あのナゾオトナとのデュエルから二日後の月曜日、放課後の部室にて俺達は大会に向けてのデッキ調整をしていた。
「そういえば、今大会にあわせて新規の制限改訂が来るのだったな」
「あぁ、そういえばそうね」
と、先輩方は思い出すように言ってる。まぁぶっちゃけバトスピカード主体の俺のデッキには関係ないと思いつつ聞き流す。
「む?聞き流すとはいけないぞ蓮、特に君にはだいぶ関わってくるところだろうしな」
「へ?」
と、思いきやなんか先輩方がこちらに矛先を向けてきた。
「なんだ、今回の制限改訂、君のデッキのカードのうち少なくとも三枚が制限、準制限に飛んでるのを知らないのか?」
「はぁ!?」
そう言われ俺は思わず公式サイトで確認すると、確かにその名前が書かれてあった。
「『ガンダーラ』に『ガルード』が制限……『スザクロス』が準制限……って、あんまり関係ないじゃ……」
まぁ確かにどれも強いモンスターではあるが、三枚とも単品積みしかしてないモンスターであるため問題なかった。が……
「……あれ?『切り株都市』……制限……なんでさ!?」
個人的にはこっちの方が被害甚大だった。
「そりゃ、『ドラグニティ』やら『幻獣機』やらの強力テーマにも応用が効くからな、寧ろ禁止にならないだけマシだろ」
「ウソダドンドコドン!?」
三積みしてたエース魔法がほぼ失われてしまって、展開力のブーストをどうすればと、俺は頭を抱える。というかほぼ動きが止まったようなもんだぞこれ!!
「なに考えてやがるんだ作者ぁぁぁぁぁ!!」
「…………という夢を見た」
「い、色々と凄い夢っすね」
昼休み、今日も今日とて学食に来た俺たちはそんな会話をしていた。
「なんだろうな……俺、作者に恨み作ったかな?」
「あれじゃないすか?作者が欲しいカードとかが当たらないとかじゃないすか?」
「そうなのかな~?」
(そうだよ!!レイジング・テンペスト三箱も買って覇王龍一枚も当たらないんだよ!!なんで全部『混沌巨人』なんだっての!!ふざけんなっつーの!! by作者)
「「な、なんか変な電波が……」」
「…………何言ってるの?」
と、ジト目で来たのはやはりというか蘭、どうやら今日は焼きうどんをチョイスしたらしい。俺の真横に座ると、なんの躊躇いもなくうどんを啜ってる。
「いや、なんか変な電波を……」
「冗談はデッキのチートドローだけにしなさい」
「……俺、そこまでチートドローしてないんですが?」
「初手または初引きで毎回のように『切り株』手札に加えてる癖に良く言う……」
それを言われると元も子もないんだが、やはりそれでもチートドローではない気が……
「ていうか、チートドローなら亮の方だろ?必ず初手に『スノウ』と『抹殺』加えてるんだからよ」
「……確かにそれもそうね」
「ふ、二人して辛辣っす!?」
いやいやいや、四十枚中三枚の俺の『切り株』に比べたら、なんで四十分の一の確率の『抹殺』を毎回のように初手で引けるんだよ。
「でも実際そこまで引けるのは寧ろ凄いと思う」
「そうすかね……寧ろ『抹殺』をデッキに組み込むと、どんなデッキでも初手引きするんで、逆に呪われてる気が……個人的には」
「「…………」」
いや、もうそれ体質なんじゃねぇの?初手抹殺体質って、シャドールとか暗黒界……あと六部衆なんかからしたら最高クラスだろ……それ。
「……あ、それとこれ……」
彼女は何かを思い出すと、胸ポケットから二枚のチケットを取り出して渡してきた。
「?これは?」
「私の今日のタイトル戦の観戦チケット。マネージャーに頼んで取って貰った」
「へぇ……タイトル戦ってことは、勝ったらなんか異名か何か付くのか?」
「当然、今回勝てば、プロ最年少記録と『悪魔』の称号獲得」
そういうと彼女はまたポケットから一枚の紙を取って机に広げる。
「タイトルは合計で28、モンスターの種族または属性がそれぞれのタイトル王者のネームパーツになる。私の場合、タイトルが悪魔だから、元の二つ名と合わさって、『紅蓮の悪魔』ってところね」
「ふーん、そういやタイトル戦の参加条件もやっぱりそういうのと関係が?」
「無くはない、私が挑む『悪魔』はデッキ全体のモンスターのうち、7割が悪魔族または『デーモン』と名のついたモンスターであること」
なるほど、と俺は呟く。確かに蘭のデッキは『レッド・デーモン軸リゾネーター』という、どこぞの元キングのようなデッキだ、充分満たしている。
「……そういう蓮はプロになろうとは思わないの?」
「う~ん、でなったとしても、後々タイトル戦で俺が出れるのは『鳥獣』だろ?だとしたら現タイトルの王者は多分『BF』か『RR』だろ?」
どっちも展開力が鬼強いため、ロースピード型の俺のデッキじゃ相性が悪すぎる。
「一応聞くけど、鳥獣の参加条件は?」
「……確か二つ、まずデッキ全体のモンスターのうち、6割が鳥獣族であること、もう一つが、デッキ内の魔法カードのうち、永続魔法及びフィールド魔法が合計で2種類以上存在すること」
「参加条件は……まぁクリアしてるのか?」
俺はそう言うと二人ともうんうん、と頷いてる。確かに俺のデッキのモンスターはエースの問題で全部が鳥獣族だし、永続魔法は三種類積んでる。まぁその分罠カードの割合がかなり薄いんだが。
「まぁ、もっとも、蓮の実力なら少なくとも下手なプロよりはマシだろうけどね」
「……いや、それはないだろ」
一応俺はまだ初めて数週間ないし数日の人間だ、一からのデッキ構築なんか一人じゃ全くできない位だし。
「……まぁそういうことにしておく。あと、授業に遅れる」
「「ま、またか!!」」
「なぁ亮、これって現実なのかな?」
俺は何処と無く魂の抜けた声で隣に座る友人にそう聞く。
「大丈夫っすよ兄貴、幻覚でも白昼夢でもなくて、ちゃんとした現実っす」
「いや、だからってよ……なんでVIP席なんだよ!!」
そう、なんと俺たちが居るのは個室……プロデュエルスタジアムの最上級VIPルームを二人きりで座ってるのだ。
そりゃ確かに、俺たちは蘭の同級生で友人だぞ?それだけでなんでこんな高すぎる部屋のチケットなんて持ってくるわけ!?パンピーの俺は緊張のしっぱなしなんだけど!!
「というか……亮は随分と馴れてるのな?」
「これでも親父が政治家っすからね、こういうところは何度か」
「ブルジョワめ……」
もう仕方ないと割りきり、俺は試合開始時間までの暇を潰そうと部屋の外へ出る。とりあえず試合観戦なんだし、売店か何かやってるだろうという安易な理由で。
「……おい!!どういうことだ!!」
「ん?」
と、何やらスタッフらしき男の人の怒声が聞こえてきた。興味本意で近づいてみると、男三人がどうしようかとうんうん唸っていた。
「どうかしたんですか?」
「ん?君はVIPの……実はエキシビションデュエルの対戦相手がドタキャンされてしまってね……」
「しかもエキシビションデュエルの対戦開始まで残り五分ぐらいしかなくて、正直言うと困ってるんだよ」
「まぁそいつも実の姉が事故にあったなんて理由だから、ドタキャンの理由も分からないでもないんだがね……それでも代理のデュエリストを呼ぶ時間も無いし……」
と、スタッフがう~んと頭を抑えている。
「……大変ですね」
「うぉ!!」
と、いつの間にか後にいた蘭の声に驚いて変な声をあげる。
「ら、蘭選手!!」
「……客席とかVIPの人間で他のプロデュエリストは?」
「ざ、残念ながら、ここには……」
「…………そう」
そう言って蘭は少し考え始め、数秒して此方に目を向けてきた。うん、何を言いたいのか良く分かった。
「……一人だけ、私に心当たりがある」
「ら、蘭選手それは……」
すると此方に顔を向けてニッコリと笑みを浮かべてきた。慌てて逃げようとするものの、襟を掴まれてしまいそれもできない。
「……出番だよ、蓮?」
どうやら俺には巻き込まれ体質があるらしい。