けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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第51話 説明!

「それじゃ、説明をさせてもらうよ。かなり長くなると思うから、それだけは覚悟してね」

「「合点です!」」

「……二人とも真面目に返事をしなよ」

「そうですよ!」

 

律と唯らしい返事の仕方に澪と梓から厳しい声が上がる。

 

「まあ、居眠りをされるよりはましだから」

 

僕はそうフォローの言葉を告げると、咳払いをして話を始めた。

 

「まずは、ここの世界について説明をするね」

 

そう告げて僕は説明を始めた。

 

「ここの世界は、皆も気づいている通り、唯たちが知っている世界ではない。ここは、人ならざる者が住まう世界、名前は『忘れられし』……そっちの言葉で簡単に言うと、”魔界”」

「ま、魔界って、ゲームやアニメに出てくるあれ?」

 

唯の問いかけに、いささか意味が分からなかったが、僕は頷いて答えた。

 

「ていうことは、魔王とかがいたりして――「いるよ。というか僕のことだし」――いるのかよ!? ていうか浩介かよ!!」

 

僕のカミングアウトに、律がのけぞる勢いで驚きをあらわにした。

 

「魔王というのは強さの称号のようなもの。僕はこの世界で一番強い魔法使いであるという意味。持ってつけられた二つ名が」

「二つ名は?」

「”死神浩介”。その名の通り、狙った獲物は決して逃さずに仕留める」

 

唯に乗せられるようにして、僕は二つ名を告げた。

ちなみにもう一つの名前があるのだが、彼女たちには言うことはないだろう。

 

「す、すごいんですね」

「それで、話を戻すけど」

 

僕は咳払いをすることで、話を元に戻した。

 

「ここにいるのは魔法使いとか魔女だとかそういう感じの者たち。そして、ここは通常の方法ではたどり着けないように厳重に保護されているんだ。僕だって特殊な方法を用いた転送魔法を使ってここに出入りしている。そのため魔法使いでない者がここに来ることは、限りなく0に近い」

 

とはいえ、先ほどのように魔力を有する者がここを不法に訪れてしまうことがあるのだが。

 

「それじゃ、どうして私たちが? 私達は魔法使いじゃないですけど」

「それはこの僕が保障するよ。皆は魔法使いではない」

 

憂はともかく、梓達とは部活動で一緒に活動をしているのだ。

魔力を持っていれば僕が真っ先に気づく。

 

「な、なんだか夢が壊されたような気分です。隊長」

「皆がここに来た理由は転送魔法の誤作動だ」

「ご、誤作動?」

「何だかしょうもない理由が聞こえたぞ」

 

僕の告げた理由に、律がツッコみを入れた。

確かに、しょうもない理由だ。

 

「この誤作動はどうしても直らない物だ。それゆえに僕も対策を施していた。それは”隔離結界”による空間を隔離する方法」

「空間を………角煮?」

「いや、気持ちは分かるけど。それは違うぞー」

 

腕を組み視線を天井の方に向けながら考え込む唯に、律がツッコみを入れた。

 

「簡単に言うと、僕以外の人や動物を追い出すみたいなもの」

「なるほどー」

 

唯が右の掌に握り拳を作っている左手をポンと重ね合わせる仕草をしながら、納得したのを確認して話を先に進めることにした。

 

「本来であれば、みんなもこれに伴っていつもと同じ空間に移動するはずだったんだけど」

「それがなぜか私たちが結界内に入ってしまったんですね」

 

僕の説明の先を読んだ憂の言葉に、僕は頷くことで答えた。

 

「何かおかしな現象とかが起こらなかった? ここに飛ばされる予兆の前に」

「おかしなことと言うと……あ、携帯電話が変になった!」

 

僕の問いかけに、澪が答えた。

僕は彼女から話を詳しく聞くことにした。

なんでも、いきなり圏外になり、そして待ち受け画面が砂嵐になったらしい。

 

「間違いない。それこそが隔離結界による影響だ。空間を捻じ曲げたせいで電波が通らなくなり、しまいには結界内の魔力が電子機器の調子をおかしくしたんだと思う」

「そう言えば、なんだか携帯電話の電源がつかなくなっちゃったんだけど」

 

唯から携帯電話を受け取った僕は、電源をつけようと試みたものの、確かに電源がつくことはなかった。

 

「世界移動の際に壊れたか……壊れた携帯はこっちで預からせてもらうよ。専門のスタッフがいるから修復してもらう」

「それなら、私も」

「私も」

 

僕の言葉に、律に続いて全員が携帯を差し出してきた。

僕は苦笑しながらそれを受け取ると用紙を入れていた茶色の箱に入れてふたを閉めた。

 

「それで、話を戻すけど。この結界は外から入ることは絶対に無理なんだ」

「え?」

 

僕の言葉に、驚きをあらわにする澪。

 

「それは魔法使いであっても。そうでない皆は特に」

「それじゃ、どうして私たちが」

「それが一番の問題」

 

梓の問いかけに、頷きながら僕は立ち上がった。

 

「これから言うことは、冗談ではない。つらい現実になるかもしれないけど、しっかりと受け止めるんだ」

「わ、わかったよ」

「………」

 

誰かが呑み込んだ時の音を立てる。

だが、全員が首を縦に振っていた。

それを確認した僕は、真実を告げた。

 

「皆の体の中に、僕の一部が取り込まれているんだ」

「…………」

 

僕の言葉に、一瞬の静寂が僕たちを包み込んだ。

 

『えぇ~~~~~~~~!!!?』

 

そして劈くような叫び声が僕を襲った。

 

「そ、そそそそそそそれって、どういうこと?!」

「私たち、浩君になっちゃうの?!」

 

やはりと言うべきか、混乱が起きてしまった。

 

「ごめん、言葉が不足していた。僕の魔力残渣が皆の体内に取り込まれているんだ」

「魔力残渣っていったい何? というより、そもそもどうしてそんなものが」

 

僕の説明で落ち着きを取り戻したのか、澪が疑問を投げかけてきた。

 

「魔力残渣とは、魔力のかすのようなもの。まあ、人体には害がないんだけど、時たま魔力反応で追っている魔法使いに本人と間違われてしまうことがある」

「それって、ものすごく危険なのでは?」

 

梓の言うとおり、これはかなり危険なものだ。

通常は魔法使いの場合だと自分が発する魔力の方が大きいので、このようなことは起こらない。

だが、魔法使いでない人でなおかつある特定の条件が重なると、誤認される事態が発生するようになるのだ。

 

「まあ、それの対策はちゃんと考えているから心配しないで」

 

とは言ったものの、魔力残渣は時間が経たないと体外に出て行かない厄介な物質。

そして、彼女たちの場合はそれが非常に難しい。

 

「でも、どうしてそんなものが……もしかして浩介先輩と一緒にいたからですか?」

「でもそれだと私までそれがいっぱいある理由に説明がつかないよ?」

 

梓の疑問に、憂が異論を唱える。

 

「梓の答えは半分合っている」

「半分、ですか?」

「正確に言うと、僕の魔力に触れたから」

 

それが魔力残渣が彼女の体内にある理由。

 

「唯たちもだけど、みんなは無意識的に自分のエネルギーを外部に放出、吸収を繰り返している。人によってはそれが、オーラのようなものに見えるらしいけど」

「へぇ、全く知らなかったよ。ということは私のおーらが、あずにゃんに吸収されているということ?」

「断言はできない。というより、その場にいる人物全員のオーラを取り込んだからと言って、体に異変が出るわけではない。皆は、取り込んだエネルギーを自分のモノにする技術を知らないんだから」

 

そこが一番不思議だった。

人間は力と知識さえあれば魔法使いになれるということの証明なのかもしれない。

 

「つまり、浩介君が放出している魔力を私たちが取り込んでいったからそれがたまったっていうこと?」

「それじゃ、憂はどうしてですか?」

 

ムギのまとめに頷く僕に、梓が疑問を投げかけてきた。

 

「魔力残渣は何も僕が放出する物だけじゃない。色々あるよ。例えば、去年僕が憂から受け取った風呂敷。あれも魔力残渣を放出するから」

「洗濯したんですけど」

 

思わず”汚れ物か”とツッコミたくなったが何とかこらえた。

 

「洗濯程度で落ちない。逆に魔力残渣を拡散させることになるだけ。残渣を消したい場合はその魔法を使うか薬品を使うしかない。まあ、後者は服も溶けて消えるけど」

「うへぇ、なかなか手ごわいんだね」

「まあ、それほど悲観するべきじゃない。さっきも言ったけど、人体にも影響はないし、僕と誤解して皆に危害を加えるような存在がこの世界に入った瞬間に、僕がすぐに察知して潰すから」

 

僕は自信をもってみんなに安心させるように告げた。

 

「浩介君何だかかっこいいヒーローみたい♪」

「そ、そう?」

 

ヒーローなどという言葉を掛けられたのは初めてのため、頬をかきながら相槌を打つ。

 

「照れてますな、律ちゃん隊員」

「照れておりますのう」

「ゴホンっ!」

 

二人の冷やかしの視線に咳払いをすることで話題をそらした。

 

「そう言うわけで、二人が飛ばされたのは外部エリアという、何もない場所。そこでは魔法などが使えなくなるから、誰も寄り付かない。入ればエリアに仕掛けられているセンサーに反応してサイレンが鳴り響くようになってるから」

「それじゃ、あのサイレンは」

「お前たちがセンサーを反応させたためになったんだろうね」

 

サイレンの理由がわかった憂に頷きながら、僕は説明した。

 

「それで、この建物は?」

「ここは魔法使いたちが事件を起こさないよう監視・事件解決を行う魔法連盟という場所。分かりやすく言えば警察の魔法使い版みたいなもの」

 

唯たちはまだよくわかっていないようだが、魔法使いたちが一番信頼し、脅威に思っているのがここの魔法連盟なのだ。

職員たちはみな優秀。

それでいて市民のために働くという、まさに尊敬に値するレベルの精鋭で形成されている。

尤も、一部にはそういうのとは無縁の者もいるが。

 

「それじゃ、法務課大臣ってすごいの?」

「さあ? ここではNo.3に入っているらしいけど」

「それって、かなりすごいじゃん!」

 

律から言われるが、僕にはあまりよくわからなかった。

 

「そんなわけないでしょ。僕は所詮連盟長のおまけだし。選挙で選ばれたとはいえ、すごいと感じることなんてしてないし」

「ちょ、ちょっと待って、今選挙って……」

 

僕の言葉に反応したムギが慌てた様子で言葉を遮った。

 

「法務大臣って選挙で選ぶの?」

「そうだよ。5年ごとに一回ね。候補者はいるにはいるけど、僕の批判をしてくれず、ほかの候補者通しでつぶし合うから結局は僕が当選を続けて……これで28回目だったっけ」

 

僕は一度も選挙でほかの候補者の批判はしていない。

それどころか、他社の掲げた公約を評価し、それに対する自分の立場などの説明しかしていないような気がする。

選挙とはよくわからない物だ。

 

「って、どうしたの皆? 固まっちゃって」

「あの、今28回って言いましたけど、浩介先輩いくつですか?」

 

なぜか唖然とする皆に問いかけると、代表して梓が問いかけてきた。

 

「あー、そういうこと」

 

それで何となく理解できた。

 

「人間の年齢に換算すれば16歳。ただ実年齢はその10倍はあるはずだよ」

「えっと、16に10をかけると……160!?」

 

計算をして僕の年齢を導いた唯が信じられないと言った様子で僕の方を見た。

 

「な、なるほど。だから大人びていたのね」

「ていうか、学校に通う意味ある?」

 

ムギに続いて律が手厳しい言葉を僕に投げかけた。

 

「念のために言うけど、学校は中学までしか通ってない。一応大学レベルの学力は有している。僕には学ぶことではなく”通うこと”に意義があるから」

「…………」

 

皆はそこから先を聞くことはなかった。

聞かれても答えないけど。

 

「ということは、私たちは敬語で話すべき? さん付けとか」

「同学年だから必要がない。それに敬語は嫌い。下級生だったらともかく同学年の人にまで言われるのは精神的に疲れる」

「そ、そう」

 

嫌いになったのは、個々の大臣をしているからだったりもする。

そう言う意味では魔法連盟は僕の好き嫌いに大きな影響を与えているようにも思える。

 

「以上で、説明は終わり。何か質問は?」

 

僕の問いかけに、みんなは腕を上げなかった。

どうやら納得したようだ。

まあ、納得せざるを得ないから仕方がないかもしれないが。

 

「ということで、これから僕の家まで行くからついてきて」

「え? どうして?」

 

僕の言葉に、律が訊いてきた。

 

「あぁ、ここから出るための門は今日一日使用禁止になってるから」

「なぜ?!」

 

僕の宣告に澪が声を荒げる。

 

「唯たちの不法侵入によって特別警戒態勢になったから」

『うぐっ』

 

僕の簡潔な返事に、全員の表情が固まった。

 

「安心して。寝着は家に余分にあるしタオルとかもあるからお風呂にも入れる。部屋もいっぱい余ってるから」

「でも、あの……下着が……その」

 

頬を赤くして恥ずかしげにうつむく梓に、僕は少しばかり考え込むとすぐに結論を出した。

 

「それはそれぞれの家から取り寄せるから安心して」

「取り寄せるって、どうやってですか?」

 

梓の問いかけに今応えてもいいが、少々時間がかかる。

これ以上応接室を占領するのも良くない。

 

「詳しい説明は家に着いてから。ここで話してもきりがないし、みんなも落ち着く場所の方がいいでしょ。まあ、ご希望であれば牢獄の方を用意するけど?」

『今すぐ家に行こう!』

 

僕の言葉に、みんなが団結した。

こうして、僕は唯たちのゲストを連れて高月家へと向かうこととなった。

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