであのあだ名を言い続けるのは、かわいそうだと思ったからだ。

閑話休題。

 

今はまだ戸惑っている程度だが、いつ梓が、”やめる”と言い出してもおかしくない状況だった。

今の軽音部はただの休憩所へと成り果ててしまっている。

どうにかしなければいけないのは当然だった。

一番手っ取り早いのは、僕が練習をするように告げることだ。

だが、そこで問題が生じる。

 

(それを、僕はどの立場で言うのか……だよね)

 

僕はH&PのDKである。

そして、腕を落とさないためにはギターの練習をしなければいけないのは当然だ。

部活で練習ができない以上、自宅でするしかない。

そうすると、睡眠時間が大幅に削られてしまうことになる。

つまり、彼女たちの知らないところで、影響が出てしまっている状態だ。

僕が練習を促すのは、それをなくすためなのか、それとも純粋に梓をやめさせないようにさせるためなのかが重要になる。

前者ならば僕の注意は自分勝手なエゴに、後者ならば後輩思いの先輩……部員の一因ということになる。

そして、僕はどっちの立場なのかが、いまだにはっきりしていない。

それは今後もしないだろう。

ならば、別の方法でアプローチをするしかない。

僕は、その方法を探していたのだ。

しかしいつまで経ってもその方法が見つかることはなく。

時間だけがむなしく過ぎていた。

 

「あ、そうだ。私の家の近くにおいしいアイスクリーム屋さんがあるんだよ。一緒に行かない?」

 

帰り道、そう提案してきたのは唯だった。

 

「行きましょう、行きましょう」

 

そんな提案に、即答で賛成したムギをしり目に唯が”奢る”と口にした時はとても驚いた。

 

「は、はぁ……」

「違うよあずにゃん。返事は”にゃー”だよ」

 

そんな唯の提案に浮かない表情を浮かべる梓に、唯は真顔で指摘した。

 

「え?」

「はい、にゃー」

「に、にゃー」

 

首をかしげる梓に、唯は一押しするかのように猫の手をしながら猫の鳴きまねをするように促すと、梓は頬を赤くしながらもそれに応じた。

そして、僕と澪以外の全員がまるで猫を愛でるかのようにくっついて頭をなでたりしていた。

 

(完全に手懐けられてるし)

 

そんな僕の考えをよそに、唯の先導の元アイスクリーム屋に向かうと各々が好きア味のアイスを注文した。

ちなみに、梓のアイスクリーム代は有言実行とばかし、唯が奢っていた。

僕はストロベリー味のアイスを頼むことにした。

 

(チーズ味のアイスはないのだろうか?)

 

先ほど購入したストロベリー味のアイスを食べながら、僕はそんなことを考えていた。

全員がアイスクリーム屋の前に置かれているベンチに腰掛ける中、僕は梓の後方に立っていた。

 

(まだアイスの時期ではなかろうに)

 

確かに衣替えで夏服になり、少しだけ昼が伸びてきたような気もするが、まだ”夏だ”と言えるような気温ではない。

せいぜい”ちょっと暑くなってきたな”程度だ。

尤も、この感覚は僕を基準にしているのでもしかしたら皆にとっては”暑いな”と感じているのかもしれないが。

 

(にしても)

 

僕は再び視線を前の方で、ベンチに腰掛けながらアイスを食べている梓に向けた。

 

「どうかな、軽音部でやっていけそう?」

「えっと………このゆっくりのんびりとした雰囲気がちょっとあれですけど」

 

梓の前に移動してしゃがみこんで問いかけた澪に、梓は少しばかり言葉を選んで答えた。

だが、後半の”ゆっくりのんびりとした雰囲気”という部分が彼女の本音のような気もした。

 

「大丈夫! いつか慣れるから!」

『ていうか、慣れたくない』

 

そんな梓の肩に手を当てって唯が告げるが、梓の心の声が聞こえてきた。

読心術を使っていないにもかかわらずになぜか聞こえてくるということは、それほど強い思いなのだろう。

……きっと。

その後、アイスを食べ終えた僕たちは、いつもの信号機のところで別れた。

澪と律は家が同じ方向のため、一緒に帰っている。

変わって僕と唯に梓は途中まで帰り道が同じこともあって、一緒に帰っている。

 

「ねえねえあずにゃん。やっぱりアイスはバニラだよね?」

「は、はい」

 

そして別れ道まで唯と梓はいろいろな話をしている。

それがいつもの下校風景でもある。

 

(今だけならいいんだけど、これが常時だもんな)

 

部活中もこんな感じなので、あまりよろしくないことは明らかだった。

逆に、よく毎日話のネタがあるものだと感心するほどだ。

 

 

 

 

 

「このままは、まずいよな」

 

夕食も終わり、後は軽く勉強をするだけとなった中、僕は現状の軽音部について考えていた。

 

(梓のあの様子だと、来週までもてばいいほうかな)

 

どんどんと曇っていく梓の表情を見ていた僕は、このままで行けば梓は確実にやめるであろうというところまで来ているのを察知していた。

 

(手を打つなら今日中か)

 

今週中に練習をするようになれば、梓が辞める可能性は大幅に減少する。

 

(かといって、何をすればいいか……)

 

僕は直接的に練習をさせるように促すのはできれば避けたい。

よって、間接的にそれをしなければいけない。

 

「………明日の放課後に緊急会議を開くか」

 

結局僕に思い付いたのはそれだけだった。

僕は梓以外の全員にメールで明日の放課後に、梓を除いた全員で緊急会議を開くことを書いたメールを一斉送信した。

梓には明日の部活は休みであることを告げるメールを送信しておく。

これでまた退部の可能性が上がってしまったが、明日の会議でちゃんとした結論を導いたときの結果を考えれば、微々たるものであった。

その後送信した人全員から了解の旨の連絡が返ってきた。

 

(よし。これで準備は大丈夫)

 

後は明日に賭けるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いよいよ迎えた運命の日。

この日は土曜日で午前中のみの授業なので、いつもより長い時間を話し合いに割くことができる。

 

「それで、なんなんだよ。緊急会議って?」

 

全員が集まり、ムギがお茶を全員分入れ終えた所を見計らって律が口火を切った。

 

「今まで何も言えなかった、僕にも責任があるから皆だけを責めるつもりはないんだけど……」

「もったいぶらないではっきり言いなよ」

 

できる限りオブラートに包もうとしたが、それは律の一言で無駄になった。

 

「分かった。それじゃあ、はっきりと言わせてもらう」

 

その律の言葉を受けて、僕は直球で言うことにした。

 

「新入部員が来たからと言って、最近弛みすぎじゃないか?」

「そうか?」

「別に今まで通りだよ?」

 

僕の問いかけに、首をかしげながら律と唯が返してくる。

 

「では聞くが、ここ二か月で、練習をしたのはいつだ?」

「それは………」

 

僕の疑問に、律は腕を組んで考え込むが答えが出なかった。

 

「このままでは梓は辞める。というより、確実に辞める」

「え? あずにゃんが辞めるのは嫌だっツ」

 

(よし、ここまではいい感じ)

 

僕の言葉に慌てた表情を浮かべる唯の様子を見て、僕は心の中でガッツポーズをとった。

まず大事なのは、今どれほど危機的状態に立たされているかという事実を伝えることだ。

 

「こうなったら、梓の弱みを握ら――――あいたっ!」

「変なことを言うと、叩くぞ」

 

カメラを片手に、卑怯なことをしようとする律の頭をハリセンで叩いた。

 

「もうすでに……叩いてるじゃないか」

「つまり、浩介が言いたいのは、活動計画を立てたほうがいいんじゃないかということ?」

 

頭をさすりながら抗議する律をしり目に、澪が僕の言いたいことを組んでくれたのか、分かりやすくまとめてくれた。

 

「そう言うこと」

「活動計画?」

 

頷く僕に、同いう意味なのと言いたげな表情で首を傾げてくる唯。

 

(内容のことで首をかしげてるんだよね? 言葉の意味が分からないとかではないよな?)

 

唯だから後者だとしても不思議ではない。

……ものすごく失礼だけど

 

「そう言えば、活動計画をしっかり立てていなかったなぁ」

 

どうやらちゃんと考える気になってくれたようで腕を組んで考え込み始めた律の様子を見た僕は、ほっと胸をなでおろす。

 

(これで梓の退部危機は遠ざかるかな)

 

「よし、それじゃあ――――」

 

そして、僕は律の”活動計画”を聞くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、律の発案した活動計画が実行された。

場所は学校の部室……ではなく、近くの公園。

周辺は子供連れの母親や父親の姿があったり、貸出ボートで川を渡りながらいちゃいちゃするカップルの姿があった。

そんなのどかな場所で、広げられたのは楽器や楽譜など……ではなくレジャーシートと豪勢な料理の数々だった。

 

「はい、あずにゃん。食べて食べて~」

「これも食べてね」

「あ、あの……」

 

そしてレジャーシートの上では唯やムギが料理を梓に進めていた。

当の梓は困惑した様子で、視線を色々な場所に向けている。

 

「梓にはこのたい焼き、だ!」

 

そして律は強引に梓の口の中にたい焼きをツッコんだ。

 

「…………何故だぁぁぁぁっ!!!!」

 

ついに僕の中で何かが限界を迎え、大きな声で叫び声をあげてしまった。

 

「うお!? いきなり大きな声で叫ぶなって」

「そうだよ。迷惑になっちゃうよ」

 

そんな僕に、驚きをあらわにした律とケーキを手にしながらうんうんと頷く唯の二人に注意された。

 

「……失礼」

 

二人の言うことも尤もなため、僕は静かに謝罪の言葉を口にした。

 

「念のために訊くが、これが活動計画?」

「そうさ! 私たちに足りなかったのは、ずばり歓迎するおもてなしの心! なら歓迎会を開くのが一番さっ!」

 

間違いであってほしいという願いを込めて聞いた僕に、律は自信満々でまばゆいほどの笑みを浮かべて答えた。

そう、律が立てた活動計画というのは”歓迎会をする”というものであった。

今日この時この瞬間まで、僕はそれが律なりのジョークだと思っていた。

 

(この二か月間、常に歓迎会のような感じになっていたのを知っているのか?)

 

思わず律にそう問いかけたくなった僕だったが、楽しい雰囲気をぶち壊すようなことは避けたかった。

ただ、僕が言えるのは

 

(律に期待した僕がバカだった)

 

だった。

とはいえ、

 

「たい焼き……好きなの?」

 

たい焼きを口にして幸せそうな表情を浮かべる梓を見ていると、律の提案もある意味的を得ているのではと思えてくる僕なのであった。

 

 

 

 

 

昼食をとり終えた唯たちは、梓に遊ばないかと誘ったが本人は疲れたので休むと告げて断った。

すると、唯は”あずにゃんの分楽しむね”と言ってムギと律の三人で遊び始めた。

 

(歓迎する人を差し置いて自分たちが楽しんだらダメだろ)

 

さんさんと日が照りつけ、日光にさらされただけですぐに暑く感じるようになってきたこの頃、僕は太陽の光から逃げるように木の幹に寄り掛かりると大はしゃぎで遊ぶ唯たちに、心の中でツッコんだ。

 

(何だか、視線を感じるんだけど)

 

横で体育座りをしている梓からものすごい視線を感じる僕は、どう反応すればいいのかに悩んでいた。

 

「何かな?」

「あ、いえ」

 

どうやらそれは澪も同じだったようで、声を掛けられた梓は視線を僕たちから外した。

かと思えば再び梓からの視線を感じた。

 

「澪先輩は外でバンドとか組んだりしないんですか?」

「うーん、外バンか~。確かに面白そうだよね」

 

梓のその問いかけに、僕には退部することを示唆しているのではないかと感じてしまった。

 

(僕の邪推ならいいんだけど)

 

そんな澪に迫る黒い影があった。

 

「はは~ん。そんなことを言っていいのかな~?」

「な、何よ」

 

いつの間に来ていたのか、澪の横で不気味な笑みを浮かべる律に、澪は問いかけた。

 

「例えば、こんなのとかがあるのに」

「ち、ちょっと!? 何よそれはっ!」

 

律が取り出したのは写真のような気がした。

それに反応した澪は律から写真を取り戻そうと奮闘していた。

 

(あれって、間違いなく桜高祭の時のだよな)

 

一瞬見えてしまった写真の隅の方に写っているもので、何の写真家がわかってしまった。

ちなみに、これは余談だが澪の転倒事件はある意味伝説となりつつあるらしい。

あの時聞こえたシャッター音は、写真部の部員のモノではないかという噂があるか真偽は定かではない。

閑話休題

 

「浩介先輩はどうですか?」

「僕? そうだね……」

 

なぜかこちらにも質問が飛んできた。

梓の問いかけに考えてみた。

軽音部以外のバンドで演奏をする自分の姿を。

 

(………)

 

きっと、うまいバンドに入れば僕の力はかなり活かされるはずだ。

それでも

 

「考えてないかな」

「どうしてですか?」

 

梓のもっともな質問に、僕は即答で返す。

 

「外バンをすると色々とややこしいことになるから」

「は、はぁ……」

 

僕の口にした理由に梓は分からないと言った様子で相槌を打った。

梓に告げた理由は本当のことだ。

僕が所属する事務所”チェリーブロッサム”は、勝手な活動を許さない厳格な事務所で有名になっている。

ゲリラライブをするにしても、必ず事務所に話を通してから行わなければいけないのだ。

それは、金銭トラブルを回避するための策であり、自分たちを守るためでもあるので納得もしているし、特に異論もない。

では、今の僕の状態はどうなのか。

僕が軽音部でバンド活動をするのにあたって、事務所側には話を通していない。

だが、そのことで怒られたことは一度もない。

要は、金銭トラブルに発展するか否かのラインなのだ。

社長からは『最初にバンド演奏を大勢の前でする際には料金徴収等はしないように』と言われている。

この国では、バンド演奏等ですでにある他人の曲を演奏すると、使用料としてお金を支払わなければならない。

コンサート形式になってくると、この使用料に加え舞台の貸切料まで加わってくるので、利益はほんの1~2割なのだ。

一応これは営利目的ではなく、観客からお金を徴収しなければ大丈夫らしいので、それを知りたかったのだと思う。

当然だが、桜高祭や新歓ライブでも料金の徴収は行ってもいないし、僕たちに報酬金が支払われたこともない。

なので、事務所からは公には許可されていないが、認められているのだ。

だが、もし外バンをしようとすれば、確実に許可はされない。

というより、そもそもH&Pの皆が認めない。

僕が軽音部で活動を認められているのも、H&Pのメンバーが認めていることの方が大きい。

これ以上バンド活動を多くすれば、H&Pのバンド活動が疎かになる可能性がある。

そして、第一に挙げられる理由が

 

(僕は、こことH&P以外のバンドで活動する気はない)

 

それが一番大きかった。

僕が外バンをすることになる日こそが、軽音部をやめる時だろう。

 

(そんな日が来ないことを願いたい)

 

そんなことを考えていると、梓の背後に再び怪しい影が忍び寄っていた。

背後に忍び寄っていた山中先生は、梓の頭にウサギの耳の形をしたヘアーバンドを取り付けた。

 

「バニーもいいわね」

「ひぃぃぃっ!?」

 

顎に手を当ててつぶやく山中先生に、梓は顔を真っ青にしながら後ろに下がった。

 

「あ、さわちゃん先生!」

「ごめんねー。仕込みに手間取っちゃって」

 

(仕込みって何?)

 

見れば、山中先生の手にはジュラルミンケースがあった。

それを芝生の上に置くと、ケースを開いた。

そこには様々な衣装が入っていた。

ゴスロリ風のドレスだったり制服のようなものまである。

 

「あずにゃんが嫌だったら私たちが着るね」

 

(そう言う問題じゃない)

 

唯の言葉に、僕は思わず心の中でツッコんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから遊び続け、あたりはオレンジ色のベールに包まれていた。

唯たちは満足そうに次に行く場所をどこにするかを話し合っていた。

 

「…………」

 

僕と梓はそんな唯たちの様子をへとへとになりながら見ていた。

僕はともかく梓にとって、これほどまで壮絶な休日はなかったはずだ。

そう思えるほど振り回されていた。

僕は梓に同情を禁じ得なかった。

 

(もうこれは確定だな)

 

僕はこの時すべてをあきらめていた。

そんな僕の横に立つ一人の人物。

 

「皆!」

 

澪の一言で、話をしていた唯たちは一斉に話をやめて澪に視線を向ける。

 

「私たちは軽音部だから、明日は絶対に絶対に絶対に絶対に練習をするからな!」

 

澪の”絶対”を強調した叫びに皆は圧されるように頷いた。

結局、みんなを動かしたのは澪だった。

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