スピリットが遊戯王モンスターになってた件   作:ドロイデン

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第十六羽 悪魔の悲痛な叫び

 さて、あの突然の襲撃から早いもので二週間、文字通り何もなく平穏無事な生活をしていた俺達にとって、その日は突然やって来た。

 

「さて、あと三週間もすれば地区予選なのだが……その前に私達には乗り越えなくてはならないものがある。それは何かね、蓮?」

 

 いつも通りの部室で、俺は紙パックのオレンジジュースを飲みながら剱菜先輩の方を見る。

 

「そりゃ当然……()()()()()ですよね?」

 

 俺のその言葉にビクリと体を震わせる約三名……亮、蘭、そして椿姫先輩だ。

 

「そうだ。もし仮に誰か一人でも赤点でも取れば、補習が重なって大会出場不可になる……そこでだ、今すぐここ最近の小テストのプリントを出したまえ。特に椿姫」

 

「ウグッ!?」

 

 と、いつの間にやら部室のドアから逃げようとしてた椿姫先輩が、こちらを見てもないのに石のように固まってしまった。

 

「お前も大会メンバー、ひいてはこの部の部員なんだ、当然ながら見せる義務はあるぞ」

 

「グヌヌ……」

 

「唸ってもダメだよ、姉さん」

 

 というわけで、全員が小テストを鞄から取り出して見せるわけだが……(※成績は国・数・英・理・社の順であり、この作品の赤点ラインは35点です)

 

「まぁそれなりって感じかな?(蓮 78・70・100・81・95)」

 

「…………(蘭 23・65・21・37・5)」

 

「う~ん、暗記がやっぱり鬼門っす……(亮 88・80・55・68・41)」

 

「グヌヌ……(椿姫 80・91・15・50・50)」

 

「姉さん……(雄士 99・100・98・99・81)」

 

「やれやれ……┐( ̄ヘ ̄)┌(剱菜 100・99・100・100・100)」

 

 これは酷い、椿姫先輩は一科目、亮は暗記科目が微妙という意味ではまだマシなのだろうが、蘭が酷いを超えて絶望的だ、というか数学とギリ理科以外全部赤点とかどないしろと?剱菜先輩が呆れて顔文字使うレベルだし。

 

「……蘭、これから少し質問するからちゃんと答えろよ?」

 

「……ん」

 

「一つ目、大化の改新が起こった年号は?」

 

「……654年」

 

「……二つ目、ハンバーガーのスペルは?」

 

「……hanbagar」

 

「三つ目、自分が北を向いてるとき、左の方角は?」

 

「……東」

 

「……もっかい中学やり直して来いやぁ!!」

 

 流石のこれには俺もキレて蘭の肩を鷲掴みでがくがく揺らす。ていうかこれオコのレベルじゃ済まねぇから!!オコレベルで済ませたいのになんでこうなんですかバカ野郎!!

 

「……私元々孤児だから……勉強も遊戯王で学んでたし」

 

「お前はマーカー付きの鉄砲玉か!?幾らなんでもヤバすぎだよ!!インチキ入学も大概にせいや!!」

 

「いや~俺も人の事を言えた立場じゃないっすけど、幾らなんでも……」

 

 流石の元(?)不良の亮ですら呆れるレベルとはって、ちょっと待て

 

「お前は微妙なだけで赤点回避してるじゃん?どうしてさっき反応した?」

 

「あー、いや別に他意は無いんすけどね?ただこの場合あのパターンになるのが目に見えてるような……」

 

 パターン?なにそれ?

 

「と、言うわけだ、今日からテスト当日まで、勉強合宿と洒落こもうじゃないか」

 

「合宿って、どこで?」

 

「それは勿論、私の家だが?」

 

 当然に言いのける先輩に、やっぱり金持ちなんだと肩を落とす。

 

 そりゃね、俺だって一人暮らしだし、お金は『アレ』の賠償金でそれなりにあるけどね……それでもやっぱり世の中は理不尽だと思わずを居られない

 

「……言っておきますけど、とりあえず明日は休む予定なんで、それ以外なら……」

 

「休む?ずる休みはいけないんだが?」

 

「……両親の裁判がありまして……それの証人なんですよ」

 

 事実だった。あの事件から約二年経ってるが、あの屑親は未だに食い下がって刑を軽くしようと粘ってる。そして今回、俺は妹の義兄であり、最後に妹と会っていた人物ということで証人召喚されるわけだ。

 

「……そうか、それは担任には?」

 

「もう既に伝えてあります。ついでに、妹の月命日も近いんで、それも一緒に……」

 

「……分かった。では自分はこれで、明日の朝それなりに早いんで」

 

 そういって俺は部室から立ち去る。さて、買い物もしないとな……。

 

 

 

 蘭視点

 

「……蓮、まだ引きずってるんだ」

 

 私がそういうと、亮がさもありなんと頷く。

 

「まぁ兄貴の過去は簡単に振り払えるものではないしな、多分ずっと消えない傷として残るんだと思うっす……」

 

「それを乗り越えられるかはあいつ次第さ」

 

 剱菜先輩もそう言ってるが、私は少しだけモヤモヤする。

 

「……なんか、私とは別の意味でハードだね」

 

「う~ん、多分それ俺や剱菜先輩にも響くっすよ?」

 

 亮は欠伸しながらそう呟く。

 

「……二人は御曹司と御令嬢じゃん」

 

「確かにな。けど正確には、俺は次男で、兄と弟がどっちも優秀すぎて見放されてるし、剱菜先輩は先輩で確かに一人娘だけど……」

 

「まぁ私も蓮と同じ養子だからな、分家筋からは邪魔者腫れ物扱いだから、二人ほどではないがそれなりに、な」

 

 意外な事実に目を見開く。やはり家が家ならしがらみとかも大きくなるものなのだとおもった。

 

「ま、そんなことよりも蘭、君はさっさと教科書を出そうか?」

 

「……わ、私はプロだから地区予選どころか全国大会に出られないし……」

 

「む?先ほど君の社長から、蘭くんを控えメンバーに容れて大丈夫、というか絶対にメンバーに入れろとお達しがメールで来てたぞ」

 

「……あ、あのダメオヤジ……!!」

 

 私の中でサムズアップしながらいい笑顔をしているバカ社長の姿がまじまじと想像できる。

 

「……ならば戦略的撤退を……」

 

「させるわけないだろ?」

 

 窓から逃げようとするも、その前に襟首を猫のように取っ捕まえられてしまい動けなくなる。こういうときに椿姫先輩程じゃないけど、小さい身体を恨んだことはない。

 

「さて、テストまで本当に日がないのでな、悪いがアクセルシンクロ並みのスピードで教えてやるぞ!!」

 

「ノーン!!」

 

「「「いやそれ古すぎ……」」」

 

 私のムンクのような叫びにじとりとした目を向けてくる三人を見ながら、私はずるずると机に向かって引きずられるのだった。

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