繁忙期は3週目。少しは落ち着くと思われた。しかしまだ到着および発送の荷物は多かった。
さて午前の到着は緩やかであった。JPレールエクスプレスも、新東京多摩下り雑も、さほどでもない台数であった。
「皆さん、今日が繁忙期ピーク最終です。チームワークで乗り切りましょう!」と、葛城課長はミーティングで言う。
「へえ今日から荷物減るのか。今年は特に暑いし。」と、山田が言う。
この日の午前メンバーは、山田、円が供給、高梨はエンドレーン、安原、井口、三毛猫、塩沢、遠藤が各レーンを担当していた。瀬川と堂本、新川は午前結束の配達道順を組み立てていた。企画は宮森と小笠原が処理していた。
「もう到着量は緩やかになっていますね。繁忙期も終わりが近いですね。」と、小笠原が言うと
「そうですね。まだ入社2年目なので何とも言えませんが。」と、宮森は答えてパソコンでの作業にあたる。
区分は順調だった。繁忙期の終わりが近いので、区分検査時間がないだけの状況であった。塩沢は、まあまあ仕事ができる状況だったが、三毛猫の足元にも及ばない状況だった。
「塩沢さん、もうレーン溢れていますよ。まず引くこと!引くこと!」と、三毛猫に言われる始末であった。
到着は9時以降忙しくなる。新東京多摩下り雑が到着するからだ。10tトラック換算3台の荷物が到着する。しかしこれでも1号便は、新東京多摩で差し立て武蔵野中央ではロールパレットの積み替えだけ、2号便は武蔵野中央で区分し差し立てを行っているので、パンクしていない。
「試験的の制度は本当に区分係の負担を減らせますね。」と、葛城課長は思っていた。
東京航空まで時間があるので、この日は区分検査をする。
「あ!ここに三鷹が入っている。」と、安原は気付く。
「わりぃ!俺だよ!俺!」と、高梨が出てきた。
「太郎!もっとしっかり区分して。」と、矢野が注意すると、
「やっぱりレーンムズイッスネ!」と、高梨は答える。矢野はあきれ返った表情で、レーンを後にした。
塩沢の区分でも検査で引っかかった。
「あれ?これって、西東京市。」と、安原が気付く。すかさず彼女は、塩沢へ声をかけた。
「塩沢さん、この荷物間違っています。上の空だったじゃないですか?」と、安原が言うと
「まあそうだね!好きな人いるし!」と、塩沢は答えた。
「それはいいですが、もっときっちり住所を見て区分してください。このままでは困ります。誤送になります。」と、安原は注意した。
2号便は11時半には終了した。11時前に到着する九州などからの航空便はさほどではなかったものの、スイカなどの機械区分ができない農産品が多かった。
「手区分は相変わらずですね。」と、山田が言うと
「みんな機械に入っているからね。もうじき供給終了で、手区分に入ってくれそう。」と、遠藤は答えた。その後、遠藤が放送を行い、レーンにいた社員が続々と手区分エリアに集まる。入力後のロールパレットを渡し、住所を頼りに指定のロールパレットへ積み替える。30kgの米や20kgの上白糖もあった。女性2人がかりで区分していた。
「うわぁ!重いなあ。なんでこんなにたくさん来るの!」と、安原が愚痴をこぼす。すると
「まあ決算近いから、在庫処分セールとかあったんじゃないの?」と、井口は答えた。
一方の特殊郵便課では、杉江は国際郵便の到着物の区分をしていた。
「もうそろそろアメリカへ留学する学生さんの郵便物が増えるね。」と、居合わせた社員に話しかけた。
「まあもうじきそんな時期ですよ。」と、この社員は返事を返し、普通郵便の区分機を操作しに行った。
昼前に葛城課長は、新販路拡大によりゆうパック発送を獲得する。9時にデスクを離れ、取引先へ向かい営業してきた。帰局後に丸川局長が輸送ゆうパック課にいた。
「へえさすが葛城君!やりますね!」と、彼が言うと
「まあ私もゆうパックの新しい取引先を探さねば。」と、葛城課長は答えた。
それと入れ替わるように、宮森は集荷先の店舗、事務所へ向かう。
「今日もまだ繁忙期だもんね。気を付けて集荷してきて。」と、矢野は言う。
出発ホームでロールパレットの整理をしていた渡辺に、葛城課長は絡んだ。
「あ!なべちゃん!なべちゃん!この後、暇?」と、言うと
「忙しい訳ないじゃないですか!!おんなじルーティンの繰り返しだし!!仕事終われば暇っすよ!」と、渡辺は答える。
「じゃあ、パーラー行かない?尾ノ上さんも来るし!」と、葛城課長が言うと
「うわ!尾ノ上さん強いからなあ。またボコボコにされるなあ。」と、渡辺が言う。
13時からの全国は量が増加した。同時に木下が出社してきた。相変わらずから揚げを食べまくっていたので、昼食のにおいが服に染みついた様子だった。
「あ!木下君!今日も昼は、から揚げ!もう健康に気を使ってください。」と、円が言っていた。
荷物は百貨店のギフトの最終と、ノーステップとリサイクルショップの決算セールに伴い、大量のゆうパック到着があった。そのことについて、矢野に電話が入る。
「みんな!今日は5t車1台分、ノーステップから到着するよ。区分よろしく。」と、彼女は言った。
「それだけ来るのか!忙しくなるなあ。」と、葛城課長は返す。さらに
「八王子のリサイクルショップ、赤鉄換算で20台。これが14時到着。」との連絡も入る。
手区分では秋葉原の電気店の通販と、EMSの区分が始まる。そして、杉江が特殊郵便課から降りてくる。
「そろそろ手区分の時間だね。」と、企画デスクの本田に言う。そして
「三毛猫君、手区分やって!」と、本田は呼出す。三毛猫はすぐに手区分で、杉江と高梨とともに区分作業をする。
「やはり電気店の本日3号便結束多いなあ。」と、杉江は言うと
「そうっすねえ。決算近いですし。」と、高梨は言う。
「まあ家電やパソコンも、家に居ながら帰る時代ですからねえ。」と、三毛猫は言いながら重量物の大型電子レンジを積み替えていた。
茶沢のトラックは、局に向かっていた。13時半に局へ着くと、ロールパレットなどを荷台から降ろし、塩沢のもとへ向かう。
「あ!塩沢さん!今度遊びに行こう!海へ泳ぎに行こう!」と、言いに来た。
「うれしいなあ。いつ?」と、塩沢が尋ねると
「8月の最初の金曜。平日のほうが空いているからね。海!」と、茶沢が答える。
「非番の日!じゃあ行こうね!家まで迎えに来て!うちは厳しいからね。」と、言って持ち場に帰った。
その様子を見た渡辺は、塩沢と茶沢を注意した。
「塩沢さん!茶沢さん!もうオフをここに持ち込まないで!」と、渡辺が言うと
「自分の勝手だから気にしないでくれ!」と、塩沢は答えた。
「自分中心では区分に支障が出る。大体塩沢さんはオフを持ち込みすぎる!
あと茶沢さん!外部の人がレーンに押し掛けるのは迷惑なのでもうやめてください!」と、渡辺は言っていた。しかし
「いや~変な話、塩沢さんのこと、めっちゃ好きなんだなあ。いや~両想いってとこなんで!ぎゃははああああ!!」と、茶沢はふざける始末であった。様子を見て、すぐに葛城課長が駆けつける。
「ちょっと新京阪物流の茶沢さん!ここの区分係の方を邪魔しないでくれませんか。」と、葛城課長が言うと、
「いや~いいんじゃないっすか!ここで恋愛したって!別に悪くないっすよ。塩沢さんのことが好きで、彼女も理解してくれているっすよ!ね!」と、茶沢が言うと、
「そうそう!私はリア充っす。」と、塩沢も言う。すると葛城課長は、
「もういい加減にしてください!新京阪物流の茶沢さん!これ以上邪魔をすると、ほかの社員から苦情が入ります。」と、言うと
「ちぇっ!じゃあ塩沢さん!後でまたメールするよ。」と言って、駆け足でトラックに戻った。そして、
「変な話、この後ノーステップへ行って、荷物回収して再度持ち込みます。」と、言って大慌てにトラックを発車させた。皆は茶沢の態度にあきれ返った。
「ちょっと茶沢さん!最後まで話しが終わっていませんよ!」と、葛城課長は到着ホームから叫んでいた。
その後、塩沢は下柳とともに管内を区分していた。
「塩沢さんって、恋愛中ですか?」と、下柳が質問すると、
「今、好きな人がここにいます。」と、塩沢は答える。
「好きな人がいても、公私の区別はしたほうがいいよ。それが「社会人としての常識」だということ、君は忘れてないかなあ?」と、下柳は指導した。しかし塩沢は、理解できたかできていない表情をしただけだった。塩沢への風当たりは、少しずつ厳しくなっている感じが局内に張りつめていた。
14時からは各郵便局から到着するゆうパックの区分が始まるが、量はやはり多かった。管内にいた塩沢は安原とともに、北陸レーンで作業していた。
「塩沢さん、もう少し積み方を工夫してください。このままでは、隙間だらけになってしまいます。」と、安原は言う。
「あら!そうなの!じゃあ積みなおす!」と、塩沢は答えるが、
「私がやりますので、レーンでの作業をしてください。そっちのほうが大変なので。」と、安原は言う。その通りに、塩沢は指示通りに荷物を区分した。
遠藤は九州のレーンにいた。山田らと交代で供給に入るためであった。
「よお!遠藤さん!供給な!」と、言って山田が来た。
「わかったすよ!供給!供給!」と、遠藤は言ってベルトコンベアへの供給に山田の代わりに入った。
15時になっても区分は落ち着く様子はなかった。区分レーンでは、午前締切の全国あてを優先して、管内を後回しにしながら供給していた。
「管内の方は、関西、中部のレーンに入って。」と、木下が放送する。この時、井口と下柳が管内を区分していたが、所定のレーンへ移動した。
「三毛猫君!応援来たよ!」と、井口が言うと
「あ~井口さん、助かります。」と、三毛猫は返した。
「神戸から来たんだってね!私は日通のペリカン便の区分をやっていたよ。ところで国際郵便多かったでしょ?神戸は?」と、井口が言う。
「そうですね。国際都市だったから海外あて多かったですよ。航空便が大変でしたね。」と、三毛猫が言ったとき
「すごいねえ。英語で書かれた郵便を区分するのか。」と、井口は感心した。
「まあそうですね!英語もあれば、中国語もある。大変だよ。」と、三毛猫は答えた。
その頃、葛城課長は疲れた様子パソコン作業をやっていた。そこへ丸川局長がやってきた。
「おやおや葛城君、お疲れだねえ。何か問題でも?」と、丸川局長が尋ねると
「まあゆうメイトの塩沢さんが、ここで恋愛しているんですよ。新京阪物流の方と。それでこっちは振り回されている。」と、葛城課長は答えた。すると丸川局長は意外なことを言う。
「そうか。まあ仕方がない。わしが介入するほどのことはないなあ。放っておけばいいよ。」と、彼は言った。
「いいんですか?このままで?策とかあるのですか?丸川局長?」と、葛城は言う。
「一度、三毛猫君を使って教育指導する手も残っているので、そうするといいよ。まあこれだけ大変なことが続くと、疲れるのも当然だね。さて今日は少し休んだらどうかね?18時で帰っていいよ。営業も疲れたと思うので。」と、丸川局長はアドバイスをする。
「短期のゆうメイトの学生さんは、船越さん以外来なくなる。船越さんは”よしみ”がある方だからね。塩沢さんは来月まで頑張ってもらう予定にはしている。彼女にはここで働くことで、何かを学んでほしいからね。」と、丸川局長が言う。
「”よしみ”ですか?」と、葛城課長が言うと
「まあ船越さんのお父さんは、イベント会社の社員だから知っているんだよ。たまに会うから。」と、丸川局長が答えた。
「そうだったんですか!で、なぜ船越さんはここでアルバイトですか?」と、葛城課長は驚いた。
「娘さんの社会勉強のために、今ここでアルバイトをしているそうだよ。」と、丸川局長は言う。
「そうなんですか。」と、葛城課長が相槌を打つと
「郵便局は信用があるのと働きやすいから、初アルバイトにはいいそうだよ。」と、丸川局長は言った。
配達の京橋は、安全運転で配達を済ませて戻ってきた。新川は彼女に次の配達の荷物を渡す。
「あ!午後1号便お疲れ!全部配ったんだね!いつも差し戻しが少しあるのにね。」と、新川が言うと
「はい!夏休み始まったのもあったのかなあ?子供だけで留守番とかがあったので、差し戻しはありませんでした。あと励まされるし!」と、京橋は答えた。そして新川は、
「でもこの後2号便だね!楽しみに待っている人いるから、安全運転でお願いね!」と、言って荷物が入ったアルミパレットを渡した。京橋は
「はい!気を付けて行ってきます!」と言って、軽四配達車で配達へ向かった。
16:20、この日の午前締切の区分が終了した。
「やっとだよ!」と、円は言った。
「いやいやこれからですよ。管内や午後のものが残っていますよ。」と、木下が答える。
「じゃあ小休憩はさんだら、次の戦いだね!」と、円は言いながら山田と3人で休憩室へ向かった。
区分の済んだロールパレットなどは、高梨、塩沢によって出発ホームに並べられていた。そうしている間に17時になった。末永、夢乃、星河、白澤、星雲、船越風香、風間翠の7人が出社してきた。区分応援で堂本も配達室から出てきた。
「今日が繁忙期最終!泣いても笑っても今日が最終!皆さんの努力で、誤送、破損なく終わらせましょう!またノーステップのセールも始まったので、大量に来ますので頑張ってください。」と、葛城課長は言った。
供給は大忙しであった。午後発送のゆうパックの到着が始まるまでの間、打鍵不要のノーステップと百貨店ギフト最終、集荷物の供給を山田、三毛猫、木下が供給を行っていた。
「夢乃さん、こっちも手伝ってください。関西方面!」と、遠藤が呼ぶ。
「はい!じゃあ行きます。」と、夢乃は言ってエンドレーンへ向かう。
「キャンセルは僕がやるから、君は関西の区分と積み込みをやって。」と、遠藤が指示をした。
一方安原が担当する北陸でも、荷物は増加していた。
「あの~白澤さん、そっちの金沢をお願いします。富山は私がやりますので。」と、指示を出すと
「OK!」と、白澤は返事返した。
塩沢と末永、船越、風間は管内レーンにいた。膨大な量のゆうパックに圧倒されている。そしてついにバザーが鳴り始めた。
「手区分の下柳君、管内応援お願いします。」と、木下が放送する。彼は管内のレーンに入り、機械から出てくる大量のゆうパックを正確に区分しつつ指示した。
「船越さんは埼玉、風間さんは千葉、塩沢さんは東京、末永さんは茨木と群馬の区分をお願いね。」と、下柳が言う。皆は「は~い!」と、言って持ち場へ向かった。
18時過ぎを迎えても、到着物は多かった。そして一般物が落ち着くと、ノーステップの供給へ移る。その時、いつもは入らない星雲の姿も供給にあった。
「星雲君、僕が打鍵するから供給お願いね。」と、木下がお願いをした。すると
「いいっすよ!」と、星雲は了承してベルトコンベア供給に入った。伝票の向きに気を付けながら、星雲は山田とともに供給に入った。缶詰やペットボトル飲料2ダース入りなどの重量物を、供給する。三毛猫は北陸レーンで、安原達を支援する。
「ノーステップは1つ20kg以上のヘビーロードだから、応援するよ。」と、彼は言って入ってきた。
「助かります。ありがとうございます。」と、安原は言った。
供給が始まり、木下がベルトコンベアに備え付けのパソコンで打鍵を行い、星雲と山田、円が供給を行った。
18:45ぐらいにノーステップの供給が一通り終わり、機械を一旦止めて、レーンで作業する社員に整理とロールパレットへの積み込みする時間を与える。それと同時に、17時出社のゆうメイトの方が休憩に入る。社員は国際郵便の発送や到着物の整理を行う。
「あ~もうすぐこれが増えるなあ。留学の国際郵便の小包。」と、三毛猫が言うと、
「そうだね。君は神戸に居たから国際郵便に詳しいねえ。こっちは地域配達で、たまに応援で特殊へ行くけど。」と、新川は言った。
「次から一般物を供給します。」と、三毛猫は放送する。各郵便局から届いた一般ゆうパックの積まれた、赤鉄のものが供給される。さらに集荷されたゆうパックも個数と書類を確認後、供給に回される。
「やっぱり多いなあ。午後最終。」と、山田が言うと
「確かにそうですねえ。まだまだ到着しているし、さらにノーステップのセールまであったので、発送物が増える。」と、三毛猫は言う。
夜19時の武蔵野中央、この日は遅くまで、企画の矢野は残業することになっていた。そのとき、彼女の携帯に電話が入った。その内容は、父親が倒れて救急搬送されたことだった。それを気にせずに、事務処理を黙々と小笠原と共に行った。
宮森は集荷へ向かい、夜の青梅街道をスズキアルトで走り事務所や店舗へ向かう。後部座席は集荷物で満載になり帰局する。
「お!宮森さん帰ったは!お疲れ!」と、三毛猫は言う。
「ただいま帰局しました。これ区分お願いします。」と、宮森が言うと
「確認オオライ!やるぜ!」と、三毛猫は答えた。
区分は順調であった。堂本が応援で手区分に入った。
「手区分まわして~空パレ1」と、堂本は言って、空のロールパレットを各レーン前の置き場に突っ込んだ。
「これ供給完了、手区分お願いね。」と、三毛猫は赤鉄を渡す。レーンではプラケースに入った薄物をまとめて、杉江がフラットソーターに供給する。
「郵便区分もここまで進化したんだなあ。」と、杉江は言っていた。
「ここは薄物ゆうパック用の自動区分機が導入されています。神戸にはないから驚いているは。」と、三毛猫は言った。
激務と残業続きだった葛城課長と渡辺は、仕事が早く終ることになった。二人は19時から尾ノ上との待ち合わせ場所のパチンコ店にいた。の東京支社長の尾ノ上将人と合流し、パチンコに興じていた。
「渡辺さんどうですか?」と、葛城課長が尋ねると
「もう全然この台でませんよ。」と、渡辺は答える。一方の尾ノ上は、まあまあ当っていた。
「尾ノ上さん、やりますね!フィーバー!」と、葛城課長が言うと、
「まあこの台は、出そうな気がしたよ。」と、尾ノ上は答えた。
「いいですねえ。こっちはもうすでに”諭吉ひとり”負けています。」と、渡辺は言っていた。
「こっちも全然です。同じく”諭吉ひとり”負けています。」と、葛城課長も言っていた。
そこへ一人の60代初老の女性がやってきた。
「おや?3人さん仲いいですね。」と、その女性は渡辺に話しかけた。
「こっちは全くですよ。今日は駄目だ。大負けです。」と、渡辺が言う。その女性は、渡辺の向かいの台でパチンコを打ち始めた。
「こっちは早くで旦那を亡くし、女一つで娘を育てた。長男が家を出て行ってから、娘と二人っきり。娘が会社を辞めてから、5年間無職だったよ。そして最近、久々にアルバイトの仕事を始めた。郵便局でバイトしていますよ。」と、その女性が言ったとき
「ほう!まあ私は、武蔵野中央郵便局の輸送ゆうパック課で課長をやっている葛城です。」と、台から目をそらし、葛城課長は言い始めた。
「あら娘の上司の方だね。こんなところで会えるなんて!まあ私は、塩沢というものです。」と、女性が言うと
「じゃあ塩沢あいり様のお母様と言ったところですか。」と、葛城課長は言い始める。
「その通り!あんな娘で大変だと思うよ。これからも娘をよろしく。と言うより郵便局員は、パチンコ好きなんだねえ。」と言って、女性はパチンコに興じていた。
結局この日3人は、90分パチンコやったが、結果は尾ノ上のみ勝っていたが、残りのメンバーは全員パチンコで1万円以上の大負けした。
「いや~尾ノ上さんにはまいりましたねえ。¥15kの大負け。」と、葛城課長が言うと
「こっちもですよ。同じく負けましたよ。こっちは諭吉ひとり負けました。」と、渡辺も言った。
「また機会があればやりたいねえ。パチンコ。」と、尾ノ上
一方の局では区分は順調であった。学生アルバイトの末永たちもレーンで区分を頑張っていた。
「みんな~!泣いても笑ってもあとちょっとだよ!最終区分!みんな頑張れ!」と、三毛猫は放送する。
「よっしゃ!新大阪1っちょあがり!」と、井口がロールBoxを押してやってきた。佐倉はそれを所定位置へ運ぶ。
「井口さんそれぐらいでいいです。定位置へは私がやりますよ。」と、佐倉は言ってロールBoxを運んだ。
20時時点では、供給待ちのロールパレットは20パレットぐらいあった。さらにここへ、ノーステップと百貨店の物流センターを経由した、新京阪物流の茶沢のトラックが20時半に着いた。
「茶沢さん、こんばんは。運転お疲れ様です。あ!佐倉さん!高梨さん!トラックから荷卸しお願いします。」と、三毛猫は言って到着対応をする。
「OKです!じゃあ降ろして、供給にまわすよ。」と、佐倉は言って高梨と共に作業にあたる。
「いや~変な話、積むのに苦労しちゃった。あと塩沢さんはいる?」と、茶沢が言うと
「それはいいですから、荷卸しをやってください。こっちも忙しいのでお願いします。」と、三毛猫は言って茶沢を突き放した。茶沢はその後、何も言うことなく黙々とトラックの荷台から、ノーステップの商品が入ったロールパレットを降ろした。
21時になり、ノーステップと百貨店の第2便の供給に移る。同時にキャンセルも供給する。
「皆さん今から、ノーステップとキャンセルを供給します。機械の警報音が鳴らないようにしてください。」と、木下が放送する。そして星雲、山田、円が供給し、下柳が打鍵作業を行った。
「打鍵をするときは、区分番号の向きに注意だよ!」と、山田が言う。
「そうですね!終業時間まで頑張ります!」と、星雲は言い供給作業を行った。
そうこうしている間に、九州方面の発送時間を迎える。出発ホームには、10tトラックやコンテナとタックが来ていた。区分が済んだ荷物は、積み方を工夫しながら各行き先のトラックへ普通郵便のアルミパレットとともに発送される。
21時半になり本田は、短期の学生アルバイトの終業時間を迎えたので最寄りの停留場まで送り届けた。
「いや~残業頼んでしまってごめんね。残りはおじさんたちが頑張るから、気を付けて帰ってね。」と、本田が言うと
「いえいえ、楽しめましたよ。ありがとうございます。あとお疲れ様でした。」と、船越風香は言った。
22時すぎ最後のキャンセルを供給し、この日の区分は終了する。
「皆さん、繁忙期最終の区分は完了です。皆さんお疲れ様でした。」と、三毛猫は放送する。
「やった~!終わった!夏の繁忙期!」と、社員は喜んだ。
そして23時すぎのことだった。ついに矢野は、注意散漫のあまりに到着ホームに置いてあった畳んだロールパレット3台を倒してしまう。そのまま彼女は、床に座り込んだままだった。すぐに残業の社員が駆けつける。
「あ!矢野さん!大丈夫か?けがはない?」と、木下が駆け寄る。その様子を心配して、丸川局長が来た。
「矢野君!お父さんのことかい?でも23時過ぎか。電車じゃ無理だなあ。宇都宮経由長野行のトラックがこのあと出発するから、局長許可で便乗していくといいよ。」と、アドバイスをする。
「でも何があったんですか?」と、本田が訪ねると
「矢野君のお父さんが入院したんだよ。君、すぐに帰宅しなさい。」と、丸川局長がいうと
「別に大丈夫です。」と、矢野は言った。しかし丸川局長は
「駄目だよ。すぐにトラックで行きなさい。もうすぐ出発だから。」と、言った。そして矢野は、23:20発の川越中央・宇都宮経由秋田行のトラックで退社した。
そのような中でも、差し立ては順調であった。残りの荷物も、無事にすべて差し立てられた。
翌日は管内到着から始まる。荷物の量は若干多いが、午前は区分検査できる状況であった。そして昼からは通期扱いとなり、午前締め切りの新東京多摩上り雑での差し立てが始まる。区分係は夕方からは坂木が加わって作業にあたった。ノーステップのサマーセールは二日目で、いつも通り木下の打鍵で区分を行った。
百貨店の荷物がなくなり取り扱う荷物の量は少しずつ減っていくが、葛城課長がとってきた新販路により増えることが約束されていた。それでいい夏を迎えることになっただけでなく、秋からはまた新しい契約社員の方が来てくれることにもなった。輸送ゆうパック課の人手不足もひとまず解消へ向かう。
そして待ちに待った楽しい夏が始まる!