けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

今回より、魔法要素が強く出てきますので、苦手な方はご注意ください。
そして終わりのほうも中途半端な形になっています。
これは、作者が意図的にやっていることであり、未完成の話ではありませんのでご了承のほうをお願いします。

それでは、どうぞ


第63話 ループ

「………………おかしい。これは絶対におかしい」

 

朝、支度が終わった僕は、自室で呟く。

今日は、マラソン大会だ。

そう”またしても”だ。

前の時は勘違いだと思うことにしたが、今度ばかりは勘違いではすまされない。

僕はしっかりとマラソン大会で走っているのだから。

このことから判断すると、

 

「一日を繰り返しているな……これは」

 

そう思うのが妥当だった。

 

「問題は”なぜ”それが起こり、そして”どうやって”繰り返しているのか」

 

今の僕には、その情報が一切ない。

これでは、対策の打ちようがない。

 

「とりあえず、学校で考えよう。時間はある」

 

僕はそう結論を出していつものように自宅を後にするのであった。

 

 

「――――を誓います」

 

太陽の光がさんさんと照りつける中、生徒会長(名前は知らない)が台に上がって右手を上げながら宣誓の言葉を告げた。

僕はそれをすでに三回も聞いていた。

 

「それでは、よーい」

 

校長の掛け声とともに銃声が鳴り響く。

こうして、僕にとっては四回目のマラソン大会は幕を開けた。

 

(どうしてまた中盤から走ることになるんだ!)

 

軽音部の皆と一緒に走ろうと考えたのだが、並ぶ順番の問題なのか、はたまた別の問題なのか、今回もまた中盤付近を走ることになった。

 

(まあ、いいか)

 

走っている時間中に考えをまとめることくらいはできる。

それに何より、

 

(このマラソン自体が僕にとっては遊びだし)

 

去年も今年も、僕はそれほど力を出していない。

僕にとっては幼稚園の子供を追いかけているような感じだ。

少しばかり、窮屈な感じはするもののこれはこれで力の制御の練習になるのではないかなと考えていたりする。

なので、考える方に力を入れることにした。

 

(っと、もう1キロか)

 

1キロのポイントにたどり着き、周りの生徒が若干ペースダウンをし始めてきた。

だが、やっぱり軽音部の姿は見つからない。

 

(そう言えば、この辺りで梓の姿見えるんだったよな)

 

そんなことを思っていると、梓の姿が前の方に見えてきた。

 

「梓ー」

 

もう三回目にもなる僕は、しっかりと元の呼び方で梓の名前を。

 

「あ、浩介先輩!」

 

僕の声に気づいたのか、走る足を少しだけ緩めるとこっちの方を振り向いた。

その横に一緒に走っている二人の女子も一緒に。

 

「浩介さん、早いですね」

「それをそのまま憂達に返すよ」

 

少し走る速度を速めて彼女たちの斜め後ろにまで迫りながら、僕は憂に返した。

 

「あれ……やっぱり」

 

そんな中、梓が声を漏らした。

 

(まさか梓のやつ)

 

「こんにちは、浩介先輩」

 

深く考えるよりも前に、両サイドに髪を束ねた女子生徒が僕に声を掛けてきた。

 

「こんにちは……えっと、鈴水さんだっけ?」

「鈴木です!」

 

もう三回も聞いているが、若干覚えていない僕が名前を口にすると、彼女からツッコミが入った。

これで三回目だった。

我ながら、この記憶力の無さは恥ずかしいこと極まりない。

 

「失礼、鈴木さんだったね。次からは間違えないようにするよ」

「お願いします」

 

項垂れるようにお願いしてきた鈴木さんの姿に、僕は何が何でも記憶にとどめておこうと決めるのであった。

 

「ところで、唯たちは見たか?」

「唯先輩ですか? 見てませんけど」

「そうか……」

 

梓の返事に、僕は顎に手を添えて考える。

 

(ここを走っていないとなると、やっぱり終盤の方か)

 

よくよく考えれば軽音部は一部のメンバーを除いて、運動が得意そうな印象を受ける人物はいない。

どう考えても一番後ろの方を走っている可能性が高かった。

 

「あの浩介先輩も、良ければ一緒に走りませんか?」

「……鈴木さんが迷惑でなければ」

 

梓の提案に、僕は考え込みながら返した。

後ろに下がることは考えなかった。

速度をこれ以上落とすのは僕には無理だからだ。

走るのをやめて待つというのもあるが、それはそれでなんかいやだった。

 

「私は構わないですよ」

「それじゃ、お言葉に甘えて」

 

鈴木さんが頷いたので、僕は梓達と共に走ることにした。

 

(この後に鈴木さんからギターのコーチを頼まれるんだよな)

 

「あ、憂から聞いたんですけど浩介先輩ってギターなんですよね?」

「そうだけど、何か?」

 

そんなことを思っている最中、鈴木さんから声が掛けられた僕は、分からないふりをして先を促した。

 

「その、もしよければ私にも教えてほしいな、と」

「……? どういうことだ?」

「あ、純ちゃんはジャズ研究部でベースを担当しているんです」

 

僕の知っている鈴木さんの問いかけに、僕は理由がよくわからないのを演じる。

下手をすると予知能力があると思われかねないからだ。

そんな僕に、憂がすかさず説明をしてくれた。

 

「なるほど。だが、ベースだったら僕ではなく澪の方が適任だろ? ギターとベースとでは若干奏法も異なってくるし」

「そうなんですけど、ジャズ研の先輩から浩介先輩のギターは格好いいって聞いたので」

 

(それにしても理由が”かっこいいから”というのは、わかりかねるよな)

 

素直に喜んでいいのかわからない理由に、僕は再び心の中で苦笑する。

 

「まあ、考えておくよ」

「お願いします」

 

考えるとは言ったが教える可能性は限りなく0に近い。

理由としては部同士の問題だ。

軽音部とジャズ研究部はある種の競合関係……つまり、ライバルになる。

それぞれの部長が、部外者の介入を快く思うかどうの問題だ。

例えるならば、別の会社の社長が、ライバル会社の経営に介入するような感じだ。

どちらにせよ、律に話を通す必要があるが、それをする気は今の僕にはなかった。

僕をその気にさせる”何か”があれば話は別だが。

彼女には悪いが。

 

(やっぱり、間違いない)

 

そんな中、僕は梓に関してある確証を抱いていた。

 

(梓は、時間の繰り返しに気づいてる)

 

思えば前回の繰り返しの時に、梓から警告が出てきたのも、おかしかった。

おそらく、梓の中に時間が繰り返しているという概念が、無意識的に出ているのかもしれない。

 

「梓」

「は、はい。なんですか?」

 

そんな梓に、僕は走りながらさりげなく小声で話しかけた。

梓も小声でそれに応じる。

 

「梓、もしかして、今日を何度も繰り返していることに気づいている」

「ッ!? 浩介先輩もですか?!」

「え? なに? どうしたの、梓ちゃん?」

 

僕の問いかけに、大きな声で聞きかえしてきた梓に、憂いが不思議そうな表情を浮かべて梓に問いかけた。

 

「な、何でもないよ」

「……?」

 

慌てて答える梓に、憂は不思議そうな表情を浮かべたものの納得したのか、深く追求することなく梓から視線を外した。

それにほっと胸をなでおろす梓。

 

「今はまずいな。放課後、部室で待つ」

「分かりました」

 

僕は今はまずいと思い、梓にそう告げた。

そんなこんなで、僕たちは走りきるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………これで大丈夫かな」

 

先に部室にやってきた僕は、部室前の階段のところにある仕掛けを施していた。

僕は目を閉じて梓が来るのを待った。

 

(ん、梓だ)

 

おそらく急いできたのか、駆け足で階段を上がってきているのがわかった。

 

「ラ・ベネーリア」

 

そしてタイミングよく、ある魔法を発動させた。

それと同時に、ドアが乱暴に開け放たれる。

 

「はぁ………はぁ……こ、こんにちは」

「お疲れ。というより、そこまでは知らなくてもいいのに。どうぞ」

 

息を切らしながら挨拶をしてくる梓に、僕は苦笑しながらいつも梓が座る椅子を引いて座るように促した。

 

「ど、どうも……です」

 

席に着いたところで、紅茶を出すとお礼を口にした梓はそのまま紅茶に口をつけた。

 

「それで、あずにゃんには今日を何度も繰り返していることに気づいているということで、間違いはないかな?」

「はい。最初は気のせいだって思ったんですけど、あまりにも同じだったので」

 

僕の問いかけに、梓は頷くと答えてくれた。

 

「どうやら、今ここの時間は何らかの理由でループしているようだ」

「ループですか?」

「しかもただのループではない。魔法的要因によるループだ」

 

放課後まで考え続けた結果、今回の要因となっているのがループ現象(巻き戻しだが)であることを突き止めた。

 

「それって、時間を巻き戻しているっていうことでは?」

「そうとも言うね。ただ、ループの方がわかりやすそうだから、ループと銘打っているわけだけど」

 

梓の指摘に頷きながら、僕は梓の問いかけに答えた。

 

「そして、その原因となる物はこの部屋の中にある」

「部室の中にですか?」

 

僕は頷いて話を進める。

 

「魔力の流れが一昨日と違う。魔力を消費するものがある証拠。それを探し出さなければならないのだが………」

「何か問題でもあるんですか?」

 

梓の疑問に、僕は頷くと口を開いた。

 

「僕一人では、その根源の特定に、かなり時間がかかってしまうことだ」

「具体的にはどのくらいですか?」

「僕の推測が正しければ、少なくともあと35回繰り返す必要があるとしか」

 

特にこの後に今日中に提出する資料を全て片づけなければいけない。

終わったのは、午後11時30分ごろ。

それから30分で捜索できる範囲などたかが知れている。

 

「さ、三十?!」

 

あまりの数の多さに、梓が飛び上がった。

 

「三十がどうかしたの? あずにゃん」

「にゃ!? ゆ、唯先輩?!」

「あんた、いつの間に……というより、どうやってここに来た」

 

梓の背後にいきなりあらわれて声を上げる唯に、僕たちは驚きをあらわにした。

 

「え? どうやってって……あそこから律ちゃんたちと一緒に……あれ、律ちゃん? 澪ちゃん?」

「ループの魔法をキャンセルしてきたのか」

 

改めて平沢唯という存在が恐ろしく思えた。

 

「律たちはしばらく来ないよ」

「え? なんで?」

「ループの魔法を階段のあたりにかけてあるから。今は無限階段状態かな」

 

僕は唯たちに律たちが来ない理由を告げた。

 

「一体何をやってるんですか? 浩介先輩」

「少々込み入った話だからね。律たちは向こう側だから、知る必要はないし。ということで、今こっち側に来た唯にも話を聞いてもらうよ」

「え? え?」

 

事情が呑み込めない唯を無視して、僕は唯たちに席に着くように促すと現在起こっている事態を彼女に告げた。

 

「えっと、浩君の話だと、今日も何度も何度も繰り返しているんだよね?」

「そう言うこと。唯はどうだ? 既視感や違和感を感じたりしてないか?」

「む~~~~~」

 

目を閉じて眉間にしわを寄せて考え込み始める唯を、僕は待ち続けた。

 

「あ、そう言えば」

「感じてたんですか!?」

「うん。なんかね同じお菓子が出てきたからおかしいなーって」

 

唯が口にした違和感に、僕たちは開いた口がふさがらなくなった。

違和感を感じていたのはいいが、よりによってお菓子とは……微妙だ。

 

「でしたら、律先輩や澪先輩たちも?」

「いや。律たちはちっとも気づいていないし、違和感すら感じていない」

 

僕は梓の言葉を首を横に振りながら否定した。

 

「でも、どうして私たちだけが……」

「魔法による事象は、魔力を有していると把握しやすいことがある。今回もその通り、魔力を持つ僕はこの時間の経過の違和感を把握することができたわけだ」

「でも、私たちって魔力とかないんだよね?」

 

梓の疑問に答える僕の説明に首を傾げた唯が聞いてきた。

 

「ああ。それは検査でもしっかりと出ている。二人には魔法を使うほどの魔力はない。ただ……」

「ただ?」

 

僕が意味ありげに言葉を区切ると、唯が僕の方に迫りながら聞いてきた。

 

「二人の場合は僕の魔法を数回ほど直接体に受けているから、魔法に対する抵抗力がついている可能性がある。それで、僕の空間魔法をすり抜けたり、今回の事象の把握ができるのかもしれない」

「えっと、私は記憶を消された時のだよね?」

 

唯は記憶の操作によって、魔法に対する抵抗力がついたとみるのが最適だろう。

 

「私はなんですか? 覚えている限り、浩介先輩の魔法を受けたことなんてないですよ?」

「確かに”覚えている限りは”ないだろうね。だが、君は確かに唯よりも強い魔法を掛けられている」

「………?」

 

心当たりがない様子で首をかしげる梓をしり目に、僕は話を先に進めることにした。

 

「とにかく、今回の事象を何とかできるのは僕たちだけのようだ。そこで、二人に折り入って頼みがある」

「何何?」

「何ですか?」

 

興味ありげに訊いてくる二人に、僕は頼みごとを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、マラソンの後のお菓子は格別どすなー」

「そうですな~」

「おやじか、お前らは」

 

それから数分後、部室前の階段にかけていたループの魔法を解除してすぐにやってきたムギ達とともに、ムギが出してくれたケーキに舌鼓を打っている中、椅子にもたれかかりながら声を上げる唯とそれに乗る律に、澪がツッコみを入れた。

 

「でも、楽しかったわ」

「はい。また来年が楽しみですね」

 

とはいえ、梓とムギの二人はある意味間違っているような気がしたが。

しかし、このやり取りも三回見るとうんざりしてくるところがあるのは気のせいだろうか?

 

「はぁ~疲れたわ」

「あ、さわちゃん」

 

そんな中、ため息交じりに入ってきた山中先生に、唯が反応した。

 

「ムギちゃん、紅茶とお菓子をお願い~」

「分かりました」

「完全にたかってる」

「というより、教師の面目丸つぶれですね」

 

ムギが席を立って紅茶とお菓子の用意をしている中、律のつぶやきに僕が続いた。

 

「だって、大変なのよ。教師というのも」

「へぇ~」

「先生ですしね」

 

山中先生の反論に、唯は分かっているのいないのか微妙な声を上げ、梓は想像がついたのか頷きながら答えた。

 

(あ、そうだ)

 

僕はこの後に起こるであろうことを思いだし予備のトレイを頭上に構える。

 

「お待たせしました。紅茶が入り―――きゃ!?」

「……」

 

次の瞬間、ボードを持つ手に衝撃を感じた。

 

「だ、大丈夫かムギ?」

「わ、私は大丈夫だけど、浩介君が」

「……こっちは大丈夫だ」

 

ムギの言葉に導かれるように、全員がこっちを見るので、僕はボードを頭の方から退けて答えた。

 

「よ、よかった……」

 

ほっと胸をなでおろす様子のムギ。

 

「僕にも、お茶のおかわりをもらえるかな? それでこの件はおしまい」

「わ、わかったわ。とびきりおいしい紅茶を淹れるわね」

 

僕は、そんなムギに紅茶のおかわりをお願いした。

 

「お茶入りましたよー」

「ありがとう」

 

それから数分後、ムギが紅茶のおかわりが入ったティーカップを手に戻ってきた。

 

「あ、そう言えば浩君たちは順位はどうだったの?」

「僕はあずにゃんと同じだったと思うよ」

「浩介君はやっぱり早いんだね」

 

僕の答えに、ムギは紅茶のおかわりが入ったカップを置きながら言った。

 

「まあね」

「去年はトップでゴールしてた程よ」

 

そんな中、山中先生が、ウインクしながら人差し指を立てて補足した。

 

「あんたは化け物か!」

「あ、でも。浩君だから当然かー」

 

ツッコミを入れる律に、納得顔の唯。

 

「ずるでもしたのか?!」

「するか! 普通に走っただけだ」

 

律に掛けられたあらぬ誤解に、僕は猛反論した。

 

「そうよ。今回のコースは近道なんてないもの」

 

唯たちが示している言葉の意味を知らない山中先生は、言葉通りに受け取って僕の言葉に賛同した。

 

「あ、そうだ。走ってる時に、おいしいケーキ屋さんがあったんだよー」

 

ふと唯が話題を変えたことで、話はケーキ屋のこととなった。

 

「やっぱり、今日も練習は無しですか」

「あはは……明日は大丈夫だと思うよ……たぶん」

 

肩を落としている梓に、僕は苦笑しながらそうフォローの声を掛けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お風呂も入って、予習復習もできたし、残すは」

 

時刻は夜の9時30分。

やることをすべて終えた僕は、自室に入って腕を伸ばしながらつぶやいた。

 

「これか……」

 

そんな僕の視線の片隅に見えた段ボール箱に、先ほどまで上げていた腕を力なく降ろしながらつぶやいた。

それは魔法連盟での僕の仕事用の書類が入ったものだ。

 

「やれやれ、起訴か不起訴かを決めるのも大変だよ……」

 

ため息交じりに呟きながら、僕は段ボール箱の中からファイルを10個程度取り出した。

本当は500ほどあったが、これまでにコツコツやって終わらせたのだ。

それの提出期限は今日の23時59分59秒までだ。

だからこそ急いでやらなければならない。

 

「一つ10分以内に終わらせれば間に合うか」

 

ファイルの内容は数百ページにも及ぶが、何とかなるだろう。

……たぶん。

僕は、できる限り急いで仕事に取り組むのであった。

そして、二時間後の11時30分。

 

「終わったー!」

 

何とか仕事を終わらせることができた僕は、固まった筋肉をほぐしながら仕事を終えた解放感に浸っていた。

 

「さて、この書類を段ボールに詰めて……」

 

僕は段ボールの箱に10このファイルを詰めるとテープで閉じた。

 

「後は、転送システムで送ればいいだけ」

 

右腕を前方に掲げ、手を開くようなしぐさをしてホロウィンドウを展開させる。

そして『転送』の項目に手を触れると、目の前の段ボール箱が光りだし大きく光を放った。

光が薄まると、目の前の段ボール箱は跡形もなく無くなっていた。

 

(しかし、同じことを三回もするのはきつい)

 

「よし、行くか」

 

僕は気合を入れると杖状のクリエイトを手にする。

そして部屋の明かりを消して窓を開ける。

僕は認識阻害魔法を自身に施してから、窓から飛び出た。

そして流れるような動きで杖の上に乗った僕は協力者たちの家に向かうのであった。

 

「そろそろ唯の家だ。あずにゃん、電話を」

「は、はい!」

 

空を飛んで協力者の一人である梓にもう一人の協力者への連絡を頼んだ。

そうしているうちに、平沢家が見えてきた。

すると、唯の部屋と思われる窓が開いた。

僕はその窓の近くで止まった。

 

「ヤッホー」

「いいから、早く乗って」

 

まるで山に来た時のような声を上げる唯に、僕は促した。

 

「それじゃ、失礼します……っと!?」

「あ、危な!? 気を付けてよ」

「えへへ、ごめんごめん」

 

バランスを崩しかける唯の手をつかんで、僕は梓の後ろに座らせた。

 

「狭いですのう」

「当然だ。これは乗ったとしてもそもそも二人が限界だ」

 

不満を漏らす唯に、僕はため息をつきながら答えた。

今もクリエイトは念話で悲鳴を上げ続けている程だ。

 

「しっかりつかまって。飛ばすよ!」

「了解であります!」

 

僕は魔力をいつより三倍ほど消費させることで学校へと向かうのであった。

 

「やはり、警備員の姿があるな」

「そうですね」

「どうするの? 浩君」

 

学校の上空を飛行する僕は、校門付近で巡回をしている警備員の姿を見つけた。

 

「別のルートから侵入する」

 

そう答えた僕は、校舎の屋上の方へと降りたった。

そこは扉を開ければ部室に続くドアがあるので、非常に便利な場所だった。

 

「さて、今の時間は?」

「11時35分です」

 

ここに来るので5分の時間をロスしてしまった。

 

「僕たちのここに来た目的は覚えているよな?」

「はい。時間を繰り返す原因を探すんですよね?」

 

梓の答えた言葉に、僕は頷いて答えた。

そう、僕がここに来たのは時間経過を正常に戻すために、原因である物を探し出すことだった。

 

「放課後にも話したけれど、魔法連盟に頼んでいたのでは、一生掛っても捜索することができないので、僕たちだけで探す。探し方は覚えているよね? 唯」

「もちろんです! えっと、目を閉じて手をかざしていけばいいんだよね」

「正確には、全神経を掌に集中させればいい。魔力で動くものがあれば、掌がひりひりしたり暖かいものを感じたりするはずだから」

 

これは、魔力を持っていない人に向けた魔力根源捜索の方法だ。

魔力と言っても一種のエネルギーだ。

人間の肌で感じ取ることは十分に可能。

それを利用した捜索方法だ。

 

「おそらく、今回の原因物は巧みなカモフラージュをしている。だから目で見た物を信じずに、感じた者を信じるように」

「「はい!」」

 

僕の指示に、二人は活き活きとした様子で頷いた。

こんな夜遅い時間だというのに元気な奴だ。

ある意味感心してしまう。

 

「おそらく午前0時になった瞬間に、時間が巻き戻される。そうなったらマラソン大会をやり直すことになる。だから、できる限り急いで」

「は、はい!」

「もうマラソンは勘弁です」

 

唯の言葉に、僕も同意見だ。

そしてお互いに頷きあうと、屋上から中に入るドアへと向かう。

そしてドアノブに手をかざしてつぶやく。

 

「オープラ」

 

たった一言でドアのかぎが開き、僕たちは中へと足を踏み入れた。

 

「それじゃ、開けるよ」

 

僕は後ろにいる二人に声を掛けると、再びドアノブに手をかけて先ほどの呪文を口にした。

 

「よし、入るぞ」

「「おー」」

 

小声で告げた僕は、ドアを開けた。

だが、そこでとんでもないことが起こった。

 

「ぬぁにぃ、くぉれぇはぁ?」

 

僕を含めて動きがゆっくりになったのだ。

 

*分かりにくいため、元の速度で書いていきます*

 

「時間の流れが――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

「あれ? 私たち、確か部室の前にいたよね?」

 

気が付くと、僕たちは屋上の方へと戻されていた。

 

「梓、時間は!」

「は、はい! えっと、11時35分です」

 

梓が告げたのは、ここに来た時の時刻だった。

 

「どうやら、むやみに部室に入ると、時間を戻されるようだ」

「えぇー。でも、入らないと調べられないよ」

 

(おそらく、これは探知魔法)

 

僕はこのからくりをすぐに突き止めていた。

探知魔法とは、監視カメラとセンサーがセットになったようなもので、仕掛けてある場所に何らかのものが入ってきたことを検知するとさまざまなギミックを発動させる。

大抵は、術者への通告なのだが、今回はどうやら時間操作の魔法の発動らしい。

 

「だったら、これを使おう」

 

僕は二人にそう告げてホロウィンドウを展開すると『転送』の項目に触れた。

そして僕の前方に三枚の黒色のマントが現れた。

 

「あの、これはなんですか?」

「認識阻害と言って、そんなものからも姿を隠すことのできるマント。分かりやすく言えば、透明マント」

 

マントの説明をしながら二人に手渡していく。

 

「おぉ……これが伝説の」

「……終わったら返してね」

 

唯にくぎを刺しながら、僕はマントを頭から羽織った。

 

「あ、あれ?! 浩君が消えた!」

「二人もこうやって羽織って」

 

「は、はい」

 

驚きの声を上げる唯をしり目に、僕が促すと二人も、僕と同じようにマントを羽織る。

すると、僕の前から二人の姿が消えた。

これは唯たちが認識阻害によって、姿を見えなくさせられたことを意味していた。

 

「僕から離れないで」

「了解です、浩君隊員!」

「はい!」

 

僕はいるであろう二人に、声を掛けると先ほどと同じ要領で屋上を後にする。

そして中に入った僕は、音楽準備室ではなく、その横の音楽室のドアノブに触れると、魔法で鍵を開けた。

 

「え? 部室じゃないんですか?」

「部室だとまたさっきのようにされる。こっちにある連絡用の物置を使って、部室に入る。あそこはカギがかかってないから」

 

驚いた様子で聞いてくる梓に、僕はそう答えると音楽室に足を踏み入れた。

 

「唯、ちゃんとついてきてるか?」

「大丈夫だよー」

 

不安材料の唯に僕は確認を取った。

唯から返事が返ってきたようなので、どうやら大丈夫のようだ。

そして物置に通じるドアを開けた。

そして奥の部室に続くドアを慎重にあける。

 

「唯は出入り口付近を。梓はベンチ付近。僕はこの辺りを調べる」

「「はい」」

 

二人に指示を出した僕たちは、それぞれの場所を調べていく。

 

(違う……)

 

手をかざしていくが、なかなか見つからない。

そして時間が刻一刻と過ぎていき。

 

「浩君!」

「時間が!!」

 

そんな中、唯と梓の悲鳴にも似た声が聞こえた。

僕は、その声に反応して顔を上げる。

 

「どうし――――――

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