Akatetsu   作:けいはんぐらし!

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第7話 自分を責めないで

 かおりはこの日も休みだった。あおいは仕事で朝からいなかったので、今井と一緒に東京見物へ行くことにした。スカイツリーや浅草を見物していた。昨日かおりはパチンコで勝ったので、あおいへのお土産や今井へいろいろ買ってあげていた。

二人は原宿へ来た。

「かおりさん、こんな高い服を他人に買ってもらうなんて・・・申し訳ないです。」と、今井が言うと

「いいのよ!気にしないで!パチンコで勝ったお金だから!流しておかないと、次当たらないし!」と言って、かおりは強引にブティックへ誘った。そして彼女は、学生で生活の大変な今井の代わりに服を買ってあげた。

 

 さて午前の差し立ては、この日から完全通常に戻り、関西からのJPレールエクスプレスも運行されるようになった。しかしこの日もやはり、列車へ遅延が発生して到着が遅れた。

「またほっぴんジャンプだなあ。今度は”あいの風とやま鉄道”の倶利伽羅だなあ。困ったもんだよ。」と、矢野が言った。さらに午後配達のゆうパックも遅れている状況であった。

落ち込んでいる安原は、複雑な思いで区分作業にあたっていた。そこへまた杉江がやってきた。

「食べていくのも大事だけど、何のため誰のために区分するかも大事だよね。なんで安原さんは郵便局の輸送ゆうパック課に入社したのかね。」と、杉江が質問した。

「生活のために、この仕事をしています。」と、安原は答えた。

「まあそのうちに君も、ついて来る者がいると思うよ。そして目標にも出会うと思う。君が区分したことで、荷物が届く。そして届くのを楽しみにしている人たちもたくさんいる。そこの赤鉄1台にどれだけの思いが載るのかなあ?」と、杉江が言った。安原はしばしの間、赤鉄ロールパレットを複雑な思いで見つめていた。

 

 

 一方の手区分では、高梨と矢野が作業していた。そして目標について高梨に矢野が聞いた。

「俺の目標すっか?そりゃ正社員登録されることかなあ?今はまだ非正規なので、いつか三毛猫や小笠原さんみたいになりたいっすよ!」と、高梨が言ったとたん

「は?正社員登録って言っても、そう簡単な道でないよ。営業もあるし、あちこちペコペコしなければいけないし大変だよ。」と、矢野が言った。

「俺も正社員登録一本狙いっす。早くなりたいっすよ!」と、高梨が言う。

「殴ってやろうか!」と、矢野が言うと

「え!何でですか?」と、高梨が返す。すると

「あのね!新卒以外では、なかなか最初から正社員になれるって厳しいよ。気にも今のままだと、あと3年はかかる。それは覚悟してほしい。三毛猫君ですら、ゆうメイトのアルバイトをやっていたぐらいだよ。」と、矢野が言う。そして高梨は

「そうそう落合さん!落合さんも神戸に行って、ブイブイ言わせるつもりなんでしょ。あそこかわいい子多いし。」と、高梨が言った。すると

「やむにやまれぬ事情がこっちもあるんだよ。」と、落合が言うと

「こっちもファッションと港街の神戸で、仕事したいっすよ!」と高梨が言った。落合は

「かわろうか?」と、冗談交じりの返事をした。

「まじっすか!」と高梨が言う。

「冗談だよ!第一に当日から激務の予感がするよ。繁忙期初日で武蔵野中央郵便局より規模はデカいし、社員数もここの数倍だよ。ゆうメイトの数も半端ないのをまとめなきゃいけないばかりか、差し立てはすべて変わるのを当日中にマスターしなければならないんだぞ!」と、落合が言う。

「は~い、大変自慢頂きました。テスト前やってない自慢、寝てない自慢、業界忙しい自慢!」と、高梨が言った時、

「自慢じゃねえって!おとなしく送り出してよ。」と、落合が答える。

「タイタニックから脱出する乗客に、演奏を続ける楽団員の気持ちがわからんとですよ。」と、高梨が言った。

「うちは泥船かよ!」と、矢野が毒舌で言った。その様子を見た宮森は、「くすす!」と笑った。

「それより本田さんは、ゆくゆくは部長や課長などの上司を目指すのですか?」と、宮森は質問する。

「まあこっちも、その手のはちょっとねえ。偉くなればなるほど大変になるからなあ。責任とかも重くなるし。」と、本田は答えた。すると

「じゃあ一番なりたいものって」と、宮森が再度尋ねると

「うんっとね!・・・ケーキ屋さん?」と、本田は答えた。

 

 

「はあ!」と、高梨があ然とした態度をとるばかりか

「何その幼稚園の女の子みたいな夢・・・!」と、宮森は驚いた。

「初耳っていうかマジ花ですか!」と、落合も言った。

「きもっ!」と、高梨が言った途端、

「夢なんだよ!夢なんだからほっといてくれよ!」と、本田は答えた。宮森は

「ほ~!全然知りませんでした。」と言った。

「結構、これでも休みの日に作ってみたりしているんだよ。」と、本田は答えた瞬間、

「あ!このあいだのブラウニー、もしかして!」と、矢野が言っとき、

「うん!手作りだよ!」と、本田は自慢げそうな表情で言った。

「うわ~複雑!」と、矢野が顔をしかめると

「ちゃんと出来ていたよね!」と、本田が尋ねると

「いや~おいしかったです。おいしかったのですが・・・何だろう、自分の中に予断と偏見があって、本田さんが新妻エプロンをつけて卵を割って作っていると思うと・・・」

「新妻エプロンなんかしないから」と、本田は大声を上げると

「皆さん!いい加減業務に戻ってください!」と、三毛猫が言いに来た。そして皆は持ち場へ戻った。

「もうすぐスイカの季節だねえ。重たいけどあれおいしいんだよなあ。」と言って、彼は杉江とともに国際郵便の区分をするために、特殊郵便課へ行った。

 

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 宮森はこの日は、午前中から車で営業に行っていた。しかし宮森は上の空で、他事を考えていた感じであった。

「やっぱりみんな、普通に夢とかあるなあ。」と、宮森が言うと彼女の脳内ではロロが

「そうそう!みんな夢に向かって頑張るんだよ!それが生きるってことだよ!」と言ったとき

「え~!夢とか目標とかって別にいらなくねえ!」と、ミムジーが言うと

「ミムジーはなんでそんな殺伐としたことばかり言うの・・・」と、ロロが言った。

「なんかうさんくさいじゃん!そういう奴って、現実見ていないんだよなあ。」と、ミムジーは答えた。

しかしまた行く際、交差点で信号停車した時、佐川急便の富ヶ谷がいて幅寄せをしてきた。

そして信号が青になりゆっくりと宮森の車は発進した。しかし富ヶ谷はサイドブレーキを引いたままでフルアクセルであった。そして急発進したのち、縁石にあたって止まってしまった。

「くっそ~!また宮森あおいかよ!」と、佐川急便の富ヶ谷が車から出てきて怒っていた。

 

 そして木佐光秀と言う配達員に、彼の自宅近くで出会った。この配達員はバイクではなく自転車で配達をするが、以前から武蔵野中央でも問題人物としてマークされていた。

「木佐さん、自宅寄ったでしょ!」と、宮森が聞くと

「うん!忘れ物を取りにちょっと・・・」と、木佐が言った。

「木佐さん、本当はやってはいけないのじゃないですか?な・か・ぬ・け!」と、宮森が聞く。

「まあ言わないならいいよ。この通り!30分だけお願い!」と、木佐は願い出た。

「忙しいからいいですよ。それでは!!」と、宮森はとってつけた返事を投げて帰った。そのとき木佐は、こういった。

「俺、今度自転車の大会に出るん!ヒルクライム!」と、彼が言ったとき

「何!ヒルクライムって?」と、宮森が言うと

「う~ん。坂を永遠っと上がっていく自転車の競技だよ。自分の体重と実力がもの言う競技だよ。で、これで優勝するのが夢!」と、木佐は答えた。

「え!・・・でも私は、木佐さんがちゃんと郵便配達してくれるほうがいいです。」と、宮森は言った。

「じゃあ今から戻るよ!」と言って、木佐は自転車で配達に戻った。

複雑な気持ちにまたなった宮森は、車に戻り集荷先の法律事務所へ向かった。取引先に着いたとき、姉のかおりからメールが来た。内容は、今井と一緒に東京見物している浮かれたものだった。

「もうお姉ちゃんたら!もう!」と言って、自分のスマホをかばんに放り込んだ。

 

 

 この日は、取引先の菅野法律事務所では、急ぎで発送する書類が多く午前に取りに来てほしいと言ってきた。それで宮森は、集荷へ向かった。事務員から発送する荷物を受け取り、サイズを計測後、端末入力と台帳に記録、書留はシール貼りをするのと同時に切手の料金の不足がないかを確認した。

「少しこちらも裁判とかいろいろあって、午前締切で出さなければならなくなってしまいました。いつも宮森さんは定時できてくれて、本当に助かりますねえ。」と、事務員の女性は言っていた。

「いえいえ、いつもゆうパックをご利用いただいてありがとうございます。あと“かもめーる”はどうですか?また要望があれば言ってください。」と、宮森が言って案内のチラシを渡した。

集荷が終わり車へ戻る際、この法律事務所の菅野光明所長(弁護士)の一人娘がやってきて、宮森に突然声をかけた。彼女の姿は、黒髪ロングで前髪ぱっつん、グリーンのチェックスカート、紺色のニットセーターにグリーンのリボンの制服姿であった。

「あの~あなたがいつも集荷に来ている郵便局員の方ですか?」と、彼女はかわいい声で言った。

「そうですよ。武蔵野中央郵便局 輸送ゆうパック課 宮森あおいと申します。」

「私は、菅野彩(あや)と申します。少しお話がしたいのでいいですか?」と、言ったときに、所長であり彼女の父親である菅野光明が

「おい!宮森さんは忙しいから迷惑をかけないように!」と、言った。しかし宮森は

「あら?お気になさいなく!じゃあ行こうか!」と笑顔で言って、宮森と二人駐車場へ向かい、駐車場で宮森は彼女と話をした。その様子を見た菅野光明は

「やれやれ、やっぱり年頃なんだよなあ。」と、つぶやいた。

 

「あの~宮森さんは、彼氏とかいたりするのですか。」と、彩は照れながら言うと

「いや~全然!いないよ。縁がないのかなあ?」と、宮森は答えた。

「実は私、学校で男の子に相手をされるのはいいですが、ならず者ばかりなのです。だからこんなことを聞いてしまいました。それに高校生のうちに恋愛するのが夢でもあります。」と、彩が言うと

「じゃあ私の職場にいる方で、君と同年の知り合いがいるとか言っていたからちょっと聞いてみるよ。」と、宮森が言うと

「本当にありがとうございます。」と、彩は言って戻っていった。

宮森は預かった荷物を持って、郵便局に戻り本田へ区分処理のために渡した。

「しかし書留が多いなあ。」と、本田は言ってから携帯端末で入力後、消印を押していた。そして三毛猫へ、書留郵便の差し立てを依頼した。しばらく事務作業した後、次の集荷先へ向かった。

 

 

 配達では瀬川が京橋へ配達するゆうパックを渡し、配達先へ向かう。しかしこの日は、留守が多く持ち帰りも多かった。京橋が帰局すると瀬川へ持ち帰りのゆうパックを報告する。

「京橋晴海ですが、ただ今帰局しました。」と言うと

「配達お疲れ様です。あらら、今日は差し戻しが多いですね。全て保管だね。」と、瀬川が言う。

「まあ留守が多いのかなあ?まあこの後も、普通郵便もあるので配達係は大変です。」と京橋が言う。すると堂本はそこへ来た。

「じゃあ安心して、これから再配達が入ると思う。そうすれば別の方が持っていくし、小物なら木佐君が持って行ってくれる。」と、堂本は言った。

 

 この日より木下は、供給のみでの作業を許された。しかし木下の受けた処分は重かった。ギフトなどの営業も行かなくてはいけないばかりか、減給処分を受けた。

「木下さんももっと真面目にやってくださいね。手順は徹底的に守ってください。」と、本田は言った。

安原は相変わらず午前の最終便、九州航空便の区分をレーンでやっていた。定刻通り荷物を載せたトラックは、11時前に武蔵野中央郵便局に到着し、11時半には区分は終了し、出発ホームにロールパレットを並べる。杉江と三毛猫も到着した国際郵便の区分をやっていた。そして杉江は、輸送ゆうパック課で安原の様子を見た後、彼は休憩室で昼食をとった。

食事を終えて、杉江が湯沸し室へ向かう。すると湯沸し室には井口がいた。

「あ!杉江さん!流し使いますか?」と、井口は言って流し台を空けた時、

「井口君、少し頼みたいことがあるのだけど。」と、杉江は言った。

そして井口は、安原の様子を見るためにレーンに入った。その頃、安原は全国宛の処理をしていた。

「やすはらっち!このレーン、自分で選んだっけ!」と、井口が言う。

「はいっ」と、安原は小さな声で答えた。すると

「北陸は大変だからねえ。福井、石川、富山、新潟のそれぞれ分ける必要があるからね。さらに新幹線開業で遊びに行く人も多いし。兼六園に、湯の鷺温泉、富山の黒部ダム、立山黒部アルペンルートとか見どころいっぱいあるからね!あとトロッコ列車とかも!あれ迫力満点だよね!絶景の中を走るところが!あ~北陸に私も行きたいなあ。」と、井口が言ったら、

「力不足でした・・・北陸の地理に詳しくないので・・・自分の区分が間違っている気がします。」と、安原は答える。そのとき井口は安原の肩を持って、

「やっぱり安原さんは面白い子だね!気にしないよ!ゆっくり区分したらいいよ!煮詰まるときは一緒だよ。三毛猫君も私もそうだった。全差はいろんな地名が多くて大変だからね!私も住所で区分の場合、都道府県名に気を取られて、区分番号をよく見落とすのだなあ。」と、井口は安原を励ました。

「井口さんもやったことあるのですか?」と、安原が質問すると

「まあ三毛猫君は絶対誤送なしだけど、まあ私もこの仕事は瞬時の判断が問われるからなあ。たまに間違っていたりする。区分検査で誤送が発覚して、よく小笠原さんや円さんに注意されたなあ。」と、井口は答えた。

「そういう時はどうすればいいですか?」と、安原が聞くと

「あのね。そういう時はね。散歩かなあ?この仕事は単調で息が詰まるからね。」と、井口は言った。

 

 

 その頃かおりと今井は、喫茶店にいた。今井は少し遠慮気味であった。

「あの~いいんすか?こんなに服を買ってもらうだけじゃなくて、高級ケーキまで・・・」と、今井が聞くと

「いいの!いいの!昨日はパチンコで勝ったし、お金ならあるよ。普段使う機会がないからね!こっちで使おうと思ってきた。リーちゃんもほかにほしいものがあるなら買ってあげるよ。」と、かおりは返した。

「いや!今は別に・・・」と、遠慮しがちの返事をした。

「じゃあやりたいことをやろ~!ショー観たり、ディナークルーズとか。」と、かおりが言ったとき

「まあ私は、忙しいです。この後も郵便局に行って、アルバイトをしているので。」と、今井は言った。

「そうか!じゃあお仕事がんばってね!」と、かおりは言った。そしてあおいの分の高級ケーキを買って、あおいのアパートへ帰った。

 

 宮森はその頃、集荷から帰ってきた。法律事務所に2回目の集荷へ向かった。荷物を事務員より受け取り、次の集荷先がある「すきっぷ通り」のお店を回り、発送する荷物を集荷した。その時に、姉のかおりへ電話をする。

「もしもしおねえちゃん!自慢話のメールしないでほしいけど。」と、あおいが言うと

「いいじゃん!」と、かおりは答えた。

「こっちも集荷とかで忙しいの!郵便局の仕事は大変だからね!今も集荷へ出ている。」と、あおいは言って電話を切った。

 

 三毛猫は休み時間に、休憩室で自分のノートパソコンを使って遊んでいた。知り合いからのメールも多く対応していた。そこへ宮森からメールが来る。

「三毛猫君へ 後で話があります」という内容であった。

「なんだろうかねえ?」と、三毛猫は思いながら自分のノートパソコンの電源を切って、持ち場へ戻った。

宮森が帰局後、真っ先に三毛猫は到着ホームへ向かい集荷物を回収する。

「宮森さん集荷ご苦労様です。あとメールですが何か用なの?」と、三毛猫が言った。

「まあ少しお話があるので、チルド室へ行っていいですか?」と、宮森が言う。そして二人はチルド室へ向かった。重い自動扉が開けて中で作業していた、小笠原に休憩するように言った。小笠原が部屋から出た時、自動扉を閉め、三毛猫と宮森の二人だけになった。

「何の用なのですか?宮森さん。」と、三毛猫は尋ねる。すると

「まあ私の取引先というか集荷先の法律事務所の一人娘が、彼氏がほしいとか言ってきているから、いい感じの男の子を紹介してほしい。遠距離も大丈夫!誰かいないかなあ?」と、宮森が言うと

「なんや!そんなことかいな!大丈夫だよ!福岡のkuro481-2001君を紹介するよ。彼女募集中なので!」と、三毛猫は言って連絡先のメールアドレスのメモを宮森へ渡した。

「ただし紹介は、オフの時にやれよ!業務中はアカンからな!」と、宮森へ三毛猫は念を押した。その直後、矢野が様子を見に来た。

「お!みゃ~もり、もう帰局していたんだ。なぜかさっき井口さんと安原さんが出て行ったけど、何か知らない?」と、宮森へ尋ねると

「いいえ!ちょっと調べてきます。」と言って、宮森はチルド室を後にした。

「三毛猫君、なぜここへいるの?」と、矢野が尋ねると

「温度管理だよ。」と、三毛猫は言った。

宮森は小笠原へ、安原と井口のことを尋ねると

「散歩に出かけたよ。差し立ても順調なので、1時間休憩を許可した。さてあの二人には、最終便まで処理してもらおうかなあ?23時のトラックまで!」と、小笠原は言った。

 

 

 その頃、井口と安原は、自転車に乗って公園へ行った。

「あの~私は忙しいので。時間がないし・・・」と、安原が言うと

「気にしないで!私も元は第一区分だったけど、地域配達をやるようになった。まあ朝から何時間区分していたの?同じことばかりやっていると、視野が狭くなってくるんだよなあ。」と、井口は言った。

「まあ”りんこはん”は、あんなふうに言ったら外出許可くれることがあるから、使うだけいいと思う。自転車で7分、ほぼ道一本だよ。いい気分転換になれる秘密の場所だよ。郵便局の近くだと息抜きの気がしないっしょ!ここはおすすめ!」と、井口が自慢げに言う。

「そうですか。」と、安原が言った時、1頭の白猫が道に出てきた。

「お!ニャジロ~!元気にしていた!今おやつの鰹節あげるよ!」と、井口は言って駆け寄った。そして白猫に郵便局の食堂で分けてもらった鰹節の殻を袋から出して与えた。

「この子、ここに住んでいる猫で、私が可愛がっている。」と、言って井口は猫を撫でていた。

「上手に区分できるようになるには、どうすればいいですか?」と、安原が言うと

「まあ私の場合、東京小包センターで働いていたよ。まだ郵便局のゆうパックではなく、日通のペリカン便だったとき、先輩からいろいろ教えてもらって、たくさんダメだしされて区分していた。ロールBoxが無駄になるとか、そんな積み方ダメとか、その組み合わせはダメとか言われたよ。もちろん誤送も数回やらかした。入社半年後に郵便事業会社にペリカン便は吸収されて、今の東京の郵便局にやってきた。それでも”りんこはん”にダメ出しくらった。赤鉄が無駄になるとか、手区分を素早く丁寧にしろとか言われた。」と、井口は答えた。

 

 第一供給では、山田と木下、円が供給作業をしていた。しかしペースが落ちていた木下は、いつもより供給量が少なかった。何とか個人受託や午前締切を入力終了したのは16:50だった。もうすでに出発ホームには、トラックが到着して積み込み準備をする状況であった。

 

 

 17時になりいつも通り坂木と少し遅れた今井が出社してきた。そしてノーステップと八王子のリサイクルショップの供給に移る。17時半より一般物を供給する。

 ベルトコンベアの投入口では、山田と木下、円の三人が話をしながら供給していた。

「ヤッパショックですか?落合さんが神戸に行っちゃうって!」と、円が言うと

「タシカニネ!」と、木下が言うと

「何だ!その程度ですか?」と、山田が言う。すると

「いやいやいやいやいやっ!ショックはショックだけど、郵便局で仕事=転勤だからね。仕方がないと思う。まあ神戸から三毛猫君も来し、仕方がないと思う。」と、木下が言った。

「元嫁の話じゃないですよ。あと酔っ払いメールもやめたほうがいいですよ。三毛猫君は西宮で酔っ払いに絡まれたらしくて、あまり好きでないそうですよ。」と、山田が言うと

「ああ!うん!」と、木下が相槌を打つ。

「”去る者を追わず”とは言いますが、過去にこだわり振り回される、木下さんも溜め込みタイプじゃないですか?」と、円が言ったとき

「悪かったな!だから太っちゃうんだよ!知ってるよ!落合の将来より俺の明日を何とかしてほしいよ。あ~はぅ営業ノルマかかったなあ。先日の一件で!泣きたいなあ。」と、木下は怒り出した。そしてロールパレットのキャスターを蹴っていた。

「この期に及んで、総力戦の焼き畑農業(自爆営業)はやめてくださいね。」と、山田が言うと、

「あとに何も残らない(金銭的な意味)誰も幸せにならないというやつね!」と、円も言った。

「うわぁ~ん!わかった!」と、木下は嘆き気味に言っていた。

そこへ宮森が窓口からゆうパックを供給に持ってきた。

「お疲れ様で~す!」と、宮森が言って台車を押してきた。

「山田さんあと30パレット到着予定です。すべて赤鉄です。」と、宮森が言うと

「OK、じゃあ到着次第供給するよ。」と、山田が言う。

「あの~安原さんはどうですか?あと井口さんも?」と、宮森が供給をしている社員へたずねると、

「まあさっき戻って、少し早目の夜食を食べて区分にあたっている。彼女なら手区分で18:45の休憩なしで作業にあたるみたい。」と、山田が言う。宮森がレーンに向かうと、安原が一生懸命に区分していた。井口もエンドレーンで関西とキャンセルを区分している。それを見た宮森は、彼女の努力を知ることとなった。

 

 翌日宮森かおりは田舎へ帰ることになって、朝から準備していた。

「お姉ちゃんもう帰るの?駅まで送るよ!」と、言ったとき

「いいよ!気にしないで。帰りにちょっと寄りたいところがあるの。じゃあまんず!がんばっぺ!」と言って、かおりは部屋を出て帰って行った。

 

 6月は、母の日ギフトがあって第2日曜が近づくと荷物が増えたが、それ以降について、ゆうパックは減少傾向となり、梅雨時は閑散期で荷物は減少傾向あった。そのまま6月は終わった。

朝から管内、JPレールエクスプレス関西便、新東京多摩下り雑、北海道九州航空を供給した後、12時から区分係は食事休憩、13時より平日はノーステップを打鍵供給する。14時からは、18Xの郵便局から到着する個人受託ゆうパックを供給する。15時からは、いったんキャンセルを打鍵供給し、その後通常供給を再開する。平日の宮森は夕方になると集荷へ向かい、19時に戻ってくる。21時台にはすべての区分が終わり、出発ホームに並べる。

休日はノーステップと八王子のリサイクルショップの荷物がないため、発送物少ないので新東京多摩下り直行便ですべてが処理されるので、差し立ては地方別のみとなるだけであった。現場では3人が交代で処理にあたる。

 

 そして7月1日、武蔵野中央郵便局も夏季繁忙期へ突入する。応援のアルバイトも入る。三毛猫も忙しくなるのばかりか、仕事のできない学生が来ることを危惧していた。しかしその予想は、まさかの的中をするのであった。

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