けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

ものすごく話が飛びます。
ですが、かなり後になりますがしっかりと触れる予定です。

今回も魔法要素が前半のほうに軽く登場しますので、苦手な方はスルーをお願いします。


第59話 ゲスト

「ふぅ……覚悟していたとはいえ、少し疲れた」

 

一通りの作業を終えた僕は、息をつきながら別荘に戻っていた。

あの後、少しばかり大暴れした。

どちらかというとその後の作業が疲れる要因になったわけだが。

 

(そう言えば、梓はどうなってるかな?)

 

ふと、梓のことが気になった。

あの後梓には別荘の方に戻ってもらった(当然その間の記憶はない)が、ちゃんとたどり着いているかが不安になったのだ。

 

(まあ、梓を向かわせた場所に行けばいいか)

 

僕はそう考えると、梓が歩いて行った方へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、明かりがついてる」

 

梓が歩いて行った方へと向かっている途中で、ドアのガラス部分から明かりが漏れているのを見つけた。

 

(あそこはスタジオだったはずだけど……)

 

気になった僕は、いったん足を止めてガラス部分から中をのぞき見た。

 

「………」

 

そこには、目的の人物がいた。

僕はゆっくりとドアを開けた。

 

「ゴホン、ゴホン!」

 

僕は床に寝転がりながら抱きついている二人に向かって、聞こえるように咳ばらいをした。

尤も、一緒にいた唯が梓に抱きついているだけだが。

 

「にゃ!?」

「あ、浩君」

 

僕の咳払いに気づいたのか、梓が驚きの声を上げるのに対して、唯はいつものようにマイペースな感じで僕の名前を口にした。

 

「確かに世界は広いからそういう関係はいいのかもしれないが、少しばかり時と場合を考えるべきじゃない?」

「ち、違うんですよ! これは唯先輩と練習をしていて、それがうまく行ったから抱きつかれただけですっ!」

 

本当はどういう経緯かはわかっているが、少しばかり魔が差した僕の言葉に、梓が大声で反論してきた。

 

(あはは、疲れた体に大声はきつい)

 

「あー分かってるって。冗談だから、大きな声を出すのはやめてくださいなあずにゃん。頭に響くので」

「なっ!? 浩介先輩のイジワル!」

 

落ち着かせるように宥める僕に、梓はそっぽを向いてしまった。

 

「ごめんごめん、反応があまりにも面白くてね。というより、本当に元気だね」

「……次からは気を付けてくださいね」

 

僕の謝罪の言葉に、梓はしぶしぶと許してくれたようだ。

 

「それで、練習の方は続けるの? 続けるんだったら僕も付き合うけど」

「もちろんですたい!」

 

僕の問いかけに、唯は手を上げて答えた。

 

「あ、でも浩介先輩のギターは……」

「これで問題ないでしょ?」

「ですよね」

 

指を鳴らすことで取り出したギターケースに、梓が答えた。

 

「それじゃ、練習をしようか」

「おー!」

 

そして僕たちは練習を始めるのであった。

練習が終わったのは午前一時ごろだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、浩君」

「おっす、浩介。寝坊してないようだな」

「おはよう浩介」

「おはよう、浩介君」

「浩介先輩おはようございます」

「早いのね」

「おはよう皆。僕は寝坊助じゃないからね」

 

朝、身支度を終えてダイニングで朝食の支度を済ませていると、起きてきた唯たちが亜札をしてきたので、僕もそれに応じた。

 

「お、スクランブルエッグにトーストとはまたベタどすなー」

「ですわねー」

 

律の演技じみた言葉に、唯が便乗する。

 

「べたなのが一番いいの。文句があるなら二人は朝食抜きにするよ」

「「べたが一番! 浩介は一番!」」

 

僕の言葉に、まるで手のひらを返すように叫ぶ二人に、僕はある意味尊敬の念を覚えた。

 

「早く食べよう。せっかくの料理が冷めるから」

「はーい」

 

僕が促すと全員がテーブルを囲むように座った。

 

「それじゃ、いただきます」

『いただきます』

 

山中先生の言葉に続くように手を合わせた僕たちは、朝食をとるのであった。

 

 

 

 

 

「それでは、今日の予定を発表する!」

 

朝食を食べ終え、食器を片づけ終わったところで、リビングに戻った僕たちは、律の次の言葉を待つ。

 

「今日は……遊ぶぞー!!」

「おー!!!」

 

右腕を上げながら律が告げると、唯もそれに続く。

 

「こらこらー!」

 

僕が口を開くよりも先に、澪が叫び声を上げた。

 

「それじゃ、合宿の意味がないだろ!」

「えー。だって昨日だけじゃ遊び足りないんだもん」

 

澪の言葉に、唯が両手の人差し指をくっつけたり離したりしながら反論した。

 

(何だか、去年と同じ光景だ)

 

去年にもこんなやり取りをしたような気がする。

だが、今年はそうはいかない。

なぜなら今年は、

 

「そうですよ! 私たちは練習をするために合宿に来たんですよ!」

 

梓という強力な仲間がいるのだから。

 

「そう言う梓は昨日は真っ黒になるほど遊んでたくせに」

「うっ!?」

 

そんな梓も律の一言でバッサリと返り討ちにあっていたが。

 

「浩介は、反対だよな?」

 

そして向けられる視線。

なまじ去年は僕が”強引に”練習をするようにさせたため期待も高いのだろう。

だが、今年は普通に練習をさせるつもりだ。

 

「別に僕は構わないけど、いいのかな?」

「え、何が?」

 

そっぽを向きながら、僕は律たちに疑問を投げかけた。

 

「今日実は、みんなの練習に少しでも貢献できればと思って、プロのバンドを呼んでるんだよね」

『えぇ!?』

 

僕の言葉に、全員が驚きの声を上げた。

 

「う、嘘だろ?」

「本当だよ。というよりあと1,2時間もすれば来ると思うよ」

 

僕の作り話と思っている律が聞いてくるが、本当のことなので、僕はきっぱりと言い切った。

尤も、プロかどうかは僕にもわからないが。

 

「しかも、そのバンドのドラマーはとても鬼のように怖い人でね。もし到着した時に遊んでたりしたら……」

「「し、したら?」」

 

緊張の面持ちで言葉の続きを待つ律と唯に、僕は勝利を確信しながら答えた。

 

「うーん……良くて半殺し?」

「は………」

 

考え込む仕草をして告げた言葉に、律と唯(ついでに澪もだが)は固まった。

ちなみに、田中さんは怖いが、そこまではしない。

つまり、嘘だ。

 

(これが本人に知られれば僕が締められるけど)

 

願わくば、本人に知られないことを願おう。

 

「み、みんな―。今日は練習をするぞー!」

『お、おー!』

 

とはいえ、見事律に練習をさせる気にすることができたのだから、結果往来だろう。

その後、みんなは到着予定の時間までに各自で練習の準備をすることとなった。

 

「あの、浩介先輩」

「あずにゃんに、澪。どうしたんだ?」

 

練習を終えて玄関先でH&Pの皆が来るのを待っていると、梓が声を掛けてきた。

見れば後ろの方には澪の姿もあった。

 

「あの、私思ったんですけど浩介先輩が魔法を使って唯先輩たちに練習をさせる気を出させた方が早くないですか?」

「…………」

 

僕は梓の言葉に答えずに、続きを促した。

何となく、話には続きがあるような気がしたからだ。

 

「浩介先輩が、唯先輩や律先輩に練習をする気を出させているのは分かっているんです。でも、何だか私には今の浩介先輩の方法が遠回りをしているように思えるんです」

「それは、澪も同意見かな?」

 

僕の問いかけに、澪は控えめではあるものの頷いて答えた。

 

「ふーむ……」

 

少しだけ考える。

誤魔化す方法ではなく、分かりやすく説明する方法をだ。

 

「二人に訊くけど、テストとかでカンニングをして全教科百点を取ったらうれしいと思う?」

 

僕のその問いかけに、二人は首を横に振って答えた。

 

「それが、僕の答えだよ」

「あの、もう少しわかりやすくお願いします」

 

どうやら、僕の言いたいことはしっかりと伝わっていなかったようで、梓の言葉に僕はしっかりと説明をすることにした。

 

「一言でいえば、”魔法を使って成しえたことに意味はない”ということ」

 

全てはそれだった。

 

「仮に、僕が律と唯に練習をさせるように魔法で操ったとしよう。それって、唯と律の人間性を完全に潰してると思わない?」

「思います」

 

僕の挙げた例に、梓が頷いた。

 

「それじゃ、僕が練習をすることによって魔法の恩恵を受けたとしよう。これって完全に二人を動物扱いしてるよね? 芸をすれば餌を与える……動物に芸事を躾ける手段の一つ」

 

どちらも、人権を無視しているのは言うまでもなかった。

 

「僕はそういうのが嫌いなの。魔法を使った大会や戦いならばそういうことをするかもしれないけれど、そうでなければ僕はしない。いついかなる時も正々堂々と自分達の実力で勝負をしたいから」

「……浩介」

 

僕は二人から視線を外すと二人に背を向けた。

 

「僕は、二人がきっと練習をするようになると信じている。それが例え一週間に一日だとしても。僕は自主性を重んじたい。だからこそ、遠回りになってるんだけどね」

「浩介先輩」

「もちろん、ある程度のレベルを下回ったらこっちからアクションを起こすようにはするよ。そうだね……あみだくじをさせてその結果でその日の活動を決めさせるのはどう?」

 

僕はふと思いついた案を二人に話してみた。

あみだくじならば、完全に運のみになって、魔法が介入する余地はない。

ちなみに、ずるはしない。

 

「いいと思います。私は」

「ま、まあ。それだったら」

「じゃ、決定だね」

 

願わくば、それをする日が来ないことを願うばかりだ。

 

「二人は、準備の方は終わったのか?」

「ああ。もうすでに。たぶん律たちも」

「私もです」

 

澪と梓の返事に僕は”そう”と相槌を打つ。

 

「二人は、待機してるといい。僕はここでゲストの到着を待つから」

「分かった。行こうか、梓」

「はい!」

 

僕の言葉に頷くと、梓に声を掛けそのまま梓と共に去っていった。

 

「らしくもないことを言ったな。僕も」

 

それを見送った僕は、ポツリとつぶやいた。

魔法というのはとても便利だ。

魔法という力があれば、僕はこの世界のあらゆるジャンルで頂点に君臨することができる。

だが、それにいったい何の意味があるのだろうか?

僕の力は、くだらないプライドを守る物ではない。

だからこそ、僕は魔法をずるをする道具としては使わない。

この力は、家族や仲間を守るための矛と盾として使う。

それが昔自分で決めた”契約”だった。

でも、僕はそれを口にすることは今までなかった。

言うまでもないと思っていたのと、恥ずかしいというのが理由だったが、僕はそれを口にしたのだ。

 

「本当に僕は変わったよ」

 

先日、クリエイトから言われた言葉を思い出した。

そして、僕はこの後来るであろうH&Pの皆を玄関口で待つのであった。

 

 

 

 

 

「……来ない」

 

どれほど経ったのかはわからないが、一向に来る気配がない。

 

(時計は持ってないし……)

 

どうしようと考えた結果、時計を確認するべくリビングの方へと戻ることにした。

リビングでは冷たい飲み物を飲んでくつろいでいる律たちの姿があった。

 

「あ、浩介先輩」

「もう2時間経ったけど、まだ来ないのか?」

「というより、本当に来るのか?」

 

律と澪の問いかけが僕に浴びせられる。

 

「いや、来るはずなんだけど」

 

時刻はすでに10時を20分ほど回っていた。

本来であればとっくに到着していてもおかしくない時間帯だ。

だが、どう考えても到着している様子には感じられない。

 

「ちょっと外の方見てくる。皆は待ってて」

「あ、ちょっと!」

 

僕は律たちに言うだけ言って、リビングを後にして靴を履くと玄関を飛び出した。

 

「まだこの辺りには来ていない……気配を探るか」

 

僕は目を閉じて全神経を集中させる。

H&Pの中で最も強い気配を発しているのは田中さんだ。

田中さんの気配を探せば、たどり着ける。

 

「…………………は?」

 

結果はすぐに出た。

 

(何で近くから気配がするんだ?)

 

反応は近くの方から感じた。

それはどう考えてもこの付近に来ているということになる。

だが、近くには車のようなものはおろか人影すら見かけない。

 

「とりあえず、気配を感じたほうに向かってみるか」

 

僕は先ほど感じた方向へと足を進める。

 

「…………………」

 

そこに、みんなの姿があった。

 

「よっしゃ! 次は海水飛込みだー!」

「ちょっと待ちなよ。私も参加するからさ」

 

服を着たまま、海辺の方ではしゃいでいる田中さんたちの姿が。

 

(そう言えば、田中さんはそう言う性格だったよな。忘れてた)

 

いつもは厳しい正確の田中さんだが、時より羽目を外して大はしゃぎして遊ぶことがある。

それが、海だ。

田中さんいわく『海は俺の家のようなものだ。魂だ』だが、まさか遊んでいるとは思いもしなかった。

 

(時間が限られてるから、早め早めに頼むって言っておいたんだけどな)

 

明日はまた別の番組の収録があるため、早く帰してあげたいと田中さんたちの貯めを思ってお願いしたことをすっかり忘れているみんなに、僕は唖然としていた。

 

(とはいえ、こうしている間にも時間が過ぎるんだよね)

 

それはとても無駄な時間だった。

 

「すぅ………」

 

僕は息を大きく吸い込んだ。

そして、

 

「てめぇらっ! 何、油を売っていやがんだ!! 自分たちの本分を全うしないか、この大馬鹿者っ!!!」

 

大声で怒鳴り声を上げるのであった。

これは関係ない話だが、この時の怒鳴り声は、唯たちの方にも聞こえていたとか。

その時に地響きが起こったと言われたが、誇大表現だと判断することにした。

いくら僕でも、声だけで地響きを起こすことは不可能だ。

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