けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

今回で、本章は終わりとなります。
短くまとめるつもりが、またもや長い話になっていました。
そして、今回も魔法要素がありますので、苦手な方はスルーをお願いします。




第66話 一日の終わり

11時45分、桜ヶ丘高等学校内。

 

「またやってる。無駄なことを」

 

そこの一室内でほくそ笑む人物が見ていたのは、浩介達が魔法を使い周辺を白い光で包み込むところだった。

 

「それじゃ、また繰り返すんだね」

 

その人物はそうつぶやきながら、鏡に手をかざそうと―――

 

「そこの君! そこで何をしているんだい?」

 

したところで、その人物に懐中電灯の光と警備員の声が掛けられた。

 

「あ、ご苦労様です。私はここの生徒会の者です。ちょっと、忘れ物をしてしまったので、取りに戻ってきていたんです」

 

女子生徒は、笑顔で答えると学生証を警備員に手渡した。

 

「曽我部さんね」

「ええ」

 

少女――恵は、警備員のこおt場に、人当たりのいい笑顔で応じた。

 

「それじゃ……」

 

その時、警備員はほくそ笑んだ。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、恵は見えない力で両手を前方でくっつけるようにして拘束された。

 

「ようやっと見つけたよ。犯人さん?」

「な、何のことを―――」

「最初は不自然だなぁと、思っていたんだ。君の後姿が妙に”揺らぐ”んだもん」

 

警備員は得意顔で、説明を始めた。

それを恵は歯を食いしばりながら睨みつけるように、警備員を見ていた。

 

「でも最初は、確固たる証拠はなかったし、揺らいでるのも気のせいかなと結論付けてしまったけれど、この時間のループを考えると、無関係ではないのではと思うようになったんだ」

「………」

 

警備員の説明に、恵は何も反応を示さない。

 

「だからよく観察をしてみると、君だけ同じ行動をとっていないんだよ」

「何を言ってるんですか? 私はいつも通り行動してますよ」

 

恵の反論に、警備員は首を横に振る。

 

「例えば、宣誓をするとき、君は右手を上げていたが、その際の右手の角度が5度ぐらいずれているし、手の開く幅も数センチほど違う。ちなみに、君以外で時間のループに気づいていない人たちはすべての所作やフォームの角度や間隔、その他諸々が同じ事は確認済み。これが意味することは何か、わかるかい?」

「あ、貴方は一体……」

 

あまりにも異様な根拠に、恵の表情がこわばる。

 

「私か? 私の正体はこういうものさ」

 

警備員が不敵の笑みを浮かべながら指を鳴らした。

すると、警備員の姿がぐにゃりとゆれて崩れ始めた。

そして、それはゆっくりと別の人物の姿へと変わっていく。

 

「なっ!?」

 

その正体を目にした時、恵の表情は驚きに包まれた。

 

「た、高月浩介!?」

 

そこにいたのは、浩介の姿だった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

浩介(?)の前には粉々に粉砕された時計だったものの残骸があった。

 

「あの、電話が鳴っていますけどでなくていいんですか?」

「ああ、これ。これは合図だよ」

 

そんな中、先ほどからけたたましく鳴り響く電話の着信音。

 

「何を言ってるんですか?」

「浩君?」

 

浩介(?)の言葉に、困惑の色を浮かべる二人に、浩介(?)は笑みを浮かべる。

 

「さすがに違和感を感じるようね。さすがは選ばれた人間……勘がいいようで何よりよ」

 

そう言いながら、指を鳴らすと浩介の姿が崩れていき、それは元の姿へと変わる。

月の光に照らされるのは白いフードつきのローブのような服だけだった。

フードを深くかぶっているため、二人はその姿まで確認できない。

 

「だ、誰ですか!」

「ごめんなさいね。それは言えないわ。でも、私は貴女たちの味方で、危害を加えるつもりはないから。そんなに警戒しないでちょうだい?」

 

警戒心むき出しで、声を上げる梓に女性は穏やかな声で返した。

 

「どうしてなんですか?」

「だって、彼が私をここに来させた時に特に指示がなかったからね。そういう時は私は何も言わなくてもいいということでもあるから」

 

唯の疑問に、女性は窓の方を見つめながら言葉を返した。

 

「さて、もう夜も遅いし、いい子は帰る時間よ」

「あの―――」

 

女性は、唯の声を右手を上げることで遮った。

 

「リーブン・アロー・メジェスタ」

 

女性の紡ぐ呪文によって、音楽室に続くドアが一斉に開け放たれる。

 

「また縁があれば会いましょう」

「え、ちょっと……きゃあ!!?」

「にゃぁぁぁ!?」

 

女性の言葉に、返事を返すこともできず、唯たちはドアに吸い込まれるのであった。

そして、ドアは大きな音を立てて閉じるのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「それじゃ、あれはいったい誰―――」

完全複製(パーフェクト・コピー)

「は?」

 

僕の口にした単語に、犯人は口を半開きにさせる。

 

「全てにおいて完璧に模写してしまう能力。人だろうと力だろうと、すべてを。それを持ってるのが、僕だけだと思ったら大間違いだ」

「………鉄壁の盾か」

 

僕の説明で、どうやらあの鏡に写る偽物の僕の正体に気が付いたようだ。

 

「ここから部室を監視して、時間の巻き戻しや停止など諸々の操作をしていたというわけか。だが、時間操作の影響を受け付けていないことが逆に仇となったな」

「それはどうかな?」

 

僕の言葉に、犯人は不敵な笑みを浮かべながら反論した。

 

「あの時計には、爆破機能がついてるんだ! 指示さえ出せば、あいつらはお陀仏だ!」

「ならばやってみな」

 

犯人の言葉に、僕は促すように告げた。

 

「あ?」

「だから、爆破してみなよ。そのスイッチだろ? ほれ」

 

筒状で先端に赤いスイッチのようなものがついている物を僕は犯人の手に渡した。

 

「気でも狂ったか。ならばお望みどおりに……は?」

 

ボタンを押した恵だったが、何も変化がないことに慌てた様子で、ボタンを狂ったように押し始めた。

 

「爆破機能がついていることはもう把握している。だから、時計をこんな風に木端微塵にしたわけだ」

「なっ!?」

 

ホロウィンドウを展開して、部室の状況を犯人に見せると、驚きに満ちた声を上げた。

 

「で、なんでこんなくだらないことをした? 動機を言いな」

「許せなかったんだ」

 

僕が動機を言うように促すと、犯人はポツリポツリと動機を語り始めた。

 

「浩介様は、あのような低俗で知能程度が低い野蛮な愚者共といるべきではありません! 我が祖国で、腕を振るわれていた浩介様に、戻っていただきたい!」

「………やれやれ」

 

犯人の動機に、僕はそれしか口にできなかった。

 

「いいか? 魔族優位説の時代は終わったのだ。これからは、我々は人間と共に共存をしていく必要がある」

「なりません! 人間は再び我々を飼い殺しにする気だ!」

「確かにな。だが、それは魔族とて同じ、いいやつがいればお前のような犯罪者もいる。全生物がそういうもんだ。だからと言って閉じこもっていては衰退をもたらす。進化するには人類との共存が必要なのだ」

 

それは僕が前から持っていた持論だった。

 

「かなり長い服役になるだろう。そこからでいいからじっくり考えるんだな。衰退化進化を取るのかを。お前を広域魔法の無断使用と、高月家倫理規定法違反で逮捕する」

 

 

 

 

 

「お疲れ様。無茶な要望を出して悪かったね」

「まったくだよ。いきなり呼び出されたかと思えば、いきなり演技をしろだなんて」

 

僕が毎回降り立った屋上で、白いフードつきのローブに身を纏っている女性に、声を掛けるとどこか呆れたような声色が返ってきた。

その女性はこちらへと振り向くと、そのフードを脱いだ。

そして現れたのは青色の短い髪に赤い目をした少女だった。

 

「久しいな。何年ぶりだ?」

「ここに来る前だから約10年になるかな」

 

僕の疑問に、少女は簡単に考え込む仕草をすると答えた。

 

「そっちの方はどうなの? 順調?」

「順調と言われれば、そうだし。そうでないと言えばそうなるな」

 

首をかしげながら、僕は矛盾した答えを返した。

 

「クスクス……なにそれ」

「矛盾してるな」

 

少女が笑い、それに倣って僕も笑い出す。

 

「そろそろ戻りな。一時停止状態にさせた僕が言うのもあれだが、あまり長い間止めておくと、任務遂行に支障が出るだろ」

「大丈夫よ。この程度の停止なんて、良いハンデだから。それにあと少しで任務終了になるし」

 

僕の心配に、少女は自信に満ちた表情で告げた。

 

「早いな、おい」

「当然よ。この私を誰だと思ってるの? かの、最強の魔法使い高月浩介の一番弟子であり―――」

「僕の妹だもんな。当然か」

 

少女……妹に、僕はそう声を掛けた。

 

「それで、そっちの方はどうだったの?」

「こっちも成功だ。別室でモニターしていやがった」

 

妹の問いかけに、僕は空を仰ぎ見ながら答えた。

 

「兄さんの推測通りということね」

「ああ」

 

何回にも及ぶ時間のループ現象。

その時に見つけた不自然な点が、事件を解決へと導きだした。

あの時計に掛けられた探知魔法は、”術者への通達”のみの役割だった。

ならば、時間操作の魔法を制御する人物が、近くにいるはずだ。

例えば、原因となった時計が置かれた校舎内。

離れれば離れるだけ、見つからない可能性は大きくなるが、臨機応変な反応は難しくなる。

距離が開けば開くほど、魔法の具現化には時間差が生じる。

地球の反対側へと魔法を具現化させる際には最大で5秒程度のズレが生じるらしい。

要するに、この街の中からならば、せいぜい1秒程度のズレで済む。

たった1秒、されど1秒。

とっさの判断から魔法を行使して、それを具現化させる全行程を加味すれば、この1秒は致命的だろう。

だからこそ、即座に発動できる校舎内に留まっていたのだ。

しかも、魔法を使えば居場所が特定されるかもしれないという不安から、犯人は探知魔法を仕掛けて反応があれば、モニタリングするという形式にして。

尤も、それが居場所の特定につながってしまったわけだが。

 

「犯人が成りすましていた生徒は無事に保護して自宅に戻したよ。記憶の方も一通り削除して、適当な菊を植え付けておいたから、今回のことは何も覚えていないはず」

「そうか。これで、解決だな」

 

妹の報告に頷きながら、僕は事件解決を告げた。

こうして、僕たちの長い長い一日は、ようやく幕を閉じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことがあったのか」

「本当に大変だったよー」

 

翌日、放課後の部室で、僕は一連の事件について話していた。

 

「それで時計がなくなってたんだ」

「ムギもゴメンね。時計を壊しちゃって」

 

梓達にした約束通り、僕はムギに時計を破壊したことを謝った。

 

「ううん。気にしないで。もとはと言えば、私が持ってきた時計が原因だったんだから」

「でも、どうしてムギ先輩にそんなものが渡っていたんでしょうか?」

「犯人によると、彼女が僕の知り合いであることを突き止めていたらしく、彼女に渡せば確実にこの部室に持ち込まれると考えていたらしい」

 

あの後、魔法連盟の方から報告があり、時計をムギに渡したのは”そうすれば部室へと持ち込まれる可能性が高かったから”らしい

 

「部室に持ってこさせる理由ってなんだろう?」

「この部室には僕がいて常時魔力……魔力残渣だけどを放出しているから、そのおこぼれを吸収しようと考えたらしい」

 

時間操作の魔法には莫大な魔力を消費する。

しかも24時間ともなればかなりの量だ。

それを軽減するため、時計自体に魔力を蓄積させるようにしたのだ。

そうすれば、使用魔力量も必然的に少なくなるからだった。

 

「でも、浩君いつの間に犯人のことに気づいたの?」

「昨日、時計に触れた時にね」

 

昨日の放課後に、手を触れた際に僕はそれに掛けられている探知魔法が”術者への通告”しかなかったことに気が付いた。

さらに爆破機能なども仕掛けられているのも把握できたため、犯人確保と時計の完全破壊をする必要があったのだ。

 

「普通にやったのでは、犯人に気づかれるから、影武者を用意していつものようにやってもらったのさ。その隙に僕が犯人を拘束するという作成でね」

「でも、調査とかを始めるのに一日はかかるって言ってましたよね?」

「あれは正式に依頼すればの話で、一番頼もしい相棒が担当中の任務を強制的に止めて連れてこさせることくらいは、1時間もあればできる」

 

僕は紅茶を口にしながら梓の疑問に答えた。

尤も、最初ここに来たときはものすごく嫌味を言われたが。

 

「まあ、そのせいで書類が5倍に膨れたけどね」

「あ、あはは……」

 

まさに苦笑ものだった。

ちなみに、全部始末書だったりする。

理由は、妹を職権乱用でこちらに連れてきてしまったからだ。

 

「でも、その人はどうしてこんなことをしたのかな」

「なんでも、人間と馴れ馴れしくするのが嫌だったから。らしい」

「なんだそれ?」

 

ムギの疑問に答えた理由に、律が顔をしかめる。

 

「魔界では人間は”悪”で滅ぼさなければならない種族という認識だから」

「え?」

「魔女狩りというのが昔あったでしょ?」

「確か15世紀から18世紀のヨーロッパで行われたものよね」

 

この世界の歴史では、”悪魔と契約を交わした人間”という解釈で通っている

 

「その魔女狩りで、魔族が大量に惨殺される事態に陥ったんだ。ほかにも、自分の為に力を行使しないからという理由で死罪になった者までいるほどだ」

「ひどい」

「そんなの、あんまりですよ!」

 

僕の話に、梓がまるで自分のことのように怒りをあらわにする。

他の皆も口には出さないが顔をしかめていた。

 

「それで、人間は強欲で、自分のことを考えない野蛮の種族という風に言われてしまい、魔界では魔族こそが世界を束ねるのにふさわしいという魔族優位説までもが誕生してしまった」

 

本当はそれが原因で魔界という世界が隠匿されるようになったのだが、それは言わなくてもいいだろう。

 

「でも、皆も知っての通り、魔界にある家電や建造物は、全て人間界から技術を持ってきている。もはや魔族優位説というのは、魔界の衰退を意味する物へと変わりつつある。今僕は人間と魔族が互いに手と手を取り合い共存する、”共存説”を魔界に定着させる運動を進めている」

「それじゃ、浩介がここにいるのって――「それはない」――」

 

僕は澪の言葉を遮った。

 

「確かに人によってはそう捉えている物がいるのは否定しないが、だからと言って、みんなが気を使うことはない。必要なのは”いつも通り、生活すること”だ。気を使いだした瞬間に、すべては終わりを意味するから、それだけは覚えておくといい」

「浩君」

「何?」

 

きっぱりと澪に告げた僕に右手を上げながら声を上げた唯に、用件を尋ねた。

 

「全然わかりません!」

「…………」

 

唯からの申告に、僕は思わずずっこけてしまった。

唯はある意味で期待を裏切らない存在だ。

 

「だったら、それでいいんじゃない」

「えー! 何だか誤魔化されたような気がする!」

「あ、そう言えばあの女性は誰だったんですか?」

「うーん……秘密」

 

抗議の声を上げる唯をしり目に梓が問いかけてくるが、僕は少しだけ考えこんで出した結論は秘密にすることだった。

 

「おやおやこれはあやしいですねー」

「勘違いしないで。皆は知らなくていいことだし、それにどうせ会うこともないからだ」

 

変な勘繰りをしようとする律に、僕は釘を刺した。

本当のことを言うと、あまり紹介したくない。

妹は、根はとてもいいがすごく変わり者だ。

それにあいつは僕のことをいろいろ知っている。

それを皆に言われるのがとても嫌だった。

 

「ぶーぶー。横暴だ!」

「そうだ~! 我々は頑固として名前を言うことを要求する!」

「さあ、練習でも始めるか」

 

律たちの抗議をすべて切り捨てた僕は、席を立ちながら告げた。

 

「はい! 分からないところがあるので、そこを教えてもらってもいいですか?」

「もちろん」

 

すぐに目を輝かせて梓が訊いてきたので、僕は即答に近い形で頷いた。

 

「律ちゃん隊長、浩君たちが逃げるであります!」

「こうなったら、私たちも練習に加担するぞ!」

「了解であります」

 

結局、全員での練習ということになった。




最近、お気に入り件数の増減を気にしていたりします。
ただ、それを今日でやめようと思います。
というのも、件数だけでは相手の意思は全く見えてこないからです。

中には、私に対する精神的攻撃でする方もいるでしょう。
そういう人の狙い通りになるのが嫌なのと、本作を楽しみにしてくださる方々に楽しんでいただけるような話を考えていくことのほうがよほど有意義だと気付いたからです。

もちろん、ご指摘やアドバイスに関しては真摯に受け止める所存です。
次話からは新たな章となりますので、楽しみにしていただければ幸いです。
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