Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
朝の本部では、津和野が運転士試験を受ける噂がでていた。朝から本部の休憩室では、糸魚川と鳥飼、そして小郡の姿があった。
「やっぱり彼女はタダものでないでぇ!運転がめっちゃうまかったもん!」と、糸魚川主任が言う。
「せやもんなあ!でも今は先日の失敗で、向日町におる!」と、鳥飼は言う。
「さらに彼女のおやっさんも、JR東日本で運転士やったんやなあ。それも機関車やで!どう見て才能があった。」と、小郡が話すと、
「うそやん!でも事実やったら、レール削正車を数回見るだけで運転とかありえるもん!」と、糸魚川は言う。
「せやな!それだけ実力あるのかぁ!やっぱすげえ!」と、鳥飼も納得する。
「これから選抜試験があるから、どんな結果になるか期待やな。」と、糸魚川も納得する。
そこへ通りがかりの、電気課の大宰府が来る。
「噂の女性保線技師ですね。どんな感じの方か、気になるよ。」と、彼が言うと、
「かわいい方やで!あと運転がすごくうまい!」と、小郡が言うと、
「噂だけど、今度運転士選抜試験受けるらしいわ!」と、糸魚川も言う。
「マジで!かわいい子なら、いっぺん声かけたい!」と、大宰府は驚きながら言う。
「そのうち会えると思う。」と、糸魚川は答えた。
「おい!大宰府君!相変わらず下心丸出しやなあ?」と、電気課で彼の上司である寝屋川が登場する。
「いや~気になったんで!」と、大宰府が答えると、
「もうそんなくだらないことより、さっさと電気工事の一つが真面目にできるようになってほしいわ!まだ半人前やからなあ!」と、寝屋川は言う。
「全然ですわ!」と、大宰府が答えると、
「配線の一つもまともに出来ないって、よっぽどのアホとしか言い様がない!」と、寝屋川は言った。
「そりゃ駄目やで!ちゃんとやるんやで!」と、小郡は言うと、
「そうだな!」と、大宰府は答えた。
この日は、津和野だけは別勤務になった。と言うのも、先日のマルタイ作業の見落としは、本部では重大なインシデント事項として処理されたからであった。この日は向日町のレールセンターにある工場での勤務になった。
朝8時半の向日町操車場では、ジェイアール西日本メンテックの操車係や清掃員と合同で、ラジオ体操を行う。新京阪保線の社員は、レールセンターの作業工場へ行く。ここでは200mロングレール製造や、廃レールの再生、再資源化準備などをしている。そしてミーティングが始まる。
「おはようさん!お人形さんこと津和野君!」と、長島があいさつする。
「おはようございます!今日もお世話になります!」と、津和野が返すと、
「まあ今日は、レールの再生業務の補助だね。」と、長島は言う。
「そうなのか!」と、津和野が
「おやっ?新入りだねえ?おはよう!御嬢さんなのに、こんなところへ来たんだねえ?すげえ!」と、寺前は言う。
「まあ女性も今頑張っているんです!」と、津和野が答える。
「女性運転士とか、女性パイロットが出てる時代だもんなあ。すごいなあ。」と、寺前は感心していた。
この日の打ち合わせが終わり、9時より業務が始まる。機械音の中、津和野と長島と寺前は、新幹線の使用済みレールの検査をする。
「それより、こないだのレールの探傷作業あったよねえ?200mのやつ?」と、長島が言うと
「せやったなあ。新幹線からきたやつだねえ。今度津山線で再利用とか言っていたなあ。」と、寺前が言う。
「じゃあ作業やろか!津和野君も手伝ってくれるって!」と、長島が言うと
「お願いします。」と、津和野が言う。拍子に笑いが抜けると、
「じゃあ頼んます!」と、寺前は言ってスプレーを津和野に渡した。
そしてレールをクレーンで検査場へ搬入する。そこへ薬品をスプレーし、紫外線ライトを照射し傷を探す。
「レールはねえ、溶接部分が劣化する。破断してもらっては困る。」と、寺前は言う。
「そうなんですか!」と、津和野が感心すると、
「ここから破断して、大変なことになる。北海道や東京であったような重大なトラブルの引き金は、レール探傷のプロセスでわかるんや!」と、寺前は言う。
「特殊な機械を使うのですか?」と、津和野が尋ねると、
「超音波の機械はたまには使うけど、基本はブラックライトだね。」と、寺前が答える。
レールを慎重に検査すると、すこしばかり破断の恐れのある傷が発見する。その場所にチョークでマークをつける。
「ええ感じやなあ。このレールはしゃ~ない!ボツやは!次いこか!」と、寺前が言う。
「こっちのあれですか?」と、津和野がもう1本のロングレールを指さす。
「せやなあ。あれも検査やな。」と、長島は言う。再び薬品をスプレーし、紫外線を当てると浅い傷が目立つ。
「これは破断の心配ないわ!グラインダーかけた後、ローカル線行きやな。」と、寺前は言う。
「じゃあチョークでマーキングします。」と、津和野が言うと
「こうするんやで。」と、長島は言いつつ指示を出す。そして「検・合 津和野」と、チョークでレールにマークする。
「この後も6本ほど検査するで。」と、寺前は言う。そして3人は息の合ったペースで、レールを検査する。
今回検査したレールで、再利用不可能なのは2本だった。これらは定尺として再利用可能な場合は、レールを高速円盤カッターで切断する。検査箇所のマーキングを頼りに、25mの長さに数センチ遊び(研磨用)を持たせ切断位置をケガキ(マーク)する。津和野は大型メジャーとトースカンという道具を手に作業する。
「レールはクソ硬ッタイから、しっかりケガキ針を押し当てろ!」と、長島が言う。そして津和野は、慎重にかつ強く縦に切断用の線をケガキ針でレールに入れる。
「どれ!見せろ!」と、寺前が言って彼女に寄って来る。
「こんな感じです。」と、津和野が言うと、
「せやなあ。ええ感じに線が入っている。他のも頼むわ!」と、寺前が彼女の背中をたたいて持ち場へ戻った。
切断加工の準備が終わり、作業場所へロングレールを運びこむと、今度は高速円盤カッターで既定の長さに切断する。
「今からやろか!レールの頭は思いっきり硬いから、最初はゆっくり力を込めながら作業やで。」と、長島が言うと、
「わかりました。すっごく硬そうだけどきれいに切れるかなあ?」と、津和野が保護エプロンを着ながら言うと、
「それは君の手にかかっている。」と、長島は答えた。
津和野は保護エプロンとゴーグル、耳栓を着用し、この後二人はレールを切断する。二人がかりでかなりの重量がある高速円盤カッターを運び、固定する。
「お前!女の子やのに力あるなあ。」と、長島は言うと、
「そんなこともないよ。」と、津和野は答えた。カッターの切断位置を調整しつつ、万力でレールを固定する。
そして津和野は長島が横に付ながら、カッター起動し刃を高速で回転させ、レールに刃を当てる。轟音と真っ赤な火花を散らし、規定の長さにレールの切断作業をする。
「その調子や!突っ切れ!」と、長島が強い口調で言うと、
「アイサー!」と、津和野は答え強い力でカッターをレールに押し付け切断する。しばらくするとレールは火花をあげなくなり、甲高い音がする。
「うまいこと切れたなあ。ほんなら”しゃくし”で切断面に水をかけて冷まそか!」と、長島がバケツを持ってくる。切断面の冷却が済むと、今度はカッターの電源を止めて移動させ、再び切断箇所に固定し作業をする。
「そうそう!しっかり押し当てや!」と、長島が言うが、津和野は黙々と作業している。
数分後、甲高い音でレールは切断されて、レールがずれ落ちる音がする。
「ええ感じやなあ。こっちは売却して、支線転用にこっちは回すわ!」と、長島が言う。
「古レールも鉄資源ですからね。」と、津和野が言うと、
「せやな。まあこの後は、製鉄所でリサイクルされるよ。」と、通りすがりの寺前が言う。
「今度はどんなものに生まれ変わるんだろうか?」と、津和野が言うと、
「きっと自動車とか、建材じゃないか?」と、寺前は言ってその場を去った。
午前の業務が終わり、一行はレールセンターより600mほど離れたファミレスで昼食をとる。暑かったのか、この日津和野は、大盛りハンバーグを注文していた。
「いつもはこんなものを頼まないですがね。なんか暑いしスタミナほしくて!」と、津和野が言うと
「せやな!レールセンターは暑いもんな!そして重い仕事だし!」と、長島は笑いながら答え、
「そうそう!やっぱり腹が減っては、戦はできんもんなあ!」と、寺前も言う。
「ところで長島さんは、なぜ保線の業務はしないで、レールセンター業務専属なんですか?」と、津和野が尋ねると
「せやなあ。わしは中途やねん!というのも刑務所帰りなんや!」と、長島は答える。
「そうなんですか。で、どれぐらいそこへ行ってたのですか?」と、津和野がさらに尋ねると、
「まあ2年程やなあ。で、出所時に“社会の役に立つ仕事がしたい”と看守に言ったんや!するとなあ偶然、ここで“作業員せいへんか?”みたいになった!」と、長島が言う。
「そうですか。いろいろ大変でしたねえ。」と、津和野が言う。
「まああっこ(刑務所)では気苦労も多かったけど、看守が言った言葉は忘れられへんで!『人間はいつだって生まれ変われる。いつだって再出発できる。死んで生まれ変わったと思って生きてみろ!』これを津和野君も頭の隅に置いてほしいわ。」と、長島はそう言った。
「そうですね。」と、津和野は深くうなずきながら答えた。
「ところでどんな理由で、レールセンターへ一時配属されたんか?」と、寺前が尋ねると、
「私自身もマルタイでの作業ミスを犯して、ここに送り込まれたんです。」と、津和野と答える。
「せやったんか!まあそれりゃしゃ~ない思う。」と、寺前が言い、
「それも学びの一環や。そこから学んで、次に結びつけると成長につながる。学ばざれば北海道みたいになる。」と、長島も言った。
昼からは、今度は製鉄所から来たレールを溶接して200mのロングレールを作る作業をする。25m定尺レールを溶接機に入れ、長島が機械を操作しロングレール化する。
「ほんならこれを溶接してロングレールにしまひょか。」と、長島が言う。
「そうですね。」と、津和野が言って作業指示を受ける。
そしてクレーンで定尺レールが建物に搬入され、スウェーデン製の自動溶接機を使い規定の長さのロングレールを製造する。
「ほんなら製造するのは、あれやなあ。今度ロンチキ工臨用に生産せなあかん!」と、長島が言う。
「大変なんや1本作るのに、めちゃくちゃ時間がかかるやなあ。ロングレールはね。溶接して研磨して仕上げる。
「でも実際、君には難しいからなあ。あっちでさっき切ったレールを研磨してほしいよ。」と、寺前が言ってくる。
「じゃあ研磨をやります。」と、津和野が答える。
「いや~!すまんなあ!こいつで断面きれいにして!」と、寺前が言って、今度はハンドグラインダーを津和野へ渡す。そして先ほどぶつ切りにしたレールが積み上げられた場所へ二人は移動する。
「砥石をしっかり断面に当てて、削って形を整える。」と、寺前が指示を出す。
高速で回転するグラインダーを切断箇所の“バリ”に当てて、形を整える。
「お~!ええ感じやないか!」と、寺前が言うと
「そうですか?!」と、津和野が答える。
「じゃあ残りもバリ取りよろしく!」と、寺前は言って、長島の手伝いへ向かった。そして切断した残りのレールも、定尺化した際のバリを津和野はグラインダーで除去した。
「この後は小型自動レール削正機を使って、走行面をきれいにしてローカル転用する。」と、
「これも新型の機械ですね。」と、津和野が言うと、
「せやなあ。レールをきれいにして、いつでも使えるようにして持っていく。形をきれいにせんとなあ。」と、寺前が言って機械操作の仕方を教える。
そして先ほどの定尺化したレールの上部を0.5mm削正する。たったの10分で、削り終わった。
「これって小さいのにパワフルですねえ。」と、津和野が関心すると、
「まあこんなもんでいい。残りは搬入後にやるからね。続いてあれもやろか。」と、寺前は答えた。
今度は午前中に検査したロングレールを削正する。
「ほんなら今度はこれやなあ。ロングレールの走行面をきれいに削る。」と、寺前が言う。
「OKです!」と、津和野が言って、削正機の準備をする。
ロングレールの削正は一つにつき最低でも30分はかかる。削り終わったレールは、この後ロンチキという貨車に乗せられ、ローカル線に持って行き軌道の近代化に使われる。
「お~!いい感じだねえ!これの調子やな。」と、寺前も感心していた。
すべてのレールの作成が終わる頃、ちょうど15時半であった。一行は休憩をとる。レールセンターの自動販売機コーナーでは、津和野の姿があった。
「おや~!君は甘い飲み物なん?」と、長島が言う。
「ええ!暑いときは、炭酸に限ります。」と、津和野が答える。
「せやねんな。」と、長島は言いつつ、お茶を購入していた。
休憩が終わり、夕方は片づけとレールの整理が残っている。
「どうだったかなあ?レールセンター業務は?」と、長島が津和野に質問する。
「そうですねえ?なかなかこれも面白かったです!」と、彼女は答えた。
「せやなあ?発見の連続やもん!」と、寺前も言う。
「これからまたマルタイに復帰だなあ。」と、津和野が言うと、
「それが君の本業や!ちゃんと頑張ってこいよ!」と、寺前が言って彼女の背中を軽くたたいた。
そしてこの日使用した機材が、次の日も使えるように注油や部品摩耗の点検と整備する。
17時になりチャイムが工場内に響き、この日の業務は終了した。
津和野は空いている新快速の座席に座り、翌日からの資料に目を通しながら、夕日に染まる大阪を横目に見つつ、帰路に就いた。
買い物をしてから家に帰り、食事の準備を済ませ夕食をとる。この片づけが済むと翌日からの旅行の準備をする。
「小郡君、確か「きれいに洗ったロリィタ一式もってきて!」って言っいたなあ?まあ一番っかわいくおしゃれしよう!」と、津和野はつぶやいて鞄に服を詰める。
翌日からは早めのお盆休暇となる。同僚の実家が営んでいる旅館へ遊びに行く。そして休暇後は、交代要員として、山陽電鉄の夜間保線をすることになる。