Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
海沿いを走る山陽電鉄本線。ここも最近、新京阪保線サービスの作業となった。高品質のサービスが気に入られ、なおかつコストカットになるとなったため、マルタイや砂利運搬などの軌道電気作業については、新規での契約となったためだ。
夜勤明け休暇の翌日朝、出勤すると津和野の地元を走る「山陽電鉄」への出向をするようにとの紙が確認できた。さらに糸魚川主任のアメリカ転勤のことについての連絡もあった。
「おや~!アメリカ転勤するんか、糸魚川君も。そして津和野君も出向やなあ?地元だとどう?」と、早速大宰府のアホが話かけてくる。
「まあこれからしばらくは、叔父の家から出勤だなあ。腕も上がったいるし、まあいっかなあ?」と、津和野は答えると、
「そうやな。僕なんか全然だめだよ!」と、大宰府は言う。
「そりゃそうだろ!お前は努力が足らんもんなあ!もっと電気工事の接続が、正確にできるようにならんとなあ。」と、彼の上司である寝屋川がやってきた。
「そうですけどねえ。やっぱりあの子のスタイルええなあ。」と、大宰府が言う。
「どうしょうもない奴だよ。でも地元ってええよなあ。」と、寝屋川は言う。
「そうですね!いろんな意味で。」と、津和野は答えたのだった。
「ちょっと用事思い出した!行ってくる!」と、寝屋川は言って立ち去る。
「なあ津和野君。もし僕と共同で仕事になったらどうする?」と、大宰府が言うと、
「まあうれしいとは思わない。」と、津和野は答える。
「そうなんか!もう僕は早く童貞を卒業したいんだよなあ。早くかわいい女の子といろいろやりたいなあ。」と、大宰府が言い始める。当然津和野はドン引きした様子であった。
「お~津和野君おっは~!ここにおったっか!今からブリーフィングいこか~!」と、小郡が呼びに来た。
「それでは失礼します!頑張ってくるよん!」と、津和野は笑顔で答えて会議室へ向かった。
その時だった!突然廊下の奥から寝屋川が駆け戻ってきた。
「おい!大宰府君!何言ってるんじゃ!」と、彼が大声を張り上げると、
「いや~!どうも!また彼女としゃべっちゃって!ちょうどあそこ(胸)のサイズが気に入ってねえ!ギャハハ!」と大宰府が言う。
「いい加減にしろや!今度津和野君に変なこと言ったら、そのスマホごと玄界灘か播磨灘に沈めて、サメのえさになるか、フェリーにでもグモってろ!貴様みたいなダボ社員がおるからこっちも困るんや!」と、寝屋川が説教し始める。
「そんなせっしょうな・・・」と、大宰府が言うと、
「セクハラは保線には無縁であり、ご法度だ!わかったな!仕事も一人前にできるように努力せんか!!」と、寝屋川は一喝したのであった。
会議室では、今回より山陽電鉄へ向かう社員が集められていた。
「今回は山陽電鉄本線のマルタイ業務やね。この作業は、津和野君、小郡君、鳥飼君、そして脇浜君で頑張ってもらいます。」と、小笠原が言う。
「初めまして、山陽電鉄東二見保線区の脇浜と申します。よろしくお願いします。」と、彼が挨拶する。
「よろしく頼むね。」と、小笠原は言う。
「山陽電鉄って、私の地元ですね。」と、津和野が言うと、
「そうなんだ!知り合いでもいるのか?」と、小笠原は言う。
「叔父がいて、関西ではお世話になっています。」と、津和野が答える。
「そうなのか!それはいいですね。」と、小笠原が言うと、
「では津和野君はしばらく、明石の実家より直勤扱いになるから、作業日は東二見運転区へ出勤をお願いします。テレビ電話などで、大阪の本部と点呼をとります。」と、脇浜が言うと、
「家から近いと、何かと助かります。」と、津和野が言った。
「そうなのか!江井ヶ島って、結構近いんだね。」と、小郡は言うと、
「テラ地元だよ。」と、津和野は答える。
「家近いとええよなあ。ただ俺には負担だけど。」と、小笠原は言う。
「確かに大阪から来る必要ありますねえ。」と、津和野が言うと、
「そやねん!朝早いときつい・・・」と、小笠原は言った。
今回保線するのは、東須磨から板宿の上下線。津和野は初めて地下線内の突き固め作業をする。打ち合わせも念入りに行う。軌道検測車の取ってきたデータをもとに、作業箇所の確認を行う。鋼製車が多く通る路線とあって、沈下も確認された。また今回はGPSでの作業が区間によっては無理なので、位置は架線柱に書かれた番号を頼りに、タンピングやレベリング等の作業を行う。
打ち合わせが人とり終わった頃、
「しかし久しぶりやな。津和野君!」と、鳥飼は彼女に話しかけてくると、
「そうですねえ!しばらく小郡君とかとは一緒だったもので。」と、津和野は答える。
「今回はマルタイ運転だね。頼むよ!」と、鳥飼はお願いした。
「オオライです!通学でお世話になった路線を修理って、ある意味おもしろそうですね。」と、津和野が言うと、
「せやなあ。うちもそうやったで!自分が好きな路線をやるときって気合入るもんなあ。」と、鳥飼は言った。
その後は各自少し遅めの昼食を、会社近くの格安レストランで済ませる。食事中に、
「相変わらず君はイケテルよなあ。アイドルに負けへんよ。」と、鳥飼が言うと、
「そうそう!ロリィタは最強だよ!」と、小郡も言う。
「ところで脇浜さんも、このまま来るのですか?」と、津和野が尋ねると、
「まあこっちも新京阪と打ち合わせがあってなあ。たぶん今日はこれで終わりだと思う。」と、脇浜は答えた。
「いろいろ“たいそ(大阪弁で大変という意味)”でんなあ。」と、小郡は言う。
「せやねん!」と、脇浜が言いつつステーキランチを食べていた。
「へえ!糸魚川さんは、海外転勤ですか・・・でなんで9月なんや?!」と、鳥飼が言うと、
「そうですねえ?アメリカは9月に新年度が始まるからね!」と、津和野は答える。
「せやねんなあ!」と、鳥飼は答えた。
そして一行は、昼から山陽電鉄での打ち合わせがあるため、東須磨へ移動する。梅田より14時発の須磨浦公園行の阪神特急に乗車する。
東須磨駅に着くと、駅の西側の車庫内にある、保線詰所へ一行は向かう。受付を通り、奥の会議室に一行は通される。しばらくすると、
「お~きはった!君が新京阪の社員やねえ。」と、榎本と言う中年ぐらいの男がいた。
「お世話になります。新京阪保線の津和野です。」と、彼女が言うと、
「同じく新京阪の小郡です。よろしく!」と、彼も言った。
「新京阪のマルタイ作業主任、鳥飼です。よろしく頼むわ!」と、彼も言う。
「今回の先頭誘導の土木課東須磨保線区、榎本と申します。お願いします。」と、その男があいさつする。
「あと同じく土木課東須磨保線区、秋島と申します。」と、若い男も挨拶する。
「じゃあ最終打ち合わせと行きましょうか!」と、鳥飼は言う。
「そうでんなあ。」と、榎本は答え、作業箇所の確認をする。
17時より一行は仮眠をとる。津和野はかわいらしい夏用ネグリジェであった。
「相変わらずかわいいなあ。津和野君!」と、小郡は仮眠室前の廊下で話しかける。
「そうだよ!いつも寝るときはいこれだからね!」と、津和野は答える。
「なるほどね!姫さんみたい!」と、小郡は言う。
「そうそう!寝る時ぐらいかわいくしたいよ!作業中はあの服だから!」と、津和野が言うと、
「せやなあ!」と、小郡は言って自分の仮眠室に入った。
22時に自動起床装置で起こされ仮眠が終わると、作業着に着替え用意された弁当を電子レンジで温め、休憩室で遅めの夕食をとる。津和野と小郡が食べていると、
「お~今日は普通に幕の内か~!山陽は仕出し弁当やなあ。」と、言いながら鳥飼がやってくる。
「そうですよ!これじゃうちらは足らないから、あとで駅前のビニコンへ行って、なんか買ってきますよ。」と、小郡は言う。
「せやなあ。」と、鳥飼は言う。
「まあ作業中の空き時間に、さくっと食える奴がええぞ!」と、小郡は言う。
「そうですねえ!から揚げがいいか、ポテトとお菓子がいいのか?」と、津和野が言うと、
「せやなあ。やっぱり、お菓子がええんちゃう!」と、小郡は答える。
「そうですよねえ。」と、津和野はそう言って弁当のエビフライを食べていた。
そして作業準備を終え、出発前にアルコール検査を終えてから、23時10分発の普通電車に乗って須磨駅西側の留置線へ向かう。ここに今回の主役である、マルチプルタイタンパーが停めてある。
夜23時とはいえ須磨駅は海水浴場の最寄駅でもある。そのため、駅では海水浴客が騒いでいる声が響いていた。一行が駅に着くと、鳥飼と秋島は駅長室へ向かう。そこには駅長の狩口がいた。
「お~!夜分失礼します。おつかれです!」と、鳥飼が言うと、
「そうでんねん!」と、秋島も言う。
「お疲れさん!今から出区やなあ。」と、狩口駅長が言う。
「ほんなら線路閉鎖完了後、乗り越し分岐器を動かして、本線へマルタイを動かすわ!」と、鳥飼が言うと、
「了解です!じゃあこれね!鍵!」と、狩口駅長がそう言って鍵を渡してきた。
「ほんなら作業に移るわ!」と、鳥飼が言うと、
「うちもね!」と、秋島も言った。
「ご安全に!あとで帰りを待っているよ!」と、狩口駅長は言って、鳥飼と秋島は駅長室を後にした。
そして上りホームで先に待っている、メンバーと合流し、ホームの先端の旧信号所へつながる階段を下りて、線路沿いを進む。キツネ坂を跨ぐ鉄橋を渡り、保線倉庫を超えると、霊友会エスカレーターの下にある、保線機械留置線に到着する。
「ほんなら準備して!あと点検後に機関を始動させて、出区やなあ。」と、榎本が言うと、
「オオライ!じゃあ総員配置!!出区準備!」と、鳥飼が指示を出す。
「こっちは、準備補助をするよ。」と、秋島入って作業位置に入る。
「了解!」と、一斉に返事をして、マルタイの出区準備をする。
「ほい!これがマスコンキーや!」と、榎本は鍵を津和野に渡す。
「了解です!ありがとう!」と、津和野はそれを受け取り敬礼する。
「こっちは手歯止めを解除したから、いつでもOKや!」と、小郡が言うと、
「ほんならそこに置いといてな。」と、榎本が指示を出す。
最終電車の須磨止まりが引き上げ後、24時半より保線作業が行われる。
津和野達が出区準備をするのを横目に、最終の下りは東二見行、上りは東須磨行の普通車が静かに走り去った。
「うちらも、もうじき出区やなあ。」と、榎本が言うと、
「そうでんなあ。終電を見るとそう感じるわ!」と、小郡は言う。
「まあこれからが、うちら保線屋の出番!」と、鳥飼は言うと、
「そうですよ!がんばるぞい!」と、津和野が言った。
「ほんなら鳥飼君、乗り越し分岐器の準備頼む!」と、榎本が言う。
「了解!じゃあ行こか!」と、鳥飼は返事をして、本線への合流地点にある乗り越し分岐器を操作する。その様子を、狩口駅長もホームから作業を監視していた。
作業が終わると、無線でそのことを津和野達に連絡する。そうしているうちに、午前1時前となり、
「須磨駅の作業車、こちら山電指令です。これより線路閉鎖を完了しました。発車してください。」と、無線が入ると、
「ほんなら出区や!総員配置につけ!」と、鳥飼が無線で言う。
「了解!」と、全員が返事の無線を入れる。
「こちら運転です。出区準備完了です。」と、津和野が言うと、
「ほんなら出して!」と、鳥飼が無線で言うと、榎本はサイリウムを振って作業車を誘導する。
「じゃあ津和野君、出してな!」と、秋島が言うと、
「出発よし!発車!」と、津和野は指さし呼称し、ブレーキを解除しスロットルを操作してマルタイを歩くぐらいの速度で発車させる。マルタイは車輪を軋ませながら慎重に退避線から本線に乗り越し分岐器を通過し合流する。
「無事に通過したよ。一旦停車!」と、鳥飼が無線で言うと、
「停車よし!」と、津和野は無線で返事を入れ、ブレーキを操作して停車させる。そして榎本と鳥飼は、分岐器を片付ける。それが済むと、榎本は第一エンドで誘導し、津和野に運転指示をする。山陽のマルタイは旧式のため運転に癖があるので、津和野は慎重に動かす。小郡は第二エンドの後方で監視しつつ、踏切を無謀横断する人がいないか確認し、鳥飼と秋島と一緒に踏切閉鎖する担当をする。
「ほんなら乗り越し分岐器を片付けたから、そろそろ行こか!」と、榎本が言って駆け寄ってくる。
「こっちも準備できた!出発よし!」と、鳥飼は無線を入れる。
そしてマルタイは、ゆっくりとした速度で、一路深夜の須磨駅をめざし動き始める。駅のホームの上では、
「ほな頼んますで~!」と、狩口駅長が言っていた。
「行ってきますね!」と、小郡は手を振って答えたのだった。
須磨駅を抜けるとすぐに急カーブと逆カントがあるので、運転の際には細心の注意を払う。
「場内進行!制限35よし!」と、津和野は指さし呼称し、マスコンを操作する。
すぐに須磨寺駅西側の踏切で一旦停車する。寝静まった町には人一人いない。
「安全確認よし!一旦発車!」と、鳥飼は無線を入れて、榎本がマルタイを誘導する。
急カーブ上のホームの須磨寺駅を通過し、商店街の踏切を慎重に超えると、急カーブの区間に差し掛かる。
「最徐行で頼むね。」と、榎本が無線で指示を出しつつ、安全に踏切を越える。するとしばらくは、直線区間にでる。そこを走ると、離宮踏切に差し掛かる。ここは深夜でも交通量があるため、踏切が鳴っている。減速せずに、このまま月見山駅に向け進む。
マルタイは鳴らない踏切を慎重に安全確認をしつつ超える。月見山駅を抜けると、東須磨へあと少しである。阪神高速をくぐり、行きに来た東須磨保線区の詰所、東須磨車庫を横目に進み、始発を待つ3000系や阪神9300系を横目に、明かりの落ちた東須磨駅へ滑り込む。
「無事着いたなあ。」と、榎本が言う。
「そうですねえ!」と、津和野は答える。
「ところで女の人の作業員でんか!すごいでんなあ。」と、榎本が言うと、
「そうですよ!最近女性も社会進出が進んでるんや!」と、鳥飼は答える。
「うちでも今年から女性駅員が誕生したよ。それに伴い、山陽電鉄の女性用の制服を出したんやで!」と、榎本が言い始める。
「すごいですねえ!」と、津和野が言う。
「さらになあ、この制服がかわいいって評判になってもたんや!」と、榎本が言う。
「そうですね!またいつか見てみたいかも。」と、津和野は答えたのだった。
一方第二エンドでは、
「到着や!これから作業に入るで!」と、鳥飼は無線を言う。
「まだやで!信号開通せなあかん!」と、秋島が突っ込んでくる。
「せやったわ!」と、鳥飼がぼけると、
「当たり前やんか!勝手に出したらなあ。」と、秋島は言う
「ぼけとった!」と、鳥飼は笑いながら答える。
「ほんなら準備と行きますか!」と、小郡が言った。
夜間の仕事人、マルタイは沈下した軌道をこれから矯正してゆく。