第一羽 羽ばたく鳥武神
「ここは……どこだ?」
俺、風山蓮は今絶賛迷子である。いやね、さっきまでバトスピのショップ大会出てたのまでは覚えてるんだよ、そのショップから出た途端、どういうわけか見たことのない町の風景になってたという。うん、どういうこと!?
「それとなんか左腕なんか重いし……って」
違和感を感じてよく見てみれば、あらまビックリ、見たことあるような機械が付いてるではありませんか。
「まさか……」
俺は恐る恐る機械を起動させると、やはりというかホロボードと液晶画面が光だした。まさかの遊戯王である。
「いったい……どういうことだよ」
もう訳がわからなくなった俺は街のネットカフェへとやって来て、とにかく調べた。何がどうなってるのかさっぱりわからない俺にとって重要なのは情報だった。
(街の名前は住んでた所と同じ……そんで、やっぱり遊戯王がこの世界のメインカードゲーム、か)
いくら調べてみてもバトスピのバの字も検索に掛からない。まぁそれに関しては仕方ないのかもしれないが、問題は
(ただデッキだよな……)
そう、一番の問題がそれだった。何せ調べてみれば、大幅に効果が変わっていたり、『死者蘇生』とかが入ってたりしてるものの、だいたいが俺がバトスピで使ってるデッキのカードそのものだった。
(まぁ動き自体はそこまで変わるものでもないし、あとはルールとの差を埋めないと……)
まぁ遊戯王のルール自体は把握してるから、そこまで問題になるとは思ってもないが、まぁ覚悟はしておかないとな。
「……そういや、俺の家ってどうなってるんだ?」
今思い出したが、一応こっちに来てまだ数時間、現在進行形で自宅の場所が分からなくなっていることに気がついた。デュエルディスクにそんなのメモられてないかと確認すると、一応自宅(調べてみるとマンションの一室で、どうやら独り暮らし用の学生寮だった)の住所が書かれていた。
既に夕方なため、自宅(仮)に向かうことにした俺は、受付で使用料を払って外に出ようとしたその時、ドアがいきなり割れた。
「な、なんだ!!」
まさかの事態に俺が驚いて現場を見ると、そこには見るからに不良、ヤンキーといえる服装の男に一人の青年が倒されていた。
「テメェ!!人にぶつかっておいてなんだオラァ!!」
「す、すみません!!」
どうやらただ単に喧嘩をしてるようだが、まぁ目の前でヤられて嬉しいものではない。
「店員さん、早く警察呼びなよ……」
俺が目の前の店員にそう言うが、気の弱そうな店員は頭をブンブン振るっていた。
「む、無理ですよ!!相手は有名政治家のご子息なんです!!」
「あぁ、そういうわけね……」
仕方ないというかなんというか、どこの世界でも警察というのは役にたたない代物らしい。仕方ないと思って俺は不良の方へ近づいていく。
「お兄さん、そこのところで勘弁してあげたらどうですか?」
「あァ?なんだテメェは!?」
「いたって普通の一般人ですよ。ほら、男の人も土下座してるみたいですし、これ以上やったら世間的にも……ね?」
「……チッ、次はねぇぞ」
俺の言葉が通じたのか、不良は舌打ちと共に青年に軽く脅して受付の方へ向かっていく。
「おい、お前……」
「ん?なんです?」
「少しむしゃくしゃするんでな……デュエルしろよ」
はい、呼び止められてお約束のデュエルしろ宣言ですね、分かります。やっぱりこういうのに絡んだらろくなことにならないな~。
「……別にいいですけど」
「へへ、おい店員!!ソリッドヴィジョンルームの用意しな!!」
不良はそう言って財布からカードを取り出して渡すと、店員はへこへこと受け取って後ろに向かっていく。そして出てくると右手には部屋の鍵を持っている。
店員に連れられて来たのは、それなりに大きな部屋で、背景に荒れた都市のような感じだった。
「先行はテメェにやる……好きなように掛かってきな」
「そうですか……それでは」
「「デュエル!!」」
蓮 LIFE 8000
不良 LIFE 8000
「俺のターン……俺は『森林のセッコーキジ』を攻撃表示で召喚!!」
『森林のセッコーキジ』 ☆1 風 A 800
召喚し参上したのは、アニメでも序盤はかなり活躍した『セッコーキジ』、うん、やっぱりかっこいい!!
「さらに俺は永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!カードを一枚伏せ、エンドフェイズに『切り株都市』の効果発動!!山札の一番上を確認し、それが風属性モンスターならば特殊召喚できる。召喚しない、または違うカードならばデッキトップに戻す。……カードは風属性の『ゲニン・スズメ』のため、フィールドに特殊召喚!!」
『ゲニン・スズメ』 ☆1 風 A 500
「これで俺はターンエンド」
蓮 LIFE 8000 手札二枚
フィールド
『新樹のセッコーキジ』 ☆1 A 800
『ゲニン・スズメ』 ☆1 A 500
『神樹の切り株都市』 永続魔法
伏せカード一枚
序盤にしてはパワーソースが少ないが……まぁ展開できるだけマシだろうな。
「俺のターン!!……随分と見たことのないモンスターだが、俺にはそんなの関係ねぇ!!俺は魔法カード『暗黒界の取引』を発動!!互いに一枚ドローし、その後一枚墓地へ送る」
蓮 手札 2→3→2
不良 手札 5→6→5
「墓地へ送られた『暗黒界の術師 スノウ』の効果発動!!デッキから『暗黒界の門』を手札に加え、発動!!さらに『門』の効果で、墓地の『スノウ』を除外し手札の悪魔族モンスター、『暗黒界の龍神 グラファ』を墓地へ送り、一枚ドロー!!さらに『グラファ』が効果で墓地へ送られたとき、相手フィールドのカードを一枚破壊する!!俺は『セッコーキジ』を破壊!!」
「くそ!!すまない、『セッコーキジ』」
「そして手札の『暗黒界の番兵 レイジ』を通常召喚。そして『レイジ』を手札に戻して、墓地の『グラファ』を特殊召喚!!」
『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 闇 A 2700
「『暗黒界の門』の効果で、『グラファ』の攻撃力は300アップ!!バトルだ!!『グラファ』で『ゲニン・スズメ』を攻撃!!」
「手札の『神帝マッハホウオウガ』の効果発動!!バトルフェイズにフィールドのカードを一枚デッキに戻すことで、手札から特殊召喚できる!!俺は『ゲニン・スズメ』をデッキに戻す!!」
『神帝マッハホウオウガ』 ☆5 風 D 2500
「構うもんか!!バトル続行!!」
「まだだ!!速攻魔法『ストームアタック』を発動!!自分フィールドの守備表示モンスターを攻撃表示にし、相手フィールドのモンスター1体を守備表示に変更する!!」
『マッハホウオウガ』 D 2500→A 2000
『グラファ』 A 3000 → D 1800
いきなり吹き荒れた突風によって、グラファは膝をついて座り込んでしまう。
「ち、俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
不良 LIFE 8000 手札三枚
フィールド
『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 D 1800
『暗黒界の門』 フィールド魔法
伏せカード一枚
「俺のターン、ドロー!!……俺はカードを二枚伏せ、ユニオンモンスター『オオヅツナナフシ』を召喚!!」
『オオヅツナナフシ』 ☆2 風 A 500
「『オオヅツナナフシ』が召喚に成功したとき、自分の手札を全て捨て、相手の手札の枚数分ドローする」
「チッ……俺の手札は三枚」
とりあえず引いたカードを確認すると、俺は少しだけにやりとした。
「『オオヅツナナフシ』は風属性モンスターに装備できる。俺は『マッハホウオウガ』に装備し、その効果で攻撃力及び守備力を200アップ!!」
『マッハホウオウガ』 A 2000→2200 D 2500→2700
「バトルだ!!『マッハホウオウガ』で『グラファ』を選択攻撃!!」
「ぐぉ!!」
『オオヅツナナフシ』の砲弾がグラファの土手っ腹に風穴をあけ、大爆発と共にフィールドから消え去った。
「ちぃ、だが『グラファ』は墓地にいる限り甦る!!」
不良は当然のように言うが、俺にとってはそれが一番困る。何せこっちはバトスピ勢だ、
「俺はエンドフェイズに入り、永続魔法『神樹の切り株都市』の効果で、デッキを一枚めくる!!……カードは『ゴクラクチョー』、風属性モンスターのため特殊召喚!!」
『ゴクラクチョー』 ☆4 風 D 1800
「『ゴクラクチョー』が特殊召喚に成功したとき、デッキから風属性・鳥獣族モンスターを手札に加える。俺はこれでターンエンド」
蓮 LIFE 8000 手札四枚
フィールド
『神帝マッハホウオウガ』 ☆5 A 2200
『ゴクラクチョー』 ☆4 D 1800
『オオヅツナナフシ』 ユニオン(マッハホウオウガ)
『神樹の切り株都市』 永続魔法
伏せカード二枚
「俺のターン!!……俺は二枚目の『暗黒界の取引』を発動!!」
「この瞬間、ユニオンされてる『オオヅツナナフシ』の効果発動!!相手がドローフェイズ以外でドローしたとき、このモンスターの表示形式を変更できる!!」
「んな!!(これじゃあ奴にダメージをあたえられねぇじゃねぇか……!!)」
『マッハホウオウガ』 A 2200 → D 2700
蓮 手札 4→5→4
不良 手札 3→4→3
「墓地へ送った『暗黒界の狩人 ブラウ』の効果発動!!デッキから一枚ドロー……さらに俺は魔法カード『暗黒界の雷』を発動し、伏せカードを一枚破壊し、手札を一枚捨てる」
「ぐ……(『ミラーフォース』が破壊されたか)」
数少なく入っていた本来のカードが破壊されて少し悔しく思うが、まぁ仕事しないと言われてるあれだからな、仕方ないと割りきる。
「墓地へ送った『暗黒界の武神 ゴルド』は効果で墓地へ送られたとき、特殊召喚する!!現れろ『ゴルド』!!」
『暗黒界の武神 ゴルド』 ☆5 闇 A 2300→2600
「俺は再び『レイジ』を召喚し、こいつを手札に戻して『グラファ』を特殊召喚!!バトルだ!!俺は『ゴルド』で『ゴクラクチョー』を、『グラファ』で『マッハホウオウガ』を攻撃!!」
「ぐ……ユニオンされている『オオヅツナナフシ』をリリースして、『マッハホウオウガ』の破壊を無効にする!!」
金色の悪魔の鉄拳によって、俺のモンスターは一撃で吹き飛ばされる。
「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
不良 LIFE 8000 手札一枚
フィールド
『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 A 2700
『暗黒界の武神 ゴルド』 ☆5 A 2300
『暗黒界の門』 フィールド魔法
伏せカード二枚
「俺のターン、ドロー!!……ついでにファイナルターン!!」
「んな!!」
俺の宣言に、不良はあり得ないと目を見開く。
「ふ、ふざけんな!!テメェの場には攻撃表示でも2000の『マッハホウオウガ』だけじゃねぇか!!」
「確かにな、けど、俺の切り札はお前のモンスターを圧殺する!!俺は魔法カード『死者蘇生』を発動!!墓地より蘇れ『ゴクラクチョー』!!」
『ゴクラクチョー』 ☆4 風 A 1000
「『ゴクラクチョー』の効果でデッキより風属性・鳥獣族モンスターを手札に加える。さらに魔法カード『トランスターン』を発動!!『ゴクラクチョー』をリリースして、デッキよりレベルが一つ上の鳥獣族モンスターを特殊召喚する!!」
俺がデッキからそのモンスターを選択すると、耳に響くようにそのモンスターの鳴き声が谺する。
「疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」
『鳥武神シシグイ』 ☆5 風 A 500
現れたのは黒い翼に白い鬣を纏った巨大な鳥がフィールドに舞い降り、巻き起こる暴風を体が襲う。
「攻撃力500?そんなモンスターでなにができるってんだ!!」
「まぁ待てよ、こいつの本気はここからさ、攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!!俺は『シシグイ』を選択し、デッキから『シシグイ』を二体特殊召喚する!!」
「だが、その効果によって俺もデッキから『グラファ』を選択して特殊召喚する……そんな雑魚モンスターでなにができるってんだ!!」
まぁ確かに、バトスピの世界でもこのモンスターを侮る人間は数多くいたけど、このモンスターの最大の強みは三体揃う事にある。なぜなら
「『シシグイ』のモンスター効果!!自分フィールドの鳥獣族モンスターの攻撃力は、フィールドの風属性モンスター1体につき200アップする!!」
「そんなの関係……いや、ちょ、ちょっと待て、テメェのフィールドには三体の『シシグイ』が居やがる……てことはつまり……」
漸くこいつも気づいたみたいだ。このモンスターの一番厄介なところに。
『鳥武神シシグイ』のステータスはお世辞にもそこまで強いものではない。パワーも低ければアタッカーとしても微妙、バトスピではコストが低いだけのXレアと思われていたことも多々あった。
けどその真価は『シシグイ』が複数体フィールドに存在することで輝く。何せフィールドに風属性(バトスピでは緑だが)がいれば居るほどに攻撃力は上昇し、複数いればその数値は二倍、三倍になる。これによって、数押しデッキならば最高峰の火力となるモンスターなのだ。
「俺のフィールドには、『シシグイ』が三体に『マッハホウオウガ』……全部属性及び種族は風属性・鳥獣族、よって攻撃力は200×4×3……2400アップする!!」
「さ、させるか!!永続罠『スキルドレイン』を発動!!LIFEを1000支払い、フィールドのモンスターの効果を全て無効にする!!」
不良 LIFE 8000→7000
「これでなんとか……」
「甘い!!魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動!!相手フィールドの魔法・罠カードの全てを破壊する!!」
「そ、そんな!!ミラーフォースまでが!!」
「さらに俺は伏せカード『手札抹殺』を発動!!互いに手札を全て捨てて、捨てた枚数ドロー!!」
蓮 手札 2→0→2
不良 手札 1→0→1
「さらに魔法カード『貪欲な壺』を発動!!『オオヅツナナフシ』、『ゴクラクチョー』、『セッコーキジ』、『ゲニン・スズメ』、『マッハホウオウガ』をデッキに戻して二枚ドロー!!」
「くそ、『抹殺』で墓地に送ってやがったのか!!」
そうだ。『ゲニン・スズメ』と二枚目の『マッハホウオウガ』は『ゴクラクチョー』の効果でサーチしていたのである。
「よし、俺は永続魔法『一族の結束』を発動!!墓地にあるのは鳥獣族のみのため、攻撃力が800アップ!!よって攻撃力は……」
『シシグイ』×3 A 500→1300→3700
『マッハホウオウガ』 A2000→2800→5200
「そしてラスト!!手札から『ケンゴーキジ』を通常召喚!!このモンスターも属性及び種族は風属性・鳥獣族、よってフィールドのモンスターの攻撃力はさらに600アップ!!」
『ケンゴーキジ』 ☆3 風 A 1500→2300→5300
『シシグイ』×3 A 3700→4300
『マッハホウオウガ』 A 5200→5800
「バトルだ!!『シシグイ』三体で、『グラファ』三体を攻撃!!迅雷のストームブリット!!」
「ヌァァァァ!!」
『シシグイ』の翼による連激が『グラファ』の鈎爪とぶつかり合うが、『シシグイ』の起こした風によって身動きを封じられた巨龍の悪魔は、巨鳥の爪によって頭を模擬落とされて爆発した。
不良 LIFE 7000→5400→3800→2200
「とどめだ!!『マッハホウオウガ』で『ゴルド』を攻撃!!」
「グァァァァァ!!」
不良 LIFE 2200→0
「よし、とりあえず勝利!!」
俺はデュエルディスクをもとに戻すと、対戦相手の不良に近寄る。さすがに攻撃力が6000以上のモンスターのパワーに吹き飛ばされたのか、彼はぺたりと座り込んでいる。
「おい、立てるか?」
「お、おう……」
未だに状況が呑み込めないのか、不良は戸惑いながら俺の手を取って立ち上がる。
「あ、……あの……凄かったっす……」
「アハハ、まぁ今回は俺が勝ったけど、次はどうなるか分からないからね、君なら僕にだってすぐに勝ち越せるようになるさ」
「そ、そんなの……無理ですよ、だって……」
彼が弱気にそういうが、俺はため息をついて軽く頭にチョップを入れる。
「別に負けたからって命が取られるわけでもないんだ、負けたならその理由を考えて、次勝てるように調整する、カードゲームのお約束だろ?」
「…………!!」
「まぁもっとも、他人が知らないカードで勝った俺が言うことでも無いけどね」
俺はそう言って彼の肩を軽く叩いて部屋を去ろうとする。
「あ、あの!!」
「ん?」
「名前……聞かせてくれないすか?」
彼が真剣にそう聞いてくる。別に誤魔化しても良いのだろうけど、それをしたらいけない気がして……
「風山蓮……一応高校二年生。名字呼びじゃなければなんとでも読んでいいさ」
俺がそう言うと、彼は途端に畏まるように頭を下げた。え?なんで?
「蓮さん……いえ、連の兄貴と呼ばせてください!!」
「あ、兄貴!?ちょ、ちょっと待て!?いったいなんでそうなる!!」
「あ、兄貴に着いていけばもっと強くなれると思うんです!!お願いします」
「何でそうなる!!」
俺は慌ててデュエルフィールドから出ようとすると、彼はすがり付くように俺の足にしがみついた。
「お願いします!!連の兄貴!!」
「兄貴って言うな!!ていうか離れろ―!!」
……結局、話したところ同じ学校の同級生だったらしく、普通に友人として接するという条件でなんとか離してもらい、俺は舎弟を一人手に入れた。……理不尽だ……。
オリカについては纏めてから活動報告にあげたいと思います。