ある早朝の高槻駅、ホームにはギャラリーが数名いた。そのうち一人は三毛猫という郵便局員で、チャットやメール仲間とともにJPレールエクスプレスを撮りに来ていた。そして時間になり下関のPFこと、EF65-1133号機牽引のJPレールエクスプレスが通過し、みなカメラのシャッターを切る。コキ107には、コンテナが満載されていた。
「さすが三毛猫!スジの予想が的中だなあ!さらに東海道遅延により高槻でスーパーレールカーゴと並走バトルだなあ!こんなの一生待っても見ないからな!すげえ!」と、彼のフレンドである「うろちょんこ」と言う高校生が言っていた。実は彼のメール友達には、現役鉄道マンが入り込んでいて、さらにJPレールエクスプレスも運転している。だからスジを知るのも簡単であった。
「さてこれが関西での最後の撮影遠征かなあ?俺は明日から武蔵野中央郵便局に転勤することになった。」と、三毛猫は言っていた。
「それは残念だなあ。じゃあまたメールくれよ。」と、彼のフレンドが言っていた。
武蔵野中央郵便局はいつもの朝を迎えていた。管内便やJPレールエクスプレスでの荷物もすべて順調に動いていた。いつも通り31フィートコンテナやトラックからロールBoxやロールパレットを引出し、書留などを先に取り出してから区分機に供給していく。そしてこの日は、本田は週休のため山田が供給作業をしていた。
しかしこの日は、いつもの違う1日になる。そう神戸の郵便局と東京都の中央区から1人ずつ転勤してくるからだった。丸川局長も心待ちにしていた。出社したこの二人は、局長室に呼び出されていた。
「いや~お二方、ようこそ武蔵野中央郵便局に。ここは試験的にいろんなことをやっています。わしだって私服なのはそれなんです。」と、丸川局長は言っていた。すると京橋は
「それはすごいですねえ。まあ私は、基本配達担当なのでいつも制服ですよ。」と、答えた。一方
「それは助かるなあ。でもまあ私も神戸では制服持っているし、気にしないかなあ?」と、三毛猫は答えた。
朝9時いつも通りミーティングから始まる。そして輸送ゆうパック課には、新入りの三毛猫と京橋晴海の姿があった。丸川局長が新人にあいさつするように頼む。
「神戸から来ました、三毛猫と申します。私は輸送ゆうパック課と特殊郵便課の国際郵便の区分を兼任します。これからよろしくお願いします。」
「東京都中央区から来ました、京橋晴海と申します。配達を主に担当します。これからよろしくお願いします。」と、二人は挨拶した。すると丸川局長は
「この二人は優秀な方で実績や経験の豊富なので、これから武蔵野中央郵便局を改革してくれる方です。私としてもうれしい限りです。では今日からゴールデンウィーク前の繁忙期に突入です。帰省の荷物の発送や子供の日ギフトが始まります。今年は景気が上向いているので、ゆうパックの増加がみられます。皆さん頑張ってください。」と、激励した。
そしていつもの朝が始まる。
新東京多摩下り雑の引き受けから始まる。この日は到着郵便物は少なかったので、区分検査を実施することになった。安原はいつも通り三鷹市のロールパレットを検査していた。すると2個ほど間違った行先のゆうパックが発見される。それらを別の場所にはねてから、検査完了とした。そして行先間違いのゆうパックは、小笠原のデスクへ持って行った。
「おや?安原さん、何のご用でしょうか?」と、小笠原が安原へ尋ねる。
「このゆうパックよく見ると、武蔵野中央郵便局で担当せずに新東京多摩郵便局が担当する住所になっています。」と、安原が言うと
「確かに、立川市の住所になっている。後でくるトラックで戻せば問題ない。しかしどこの郵便局で差し出したものかなあ?たぶん新東京多摩下り雑に載っていたのは確実。消印からすれば、新潟県の上越市内になっている。田舎からの荷物はしょっちゅう郵便番号の間違いが多くて、武蔵野中央郵便局に来ることが多い。そのたびに転送処理している。」と、小笠原は安原にアドバイスをした。
一方の三毛猫は特殊郵便課で武蔵野中央郵便局に到着する国際郵便のSALや船便、普通航空便の区分処理をしていた。この日は、アルミパレット6台分の海外到着の手紙が着いていた。これを三毛猫と杉江が区分作業をやっていた。2号便結束となっているので、2時間でアルミパレット6台分処理しなくてはならない。2人は黙々と区分棚へ手紙を区分していく。中にはミカン箱ぐらいあるものもあるばかりか、住所はすべて英語で書かれている。輸送ゆうパック課の葛城課長は、様子を見に特殊郵便課に来た。
「しかし三毛猫君は、国際郵便わかるのか!それに1通5秒でさばいていくのか!」と、葛城課長は感心していた。すると三毛猫は
「まあ私も、港町神戸出身だからね。」と、軽い口調で答えた。
「この後のEMSの処理を13:30からお願いします。あと安原さんや今井さんへの指導もできますか?」と、葛城課長は三毛猫へお願いする。彼は「確認オオライ!」とだけ言って、自分の持ち場の国際郵便の区分に戻った。
そして10:40になるが、まだすべてゆうパックの処理は終わっていなかった。理由は九州からの航空便ゆうパックが積み込まれたトラックが、首都高の渋滞により遅れているためであった。羽田や成田の各空港から武蔵野中央郵便局に到着荷物に遅延が発生した状況に、今度は誤送も起きている状況であった。もうすでに宮森も荷物の遅延で頭がいっぱいになっていた。
「しかし今日は、首都高羽田線で玉突き事故だなあ。これは参ったなあ。2号便に間に合うかだなあ。」と、矢野が言っていた。宮森、矢野、小笠原は、処理に追われていた。
「もう仕方がないなあ。郵便輸送に電話をして、できるだけ情報を流してもらって。今トラックがどこ走っているのかを細かく教えてもらって。」と、矢野は宮森にアドバイスする。すぐに宮森は行動に移した。
「お忙しい中、お仕事ご苦労様です。武蔵野中央郵便局 輸送ゆうパック課の宮森です。本日羽田空港到着の航空便は、まだ到着しませんがどこを今走っていますか?」
「ああ。あれですか。もう間もなく武蔵野中央郵便局へ到着する予定です。」
「それならいいですが、今本当にどこを走っているのですか?」
「実は今ようやく首都高新宿線を走っているのです。あと20分ほどかかりそうです。」
「ありがとうございます。」
すると矢野が「どうだったの?」と聞いてきた。
「あと20分かかるそうです。高井戸出口まで来ているかどうかだなあ?」と、宮森は返した。
11:10過ぎ、ようやくトラックが武蔵野中央郵便局に着いた。航空便のゆうパックが続々着いた。ここからは時間との闘いになった。アルミパレット6台分のゆうパックを処理しなければならない。山田と円は、区分機への供給と1レーンの整理にあたっていた。しかし問題はこれで済まなかった。また高梨が手区分で失敗している。
それを見た遠藤は、
「おい!高梨!またそんな積み方している!それではまた荷物が壊れるぞ!」と、怒り倒した。
「わりぃ!そこに入れたらだめなのか。」と、高梨が返すと
「当たり前だ!お酒とカバンを一緒のロールパレットに積載するな!あと何で薄物を直接パレットに突っ込むんだよ!破れたりしたらどうなるのか想像つかんのか!」と、さらに遠藤は怒り倒した。
「そんなことわかりませんし、想像もつきませ~ん!」と、高梨が返すと遠藤は逆切れする。
「高梨君はそれだから手区分が上達しない。もっと仕事を覚えてほしいところだよ。」と、罵倒した。そして遠藤は、プラケースに薄物や小物を詰めて高梨が散らかしたゆうパックを黙々と片づけた。これを見た葛城課長は、すぐに三毛猫へ内線電話で連絡する。
「ああ~輸送ゆうパック課の葛城課長なんですが、三毛猫君へお願いがあるのですができますか。」
「何の御用ですか?」と、三毛猫が言うと
「実はね、うちの部署の高梨があまりに仕事を覚えられないので、一から教えてほしいのだけどできますか?」と、葛城課長は言った。
「承知です。この後、13時からそちらで作業します。特に3号便を使って彼に研修します。」と、三毛猫は返事をした。
その頃配達課では、新川と堂本により順調に配達道順仕立てが行われて、ゆうパックは普通郵便とともに配達されていく。新しく赴任してきた京橋も早速、吉祥寺と武蔵境の配達を任された。京橋は赤く塗られた軽四配達車に乗り込んで、配達先へ向けて走って行った。
「京橋さん、早速ながら配達お願いしますね。」と、井口は言った。すると
「大丈夫ですよ。私も超繁忙のコミケを担当していたので、通常の配達は楽です。任せてください。」と、京橋は返事をした。
「それなら心強いです。お願いします。」と、井口は言った。
正午からの昼休憩の間、宮森と矢野、小笠原は交代でいつも通り引受業務をしていた。しかし何かがおかしい、そうゴールデンウィーク前の繁忙期に突入したので、以上に荷物が増えている。こどもの日ギフトが満載されたロールパレットが20台も到着した。到着したら、箱のサイズを宮森と小笠原はメジャーで検測していた。窓口からの応援は、なかなか来ない。記録の紙をロールパレットに貼って、次の作業に宮森と小笠原は移った。
13:00になり、三毛猫が輸送ゆうパック課にやってきた。仕事がまるでできない高梨を指導するためと、EMSの処理をするために来た。
「三毛猫君、来てくれてうれしいよ。高梨を指導してあげてほしいのですがいいですか?できるだけビシバシ言ってあげていい!手加減はなしでお願いします。」と、葛城課長は言う。そして
「では容赦なしで厳しくいきますね。」と、三毛猫は答えて区分へ行った。
まださほど荷物はない状況だったので、三毛猫が一人で作業をしていた。昼食を終えた高梨がそこへやってきた。
「君が高梨君だねえ。」と、三毛猫が尋ねると
「ええ!そうですが。」と高梨が返した。
「君、ほかの社員に聞いている限り、ここでの作業で問題を起こしているみたいだねえ。仕事覚えられないのか?具体的にどうなのか教えてほしい。」と、三毛猫は聞いた。
「いや~なんというか・・・頭悪くて覚えられないんだよなあ?」と、高梨が返すと
「それでは困るのだよ!高梨君!とりあえずロールパレットの容積全部覚えているか?」と、三毛猫が尋ねる。すると
「いや~全然覚えてない!」と軽い口調で高梨は答えた。
「いい加減にしろ!まずゆうパックで使用する全部のロールパレット容積を覚えろ!そして積み方についても覚えろよ!そうしないと業務に支障することになる。これで手区分はいつも足を引っ張っている。」と、三毛猫が言った。そして彼による高梨への指導が始まった。
最初に手区分へ回されたのは、秋葉原の電気店ネット販売の商品だった。矢野が応援でやってきて、荷物を端末入力する。
「まずそこにあるものをとりあえず区分しろ!」と、三毛猫が言った。高梨が「OK!」と言って作業するが、やはり薄物を粗末な取り扱いをする。すぐに三毛猫は、
「おい!何やっているんだ!薄物はプラケースに入れたからロールパレットに積載するんだろ!なぜ覚えられないんだ!絶対にロールパレットの柵からずれ落ちそうな荷物は、箱の荷物で壁を作って中心にくるように入れる。それかプラケースに入れてから積載しろ!これは絶対に覚えないと、輸送事故へ直結するからな!」と、言った。
「そう!じゃあ気を付けます。」と、高梨が返す。
続いて、安原と藤堂がやってきた。いよいよ東京国際からEMSが到着する。
「よっしゃ!次はEMSやで!」と、三毛猫が言う。
「ってか、これ全部英語の伝票だからなあ。俺、ムズいからなあ。なれねえし」と、高梨が言う。
「まだここはマシだよ。神戸は”区”だから大変だよ。市町村ごとに分ければ十分。」と、三毛猫は返す。そしてすぐさま、高梨が問題を起こす。土のう袋のような荷物をロールパレットに下積みする。
「おい!それではロールパレットが無駄になる。下に重いものを載せて、床にしてから載せろ!」と、三毛猫は言った。
「いや~この感覚がまだ覚えられないんすよ。」と、高梨が返すと
「いい加減に覚えられないのかねえ?このままでは、いつ輸送事故が起きるかわからない状況だよ。」と、三毛猫は言った。
そこへ矢野がやってきた。「手区分でゴルフバックとかスーツケースがもうじき到着するから、それの処理もお願いする。」と、三毛猫に言った。彼は「確認オオライ」と、返事を高梨へ指導する。
「よっしゃ!次に君に区分してもらうのは、苦手とするゴルフバックだよ。みっちり指導するからな。」と、三毛猫は言った。高梨は「は~い!」と元気のない返事をした。
14時になり遅番で入った木下と渡辺が出社し、レーンでは午前締切の荷物が順調に処理されていた。こどもの日ギフトが、大量に区分機へ供給されていた。
「安原さん、管内に入ってください。」と、渡辺が指示を出す。そして管内のゆうパックが区分機より続々と吐き出されてくる。そして三毛猫もレーンに入った。
「俺もアルバイト時代、この作業やったんやで。」と、彼は言いながら安原、井口と一緒に区分する。
「すごいですね。三毛猫君は、学生時代からやっていたのですか?」と、安原が尋ねると
「単にお小遣い欲しさかなあ?で、だんだんこの仕事が好きになったわけ。」と、三毛猫は返事をした。
そしてゴルフバックなどの手区分ゆうパックが到着した。高梨は三毛猫とともに作業にあたる。
「君にこれを入力するのと、区分してみろ!」と、三毛猫は言った。しかしやはりロールパレットの変な場所にゴルフバックを置いた。
「ダメダメダメ!それではアカン!倒れてくるぞ!ちゃんと覚えろ!」と、また言う。すると矢野がやってきた。「三毛猫君、そろそろ国際郵便の区分に行ってください。高梨は私が面倒見ます。」と、言った。
しかし三毛猫が輸送ゆうパック課を離れたら、問題が発生した。仲が悪い二人は、積み方で喧嘩を始めた。
「なんでさっき習ったばっかりのことを忘れるの?ただでさえ繁忙期なのにこれでは困る。」と、矢野が言った。そして床に置いてあった高梨のヘルメットを思いっきり矢野が蹴っ飛ばした。
「何するんだよ!」と、高梨が言うと、今度は矢野が「もういい加減にしろ!」と罵倒しそのあたりに落ちていた畳んだ段ボール箱で高梨の頭を叩いた。
宮森は車で法人集荷へ向かった。すきっぷ通りにあるお店、武蔵野市内にある事務所を車で回ってゆうパックを集荷する。この日は、早く集荷してほしいとの電話連絡があったので、宮森は車で走り回っていた。一通りまわってから、一旦集荷したゆうパックを武蔵野中央郵便局におろし、矢野のところへ向かう。
「お疲れ~!と言いたいけど、まだ集荷のお願いはあるなあ。新入りの京橋が配達終了後に個人の集荷をしてくれているけど、かなりヤバい状況かも。軽四車の容量が限界に達しているに違いはない
「会社はなるべく早く集荷して、終業したいと思っているみたいだなあ。」と、矢野から連絡をもらう。
この日は、ゴールデンウィーク前の帰省する人たちの集荷で、京橋は配達が済んだら集荷に回ることになっていたが、軽四車の容量が限界に達して来ていた。すると京橋から電話連絡を矢野に入った。
「もしもし輸送ゆうパック課ですか。京橋ですが、荷物が多いので応援お願いします。」
「それでは、すぐに宮森に応援へ行かせますので、しばらくお待ちください。どのあたりで合流させますか?」と矢野が尋ねる。すると
「吉祥寺図書館で合流したいです。あと2件集荷なので。」と、京橋は返事をする。
「わかりました。すぐ宮森に行ってもらいます。」と返事をして、集荷補助として宮森が車で吉祥寺図書館へ向かった。
吉祥寺図書館に着いた宮森は、京橋の乗った軽四郵便車がいた。荷台はすでに満杯であった。京橋から集荷ゆうパックを受け取り、宮森のスズキアルトに詰め込んだ。
「わざわざすみませんね。宮森さん。ゴールデンウィーク前なので、帰省客のカバンでいっぱいになってしまって。」と、京橋は言った。すると
「いえいえ、私も集荷の仕事をしています。しかし今日はカバン本当に多いですねえ。」と、宮森は返した。
「まだまだ集荷に回らないといけないし、配達もあるから大変です。」と、京橋は言った。
そして宮森は、武蔵野中央郵便局に急いで戻った。
その頃、武蔵野中央郵便局では全差の作業が始まった。いつも通りノーステップと一般のゆうパックを供給して処理していた。順調に思った矢先、トラックの手配で問題が起きる。京王物流のトラックが首都高で横転する。これで名古屋方面のトラックで再手配になる。しかし時期が時期なので捕まらない。
仕方がないので、貨物列車を使い輸送することになった。矢野がJR貨物へ連絡し、12フィートコンテナ1つ分を手配して、名古屋へ輸送することにした。
15時になり、今井と坂木が1時間早く出社した。それを見つけた葛城課長は、彼女にこう言った。
「あ!今井さん!ちょうどよかった!今、宮森が席を離しているので、ちょっと手伝ってほしい。」と、お願いする。そして彼女は、レーンで区分にあたることになった。きれいにラッピングで包まれた荷物が、次々とベルトコンベアから出てくる。今井はその量に圧倒され始めていた。すると山田がやってきた。
「お!今井さん、やっているね。」と、言っていた。
「今日は少し多いので大変です。」と今井が言うと、すぐに手伝ってきた。
「まあこどもの日が近いからな。差し出すものが多いからなあ。まあこの後、個人受託が増えるからな。」と、山田は言った。
一方三毛猫は、特殊郵便課で国際郵便の区分をしている。大量のエアメールを大陸別に区分していた。
「え~とこれは、アメリカ東海岸。これは西海岸。これはヨーロッパ。」と、言いながら作業していた。
丸川局長が突然特殊郵便課にのぞきに来た。
「三毛猫君は、本当に真面目なんだねえ。感心したよ。」と、丸川局長が言うと三毛猫は
「この仕事を神戸でも、国際郵便の区分をやっていましたからね。」と、返した。
16時になり、差出のゆうパックはピークを迎えた。午前締切の荷物は、いつもより量が多く大変だった。そして宮森は、京橋から受け取った集荷ゆうパックを持ってきた。
「宮森、集荷応援お疲れ~」と矢野が言った後、手区分の応援に入った。しかし一向に午前締切の処理が終わらない。まだまだ到着するロールパレット。そして京橋が戻り、さらにゆうパックは増加する。
その時、忙しさのあまり木下がレーンに入り、供給を円が行った。この時に木下が空のロールパレットを引いて東北のレーンに行った。ベルトコンベアから吐き出されてくるゆうパックのうち、仙台宛てのものを積み込んだ。しかし木下は大きな過ちをした。それは仙台行き先の紙を貼らずに作業していた。さらに作業速度が遅い今井に作業に関係のないことを言う。
「ちょっと今井さん、ペース上げてください。このままでは、仙台のゆうパックとほかの荷物が混ざってしまいますよ?まあ私が手伝いますよ。あと早めに空のロールパレットは準備したほうがいいですよ。」と、木下が言った。今井は不快そうな顔つきで「わかりました。」と、言った。しかし今井も、仙台行き先の紙に気付かず作業していた。そして満杯になったロールパレットは、神戸行の場所に置かれていた。皆が忙しいので、行き先の紙がないのに誰も気づかない状態であった。木下が中身を確認しようとした瞬間、今度は疲れのあまり安原が畳んだロールパレットを倒してしまう。これを見た木下は様子を見に行って、復旧作業にあたる。安原に大した怪我もなく無傷だった。
そしてついに木下は神戸行と勘違いして、仙台行のロールパレットに神戸行の紙を貼る。これで誤送となってしまう事態になった。そのまま誰にも気づかれないまま、神戸行の鉄道便に載って行ってしまう。
16:40に皆の努力で、ようやく午前締切の荷物が処理し終わった。そして発送が始まり、いつも通り出発ホームにロールパレットが並ぶ。17時まで休憩を取った後、午後締切と八王子市のリサイクルショップの商品や午後差出のゆうパックが到着し始める。そして宮森も、手区分で高梨とともに作業にあたる。
「もうすでに手区分、後が支えているよ。高梨もっと処理お願い。」と、宮森は言っていた。
三毛猫は杉江とともに国際郵便の区分をしている。重量物は、三毛猫が区分処理していた。
「この荷物、アフリカまで行くのだなあ?すごいなあ。」と、三毛猫は言った。
「そうだよ。郵便は世界中と繋いでいるのだよ。飛行機のない遠い昔から。」と、杉江が答えた。
18:40までゆうパックの区分機は止まることはない。非常に忙しい中、木下、山田、円が交代で供給と区分を行っていた。安原、今井、井口、坂木は、各レーンに入って区分作業をしていた。荷物が多く皆疲れを見せいていた。手区分が一段落して、高梨もレーン応援に入るように言うが、相変わらずバカっぷりを発揮する。
「さてどっちに入れようかな?」と、高梨はこればかり言っていた。
「もう高梨君、そこ行先間違っているよ。行き先の紙を見ずにやっているよ。」と、井口は行った。そう新大阪の大阪市内宛なのに、神戸に送ろうとしていた。このことを井口に指摘された高梨は、すぐに正しいロールパレットに積み替える。しかしこの間に、レーンには荷物があふれていた。葛城課長は、特殊郵便課の三毛猫へ内線電話連絡する。
「もしもし輸送ゆうパック課の葛城課長と申しますが、三毛猫君、至急レーンの応援お願いします。」
「確認オオライ!」と、三毛猫は言ってエレベーターで輸送ゆうパック課へ急行した。
応援に駆けつけると真っ先に関西のレーンに入り、住所で区分作業を始めた。
「区分番号は当てにならないから、私はアルバイトの時から住所でやっているよ。」と、三毛猫は安原に言った。すると安原は、
「それってすごいですね。この忙しい中で絶対に誤送しないということなので驚いています。」と、返した。
「これも修行をして身に着けた技だからな。」と、三毛猫は自慢そうに言った。
そしてこの後、井口とともに中京のレーンに入り区分していた。
「しかし三毛猫君は、いい仕事しますね。」と、井口は言った。
「これも長いことやっていますからね。」と、三毛猫は言ってから作業を続けた。満杯になったロールパレットを出発ホームに持っていくのと同時に、入れ替える形で新しいパレットを準備する。三毛猫は「行先札、名古屋よし!」と指さし呼称した。これを見た下柳は、
「完璧に鉄道マンだなあ?三毛猫君は、そっちに趣味じゃないかなあ?と言うより、あれだから誤送がないし、輸送事故もないのか。」と、悟った。
そして午後差出のゆうパックをすべて供給し終わったのは21時だった。最初の全国の荷物が出発しはじめ、遅れながらも21時半に、関西方面の鉄道便の31フィートコンテナを載せたトラックが出発した。
宮森も夜の集荷はなく、デスクで矢野と小笠原とともにトラックやコンテナの手配に追われていた。ゴールデンウィーク前なので、トラックの空きがない状況で手配が難しい状況であった。さらに航空便は、空きがなく北海道と九州は鉄道での輸送に切り替える状況になった。
「関西~関東間のJPレールエクスプレスも増結する予定だなあ。これでうまくいけばよいが、九州行は大阪で積み替えになる見通し。たぶん遅れる可能性が高いなあ。」と、矢野は言っていた。
「まあ仕方がないと思う。繁忙期はいつもこれだから仕方がないですよ。昔はかなり遅れることもあったので、気にしないでいいと思います。今は季節的にも雪害とかもなく、大幅な遅延は発生しませんよ。大丈夫です。」と、小笠原は答えた。
しかし仙台なのに紙を貼り間違えたロールパレットは神戸行の出発ホームに並べてあり、もうすでに積み込み準備万端であった。そのまま時間になり、コンテナに積み込まれて神戸まで運ばれていってしまった。
そして武蔵野中央郵便局で歴史に残る輸送事故となっていくことは、このとき誰も知るよしがなかった。