さて翌日、とりあえず何時ものメインデッキの調整を済ませ、祐司先輩と劔菜先輩の二人と共にフィールドに立つ。蘭や亮達もルール上の都合でフィールドには居ないものの、応援席から見ている。
「これより、聖奏学園対獄将学園の対戦を開始します。先鋒の選手は前に出てください」
審判のその声に、獄将から金髪ロングの男がフィールドに立つ。
「頼みます、裕司先輩」
「ハハハ、まぁ頑張ってみるさ。一応、骨は拾ってくれると助かるよ」
そう言って前に出る先輩の背を見ながら、俺は対戦相手の金髪を見ると、その目は濁ってるというより、光そのものを受け入れない闇のようなものに見えた。
「キヒヒ、テメェ見るからに弱そうな顔してるなァ~アァ?」
「それはどうも、一応ヒエラルキー的には僕が最下層だから、そんな言葉は慣れっこだよ」
男の安い挑発に、先輩は飄々と返す。男はそれに対してイラッとしたのか、睨む目をさらに鋭く細めた。
「キヒヒ、まぁいい。どっちみちこの俺、月噛梁我様に負けることは決まってやがるんだ!!さっさと終わらせてやるよ、貧弱野郎」
「…………」
「無視すんじゃねぇよ!!」
男……月噛の言葉に何も返さず、先輩はデッキをシャッフルしドローする。
「それでは、デュエル開始!!」
「「デュエル!!」」
祐司 LIFE8000
月噛 LIFE8000
「キヒヒ、先行は俺だ!!俺はスケール3『月光姫マーニ』とスケール8『月光竜機クレセントール』でペンデュラムスケールをセッティング!!」
月噛が繰り出してきたのは、白のブレイブ時代のスピリット達、しかも
「テーマ『月光』……か、【ムーンライト】が関わってないにしろ厳しいな」
「キヒヒ、さらに俺は魔法カード『ブレイブドロー』を発動!!デッキからカードを三枚確認し、そのなかに存在するユニオンモンスターを一枚手札に加える。……カードは『突機竜アーケランサー』、『ザニーガン』、『虚皇帝ネザード・バァラル』、よってユニオンモンスター『アーケランサー』を手札に加え、他二枚はデッキ下へ戻す」
俺の言葉を裏付けるように動く奴の表情はまるで狂喜というようなそれに似ていた。
「……来るかな、ペンデュラムが」
「キヒヒ、お望み通りやってやるよ!!俺は設置済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚!!現れろ!!我が僕達!!」
『バルカン・アームズ』 ☆5 A1000
『突機竜アーケランサー』 ☆5 A1200
「キヒヒヒ!!『バルカン・アームズ』、『アーケランサー』の順番で効果発動しチェーン処理だ。まず『アーケランサー』の召喚及び特殊召喚効果で一枚ドローし、『バルカン・アームズ』の召喚、特殊召喚効果でデッキからカードを三枚引いて二枚捨てる、ただしこのターン攻撃はできないが、先行はもとより攻撃できないから関係ない!!」
「……なるほど、さすがは先鋒を任されるだけはあるということか」
「キヒヒ、そんな悠長な事を言ってる暇はねぇぞ!!俺は今引いた『イグア・バギー』を召喚し、効果発動!!このカードをリリースして、デッキまたは手札からからレベル6以上の火または光属性ドラゴン族モンスターを特殊召喚する!!」
その瞬間、フィールド内が暗黒に包まれ、天上高くに煌めく月が浮かび上がった。
「来るな!!月光のエース!!」
「時は満ちた、蒼白なる月よ、闇を照らし貫く牙となれ!!『月光竜ストライク・ジークヴルム』!!」
『月光竜ストライク・ジークヴルム』 ☆6 A2400
「へぇ、『神竜』の方じゃないんだ」
「キヒヒ、テメェなんかにあれを使うなんてあり得ねぇよ!!ユニオンモンスター『アーケランサー』と『バルカン・アームズ』を『ストライク・ジークヴルム』にユニオン!!その効果で攻撃力が500ずつアップし3400になる!!俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ!!」
月噛 手札0 LIFE8000
フィールド
『月光竜ストライク・ジークヴルム』 A3400
『バルカン・アームズ』 装備状態
『突機竜アーケランサー』 装備状態
伏せカード一枚
『月光姫マーニ』 赤P3
『月光竜機クレセントール』 青P8
「僕のターン、ドロー!!……僕は魔法カード『隣の芝刈り』を発動!!互いのデッキを確認して、僕は君のデッキの枚数と同じになるように墓地へ送る。僕のデッキ枚数はいま54枚だ」
「キヒヒ、60枚デッキって訳か。俺のデッキは今残り29枚だ、よって25枚のカードを墓地へ送りな」
先輩は軽く頷くと、なんの躊躇いもなく墓地へカードを送って……
「あれ?」
「む?どうした蓮」
「いや、俺の気のせいだと思うんですけど……
そう、当然モンスターも存在していたが、それ以上に送られたカードが『補給舞台』、『一族の結束』、『波動キャノン』といった、永続魔法ばかりだったのだ。
「あぁ、そういえば蓮は祐司がシングルでデュエルするところを見るのは始めてだったな。良く見ておけ、アイツのデュエルは少しばかり次元が違うからな」
祐司side
さて、墓地に送れた永続魔法は……うん、充分充分。
「墓地へ送られた『闇・道化師のペーテン』を除外して、デッキから『闇・道化師のペーテン』を守備表示で特殊召喚する」
「キヒヒ、『ペーテン』だと!?そんなモンスターで何ができる!!」
「なに、こうするのさ!!僕は儀式魔法『異合創成術』を発動!!」
「な!?異合儀式デッキだと!?」
驚いてる驚いてる、まぁこのデッキ回すの難しいから当然といえば当然だけどね
「手札から『異合』と名のつく儀式モンスターのレベルと同じかそれ以上になるように、フィールドまたは手札からカードを墓地へ送る!!僕はフィールドのレベル3『闇・道化師のペーテン』と手札のレベル5『星海獣シー・サーペンダー』を墓地へ送る!!八首の巨龍、破滅の波を世界に示せ!!儀式召喚!!現れろ『異合魔龍ヤマタノヒドラ』!!」
『異合魔龍ヤマタノヒドラ』 ☆8 A3200
「攻撃力……3200だと!?」
「さらに手札から永続魔法『海魔巣食う海域』配置し、手札から二枚目のユニオンモンスター『ガイミムス』を召喚し、『ヤマタノヒドラ』にユニオン!!その効果で攻撃力300アップ!!」
『ヤマタノヒドラ』 A3200→3500
「バトル!!『ヤマタノヒドラ』で『ストライク・ジークヴルム』に攻撃!!攻撃宣言時、『ヤマタノヒドラ』は永続魔法をリリースする度に、相手モンスターにレベルの数まで連続で攻撃できる。さらにユニオンの『ガイミムス』の効果でデッキから一枚ドローし、相手フィールドの魔法カードを破壊する!!僕はペンデュラムゾーンの『月光姫マーニ』を破壊する!!」
「キヒヒ!!簡単に殺られてたまるか!!ユニオンしている『バルカン・アームズ』をリリースすることで破壊を無効にする!!」
月噛 LIFE8000→7900
「『ヤマタノヒドラ』の第二の効果!!バトル終了時に、このターン発動していない永続魔法を墓地から発動させる!!この効果で墓地の『波動キャノン』を発動する」
「だがダメージを受けたことにより罠カード『絶甲氷盾』を発動!!ライフを1000回復し、このターンのバトルフェイズを終了させる!!」
月噛 LIFE7900→8900
「……僕はカードを一枚伏せてターンエンド」
祐司 手札0 LIFE8000
フィールド
『異合魔龍ヤマタノヒドラ』 A3500
『ガイミムス』 装備状態
『波動キャノン』 永続魔法 C0
伏せカード一枚
「キヒヒ、俺のターンだ!!俺は『アーケランサー』を自身の効果で特殊召喚する。特殊召喚に成功したことにより一枚ドロー!!……そしてチューナーモンスター『ブレイドラ』を通常召喚!!」
『ブレイドラ』 ☆1 A100
「キヒヒ!!俺はレベル6『ストライク・ジークヴルム』にレベル1『ブレイドラ』をチューニング!!闇を照らす銀鱗、夜を統べる崇高なる龍が舞い降りる!!シンクロ召喚!!来たれ我がエース!!『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』!!」
『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』 ☆7 A2700
「キヒヒ、さらに俺は手札の『死者蘇生』を発動し、墓地の『ブレイドラ』を特殊召喚し、レベル5の『アーケランサー』にレベル1『ブレイドラ』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』!!」
『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』 ☆6 A2000
「キヒヒ、『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』はレベル5以上のユニオン以外のモンスターに装備できる!!俺は『ストライクヴルム』に装備し、攻撃力をこのカードの攻撃力の半分1000アップ!!」
『ルナティック・ストライクヴルム』 A2700→3700
「バトルだ!!『ルナティック・ストライクヴルム』で『ヤマタノヒドラ』を攻撃!!」
「罠カード『ハーフ・アンブレイク』を発動!!『ヤマタノヒドラ』の戦闘破壊を無効にし、ダメージを半分にする!!」
祐司 LIFE8000→7900
「キヒヒ、運の良い奴め……俺はこれでターンエンド」
月噛 手札0枚 LIFE8900
フィールド
『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』 A3700
『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』 装備状態
さて、ととりあえずモンスターの火力が落ちるのは回避できた。さて、次は
「僕のターン、スタンバイフェイズに『波動キャノン』のカウンターが1つ乗り、『ヤマタノヒドラ』の効果、このモンスターのレベルは2つ下がり、最大攻撃回数は6になる」
「キヒヒ、流石にデメリットは存在してるよなぁ……でなきゃぶっ壊れもいいところだ」
敵ながらそれには完全同意だ。さらに言えばこのモンスターのレベルダウン効果には下限がないし、レベル0になれば強制的に除外される効果も持ってるから相応だ。
さてフィールドを確認すると、何やら重たい音が聞こえてくる。はてと確認すると、そこにはなぜか知らないが切り落とされた『ヤマタノヒドラ』の首が二つ落ちていた。おそらくは効果の処理としてのエフェクトなんだろうが……。
「(そんなところを描写する必要ないだろソリッドヴィジョン)そしてドロー!!……僕は墓地の『異合創成術』の効果を発動!!このカードと墓地のモンスター……『闇・道化師のペーテン』を除外し、デッキから『異合創成術』以外の、『異合』と名のつく儀式魔法及び儀式モンスターをそれぞれ手札に加え、手札に加えた儀式魔法『異合反魂術』を発動!!墓地に存在するモンスターを、『異合』儀式モンスターのレベル以上になるように除外することで儀式召喚を行う!!」
さて、それじゃあ僕のエースを呼ぶとしますかね。
「僕は墓地のレベル5『星海獣シー・サーペンダー』とレベル4の『アウグスドス』を除外!!異海より来たれり双首の龍!!闇を喰らいて進軍せよ!!儀式召喚!!現れろレベル9!!『異合双龍ハスターク』!!」
『異合双龍ハスターク』 ☆9 A3500
「『ハスターク』……だと!?」
まさかここまで大型のモンスターを出してくるとは思ってもなかったのか、相手の目には恐怖の色が見え隠れしている。
「永続魔法『波動キャノン』の効果発動!!このカードをリリースして、相手に乗っていたカウンター1つに付き1000のダメージを与える!!」
「グゥッ……」
月噛 LIFE8900→7900
これでライフは並んだ。後は……
「全力で殴り倒す!!バトルフェイズに入り、『ハスターク』の効果バトルフェイズ中、自分フィールドの『異合』と名のつくモンスターの攻撃力を500アップ!!そして『ヤマタノヒドラ』で攻撃!!」
八首改め六首となった青白い大蛇の顎から、光のエネルギーが収束され始める。
「この瞬間、『ハスターク』のモンスター効果発動!!フィールドのレベル5以上の水属性・海竜族モンスターが攻撃宣言したとき、相手の手札を一枚墓地へ送る!!」
「キヒヒ、残念だが俺の手札は0だから……しまった!?『ハスターク』の効果は」
「そうだ!!『ハスターク』の効果で相手の手札を墓地へ送れなかった時、そのモンスターの攻撃を強制的にダイレクトアタックに変更する!!そしてユニオンしてる『ガイミムス』の効果で、デッキから一枚ドロー!!」
「(キヒヒ……『ルナティック・ストライクヴルム』の効果で、このモンスター以外への攻撃ができないことが裏目に出やがったコンチキショー!!)グヌヌ、ライフで受ける!!」
月噛 LIFE7900→3900
「トドメだ!!『ハスターク』で攻撃!!この瞬間効果が発動し、捨てることができなかったためダイレクトアタックになる!!スパイラル・シードラ!!」
「ヌァァァァ!?」
月噛 LIFE3900→0
蓮side
「すげぇ……」
裕司先輩のデュエルを見て、ありきたりだが、それでいて本質を違えていないその言葉しか出てこなかった。
「裕司は元々タッグ以外では儀式軸を中心にプレイするスタイルでな。中でもあれは高火力と高速展開を軸にしてるだけあって、一撃一撃の火力だけならば君にも劣らない」
「元からの【異合】を踏襲してる……というわけですか?」
「そうだ。加えて遊戯王の強力な永続魔法や墓地肥やしのカードが組み込まれているからか、初手『ヤマタ』なんてある意味いつものことさ。最も、弱点として『異合』儀式モンスターは1ターンに1体しか、自分フィールドに特殊召喚できない制約はあるが、そんなもの無いも同然だろうな」
まぁ確かに妥当と言えば妥当なのだろう。というよりも、ただでさえコストが重いことで有名な『異合』モンスターがそんなポンポン出されたら対処なんてできるわけがない。寧ろそれなんてクソゲーだよホント。
その時だった。
「キヒヒ!!い、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁ!?」
突如として聞こえた奴の声に注目してみると、なんとやつの体の一部が消え始めていた。奴の正面には偉丈夫というような大男が、まるで睨み付けるように立っている。
「――我ら獄将に敗者は不要、よってここで処分する」
「そ、そんな……俺は……俺は俺は俺は俺は俺はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そんな断末魔を叫びながら、やがて月噛はまるで最初から存在しなかったように消えてしまった。
「ち、獄ってだけあってやっぱりかよ……」
敗者必滅、それがバトスピでの極将……ひいては極龍隊と呼ばれた奴らの基本理念、勝利以外に何の価値もなく、負ければすぐに切り捨てる。それこそが奴らなのだ。
「――少しは骨があるようだな、お前達は」
と、先ほどの大男がこちらを振り向く。
「だがそれもここまでだ。貴様らはここで潰えるのだ……この獄将の長、