スピリットが遊戯王モンスターになってた件   作:ドロイデン

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第十二羽 嵐のあとは台風 前編

 さて翌日、前日にプロとのいきなりのデュエルを終えて朝起きて俺が見たのは、外に大量に待ち伏せしてる報道陣の姿だった。

 

「……何これ」

 

「……多分、私と貴方のことを取材に来た連中よ」

 

 いきなりの声に驚いた俺が見たのは、なぜかYシャツだけを羽織って下に薄い朱の下着だけしか纏ってない蘭が……って不味い不味い!!

 

「おおおおま!?な、なななんで!?」

 

「…………昨日は、激しかった」

 

「なに勘違いされるような事を言ってるんですかお馬鹿様!!」

 

 そりゃ確かに、昨日はプロの試合があって体力的に激しかったのは分かるけど!?言い方ってものが!!

 

「?一緒のベットで寝てたのに?あんな熱い夜を」

 

「余計なこと言うなぁぁぁぁぁぁ!!あと、今すぐに服を着ろぉぉぉぉぉ!!」

 

 ちなみに熱い夜なんか過ごしてないからな!!絶対に、絶対にだからな!!

 

 

 

「それで、外のマスコミは……って、お前が勝ったからそのインタビューが目的か」

 

 とりあえず互いに着替えた(マンションが同じというのはこういうときに楽だな)うえで、俺の部屋で朝食のグラノーラを頬張っていた。

 

「ん。蓮がプロにああも勝ったんだから当然。でないと恥ずかしい」

 

「そうですかい……」

 

 そう、こいつは勝ったのだ。俺は気絶した為に序盤から中盤にかけては見てなかったが、終盤、目の前の女が『スカーレット・ノヴァ』を出して、相手の『デーモンの将星』をぶち抜いて勝ちを納めている所だけは見逃さなかった。

 

「今のところ、ネットじゃ俺ら二人とも大荒れしてるな……」

 

「まぁ、無名とはいえ、鬼門と呼ばれる鳥獣族の中で『コンセプトデッキ』で勝つなんて珍しいしね」

 

 ちなみに俺のことは、『期待の猛禽使い』やら『鳥獣の新星』やらと呼ばれているようだ。まるで某ゲームがモチーフのラノベ主人公が隠しスキルバレたときの反応じゃぁないか。

 

「それで、蘭の二つ名って結局どうなったんだ?やっぱり『紅蓮』?」

 

「いや、珍しいことに『深紅』だった。理由は鮮血を飛び出させるようなプレイングだからだって」

 

 失礼だな、と呟いてるが、個人的にはぴったりだと思った。

 

「ていうか、これ学校に行けるのかな……」

 

 既に時刻は7:30、登校時間は8:30なので、準備を含めるとそろそろでないとヤバイ。

 

「……一応マネージャーに頼んで、私と君を車で送迎してもらうように準備はしてあるから問題なし。学校側にも万が一の為に遅れる可能性も連絡済み」

 

「お早い事で……」

 

 そういいながら朝食を食べ終えた俺たちは、マネージャーさんが来るまでに皿洗いやら制服への着替えやら準備を進める。そして45分になると、勢いよくインターホンが鳴り響く。

 

 俺は相手の顔をモニターで確認すると、そこには明るめの茶髪を縦ロールに中央で束ねたスーツの女性が姿を現した。

 

「……どちら様ですか?」

 

『朝早くすみません、朱志那蘭のマネージャーで宇津瀬見金彌(うつせみ かなや)と申します。風山蓮さん……でお間違いないですか?』

 

 俺は蘭を手招きして確認すると、彼女から本人であると頷かれた。

 

「はい、ということは今回の送迎の?」

 

『はい。蘭から聞いていてくれて助かります。それで準備の方は?』

 

「とりあえず俺も彼女も何時でも出られますので、そちらに向かいましょうか?」

 

『ええ、では中の待合室で待機したいので中にお入れしてもらっても構いませんか』

 

 俺はそれを聞くとすぐに開場する。するとそれに乗じてマスコミが流れ込もうとするが、そこは警備熱心なガードマン達が立ちふさがって追い払ってしまうのが少しだけ見れた。

 

「さて……行きますかレディ?」

 

「……護衛はよろしくね、ナイト」

 

 なんとも不可思議なコントをしつつ、俺たちは一階へと出るのだった。

 

 

 

「さて、まず蓮さん、貴方は現状について分かっていますか?」

 

 車にのって移動する俺に、金彌さんは対面でそう聞いてきた。

 

 ちなみに今乗ってるのは所謂リムジンタクシーと呼ばれる奴で、運転手とは別に、俺と蘭、そしてそれに対面する形で金彌さんが座ってる。うん、少しだけ居心地が悪い。

 

「現状……ですか?」

 

「はい、昨日の試合、貴方はプロである承乃介選手に試合……それもエキジビションマッチとはいえ公式戦で勝った……これは事件レベルで大変なことです」

 

 まぁだろうね。それは何となくわかる。が、次の瞬間に固まってしまう。

 

「しかも相手は蘭さんの師匠とも呼べる彼です。戦士族のタイトルマスターである彼にです」

 

「…………へ?」

 

 蘭の師匠?タイトルマスター?それってつまり…………え゙!?

 

「もしかして……タイトルの奪取……とかしちゃったわけです?」

 

「いえ、そもそもデッキの分類カテゴリーが違うのでそうはなりませんが……問題は鳥獣のタイトルマスターなんです。彼は試合は愚か、練習戦ですら『爆炎の戦士』こと一条承乃介選手に勝てたことのない。……これが意味することは、分かりますよね」

 

 金彌さんが試すように聞いてくる。俺は何となくだが頷いて

 

「その鳥獣のタイトルマスターが興味を持った……とかですか?」

 

 俺の回答に、彼女は苦笑いを浮かべるだけだった。え、違うの?

 

「そうですね……それだったらまだ良かったんですがね」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのタイトルマスターの称号、君に譲り渡したいと言ってきたんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 俺は思わずそう叫んだ。思わず立ち上がってしまいそうだったが、車の中なので自重するが、天井が高いところならまず立ち上がってるだろう。

 

「ちょっと待ってください!!俺はプロデュエリストじゃないんですよ!!戦績だって昨日の彼とのデュエルだけ、そんな若輩に務まるわけがない!!」

 

「ですが、そのタイトルマスターは頑固というか……こうと決めたら曲げないというか……」

 

「第一、俺なんかよりも強いデュエリストは多いはずです。昨日のだって、最後のカードを引けなかったらまず負けていた……紛れ当たりも良いところです」

 

「…………エキジビションとはいえ、紛れで伯父様に勝てる人なんてそうそういない」

 

 と、そこで止めに入ったのは蘭だった。

 

「あの人……プロデュエリストの中では最高位に有名、何故なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「総合……タイトルマッチ?」

 

「プロのタイトルマスターだけが出場できる大会で、その年の最強のタイトルマスターを決める大会なんです」

 

「……伯父様はその総合タイトルマッチで優勝を決めてから15回、数多のタイトルマスターをはね除けて勝ち続けてきた。最早伝説の偉人くらいに有名」

 

「つまり……現在最強のプロデュエリスト……ということですか?」

 

 俺が恐る恐る聞くと、当然のように頷いてる二人……マジかよ……。

 

「私も弟子として何度もデュエルしてるけど、まともにやって勝てたのは一度だけ、それも伯父様の手札事故が原因、それを価値の理由にしたくないから、結局は全敗」

 

「あ、あの蘭でさえ勝てない相手……だと!?」

 

 あれ?てことは俺はつまり…………

 

「もしかして……プロデュエリスト最強の座に?」

 

「そこまでは言いませんが、エキジビション用に調整されていたとはいえ、彼に本気……『RUM』を使わせたのは中々居ません、そういった意味では強者になるでしょう」

 

「あ、これ断れないパターンじゃん…………」

 

 そこまで言われてしまうと、必然的に受けなければ何されるか分からなくなりそうな状況に発展しそう……クソォ

 

「分かっていただければ良かったです」

 

「でもそうなると……高校の大会に出られなくなるのは……」

 

「大会?……あぁ、全国大会ですか、もしかして出場なされるんですか?」

 

「ええ、元々プロの蘭はレギュレーションで出られないので、それ以外のメンバーで出る予定なんですよ……五人で」

 

 俺がそう言うと、彼女は少し考えると

 

「……蘭、彼の所属するチームは、強さ的に言えばどうなの?」

 

「……少なくとも、全員が最低限プロとしてやっていける位には強い。うち二人はタッグデュエルなら私と蓮が組んでもギリギリ」

 

「ちなみにデッキはそれぞれ『スキドレ暗黒シャドール』、『アルティマヤシンクロ』、『ドラゴンビート』、『蘇りループ』ですよ」

 

 俺がそう言うと、金彌さんはポロリとペンを落としそうになった。

 

「……なにそのガチパ……」

 

「ちなみにこの中に俺がいて、実力なら恐らく三番目か四番目ですかね」

 

「…………分かりました」

 

 そう言うと車が停車する。窓を見るとどうやら学校に到着したようだ。

 

「この件に関しては帰りにまたお話ししたいと思いますので、よろしくお願いしますね」

 

「あ、はい……分かりました」

 

 そう言うと俺は金彌さんから名刺を受け取り、それを財布の中へしまった。

 

「では、勉学に勤しんでくださいね」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 それでは、と、マネージャーさんを乗せたリムジンタクシーはさっさと別の場所に行ってしまった……。

 

 因みに教室に入ったとたん、クラスメイトから質問やサインやらを求められたのは言うまでもない。

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