スピリットが遊戯王モンスターになってた件   作:ドロイデン

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第十三羽 嵐のあとは台風 後編

「まったく、君ら二人は大馬鹿なのかね……」

 

 部室に入って早々に、俺と蘭は二人揃って劔奈先輩に当然のごとく苦言を申された。椿姫先輩と祐司先輩も苦笑いを浮かべている。

 

「特に蓮、君は大会にも出るんだぞ?テスト明ければすぐに予選だ、それだというのに……」

 

「面目次第も御座いません……」

 

「いや、まぁ過ぎ足ることは仕方ない。……しかし、これは本格的に君の公式戦用のデッキを作らなくてはならなくなったな……」

 

 劔奈先輩は頭を押さえながら呟いてるが、実際問題、テレビであんな試合をすれば、地区予選で対策取られるのは必死だろうな。

 

「……まぁ今回の場合は不慮の事故も半分あるからな、多めに見るとしよう」

 

「あ、ありがとうございます。先輩」

 

「全くだ、その分地区予選で活躍しなければどうなるか……分かってるな?」

 

 暗に一戦でも負けたらボコるというお達しに俺は苦笑いで頬をひきつらせる。

 

「……蓮、マネージャーが到着したみたい」

 

「ん。了解、校門の前で良いのか?」

 

「勿論、それと大会メンバー全員を連れてこいとお達しがあった」

 

 その言葉に俺と蘭以外の全員が首を傾げるが、どうやら全員予定が無いようで黙ってカードを片付けて帰宅準備に取りかかるのだった。

 

 

 

 

 今日二度目、再びのリムジンタクシーに乗って連れてこられたのはなんの変鉄もないオフィスビルの一つだった。車を降りてエレベーターに乗り込むと、それはゆっくりと高く昇っていく。

 

「それにしても……劔菜と亮はよくもあれに乗って平気だったね?」

 

 そういう祐司先輩の表情は緊張感MAX、いつぶっ倒れてもおかしくないくらいにガチガチだった。

 

「まぁ私も亮も、リムジン系に乗るのは日常茶飯事だからな」

 

「あー、確か亮ってそういえば政治家の御曹子だったっけ?」

 

「そうですよ。ちなみに劔菜先輩は大手財閥の一人娘ですから、多分俺以上に格は上ですね」

 

 なんともはや、一人暮らしの俺や孤児の蘭にとっては羨ましい限りの家柄だったが、まぁ逆の立場だったときを考えるとそれも無くなってしまった。

 

「それにしても……いったいなんで私や蓮だけじゃなくて他の皆も?」

 

 と、話を変えるように蘭がマネージャーに聞いてくる。

 

「理由は三つですね。一つは地区予選についてのこと、二つ目が蓮君のプロないしタイトルについてのこと」

 

「あー、朝の続きですね?」

 

「その通りです。そして最後の一つについては……まぁすぐに分かるので今は言わないです」

 

 なんとももったいぶった事だが、別段どうでも良いし関係ない。

 

「で、俺たちはどこに行くんです?」

 

「それは……」

 

 カン、コン!!

 

 と、なぜかアニメでのデュエルの効果音に良く似た音と共にドアが開く。そこには

 

「ガッハッハ!!粉砕!!玉砕!!大喝采!!」

 

 何やら嫁好き社長のような事を口走ってる初老のスーツ男がテレビゲームでデュエルをしていた。しかも彼のフィールドと思われる場所にはライフ8000だというのに『青眼の白竜』『究極竜』『双爆裂竜』『真究極竜』『カオス・MAX』と、どうやったらフィールドに全て揃えられるのか甚だ疑問な展開をしていた。しかも相手側のフィールドは意識したかのように『ブラマジ』やら『カオソル』やらといった決闘王のエースモンスターばかり乱列してる。はっきりいって相当なカオス具合だ。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「はぁ…………またですね」

 

「…………そうですね」

 

 さすがの蘭以外の俺たちは唖然、その蘭とマネージャーさえも呆れたように頭を抱えている。

 

「……社長、いつも通りなにやってるんですか?」

 

「ん?あぁ宇津瀬見くんか。なに、少しばかりループプレイして私の嫁たちを降臨させていたのSA!!」

 

「果てしなくどうでもいいので、とりあえず電源切りましょう。私がいる時点で、彼らが到着してるのは分かってますよね?」

 

 そう言って電源コードをあっさり抜いてしまうマネージャーさんに社長さんは阿鼻叫喚の悲鳴を、俺達はただ苦笑いを浮かべるだけだった……。

 

 

 

 

 

「さて、改めましてだねデュエル部の皆さん」

 

 と、漸く仕事モードらしくなった社長さんが椅子に座ってこちらを微笑む。

 

「自己紹介をと言いたいが……まぁ面倒だから社長と気軽に呼んでくれたまえ」

 

「いや気軽にって……それで、自分達をここに来させた理由は?俺と蘭はまだしも、他の皆は……」

 

「ふむ、当然だが、それ自体は簡単な事だ。君達デュエル部に()()()があるんだ」

 

「お願い……失礼ですが社長さん、この事は録音してもよろしいですかな?」

 

 と、劔菜先輩が自信たっぷりに懐からボイスレコーダーを取り出した。

 

「あぁ構わないよ。それで話というのはだね、君達に全国優勝してもらいたいのだよ」

 

「?なにそれ、そんなのどこのチームでもそれを目指すに決まってるじゃない」

 

「そういうことではない。君達に()()に優勝してもらいたいと言ってるんだ」

 

「つまり絶対優勝というわけですね……ですがなぜ?」

 

 祐司先輩が疑問を問うと、社長さんはタブレットを一つ取り出し、そこに映された画像をこちらに見えるように向ける。

 

 そこには色黒の男と整った顔の女性の二人が映し出されていた。

 

「この二人は?」

 

「……君達は自分達が目指す大会……デュエルフェスティバルのメインスポンサーは知ってるかね?」

 

「えっと、確かコンマ……K○N○MIだったような……それとこれどういう関係が?」

 

 おい、今コンマイ言いかけたぞ亮。

 

「まぁ最後まで聞きたまえ、今のデュエリスト達……主に高校生から中学生にかけては実力が高くなってきてる。それはプロは勿論、我々素人の大人から見ても明らかなんだ」

 

 その言葉で俺は言いたいことが分かった。そういう意味なら確かに俺や蘭だけでなく、全員に来て貰った方が手っ取り早いし効率がいい。

 

「……つまり社長は、この二人ないしその関係者が大会出場デュエリストに接触すると踏んでるんですね?」

 

「流石は黒霧財閥のご令嬢、話が分かるようで助かるよ。そうだ、今の時代、デュエルで借金を帳消しにしたり、罪を軽くしたりと、デュエル資本主義に傾いてる。そんな中で活動する連中……詰まるところ」

 

「…………デュエルギャングですか」

 

「その通りだ風山蓮くん。デュエルギャング達は必ずこの大会で君達未来ある子供達を引きずり込もうと企んでいる。故に……」

 

「ふざけるな」

 

 俺はそこでその言葉を口にした。社長の顔は驚きに満ちており、蘭以外のデュエル部の全員が俺と同じく殺気だった目をしてる

 

「この際だからはっきり言っておく。俺達はただ単純にデュエルを楽しみたいだけだ、ギャングだのなんだのと御託を並べてるが、結局のところアンタもデュエルを利用としてるだけだ」

 

「それは……だ、だが私は君達子供の未来を……」

 

「ワリィが未来は自分で作るもんなんだよ。親の、大人の、世間のレールなんかどうでもいい、自分が何をしたいか、それが今できる精一杯なんだよ!!」

 

「しかし……」

 

「だいたい虫が良すぎるっての。未来だのなんだのと、結局は自分の部下とかが欲しいだけじゃない」

 

「そうですね。僕は皆みたいに強くは無いけど、そういうしがらみにまみれてデュエルはしたくない」

 

 俺達の言葉に社長はたまらず口をつぐむ。

 

「社長さん、この際だからはっきりと言います。我々は貴方の目論み通り優勝はしましょう。ですが、それ以上に私達に首輪を着けたいなら話術ではなく、それこそデュエルで話を着けるべきでしたね」

 

 そう言って俺達は振り返る。蘭以外のメンバーもそれに続き部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 蘭視点

 

「……やれやれ、だいぶ嫌われちゃったみたいだね」

 

 社長が肩を竦めながら言うのに、私は思わず睨んで返す。

 

「おいおい、蘭くんまでそんな目で睨まないでくれたまえよ」

 

「……社長はなんであんなことを言ったの?」

 

 私はそこまで大きな声じゃないがそう聞いた。

 

「社長は確かにキチガイだけどそこまでネジは緩くなってないはず」

 

「酷い言いおうだね。一応社長なんだよ?上司なんだよ?」

 

「だったら彼らの人間性はすぐに見抜けるはず、何せ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「無視かい?ねぇわざとかい?」

 

 そんな風に能天気に聞いてくる社長を睨み一閃する。

 

「わかったから。まぁ確かに彼らがデュエルに情熱を持ってるのは見なくてもわかるし、典型的な熱血キャラだって事もみたから分かってたさ」

 

「…………ならなんで?」

 

「だからこそなんだよ。熱血キャラってのは無理をし過ぎる。その無理は肉体だけじゃなくて精神にも負荷が掛かる」

 

「社長のせいでさらに負担が増えそうだけど?」

 

 ジト目で睨むが、社長は涼しい顔だ。

 

「その点は問題ないさ。確かにそうなるようには仕向けたが、どちらかと言えば彼らに目標を与えるという良い意味の負荷だからね」

 

「白々しい……」

 

「それに何より()だ」

 

 彼……詰まるところ蓮の事だろう。

 

「恐らく彼はカードに選ばれた人間だろうね。それも精励なんてレベルじゃないものに……君も感じてるんだろ?蘭くん?」

 

「……」

 

 私はその言葉に何も言わず、ただその場から立ち去るだけだった。

 

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