Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
無事に東須磨に到着したマルタイは、上り線のホームに停車していた。退避ホームには、始発を待つ3000系3072編成がパンタを下し休んでいる。
「あ!高校時代にお世話になった3072Fだ!」と、津和野が言うと、
「せやなあ!新世代アルミカーやなあ。」と、榎本は言う。
「そうそう!」と、津和野が言ったとき、
「山陽電鉄は試作車いろいろあるねえ。」と、小郡が言う。
「せやなあ!2012Fもそうや!今も東二見で保管中や!」と、榎本は答える。
ここからマルタイは、作業モードへ切り替える。
「作業準備済んだで!これからやなあ。」と、鳥飼が言うと、
「そうですねえ!これから緊張です!」と、津和野は答える。
今回は上り線を津和野が、下り線を鳥飼が作業をすることになった。後方では小郡がバラスト整理をしつつ作業状況を報告する。
しばらくしたら、
「こちら山電指令です。東須磨の作業車は上り線作業に出発してください。」と、無線が入る。そして信号が開通する。
「ほな出発や!作業車、進行!」と、榎本が指示を出す。
「それでは発車します。」と、津和野は言ってマルタイを発車させる。
駅から数メートル進んだ場所に、上り線の沈下箇所が確認される。それをGPSと架線柱に書かれた番号を頼りに突き固める。
第二エンドのGPSモニターを見ていた鳥飼が、
「ここや!突き固め開始!」と、無線をすると、津和野が機器を操作し突き固めを行う。マルタイはクランプでレールを掴み持ち上げ、複数の爪を砂利に差し込んで振動を与えて線路を突き固めてゆく。
「このぐらいやなあ。まあまあ上がったんちゃう?」と、鳥飼が言う。
一方の小郡は、後方で秋島と共に監視作業をしている。
「作業具合良好!ええ感じやわ!進んで!」と、小郡はレールを監視し、無線を入れる。
「ええ感じや!そのまま!」と、鳥飼は無線をする。
「じゃあどんどん進めますね!」と、津和野は無線で答えたのでった。
「そろそろ沈下個所やなあ。タンピング頼む!」と、鳥飼がモニターを見つつ無線をすると、津和野が
「オオライ!作業開始!」と、彼女は返し突き固めを行う。大きな音を響かせ、マルタイは線路を突き固めてゆく。
線路は地下へ続く緩やかな下り勾配区間なので、津和野はマルタイが流転しないように注意しながら作業する。
「下り勾配区間だから、慎重に頼むね!」と、小郡が心配して無線を入れてくる。
「ブレーキをちゃんと動かして、車輪をロックして流転しないようにしているよ。ちょっと手間だけど。」と、津和野がそう答える。
「それでいい!誤差が発生してもダメだからなあ。丁寧に頼むな!」と、鳥飼はそう無線をする。
「前方異常なし、進んで。」と、榎本が無線連絡すると、
「了解!進行!」と、津和野は無線で答え作業を進める。
そうしているうちに、一つ目のオーバーパスを抜ける。そのまま突き固めを行う。
「ここは一番沈下しているから、慎重になあ。」と、鳥飼は無線をする。
「じゃあチャート確認しながら作業しますね。」と、津和野は返事の無線をして運転台のモニターを見ながら機器操作する。しばらくすると、
「後方も異常なしや!順調に定位置に収まってる。」と、小郡も無線を入れる。
「ほんなら大丈夫やなあ。了解!」と、鳥飼は返事の無線をした。
ほかにも沈下はあったが、簡単に修理できるようなものであったためスムーズに進んだ。
しばらく作業を進めると、再び沈下箇所に遭遇する。
「ここ沈下が激しいから、しっかり頼むで!」と、小郡が急に無線をする。
「チャート確認するけど、やっぱり結構沈んでいるよ。」と、津和野はモニターを見ながら無線する。
「やっぱりここはチャートが安定するまで、突き固めといてね!」と、小郡は指示を出して津和野をサポートする。
軌道の沈下が激しい場合、最悪の場合は脱線などの重大事故につながる。そのためこのような軌道の修理調整が日夜行われている。山陽電鉄は普通電車と、相互乗り入れ先の阪神電鉄の車両が鋼製車のため、重量と振動が加わる。それにより沈下したと考えられる。
さてそうしている間にも、二つ目のオーバーパスをくぐる。
「間もなく地下に突入だけど、気にせんと頼むで!」と、榎本が無線をすると、
「せやなあ。スラブ道床までやなあ。」と、鳥飼は津和野に無線をする。
「オオライ!じゃああと少しね!」と、彼女は返し作業した。
そしてマルタイは一旦、地下線内に吸い込まれるのであった。地下に入ってすぐ、
「確かこの辺の沈下が酷いと思うから、しっかりやってね!」と、小郡は無線連絡する。
「そうですねえ。じゃあチャート見ながら行います。」と、津和野は言って運転台のモニターを見る。
「高低差5mm!タンピング!!」と、津和野は呼称して機器操作し、作業を進める。
そして午前2時半、この日する半分の作業が終わる。
「ほんなら折り返すで!東須磨へ戻るで!」と、榎本が無線連絡する。
「了解!津和野がいるほうに乗るわ!」と、鳥飼は言って、狭いトンネル内を駆け足でマルタイの運転席へ向かった。
「ほな誘導するわ。」と、秋島も無線をして、先頭に立って軌道に異常がないか誘導する。
作業が済んだマルタイは、一旦走行モードに切り替え、上り線を時速30kmほどで逆走し、東須磨駅へ向かう。駅が見えるころ、クロスした分岐器を越えて下り線のホームへ滑り込む。
「ここから交代やなあ。津和野君!」と、鳥飼が言うと、
「そうですねえ!じゃあ下り線はお願いします。」と、津和野は答えた。
「ほんなら第二エンドに!」と、鳥飼は指示を出す。
「了解です!移動します。」と、津和野は答えて席を離れる。
「分岐器が変わったら、無線が入ると思うからそれから発車やで。」と、秋島が言うと、
「了解や!ほんなら準備するで!」と、鳥飼は答える。
そして、
「山電指令です。東須磨停車中の作業車は、分岐器切り替わり次第、下り線に入ってください。」と、無線が入る。
「了解です!あざっす!」と、秋島が返事の無線をして、
「まもなくや!頼むな!」と、榎本も無線をした。そして信号機が青信号を示し、作業場所へ出発する。
「ほな、いきまっせ!」と、鳥飼は言って逆転ハンドルを操作しマルタイの向きを変え、板宿方向へ下り線を逆走する。
津和野は第一エンド側で榎本と共に誘導する。
「このまま進んでください!」と、津和野は無線を入れて進ませる。
「了解!」と、鳥飼は呼称し、マルタイを発車させる。再び反対側にはなるが、オーバーパスをくぐり地下線に入る。しばらく行くと、スラブ道床の手前の場所にくる。
「そろそろ作業地点やなあ。頼むで!」と、榎本が指示を無線で入れてくる。
「それでは切り替えるわ!」と、鳥飼は無線で返事をして、マルタイの作業準備をする。
軌道の陥没状況は、地下線内はさほどでもないため軽く突き固めを行う程度だった。
「ここはそんなに沈んでないなあ。普通に行くで!」と、鳥飼は言いながら機器操作をする。
地上と地下の接続区間を抜けて、沈下箇所を既定の高さへ矯正する。
「後方は異常なし!高低差規定内!」と、小郡が確認した内容を無線で報告する。
「ほんなら進めるは!」」と、鳥飼は答え作業する。
地上に出てすぐ、ちょうどトンネルとオーバーパスの間は、沈下が進んでいた。
「なんかチャートがすごいことになってるなあ。これは数回あげあげせなあかんわ!」と、鳥飼は指示を出す。
「第二エンドもそうなってます。」と、津和野も無線で言う。
「ほんならクランプでしっかり掴んで、しっかりタンピングするわ!」と、鳥飼は言って、機器を操作する。
マルタイはレールを掴んで、ものすごい音を立てながら線路を矯正する。
「チャートを見てますが、いい感じになってますよ。」と、津和野が第二エンドで無線にて言うと、
「ほな、よかった!進めるわ!」と、鳥飼は答えて作業を進める。
砂利整理を小郡はしながら、作業状況を確認する。
「後方はどうや?!」と、鳥飼が無線をしてくると、
「異常なしや!道床の整理しておく!」と、小郡は答えて竹ぼうきを片手に、秋島と共に枕木やボルトに散らかった砂利を落とす作業する。
オーバーパスを通過すると、沈下状況は同じであったので、そのままタンピングをして適正な位置にレールを矯正してゆく。
「後方は特に変化ないわ。砂利片づけてくね。」と、津和野は無線を入れると、
「そうしてね。たぶんここは1時間もかからんと思う。」と、鳥飼は返事をする。
駅寄りのオーバーパスを通過すると、今回の作業は終了となる。
「ここからは人海戦術になるからね。分岐器付近は日中の作業だから、機械はここで完了やわ。」と、鳥飼は無線を全員に入れる。
「よっしゃ!ほんなら点検後引き上げだね。」と、小郡は連絡する。
「了解です!」と、津和野も連絡を受け、第二エンドへ向かう。
早朝4:15、すべての作業が完了し最終点検を終える、再び東須磨駅の下りホームにマルタイは停車した。
始発列車が走る前の一番列車として、マルタイは中八木基地へ返却回送する。先頭に津和野が乗り運転することになる。
「ほんなら、津和野君、運転頼むね!」と、鳥飼が言う。
「了解です!!」と、彼女は答える。
「やれやれやなあ。これで帰れる。」と、榎本は安堵の表情をする。
マルタイを走行モードに切り替え、出発指示の無線を待つ。
「まあこれからやなあ。」と、榎本が言うと、
「せやなあ!帰還するまでが、作業やもん!」と、秋島も言う。
「そうやなあ。先輩からうちもそう習ったわ!」と、鳥飼が答える。
「小学校の遠足を思いだしますね。」と、津和野が言うと、
「そうやな!」と、小郡は言った。
早朝4:30になった時、東須磨駅の作業車出発の無線連絡が入る。
「ほな発車!」と、榎本が言う、
「下り発車!」と、津和野はブレーキを解除しスロットルを開き、マルタイを加速させる。小郡と鳥飼は、第二エンドで休んでいた。
「津和野君は運転うまいなあ。」と、小郡が言うと、
「せやなあ。」と、鳥飼が答える。
朝日が六甲山を照らし、だんだん明けてゆく空の下、マルタイはゆっくりと加速しながら、月見山の上りこう配を抜ける。その後は直線を通過し、須磨寺の逆カントもある急コーナーを徐行して抜ける。そうしているうちに行きに来た須磨駅が見えてくる。
「須磨通過!ここからは飛ばせる区間やけど、須磨浦公園は分岐器速度制限を受けるから注意しいや!」と、榎本が指示を出す。
「オオライ!」と、津和野は答えて、スロットルを操作する。崖に沿って伸びる線路をゆっくり西へ進むと、桜の名所須磨浦公園が見えてくる。
「分岐器制限注意」と、榎本が言うと、津和野は絶妙なハンドル操作で安全に待避線と本線が分かれる分岐器を通過する。
「ここからは明石駅までノンストップや!飛ばせるとこもあるから楽しみや!」と、榎本が言うと、
「そうします!進行!」と、津和野は答える。
車窓の左手には、国道二号線とJR山陽本線が並行する。それを横目に走る。国道と別れように抜けると、戦前の洋館がまだ残る塩屋を通過する。ここから線路は丘の上を走る。見晴らしの良い場所にある滝の茶屋を抜けると、朝日に照らされた絶景が広がる。
「ここはええなあ。お気に入りやで!」と、が言うと、
「そうでんな!ええとこやんか!」と、鳥飼は答える。
一旦JRの線路から離れて、福田川に架かる鉄橋を渡ると、急カーブ上にある垂水駅を通過する。マンションのベランダすれすれを走ると、史跡の五色塚古墳が見える。
「ここからちょい厳しい区間や。注意してね!」と、榎本は指示を出す。
「オオライ!制限35ですね!」と、津和野は答える。
「よく知っとるやん!」と、榎本が言うと、
「通学で使っていたから!全面展望しょっちゅうしてた!」と、津和野はそう言って、スロットルを戻しゆるくブレーキを操作し速度を落とした。そしていくつもの急カーブを、マルタイは減速しながら通過する。
待避線がある霞ヶ丘駅、ここから下り坂を進むと、金色に輝く明石海峡大橋が見えるのと同時に、舞子公園駅を通過する。
「JRのオーバーパスを抜けると、ここから一気にフルスピードやで!わかったな!」と、榎本が言うと、
「それではフルスロットルでノッチを入れます!」と、津和野は答える。
山陽電鉄線内では比較的近代的な柵付きホームを通過し、JRを跨ぐとすぐに下り坂となり、再度JRと国道二号線の並走する区間に入る。同時に線形がよくなるので、津和野は一気にマルタイをフルスピードに加速させる。そのまま狭いホームの西舞子駅を通過する。
「お~西舞子やんか!ここは撮影で度胸試ししたなあ!」と、小郡が言うと、
「そやねんなあ!まあJRの下り快速と上りの山陽特急と並走になれば、スリルがやばすぎるで!」と、秋島が答える。
「よく知り合いが来てるわ!武勇伝している!」と、小郡は言う。
「そやねんなあ!」と、秋島が言うと、
「そうやねんなあ!おもろいものいるわ!」と、鳥飼も言った。
山田川の橋を渡り、いよいよ明石市へマルタイは入った。大蔵谷を通過すると、国道と別れてJRと共に高架区間へ入った。するとJR山陽本線を西へ進む寝台特急「サンライズエクスプレス」と並走する。14両編成の寝台特急は、あっという間にマルタイを抜いてしまう。
「お~電車でDみたいな併走やなあ。めっちゃ速いし!」と、小郡が言うと、
「せやなあ!こっちはせいぜい60km/hやからなあ!あっちは130km/hだから歯が立たんわ!」と、鳥飼は言った。東経135度の子午線の通る人丸前を通過すると、アスピア明石の建物と駅前再開発で完成したパピオス明石が見えてくる。
「そろそろ停車やから減速して!」と、榎本が指示を出すと、
「それでは停車します!明石停車!」と、津和野は答えブレーキを操作する。そしてマルタイは、赤席の下りホームへ滑り込んだ。
「お疲れさんやねえ!」と、明石駅長が声をかけに来る。
「おつかれやなあ!」と、榎本が言うと、
「ここで入庫やなあ。」と、鳥飼が言いに来ると、
「そやな!」と、秋島が答える。
「車庫入れは俺がするわ!」と、鳥飼が言うと、
「ええで!おねがいな!」と、秋島が答える
「お願いしますね。」と、津和野が言い、
「頼んまっせ!」と、小郡も言う。
運転台の向きを大阪方向に変えて、出発信号の切り替わりを確認する。
「識別点灯!入れ替え進行!発車!」と、鳥飼は呼称し、ブレーキを解除し、スロットルを開く。マルタイはゆっくりとした速度で出発し、分岐器を通過し上りと下りの線路の間にある待避線を進む。
「そろそろ停目やなあ!」と、秋島が指示を出すと、
「停車!」と、鳥飼は呼称しブレーキを素早く操作し、マルタイを留置する措置へ移る。
「ほんなら上下線の安全確認できたら、留置作業するわ!総員配置につけ!」と、鳥飼は無線で全員に指示を出す。
「オオライ!」と、無線を皆は返し、車両が流転しないように車輪止めをしたり、カーキャッチャーを線路にセットする。
マルタイのエンジンを切って、留置作業は何とか始発電車までに間に合った。
「いや~みんないい仕事やったで!」と、鳥飼がねぎらうと、
「そうだね!」と、津和野は答える。
「まあ新京阪さんはこれからお世話になるもんなあ!」と、秋島が言うと、
「せやせや!」と、榎本も言う。
「ほな津和野君のこと、ちょっと間たのんまっせ!」と、小郡がお願いする。
「そうでんな!後で言っておくわ!」と、榎本が答えた。
すべての作業が終わり、明石駅長に簡単な報告を済ませたら、そして一行は始発の次の普通電車で東須磨へ戻る。東須磨の詰め所で休憩を済ませて、着替えてこの日は業務終了となった。
津和野は小郡と鳥飼の二人と別れて、高砂行の普通電車に乗って叔父の家へ帰る。朝日が高く上がった空の下、赤と銀のボディの電車は西へ走る。空いている車内では、少し津和野は眠さで、うとつきながら車窓を見るのであった。