けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
お待たせしました。
今回で本章も終わりとなります。
一部登場人物のファンから石を投げられそうな気がしますが(汗)

そして、突然ですがアンケートを取りたいと思います。
内容は『各ヒロインごとのストーリー展開について』です。

回答は活動報告のほうからお願いします。
活動報告のほうで詳細を明記しております。
皆さんのご協力をお願いします。

なお、アカウントを持っていないなどの理由で活動報告にコメントができない場合は、自サイトからでも可能です。


それでは、どうぞ


第41話 答え

ライブハウスでの一件から数日が経った。

 

(困ったな)

 

僕はあることに頭を悩ませていた。

 

「はぁ」

「おいおい、何ため息なんかついてテンション下げてんだよ!」

 

思わずため息をついていると、慶介から激が飛んだ。

 

「そう言うお前は馬鹿みたいにテンションが高いな。そんなにいいことでもあるのか?」

「今日は体育だぞ! 女子のキャッきゃうふふを見れるチャンスだ―――ぐばぁ!?」

 

とりあえずバカなことを言う慶介の顔面を蹴る飛ばすことで黙らせた。

どうせ、すぐに

 

「痛ってえな。最近力つけてないか?」

 

このように回復するのだから。

 

「うるさい。能天気なお前には想像もできない悩みがあるんだよ」

「その悩みって、この間言っていた新入部員の子がらみか?」

 

言葉を吐き捨てて、ジャージに着替えるべく男子トイレに向かおうとその場を後にしようとする僕の背中に、真剣な声色の慶介の言葉が掛けられた。

ちなみに、男子の更衣室は今現在も設けられていないため、増設された男子トイレが臨時の更衣室と化している。

これが、元女子高の現実だ。

僕は慶介の問いかけに、頷いて答える。

 

「辞めるのか?」

「いや、分からない。今はその可能性が高いことくらいしか」

 

慶介の問いかけに、僕は首を横に振りながら現状の考えを告げた。

 

「そうやって、何でもかんでも諦めるのは良くないと思うけどな。信じれば救われるっていうじゃないか」

 

慶介からの指摘に、僕は何も答えられなかった。

 

「俺のようなバカだって、受かってるって信じて受かってたわけだし」

「確かにそうかもな。出なければお前がここにいることなどありえないしな」

「あの、自分で言っておいてあれだけど、頷かれると地味にきついっす」

 

慶介の言葉に説得力を感じた僕が頷くと、慶介から落ち込んだ様子の声が返ってきた。

 

「ありがと。慶介の意見、参考にさせてもらうよ」

「そうか? それならよかった」

 

僕は慶介に”後で”と告げると、今度こそ教室を後にする。

 

(それでも、このままで放置するのは非常によろしくないな)

 

僕は心の中でつぶやくと、進行方向を変えた。

場所は、梓のクラスの教室だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梓のクラスの教室前まで来た僕は、教室内から死角になる場所で教室から出てくる生徒が来るのを待った。

 

「あれ、浩介さん?」

「ん?」

 

そんな僕によく知る人物から声が掛けられた。

見れば、そこには憂の姿があった。

 

「こんなところで会うとは奇遇だね」

「あれ? お姉ちゃんから聞いていませんか? 私、ここのクラスなんです」

 

そう言って指で指示したのは、僕が立っている教室だった。

 

「そうだったんだ。まったく知らなかった」

 

最近は唯たちの話を聞き流している状態だったため、もしかしたら聞き逃していたのかもしれない。

 

「あの、何か用ですか?」

「ああ、実は僕の名前を伏せて梓を呼んでもらいたいんだ」

 

運よく憂に会えたため、僕は梓を呼び出してもらうように頼んだ。

 

「別にかまいませんけど、どうして浩介さんの名前を隠すんですか?」

「ちょっと部活関係でいろいろあってね。名前を言うと逃げられそうだから」

 

我ながら、もっとましなことを言えないのかと思うが、これ以外の言い方は僕は持ち合わせていなかった。

 

「わかりました。ちょっと待っていてくださいね」

 

(詳しい事情を聴かずに引き受けてくれるなんて、本当にできた妹だ)

 

軽くお辞儀をしながら中に入っていく憂に僕は、そんな感想を抱いていた。

それから待つこと数十秒。

ターゲットでもある梓が教室から姿を現した。

 

「あずにゃん」

「っ!?」

 

呼び出した人物を見つけるためか、僕に背を向けてあたりをきょろきょろと見回しているところに声を掛けると、その体が大きく震えた。

 

「その様子だと、病気ではないようだな」

「え?」

 

僕の言葉が意外だったのか、梓はこっちの方に振り返った。

 

「ここ数日部室に来なかったから、病気でもしたのかと思ったが、元気そうで安心した」

「べ、別に病気なんかじゃ」

 

ばつが悪そうに僕と視線を合わせようとしない梓の様子に、僕は苦笑しながらも言葉を続けた。

 

「どうして来なくなったのか、その理由は聞かないし、そのことで怒るつもりもない」

「それじゃ、何をしにここへ?」

 

梓から視線を外しながら言うと、尤もな疑問を投げかけられたため僕は再び視線を彼女に戻した。

 

「ちょっとしたアドバイスをね」

 

そう言って、僕は言葉を区切った。

 

「あずにゃんは軽音部をやめるのか? それとも続けるのか?」

「………」

 

僕の問いかけに、梓は何も答えなかった。

 

「急がなくてもいいから、しっかりと考えて自分自身で答えを決めること。決めたらいつでもいいから部室に来い。そこで梓の答えを聞かせてもらう」

「でも……」

 

僕の提案に、梓は難色を示した。

梓の気持ちもわからなくはない。

先輩たちの前で退部をすることを告げるというのは、僕が想像するよりも過酷なことなのかもしれない。

それでも、けじめというのは何事も必要なのだ。

 

「もちろん、無理やり引き止めさせたり罵声などを浴びさせないよう努力をすることを約束しよう。当然だが、その後偶然顔を合わせた時も自然と接することができるようにすることもね」

 

こればかりは他人の心なので、難しいが唯たちは根はいい人だ。

きっと僕の頼みを聞き入れてくれるはずだ。

 

「ただし、自分の口にした答えには責任を持つこと。一度自分で決めたことを撤回することも他者のせいには許さない。おそらく僕が罵声の一つでも浴びせるだろうけど」

「…………」

 

僕の言葉に、梓は真剣な面持ちで聞いていた。

 

「僕はどちらを選んでもらっても構わない。まあ、本音を言えばやめてほしくはないけどね。ようやく訪れた待望の新入部員という理由もあるけど、中野梓という存在は、軽音部のメンバーにとっていい意味で刺激を与える可能性があるからね」

「そうでしょうか?」

 

即答にも近い形で聞きかえされた僕は、思わず苦笑してしまった。

 

「まあ、梓にはこのまま続ける自由もありし、辞める自由もある。存分にどちらかの権利を使うといい。それじゃ」

 

僕は言うことだけ言ってそのままその場を後にした。

 

「え、あの? 浩介先輩?」

 

後ろで困惑した様子で声を掛けてくる梓に、僕は片手を上げて応じる。

僕は後ろを振り向くことはなかった。

 

 

 

 

 

その日の放課後、僕はいつものように部室へと向かう。

 

「あら、高月君」

「ん? 真鍋さん」

 

階段を上がろうとしたところで、誰かに呼び止められた僕が振り返るとそこには数枚程度の紙を手にした真鍋さんが立っていた。

 

「これから部活?」

「まあ、そんなところ」

 

真鍋さんの問いかけに、僕は頷きながら答える。

 

「それで、どうなの?」

「何が?」

「新入部員よ。続けていけそう?」

 

真鍋さんの言葉の意味するところが分からずに首をかしげている僕に、真鍋さんは分かりやすく説明してくれた。

だが、まず出てきたのは素朴な疑問だった。

 

「どうして、貴女が知ってる?」

「唯が言ってたのよ。『あずにゃんが部室に来ない』ってね」

 

疑問に答えた真鍋さんに、僕は軽く驚いた。

尤も、その驚きは”あずにゃん”と何の躊躇もなく口にしたことだったが。

 

「無理だろうな。おそらく、次に来るときは”退部届”を持参してくると思う」

「そう」

 

僕の推測に、真鍋さんは一言だけ呟いた。

 

「高月君は、彼女に続けてほしいと思っていないの?」

「そりゃ、もちろん思っているに決まってる。だが、辞めたいと言っている人に無理に居続けてもらうというのはお互いの為にならない」

 

だからこそ、梓にはどちらを選んでも構わないと言っているのだ。

 

「あなた、色々と損するタイプって言われるでしょ?」

「はは、正解。でもまあ、それでいい方向に向かうのであれば、構わないんだけど」

 

真鍋さんの鋭い指摘に、苦笑しながら相槌を打つと階段を上りきった。

そこは部室と生徒会室の分かれ道だった。

 

「それじゃ、また」

「会えたらね」

 

真鍋さんと別れの挨拶をした僕はさらに階段をのぼり部室へと向かうのであった。

 

(信じた者は救われる……ねえ)

 

慶介に言われた言葉がふと頭をよぎった。

 

(世の中には、信じただけではどうしようもないことだってあるんだよ)

 

ここにはいないやつに、僕は心の中で反論するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が梓に軽くアドバイスをしてからさらに数日が経った放課後のこと。

 

「あずにゃん、最近来ないね」

「来ないのかもしれないな」

 

ここ最近珍しく(かなり失礼だけど)毎日練習をしていた僕たちだったが、唯の口にした一言で、全員が手を止めてしまった。

 

「いや、来るんじゃない?」

「そうかな?」

 

僕の口にした予想の言葉に、唯は浮かない表情で聞いてきた。

 

(その時に『退部届』と書かれた封筒を持っているかもしれないけれど)

 

あまりにも酷いのでその予想だけは口にはできなかった。

そんな時、部室のドアが開く音が聞こえた。

ドアの方に視線を向けると、そこには梓の姿があった。

 

(やっぱり、そういうことか)

 

背中に自身の相棒でもあるギターケースがないのを見た僕は、梓の答えが何なのかを知ってしまった。

 

「最近どうして来なかったんだよ、梓? 毎日練習していたんだぞ」

「あずにゃーん!」

 

来なかった理由を問いただす律をしり目に、唯が梓に抱きついた。

だが、当の本人の表情は暗いままだった。

 

「どうした?」

「ま、まさか辞める……とか?」

 

表情がすぐれない梓に気づいた澪が尋ね、律が不安に満ちた表情で梓に問いかけた。

 

「そ、それだけは勘弁して下せえ」

「分からなくなって」

 

唯の言葉に、梓が体を震わせながらポツリポツリと口を開いた。

 

「どうして新歓ライブで、ヒック……皆さんの演奏で感動したのか、グス……しばらく一緒にやっていれば、グス……分かると思って……ヒック、でも全然わからなくて」

「あずにゃん……」

 

嗚咽交じりに紡がれたのは、梓の心からの叫びだった。

だが、言われてみれば、入部動機は”新歓ライブの演奏を聴いて感動したから”という類のものだった。

梓が、二か月も続けてきた本当の理由。

そんなもの、考えればすぐにでも思いついたはずだ。

 

(そんなことにも気付けなかったなんて……その結果こうして後輩を泣かせている………僕の方がどうしようもないバカだったんだ)

 

梓のその姿に、僕は気づかずに何もすることのできない自分に対して罪悪感に駆られていた。

そんな中、僕の方に視線を感じた。

見れば、唯たちが僕の方を見ていた。

その視線は”何か言ってやって”と告げているようにも思えた。

 

(……)

 

僕は無言で頷いて梓の方に向き合った。

 

『あなた、色々と損するタイプって言われるでしょ?』

 

真鍋さんに言われた言葉を思い出した。

確かに僕は損をするタイプだ。

だって、今だって非難されるようなことを言おうとしているのだから。

 

(でも、それでいいんだ)

 

それが、僕の役目なのだから。

 

「あんた、馬鹿じゃないの?」

「ッ!」

「浩介!」

 

僕の冷たい一言に、梓の肩が大きく震え、澪から罵声が浴びせられた。

 

「音楽の感じ方……受け取り方は、十人の人がいれば十通りある。だから、音楽の解釈に”答え”など存在しない」

 

尤も、作曲者が解釈について話しているのならば、それが答えになるが。

 

「僕たちは”中野梓”ではない。だから、その理由について答えを導くことは不可能だ。答えを導き出すのはあくまでも”中野梓”自信なのだから」

「何もそんな言い方をしなくても――「ただし」――」

 

律の非難の声を遮るように、僕はうつむかせている梓に言葉を続けた。

 

「梓が答えに導く助け程度のことなら、僕たちにでもできる……いや、僕たちにしかできない。そうでしょ? 部長」

「え? ………そうだな」

 

突然話を振られた律はしばらく沈黙すると、僕の言わんとすることを察したのか頷いた。

 

「それじゃ、梓のために演奏をするか。その時の気持ちの理由が分かるようにするためにさ」

 

律の呼びかけに、全員が応じた。

それぞれの楽器を構えると、律のフィルから始まった。

その曲名は『私の恋はホッチキス』。

先ほど完成したバッキングパート(僕が命名)入りのものだった。

でも、僕は演奏には加わらない。

 

(自分でまいた種は自分で回収しないとね)

 

要は自分に対してのフォローのようなものだ。

 

「梓、君はこの前どうして外バンをしないのかと僕たちに訊いたよね?」

「は、はい」

 

なるべく演奏を聴く梓の邪魔にならないように声のボリュームを落として問いかける。

 

「あの時の理由もあるけど、一番多いのは”皆と演奏をしていることが、とても楽しいから”なのかもしれない」

「え?」

 

僕の答えが意外だったのか、梓は無言で先を促してくる。

 

「それはもしかしたら他の皆もそうなのかもしれない……たぶん」

「たぶんじゃなくてそうなんだよ。私もみんなと演奏をすることが好きだからだだと思う」

「ッ!?」

 

断言することができずに、しりすぼみになっている僕の言葉に続くように話してくれたのは澪だった。

その言葉に、梓の目が大きく見開かれた。

まるで、何かを思い出したかのように。

気づけば、演奏は終わっていた。

 

「さあ、一緒に演奏しよう。梓」

 

澪と共に僕も自分のポジションに移動して、梓の答えを待った。

 

「………はい! 私、やっぱり先輩方と一緒に演奏がしたいですっ!」

 

それは、僕が心の中で望んでいた答えだった。

 

「良かったぁ~!」

「まあ、これからもお茶を飲んだり話をしたりとかをすると思うけど。それも軽音部には必要な時間なんだと思う」

 

梓が軽音部を続けることに対する喜びのあまりに、梓に再び抱き着く唯を見ながら言葉を続けた。

きっとその表情は苦笑に満ちているかもしれない。

 

「納得しているところ悪いけど、あの様子で説得力はあると思う?」

「え?」

 

僕の言葉に、視線を僕が指し示している方向に向けた澪が固まった。

そこには……

 

「燃え尽きた」

「もう当分演奏はしたくない」

 

長椅子に突っ伏すように座る唯と律の姿だった。

 

「本当ですか?」

「……たぶん」

 

その光景を見た梓も不安になったのか、澪に問いかけるが返ってきたのは説得力皆無の言葉だった。

結局、その後はいつも通りの軽音部の姿となった。

だが、梓の表情は前のように曇ることはなかった。

 

(いい方向に流れてくれてよかった)

 

僕は昔からすべてを破滅に導く存在だと言われてきた。

簡単に言えば、僕が行動を起こせば、そのすべてが逆効果になってしまうのだ。

 

「浩介君、お茶が入りましたよ」

「あ、うん。今行く!」

 

でも、今回だけはそうならなかったようで、僕はほっと胸をなでおろしながら、ムギの呼びかけに応じるとテーブルの方に向かのであった。

 

(生徒会に机の追加を頼まないとね)

 

今まで二の次にしていた机の数を増やすことを頼むと心の中で決めながら。

だが、僕はまだ気づいていなかった。

それから日も経たないうちに、僕が軽音部を空中分解させかねない出来事の、台風の目になるということを。




今回登場した下記楽曲は、すべて実在する曲です。

1:『私の恋はホッチキス』 けいおん! 劇中歌より
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