Akatetsu   作:けいはんぐらし!

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第8話 夏の贈り物は優しくない

 ついにこの日より、夏季繁忙期へ突入した。差し立ての新東京多摩上り雑の時間が、16時に変更となった。またトラックの稼働が忙しくなったばかりか、翌日よりJPレールエクスプレスも数両増結された。到着するコンテナも当たり前と言って増える。1日5個以上到着する日もあり、輸送ゆうパック課の人々は日々激務に追われている。区分係も一部時間帯より臨時の学生アルバイトを投入して効率化を図る。午前時間指定のないゆうパックについては、基本午後2号便差し立てとするようになった。

 

 この日は、管内は少し遅めの5時半に到着した。JPレールエクスプレスも若干遅延により、6時半到着となった。渡辺と本田は、到着貨物の管理に追われていた。急ぎの午前配達ゆうパックを優先供給し、一時貯留エリアに午後配達の1.5号便(臨時)を集める。

 宮森は7時に出社した。そして全員がそろい、丸川局長がやってきてミーティングが始まった。

「皆様お仕事ご苦労様です。今日からいよいよ夏季繁忙期です。午後の差し立てより、アルバイトの学生さんの高校生の方がお見えします。あと府中市内の郵便局員の娘さんである久乃木愛さんも、長期でやってきます。」と、自慢げに言った。

「アルバイトの学生さんの教育指導係として、杉江、井口、三毛猫君は頑張ってください。」と、葛城課長も言った。

「ほうほう!私ですか!頑張ります!厳しく指導して、誤送ゼロにします!」と、三毛猫は得意げに言っていた。

そして区分係はレーンに入り、作業にあたった。葛城課長と小笠原はチルド室に入り、高梨は杉江とともに手区分に入った。全国到着は、まず新東京多摩下り雑の第1便の10tトラックが到着ホームについた。15台のロールBoxが下りてきた。まさに修羅場に突入していく予感であった。午前18X中継の荷物は、少ない人数で処理していた。宮森はトラックの手配と誤送の処理に追われていた。

「また神戸からのゆうパックなの?これで10個目だよ。全部立川市・・・どうなっているの?さらに配達は午前になっている。まずいよ。」と、言いながら安原から渡された。そして

「じゃあ処理お願いします。」と、宮森へ言って安原はレーンに戻っていった。

宮森はその後、立川市の郵便局へ電話を入れて、車で持ってくるように指示を受けた。

「矢野さん、今から誤送対応で立川まで行ってきます。武蔵野中央に戻さなければいけないゆうパックも7つほど立川市にあります。」と、宮森が言うと

「気を付けて行ってね。」と、矢野は言った。そして立川市へ向かって、車で宮森は走って行った。

 

 

大量にある関西のゆうパックだけではなく、新東京多摩下り雑が到着したので、区分量に拍車がかかった。供給しても供給してもなかなか減らないロールBoxを見て、第一供給はあっけにとらわれていた。

「しかしこれはすごいなあ。」と、山田が言う。

「まあ私も数年前アルバイト時代の冬繁忙期もそうですよ。景気上向きだからね。あ!山田さんお酒流れていきそうでしたので、床に置いておきました。話はやめて集中しましょう。」と、三毛猫は言いながら作業していた。安原が薄物と手区分を回収し、薄物はフラットソーターにかけてから手区分を高梨に渡した。しかし手区分になぜか矢野の姿があった。

「高梨!スイカ投げるんじゃないよ!あと衝撃を与えるとかなしだ!どうなるかわかっている?」と、矢野が言った。山田が離席していたら、区分機の投入口からすごい音と三毛猫の「わあああああああああ!」と、悲鳴が聞こえた。すぐに宮森が駆けつけると、神戸の「ツヨキ」という布団屋の商品専用ゆうパックが詰まった、武蔵野直行便のロールBoxがあった。どうやらバランスが崩れすべてのゆうパックが床に散乱したばかりか、三毛猫はそのゆうパックの下敷きになり生き埋めになっている状況であった。

「大丈夫!三毛猫君!」と、宮森が言うと

「助よや~!」と、三毛猫は言った。

矢野と二人がかりで救出し、事情を矢野が聞くと

「どうやら神戸のヤツがめちゃくちゃ区分しているなあ。あの積み方は危険だよ。」と、言って落下したゆうパックをベルトコンベアへ供給していった。

「またあとで電話しておくよ。もっときっちり積み込んでと・・・まあ怪我がなくてよかったよ。」と、矢野が言った。

9時になると臨時便のトラックが全国より到着ホームに着いた。これにも大量のゆうパックが積まれていた。信書便のアルミパレットを降ろしエレベーターに積み込み、薄物ゆうパックと手区分を回収、それ以外は三毛猫と山田が供給する。薄物はフラットソーターに杉江がかけていた。

レーンでは9時までは遠藤、安原、下柳が処理していた。それ以降は、佐倉、渡辺が入るばかりか、三毛猫も間でレーンに入り、ゆうパックをロールパレットへ投げて入れていた。

「安原さん、しっかり区分してくださいね。今回は近いエリアなので、誤送しても心配はないですがねえ。」と、三毛猫は放送をした。安原は安どの表情を浮かべながら区分にあたった。9時半前に、新東京多摩下り雑が到着し忙しさに拍車がかかった。区分係は、大急ぎで区分し差し立て時間に間に合わせた。

10時半から15分休憩を取ってから、午前締切の最終便である東京航空を処理する。羽田空港から到着したトラックから大量の食品や野菜の入った黄鉄(ロールパレット)を三毛猫と山田は降ろし、区分機のベルトコンベアに載せていく。しかしスイカの入った段ボールは、ロールパレットに戻し手区分の高梨に渡した。しかし取り扱いが丁寧でない高梨は、相変わらず粗末な扱いをする。

「おい!高梨君!スイカと米袋は大事に扱ってよな!」と、三毛猫は放送を流し注意した。でも手区分から危険な音がした。それを三毛猫は聞き落すはずはなく、すぐに小笠原に様子を見に行くように知らせる。案の定、高梨が米袋を口が開いていた。それを見た小笠原は、無言でガムテープ補修して発送した。

 一方のチルド室では、葛城課長が冷蔵冷凍品を区分していた。夏になると高級なお酒(大吟醸)を送る方が増えるので、区分台にはたくさんのゆうパックがあった。冷蔵ロールパレットから荷物を一旦取り出し、入力した後にチルド室内の行先の紙の貼ってある区分台に載せていく。それを武蔵野中央に到着したすべてのロールパレットで行った。途中で小笠原も応援で駆け付けた。この日のファッションは、彼女愛用のAラインコートにピンクのエプロン姿だった。それを見た葛城課長は、

「小笠原さんは、おしゃれでかわいいね!」と、彼が言うと

「まあ私も、これは一種の武装でもあるのですがねえ。」と、小笠原は答えた。そして冷蔵冷凍品を区分した。

 

 

 午前の配達課では、瀬川、新川、堂本の3人が道順を組み立て、配達員へ渡していた。その様子を短期アルバイトの「塩沢あいり」が見ていた。彼女の姿は、黒髪ロングだが尻まで髪の毛があり、区分作業に支障があるため、後ろをヘアゴムで束ねていたが周りの社員に比べれば汚らしさがあった。

「塩沢さん、区分は信書とゆうパックを正確に道順仕立てしていってください。」と、堂本が指導していた。

「わかりました。」と言って、配達仕立てを塩沢はしていた。しかし塩沢は手際がとにかく悪かった。なぜなら彼女は東京都杉並区在住で、武蔵野市の土地勘がゼロであった。それに気付いた新川は

「う~ん、じゃあヘルメットかぶって、下の階で差し立てかなあ?後で矢野さんか山田さんに聞いてみます。」と、言っていた。これが後々に問題になるとは、だれも予想していなかった。

配達時間になり、次々に配達員がバイクや軽自動車で配達先へ向かう。そして木佐も薄物と信書を持って自転車で配達先へ向かった。そして京橋も軽四車に乗って、配達先へ向かって大量のゆうパックをもって向かった。

「私にとって、軽四車はちょっとしたお店ですね。もう少し大きいトラックか車に乗りたいなあ。普通免許でイケるもの・・・」と、京橋は言った。すると瀬川は

「そうだね!君はゆうパックをたくさん配達しているからなあ。ウォークスルー車なら取り扱いが楽になるみたいですよ。ある意味”走るゆうゆう窓口”です。」と、瀬川は言った。

 

 昼前にようやく宮森は帰局した。すぐに誤送のゆうパックを入力後、配達の堂本に渡してからデスクに戻り、全国宛のトラックやコンテナの手配に追われていた。さらに差し立てのスケジュール管理、今日からくる臨時学生アルバイトの受け入れ準備、転送ゆうパックの処理を矢野と小笠原ともに行っていた。

 

 

 藤堂と久乃木は少し遅番で12時に出社してきた。しかし久乃木は重度のコミュニティー障害であった。なかなか社員の話が分からない。ただ安原と三毛猫の話は分かったようで、ゆうパックの区分検査をすることを約束した。

 午後からはいよいよ繁忙期全差に切り替わる。仕事の量は今までより一気に増える。そこへ久乃木が来て、安原へ何かを言っていた。

「ぜんこくぅ!やぅっ!」と、久乃木が言うと

「あ!全国区分やりたいのだねえ。まず区分番号が書かれているシールを見て、そのあと伝票に書かれている郵便番号と住所を見て、ロールパレットの紙を見てここの番号と都道府県名を合わせて積み込むよ。これは少し難しいけど、久乃木ちゃんならできるね!」と、安原が言うと

「うん!」と久乃木は言って、作業にあたった。

しかしベルトコンベアより出てくる荷物はかなり多く、初めての久乃木には少々厳しいものがあった。案の定、最初は区分だけで精いっぱいで、あっという間に「ファンファンファンファン!」と、けたたましい音がレーンに響いていた。たまりかねて山田がサポートする。ベルトコンベアの排出口に溜まった荷物をかき出し、指定の行先のロールパレットへ投げて積載する。

「久乃木さん、もう少し手早く区分してくださいね。」と、山田が言って後にした。

 

 14時になり18Xの郵便局から到着するゆうパックが集まり始める。さらにノーステップと八王子のリサイクルショップの商品も到着するばかりか、百貨店のギフトも供給し始める。一般全国の供給が一段落すると、一度全国宛ロールパレットを移動させて、臨時管内用の緑色パレットにする。(管内エリア・東京都、埼玉、神奈川、千葉、茨城、山梨、群馬、栃木県のこと)しかし一部は赤鉄を使って上に「区検」の札をつけていく。そして関東内で区分を始めた。ベルトコンベアはものすごいスピードで、8都県宛ての百貨店ギフトを区分していく。レーンでは遠藤、安原、下柳、佐倉、渡辺、藤堂が入った。そして区分作業にあたる。すると山田が少し供給作業では疲れ始めたので、遠藤と入れ替わる形でレーンに入った。ここからは赤鉄でいけば、10台ほどある。これらを三毛猫は手分けしながら供給する。10台すべて供給が終わると、藤堂がやってきた。

「三毛猫君、今から打鍵でキャンセル入れるよ。」と言って、赤い旗がついたロールパレットが出てきた。そして三毛猫は、藤堂が見やすい位置に伝票が来るようにしながら手早く供給した。

「レーン注意してね。キャンセル入れているから。」と、葛城課長は放送で注意を促す。臨時管内のすべての作業が済んだのは、16時だった。新東京多摩上り雑第一便を発送していく。そして残りの午前締切のゆうパックが供給されたのは15分後であった。レーン整理をする間もなく、区分機を全国に切り替え、ブザーが鳴り再び一般を供給する。しかしこの時点でも、ロールパレットは25台ほどあった。それらを手早く供給する。葛城課長は

「とりあえず全国優先、差し立て時間の遅いもの及び夜間のもの、管内は供給禁止にします。」と、三毛猫に言いに来た。すぐに三毛猫は、全国宛のものを中心に供給するとともに、管内レーンにいる社員に放送でほかのレーン応援を頼む。

 

 

 その頃久乃木は、ものすごい集中力で区分検査を行っていた。今回区分したゆうパックは、臨時トラックで数日後に差し立てなので、区分検査は欠かせない。そこで久乃木を使って、区検札のついたロールパレットについては、一旦荷物を取出し検査をして積み替える。しかしここでも、誤送が発生していたことが分かった。それらについては、検査したのち正しい行先のロールパレットに積み替えて、上の階の倉庫で保管した。回収係の普通郵便課の社員が久乃木のもとに来て、区分の済んだロールパレットをエレベーターに積み込んで上がっていった。

 

17時になり、今井と坂木の二人と短期アルバイトの「末永みらい」、「夢乃きずな」、「星河かなた」、「白澤千歳」、「星雲永時(せいうんえいじ)」、「船越風香」が、やってきた。初めてのアルバイトだけに皆は戸惑いの表情が出ていた。そして葛城課長よりミーティングが始まった。

「今日から入社のアルバイトの皆さん、頑張ってください。分からないことがあれば、社員の皆さんに聞いてください。あと誤送は絶対にやめてくださいね。あれは後で対応しなければならないので。」と、葛城課長は言っていた。

そして三毛猫と山田、星雲が供給に入った。しかし星雲は慣れていないのか、覚える気がないのかお酒を区分機へ投入しまくっている状況であった。

「おい!星雲君!お酒は手区分やで!気を付けてくれ!」と、三毛猫は言った。

「すみません。気を付けます。」と、星雲は言ってお酒をロールパレットに戻した。

「エンド注意して!坂木さん、山田さん行って!」と、三毛猫は放送で叫んでいた。

レーンは繁忙期夜勤については、1レーンにつき2人体制で区分にあたる。それでも人手が足りない状況であった。厳しい状況をどう乗り切るかは、皆の腕にかかっていた。

 しかし問題は発生した。新人の末永みらいが早々にしくじり、レーンがいっぱいになった。それを見た杉江は、彼らを指導する。

「君は行き先を見ているんだねえ。区分番号と伝票に書かれている住所を確認するのは大変だけど、慣れるまで頑張ってね。最初はゆっくりでもいいけど、ベルトコンベアの出口に溜りすぎないように注意してね。」と、杉江は言った。

 

18時前になると「新東京多摩上り雑午前第二、差し立て準備お願い」と、葛城課長は放送で呼びかける。そして藤堂がレーンから新東京多摩上り雑のロールBoxを準備する。そして出発ホームに並べて、トラックの到着を待つ。

 

 

 その頃、宮森は車で法人集荷に向かう。いつもの事務所を回り、ゆうパックを集荷する。法律事務所の集荷にあたったとき、あの娘さんがいた。宮森はさっそく声をかけた。

「あやちゃ~ん、武蔵野中央郵便局の宮森です。こんばんは。」と、彼女が言うと

「あ!宮森さんこんばんは。」と、彩が出てきた。そして宮森は話をした。

1か月前のある日、ふたりにはこんな出来事があった。

「じゃあ、ふたりで話そうか。」と、宮森は言って彩を連れ出し、駐車場に着くとふたりはいったん車に乗り込み、車内で話をしてメモを渡した。

「彩ちゃん、もし彼氏がほしかったら、この人にメールしてみてはどう?私も縁があればいいなあ。」と、宮森が言うと

「メールしてみたらいいかも。あと手紙送りたいといえば、できるかなあ?」と、彩は言う。

「君には、いい出会いになるといいね。もうすぐ夏休みだし。」と、宮森が言う。

「はい!頑張ってみます!ありがとうございます。宮森さんには感謝しています。」と、彩は言って宮森の車から降りて見送った。

 あれから1か月が経った。恋愛関係は順調であった。ついに手紙をやり取りする仲になったばかりか、サンライズエクスプレスで彼氏が上京することにもなったからであった。その知らせを聞いて、宮森も仕事を頑張るばかりか三毛猫との人間関係を作ろうと頑張るのであった。

 

 武蔵野中央郵便局では繁忙期初日のピークを迎えていた。宮森は19時に帰局した。そして信書を除いて薄物ゆうパックをフラットソーターにくべてから、食事に向かった。すると食堂には、矢野と小笠原がいた。

「お!宮森、戻ったの?集荷お疲れ様。」と、矢野が言う。

「まあ今日は本当に忙しかったよ。本当に繁忙期といった感じだったよ。」と、宮森が言うと

「これからがピークになるよ。さらに忙しくなるから注意ね。」と、小笠原が言った。

 地域配達も道順組み立てに追われていた。日中は配達先へ向かうゆうパックを準備し、再配達や窓口受け取りがあれば堂本らが運んでいた。夜になりも差し戻しゆうパックを管理していた時、葛城課長がやってきた。すぐに瀬川が

「あの~塩沢さんの話があるのですが、いいですか?」と、言うと

「何のことかね?」と、葛城課長は答える。

「実は朝の差し立てをやらせたいのですがいいですか?配達道順仕立てができないので、本人も地域差し立てをやりたいと言っています。」と、瀬川がお願いしたとき

「いいよ!喜んで移動してきて!」と、葛城課長は答えて戻った。

 

 

 一方の現場では、出発時間を迎えつつあった。

「お~い、20時になったぞ!列車が出るぞ~!北海道、九州の準備よろしく!」と、葛城課長は放送をしている。そしてレーンでは、作業にあったっていたものが、出発ホームに北海道、九州宛のロールパレットを並べる。船越風香は、持ち前の体力で500kgの赤鉄ロールパレットでも軽々と移動していた。

「われ!力強いな!」と、三毛猫も感心した様子でいた。彼も札幌宛のロールパレットを運んでいた。

20時半になり学生アルバイトの方はみんな帰宅した。そして配達の京橋や道順仕立ての瀬川らも家に帰った。そして大阪への荷物も差し立ての時間を迎えた。

「はい!関西の鉄道便も準備お願いします。」と、三毛猫は放送をする。安原も今井とともに、500kgを超えているロールパレットやロールBoxを運ぶ。

「ずかちゃん、いち、にの、さん!」と、安原も加わり指定の出発ホームに並べていった。そして三毛猫や山田もトラックドライバーと共に、31フィートコンテナへロールBoxやロールパレットを積み込んでいく。トラックドライバーが積載物を固定し、コンテナや荷台の扉を閉めて施錠する。そしてトラックは埼玉の貨物駅や各地へ旅立っていく。

 宮森と矢野、小笠原は22時に帰宅した。三人とも疲れ切っている様子であったが、明日も早朝から仕事であった。そして残りに荷物を出発ホームに並べて、この日の差し立ては終わった。

 

 翌日は、いつも通り5時半の管内便から始まり、6時の中京上り、JPレールエクスプレス便の順に供給する。午前の到着は応援の必要がないが、これは新東京多摩下り雑が休止となり、代わりに新東京多摩下り直行便という形で、ロールパレットを締切扱いで来たものを武蔵野中央郵便局にて積み替える形となったためである。(紙紐でロールパレットの扉を封印されている。)それにより改善したと思われるが、全国主要都市から臨時便や百貨店ギフトで区分量は増えていた。とりあえずは早朝の中継処理は、

 

 

 安原と円、山田は早朝の差し立てより作業にあたった。到着するロールパレットの管理を行って、武蔵野経由の直行締切便のロールパレットを指定位置に並べていた。本田は昨日休みであったが、今日は6時出社した。そして塩沢あいりが朝9時になり出社し、この日の午前差し立ての顔ぶれがそろった。

「今日は差し立て量が多いので、事故と誤送に注意して行ってください。」と、葛城課長はミーティングの際に言った。そしてこの日は安原、山田、円、三毛猫に加え、塩沢と本田、井口、高梨も加わり午前の区分が始まる。最初に供給するのは、午後2時以降配達のゆうパックを区分する。チャンスは1回限り、レーンで区分する者は伝票の住所と区分番号を見ながら、指定のロールパレットへ積み込んでいく。塩沢については、井口が隣に付いて手取り足取り指導する。

「まず区分番号のシールを見て、伝票に書かれている住所を見て指定の紙が貼られているロールパレットへ載せる。それの繰り返しがこの職場!」と、井口は言っていた。しかし彼女の手際は、非常に悪い。次どこに入れるかで悩んでばかりであった。あっという間にレーン上は、荷物であふれかえり「ブビー」と、ブザーが鳴りまくっていた。それを見て山田が駆け付けた。

「もう少し手際よく区分して!」と、彼は言って作業を手伝っている状況であった。

10時になり久乃木が出社してきた。ミーティングではコミュニティー障害っぷりを発揮して、安原のフォローなしでは何もできない状況であった。しかし彼女は、区分検査が得意であった。大量にあるロールパレットの中から誤送を見抜くことができる。それを知った安原は、手区分を高梨とともにやらせておくことにした。区分検査が苦手な三毛猫の代わりに、彼が区分した荷物を中心に検査することになった。それにより三毛猫はほかの作業に従事できる。

機械が止まることはない。区分機のベルトコンベアから大量に出てくるゆうパックを、早く正確にロールパレットへ積載する。三毛猫や安原、井口などは手際がいいが、塩沢は相変わらずひどかった。すぐに手が止まるため、レーンに荷物があふれ出す。それを見ていつも井口は応援に駆け付けていた。

「塩沢さん、もっとしっかりしてください。」と、井口は言った。

「私もまだゆうパックについて慣れていないので、何かと大変です。」と、塩沢は答える。

「そうですか。まあ確かにいきなり放り込まれるからね。あと髪の毛は、短くしたほうがいいよ。長すぎるから美容院に行って短くしてきたら?」と、井口は言った。

「まあ私もこう見えて35歳。無職でブランクがありますからね。お小遣いもらっていないので、散髪は自分でやっているのです。だから前髪がぱっつんで「おかっぱ風」になっているのは、自分でしているからです。」と、塩沢が言った。

 

 10時半、到着は九州航空のみとなった。到着は11時なので、それまでは区分検査を行った。三毛猫は久乃木に検査を頼む。そして彼は、国際郵便の応援に入りエレベーターで特殊郵便課へ行った。

定時で最後の九州航空が到着し区分した。到着荷物は多いが、11時半にすべての区分が終わった。ここからは全国宛のロールパレットを配置する。しかし塩沢は手際が相変わらず悪い。案の定、紙を貼り間違えたため、遠藤から指導を受ける。

「ちょっと塩沢さん、行き先間違えて貼っていますよ。いい加減区別つけてくださいね。関西は2府4県ですが、足元の表示を確認してから仕立ててください。」と、彼が言うと

「すみません。少しボーとしていました。」と、塩沢は答えた。

「塩沢さん、あなた嘘言っているでしょ。本当は地理がわからないことを隠すために、そんなことしているのじゃないですか?」と、遠藤は言うと

「あたりです。」と、塩沢は小声で答えた。

「全く!!」と、遠藤はそう言い放ってからあきれた表情で自分の持ち場へ行った。

 

 12時過ぎになり昼食をとるために区分係と企画デスクの小笠原、矢野が食堂へ向かうのと同時に、宮森は企画に残り電話番をした。葛城課長は、集荷の到着対応にあたる。個数を確認後、供給の待機位置にアルミパレットなどに詰め込み置いていく。

 

 

 13時になり区分係が輸送ゆうパック課へ戻ってくる。そして午後の全国差し立てが始まる。まずはいつも通り午前締切で武蔵野中央に到着するものを中心に供給する。しかしそれ以外にも、手がすけば全国宛の百貨店ギフトも供給する。区分作業は順調であったばかりか、塩沢と久乃木が来てから楽にはなった。三毛猫は13時台については手区分を中心にやっていた。秋葉原の電気店や国際スピード郵便もそれなりに来るばかりか、遅延したトラック便もあった。ロールBoxに積み込まれた九州農産品鉄道臨時便を山田と矢野が入力後に床へ直置きし、高梨、三毛猫、久乃木が伝票で行先を確認し指定のロールパレットへ積み込む。その時、山田が三毛猫に

「よっしゃ!勝負や!このスイカを指定のパレットに競争して入れるぞ!」と、言い出す。

「確認オオライ!この勝負うけまっせ!」と、三毛猫は勝負を受けた。矢野がスタート合図を出すと、二人はLLサイズの重いスイカの箱を持って、指定のロールパレットへ向かうが、この勝負に勝ったのは山田だった。

「うわああああ。負けた!」と、三毛猫は言った。すると

「あ!じゃあ負けたので、なんか企画しようかなあ?」と、矢野が言い出した。

「マジかよ!」と、三毛猫は言った。

 

 午後からは少し波乱の予感がしていた。それはやはり塩沢が原因であった。

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