Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
浪速の大動脈「大阪市営地下鉄 御堂筋線」。関西初の地下鉄で、戦時中も大阪大空襲の日には、被災者を乗せて走っていた。利用者が最も多く、ラッシュの際には90秒刻みで電車が走っている。
その大動脈の保線作業を今回、津和野たちは行うことになる。大阪の本部へ朝出社すると、そこにはあの男がいた。
「おっは~!君の噂の社員なんやね。女性の社会進出もここまで進むんか。」と、早速女好きの大宰府が声をかける。
「おはようございます。まあうちの親も鉄道関係なのです。」と、津和野が答えると、
「そうなのか。すげえな!」と、大宰府が納得する。
「ところで大宰府さんは、お子さんいたりしますか?糸魚川さんみたいに既婚で2児のパパなの?てっきり、そんなオーラを感じちゃいます?!」と、津和野が尋ねると、
「まあ高校卒業と同時入社して、恋愛続けても結果は惨敗といった感じ。結婚もしてない。」と、大宰府は答えた。
「あらら!もう少し“ファッション”とか“おしゃれ”に興味を持つとか、料理とかされたらどうですか?小郡君もやっているらしいですよ。」と、津和野がアドバイスをすると、
「そんなの興味ない!早くやりたい!」と、大宰府は答える。
「お~津和野君おはよう!一緒にブリーフィングルームいこか!」と、小郡が来る。すると
「では私は行きます。お気をつけて!ご安全に!」と、津和野が言うと、
「じゃあ俺はこれでね!おっは~!」と、大宰府は言って自分の打ち合わせに向かった。言うまでもなく大宰府は、彼の上司である寝屋川から注意されることであった。
「おい!大宰府君!君が津和野君にちょっかい出すって、どういうことや!おまけに内容はドスケベなこと言って!全く!」と、寝屋川が彼を捕まえて話す。
「いや~!めっちゃかわいかったし!」と、大宰府が言うと、
「もういい加減、セクハラになることだけはやめろ!あとAVの話題もね!先日別の課の社員から苦情あった。嫌いな奴は、ほんまにおるからAVはやめろよ!」と、寝屋川の話が聞こえてくる始末であった。
会議室では、この日の担当者が打ち合わせをしていた。そこにはテレビ会議で、住之江検車場と繋がっていた。
「来た来た!おっは~!」と、この日の担当の糸魚川が言う。
「みなさんおはようさん。今日は大阪市交通局御堂筋線のレール削正やねん。」と、担当の大和田が言う。
「おはようございます!」と、津和野と小郡、そして糸魚川がはあいさつする。
「お~おはようございます。」と、大阪市交通局の作業員がテレビ越しにあいさつする。
「ではそっちの説明頼むは。」と、大和田が言うと、
「御堂筋線保線区の道修(どしょう)と、野田と申します。」と、テレビ越しに言う。
「ほんなら打ち合わせといきましょか!」と、大和田は言って本日の作業場所を打ち合わせる。
今回作業するのは、最も混雑する区間である梅田~心斎橋間。レールには相当な負荷がかかり、頭部の形も変形している。また表面も魚のうろこ状になっていた。
「乗り心地の改善には、やはり削正する必要あるんでねえ。あと短時間での修理となれば、出区後の運転がうまい方を希望する。」と、道修が言うと、
「じゃあ私がやりますよ。運転は得意です。」と、津和野が答える。
「え~!君が運転やってくれるの?とりあえず住之江検車場から大国町経由心斎橋間とその逆、これをお願いします。」と、道修が言うと、
「オオライです!最短なら20分で現場入りできます。」と、津和野は答えた。
「それは助かるねえ。すぐに作業に移れるから。」と、道修は言った。
「うちは心斎橋到着後、交代になり作業します。」と、糸魚川が言う。そのとき津和野に対して、
「大阪の地下鉄は“第三軌道方式”だから、作業時はサイドレールには注意してね!感電とか接触による事故の恐れがあるからね。」と、大和田が念を押した。
「せやねん!地下区間は当たり前と言って狭いんや。海岸線で経験したやろ。」と、糸魚川が言うと、
「そうでしたね。」と、津和野は答える。
「注意して臨んでな!」と、糸魚川は念を押した。
「そうするんやで!」と、小郡は言う。
「了解です。無事故無違反で行ってきます!」と、津和野は答えた。
打ち合わせは午後1時まであった。それが済むと、昼食である。今回の作業は、大阪市交通局で準備はやってくれるので、あまりない状況であった。
15時から20時まで作業メンバーは仮眠をとる。そして作業着に着替えてから、梅田で夕食を済ませて、四つ橋線に乗車し車両基地がある住之江公園へ向かう。そこからはナイターレース開催中で、照明できらめく水面の住之江競艇場を横目に、車両基地の通用門へ向かう。門に着くや否や、
「きはったでんな。こんばんは。」と、道修が言う。
「待ってましたで。」と、野田も言う。
「こんばんは。作業管理の工務部技術課御堂筋保線区作業員の千里と申します。」と、一人の男があいさつする。
「ほんなら、最終打ち合わせを行って、最終電車出発後に出区としましょうか。」と、道修が言う。そして詰所で最終打ち合わせ後、アルコール検査と服装の検査を受けて、保線基地にいる車両に向かう。
今回使う保線車両は、スイス「スペノ」製の3連接の最新型のものである。
「お~ナツイなあ。これの16頭式を東海道新幹線で使ってたんや。」と、糸魚川が言うと、
「そうなんですか。」と、津和野は答えた。
「そのまさかや!これが16頭式の最新型なんや!」と、野田は言う。
「うそやん!めっちゃナツいと思ってたんや!」と、糸魚川が答えると、
「1時間に300m作業できるんやで!ええやろ!」と、野田は言った。
「ほんなら作業するか!」と、小郡は言う。
「そうでんなあ。最終確認すんだら頼む!」と、千里は言う。そして津和野は、レール削正車のディーゼル機関を始動する。
「電気系統よし!機関始動!」と、彼女は指さし呼称し、ボタンを操作する。すると轟音を立てて、キャラピラー製のエンジンが目を覚ます。出区に向けて、レール用冷却水の散水機の残量の確認などをする。
準備がすべて済むと、第一エンドに先頭誘導の野田と津和野、後方監視の小郡と千里そして主任の糸魚川が乗り込む。
「津和野君、今回は頼むね。安全運転で梅田までがんばってな!」と、千里はお願いすると、
「オオライです!」と、津和野は答えた。
最終電車が住之江公園駅を出発後、すぐに作業現場へ向けて出発する。
「24:10に出区して、駅に向かってください。」と、千里が言いに来る。
「オオライ!準備でき次第、出区します!」と、津和野は答え準備する。時刻になると、糸魚川が無線で
「ほな出区やなあ!発車!」と、言うと津和野はブレーキを解除し、スロットルを開き加速する。出場線に到着すると一旦停止し、車庫へ入区する列車が入る。すると指令から、
「住之江のレール削正車は、北加賀屋駅へ向かってください。」と、連絡が入る。
「それでは向かいます。出発!」と、千里が無線を返す。
そして津和野はゆっくりとスロットルを操作し、地下線へ接続する下り勾配を抜けトンネルに入った。移動時は60km/hまで出せるので、作業場所まではかなりスピードが出せる。
「場内進行!北加賀屋停車!」と、津和野は呼称しブレーキ操作をする。停車目標を彼女は確認し、レール削正車を停車させる。
「ドンピシャやなあ!昔これでボーナス出てたんやで!」と、千里が言うと、
「そうなんですか!まあこの後は、大国町に向かって、そこから渡り線を抜けて御堂筋線に合流や!」と、千里が指示を出す。ほどなく駅ホームに発車メロディが響く。
そして津和野は、フルスロットルにしてレール削正車を発車させる。軽快な走りを見せながら、四つ橋線を北へフルスピードで突き進む。回送を横目に暗いトンネルを抜け、減灯したホームを通過する。そして4つの線路がひしめく大国町に着く。ここでは一旦停車し、分岐器切り替え後に御堂筋線に合流する。
「レール削正車は御堂筋線へ合流を許可します。進んでください。」と、無線が入ると、
「オオライです!作業車発車!」と、津和野は無線を返した。
そしてゆっくりとしたスピードで、分岐器を抜け御堂筋線に合流する。複々線を進み、なんば駅を通過、ここから今回作業する心斎橋に到着する。
「運転お疲れな。こっからは俺の出番や!」と、糸魚川が言うと、
「交代ですね!」と、津和野が言って席を替わる。
「せやなあ。後方監視頼むわ!」と、糸魚川は指示を出す。
「オオライです!」と、津和野は答え敬礼し、持ち場へ向かう。
「小郡は車掌やなあ。」と、糸魚川は無線で確認を取ると、
「せやで!配置ついた!」と、小郡が返事の無線をする。
「先頭誘導よし!」と、野田が、
「後方誘導よし!」と、千里も無線をする。
「津和野、散水よし!」と、彼女も無線入れる。
「ほんなら削正作業に入るで!総員配置につけ!削正ヘッド設置!高速回転開始!」と、糸魚川は呼称しスイッチを入れて機械を始動し、レールに削正砥石を当てる。
猛烈な轟音と火花をあげレールは削られていく。
「ヘッド角度異常なし!しっかり削られているよ。」と、津和野が言うと、
「せやなあ。とりあえず散水で冷えてから規定になったか確認する。あと今日は鳥飼おらんから彼の分もなあ。」と、糸魚川が言うと、
「オオライ!ではやります!」と、津和野は答えレールが既定の形になっているか調べる。
「報告ですが、規定にはなっていますがもう1回作業が必要です。」と、彼女は無線する。
「そうやなあ。ゲージ見たらそうやな。じゃあもう一回削る!」と、糸魚川が言う。そして一旦停車し後退に切り替えて、再び同じ区間を削る。
測定後、削正結果は規定内になった。
「結果はどうや?津和野君?」と、糸魚川が無線で尋ねると、
「いいですね。削正結果は良好です!」と、彼女は返した。
「うろこ状になってないけど、もう一回削るわ!それから今度は倍の距離を削る。」と、糸魚川が言うと、
「了解です!では進んでください!」と、千里が無線で答える。
再び同じ区間のレールを削り、折り返した位置を通過し、そのまま今度は、本町方向へ進む。先ほど折り返した位置には、野田がチョークでマーキングするとのと同時に、そのことを無線連絡した。カーブの区間では、糸魚川はヘッドを充てる角度を微調整しながら作業する。熟練の職人の勘と最新型のレール削正車を組み合わせ、丁寧にレールが削りあがっていく。
「先頭は異常ないので進んで!」と、千里が無線をすると、
「オオライです!」と、糸魚川は返事の無線を返した。そのまま作業はトラブルなく順調に進む。
本町駅のホームが見えること、時計は深夜1時半すぎを示していた。しかしまだ作業は終わらない。これから今度は淀屋橋まで作業を行い、急カーブの続く区間を抜けて、梅田まで走る必要がある。
「そろそろ後方の作業は交代やなあ。」と、糸魚川が無線で言うと、
「せやな!じゃあ代わるわ!」と、小郡が答える。
「では私が作業車第二エンドに乗ります!」と、津和野が返事の無線をする。
駅に着くと津和野が乗り込んで、小郡が後方での作業監視とレール冷却をする。
「お疲れ!じゃあ交代するわ!」と、小郡が言うと、
「じゃあ休憩兼ねた作業します。」と、津和野は答える。
「次は梅田までの区間頼む。」と、小郡は指示する。
「OKです!」と、津和野は言って作業車のドアを閉めて、無線で糸魚川へ知らせた。
レール削正車は再びレールを削りながら北へ進む。
淀屋橋駅に着くと、一旦休憩を入れる。
「いや~レール削正は疲れるわ!神経使うよ!」と、糸魚川が言うと、
「せやなあ。ミリ単位の作業やもん!」と、小郡が答える。
「ところで津和野君も、仕事だいぶ覚えてくれたねえ。」と、糸魚川が尋ねると、
「そうですねえ。これからが勝負だと思っています。」と、津和野は答える。
「その通りや!これから甲種電気車両と訓練があるからなあ。せいぜいがんばれよ。」と、糸魚川が言う。
「せやなあ。うちも保線機械の運転技術あげねば!」と、小郡は言う。
「お互いやること多いですね。」と、千里が言う。
「せやなあ!うちはもう経験長いけど。ほなもどろか!」と、糸魚川が言って、全員が配置について作業が再開する。
ここから中之島とオフィス街の地下を縫うように走る旧コーナーを通過する。
糸魚川は慎重にレール削正車のヘッドを微調整する。そうしないとレールは正しく削れず作業不十分となる。津和野も見落としがないように、後方で慎重に確認する。
午前4時を過ぎる頃、この日は予定通り梅田駅に到着する。ここからは下り線を進み、住之江検車場へ引き上げて作業終了となる。
「本日の作業も終了やなあ。」と、糸魚川が言うと、
「ほんまですな!」と、小郡も運転室前のホーム上で言う。
「いや~皆さんお疲れさんやなあ。」と、当直勤務の梅田駅の駅長が声をかけてくる。
「ほんま大変やで!これは!」と、糸魚川が言うと、
「せやなあ!君たちのおかげで、地下鉄の安全守られているんやからなあ。」と、梅田駅の駅長が答える。
「何事も地道が大事や!」と、糸魚川が言う。
「津和野君、下りの住之江への運転お願いする!」と、小郡は無線をする。
「前方での誘導、うちがするわ!」と、野田が第二エンドに乗り込んでくる。
「そろそろ時間やわ!」と、糸魚川が言って、レール削正車は出発する。
そして津和野が第二エンド側の運転席に着席し、折り返し線で機回しをし下り線へ行く。
「ほな出して!」と、小郡が無線をする。
「オオライ!出発よし!」と、津和野は指さし呼称し、ブレーキを解除後スロットルを開く。レール削正車は力強く加速し、早朝の御堂筋を下る。
「津和野君、そろそろ梅田仮駅やわ!よ~見てけよ!」と、野田が話す。
「ここなんですか。営業列車では気づかないことが、保線車両ならわかりますね。」と、津和野が答える。
「作業車はゆっくりやからなあ。」と、野田は言った。
そのまま始発までに入庫となるため、急ぎ足で御堂筋線を下る。時速60kmの速さで、淀屋橋、本町、心斎橋、と通過する。なんばで一旦停車すると、
「御堂筋線作業車、四つ橋線の入線を許可します。そのまま発車してください。」と、無線連絡が入る。
「了解です!出発!」と、野田が無線を返し、ゆっくりとした速度で走り御堂筋線を後にする。
大国町が見えると分岐器を抜け、ここから四つ橋線に入る。そこから花園町、岸里、玉出と通過し、ついに車庫がある北加賀屋へ到着する。そしてこの駅のホームへレール削正車は滑り込む。
「ほんなら入庫やなあ。分岐器が変わり次第やね。」と、野田が言うのと同時に入れ替え信号機が開通する。
「識別点灯!入れ替え進行!入庫出発!」と、津和野は指さし呼称し、車庫へ続く上り坂を進んでいく。
地上に出るともうすでに生駒山に朝日が昇り、空は朝焼けに染まっていた。そして保線機械待機場所へ入り、エンジン停止とハンドスコッチ(手歯止め)をして、この日の業務は終わった。
「お疲れ様!これで仕事も終わりやなあ。」と、糸魚川が言って第一エンドからやってくる。
「そうですねえ!おつかれっす!」と、津和野が返すと、
「ええ運転やったで!なあ!」と、糸魚川が褒める。
「せやったで!」と、小郡も言う。
「やっぱりええ感じやったわ!特等席で見れてよかった。」と、野田は言う。
「これから引き継ぎをして、解散ですな!」と、千里は言う。
「せやったわ!詰め所で打ち合わせ後、6時半に解散と行きましょか!」と、野田は言う。
この打ち合わせが終わり、御堂筋線のレール削正は終わり、解散となった。
二人は帰りの電車の中で、予定について話していた。
「なあ、津和野君、今日は暇?」と、小郡が質問すると、
「夜勤明けは日中眠いけど、ちょっと仮眠とってから昼から出かけれるよ。」と、津和野は答える。
「ほんなら出かけへん?行きたいとこあるから後でメールするね。」と、小郡は言い始める。
「じゃあ楽しみやね!本部で着替えて、帰宅してから13時に駅で会おう!」と、津和野は言っていた。
「せやなあ。じゃあこっちも楽しみにしているよ。」と、小郡は答えた。
会う約束をして、アフターをこの後に楽しむのであった。