Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
大阪市北区天満に本社がある京阪電鉄ならびにJRの出資により誕生した鉄道保線工事の専門会社。
新京阪保線サービス。
「最新鋭の保線機械を使い、皆様に安心安全な鉄道を届ける」と言う経営理念とし、京阪線だけではなくJR東海・東日本以外の各社も保線サービスをする会社だ。レール削正、突き固め、探傷、総合検測、トンネル撮像など、鉄道の安全にかかわるサービスをトータルで行う会社だ。
ここに尼崎の工科系の短期学校を卒業した新入社員が入社した。名前は「津和野風香」という20歳の少女であった。なんと言っても鉄道オタクの少女だ。難関の入社試験を突破し、この保線会社のメンバーとなった。
「これから厳しいことが続くけど、覚悟はできているかなあ? 工事は終電後の深夜に行われることが多い。きついのは覚悟しているか?」と、通りすがりのベテランの先輩社員が言う。
「わかっています!私の父も鉄道マンだったんです!」と、津和野は答えた。
彼女は3か月間「保線機械の仕組みや理論」「安全教育」「保線工事に関する資格」を取得する。また岡山のデモストレーション線「J WEST DEFENSE」にて実技研修も行われる。ここでは実際に大型保線機械を操縦する。正確な操縦が要求される保線機械を取り扱う講習が行われる。
「マルタイはたくさんの操作レバーがあるから覚えなきゃ!」と、津和野は言う。
「せやな・・・これからお前の相棒となる機械だから、しっかり覚えとけよ!」と、先輩の鳥飼は言う。
「はい!じゃあがんばるぞい!」と、津和野は言ってマルチプルタイタンパーに乗り込んだ。
「いいか!こいつは最高速度100km/hで移動できるからな。さらに分岐器や踏切も余裕で作業できる、高性能なオーストリア、プラッサー&トイラー社製だから、以前までいた普通のものと比べもんにならんで。しっかり運転するんやな!」と、鳥飼は言った。津和野は絶妙なマルタイ操作を正確に行った。
「われ!結構いい仕事するやん!期待しているぞ!」と、鳥飼に言われる。彼女は照れた表情であった。
「これからが修行でっせ!京阪だけではなく、JRの一部やるので責任のある仕事でやから、ちゃんとこなしてな!」と、この日居合わせた作業指導する鴨宮が言った。
彼女の最初の配属先は、「マルチプルタイタンパー」のオペレーターであった。マルタイ作業は4~5人で、一般的に行われる。これが可能になったのも、高性能なマルチプルタイタンパーが発明されたからだ。最新鋭のハイテクコンピューター制御により、4人ほどでの作業が可能となった。
朝9時、津和野、鳥飼などのこの日のメンバーが、大阪の保線基地へ出社してくる。出勤すると順番にアルコール検査と出勤簿へ印鑑を押す。そしてミーティングルームで数時間の打ち合わせをする。
「今日から新しいメンバーが加わります。津和野君です。よろしくお願いします。」と、先輩の鳥飼が言う。
「よろしくお願いします。これからお世話になります津和野風香と申します。」と、彼女は言うと、
「へえ!このお人形さんのような御嬢さんがメンバーなのか。あ!チームリーダーの糸魚川です。よろしくお願いします。」と、部屋に居た30代ぐらいの男が挨拶してくる。
「そのお洋服はロリータファションだね!かわいく見えているよ。どうも!ミ~ハ~の後方監視係の小郡です。よろしくお願いします。」と、オタクっぽい男が挨拶する。
そして今回保線作業する場所は、加古川線の日岡~加古川間であった。ドクターウエストことキヤ141が検測してきた「マヤチャート」を見ながら会議し、工事方法や手順について検討する。それが終わり機械の準備に移る。
「頑張っているな。津和野君!このメンテが肝心だからしっかりな!」と、糸魚川は整備中の津和野に向けて言った。
さっきまでのロリータファッションだった津和野も、作業着にヘルメットそして安全靴に着替えて保線車両の整備をしていた。
「しかしコンピューターがたくさんあるから大変だなあ。」と、津和野は言っていた。
「まあこの機械はすごいで!当たり前やけど!保線機械ちゅーのは、モーターカーなどの簡単なもんから複雑なマルタイまであるからなあ。レール削正車も結構複雑やで!」と、糸魚川が言った。
「あ!線路を削って整えるあの車両だね!」と、津和野が答えると
「せやで!別名はレールグラインダーって言うんや!正確に砥石ヘッドを線路に当てへんとアカンからなあ。浅すぎても深すぎてもあかん!うちとこは中古も含めて数台あるで!京阪神緩行線専用のものはオーストリア、リンジンガー社製フライス型、アメリカHTT社製のは狭小リニアトンネル対応やから、神戸や大阪の地下鉄とか京津線で活躍してるで。」と、糸魚川は言った。
「作業完了次第、9391列車のDE10で土山まで配給するからね!15時までに完了してな!」と、鳥飼は言いに来る。
「いぇっさ~!」と、津和野は笑顔で答え作業を続けた。
夕方より一行は22時まで仮眠をとり、点呼をとったのちに土山駅へ移動する。
「いよいよ出発だね!」と、鳥飼は言う。
「緊張してきました。フリルやレースの付いた服を脱いで、作業着に着替えてヘルメットをかぶり、安全帯をつけてマンコンキーを持つとドキドキします。」と、津和野は笑顔で言う。
「せやろ!ドキドキが止まらんで!新入りで初めて現場へ行く時はそうやったなあ。」と、鳥飼は言いながら津和野の肩に触れた。
「ほな!23時やから、そろそろ出区しますか。」と、糸魚川は言って保線車両の留置線へ向かう。
「よっしゃ!フルスピードで加古川まで行くで!」と、小郡は言う。
「こちらはJR神戸線指令です。下り保線線路一時封鎖を許可します。最終列車出発次第「乗り越し分岐器」の使用を許可します。」と、無線を受ける。同時に下り最終の普通姫路行が入線する。普通列車が出発するとき、本線へ続く乗り越し分岐器が開通し、パトランプが線路脇で回転している。
「前方ヨシ!山陽本線下り保線 出発進行!!!」と、津和野は言ってマスコン(車で言うアクセル)を操作した。15km/hほどのスピードで、マルチプルタイタンパーは動き出した。土山駅で下り線に入り信号開通を確認。別の作業員が乗り越し分岐器を閉鎖し、貨物列車の通過の妨げにならないようにする。
「一路加古川へ出発!!」と、糸魚川は言う。マルチプルタイタンパーはフルスピードで加古川を目指す。
「場内進行!東加古川通過!」と、津和野は言う。2エンド側では、
「加古川やなあ。もうすぐ作業手順の確認するで。」と、糸魚川は言う。
「今日は単線だから余裕ですね!」と、鳥飼は言う。
「そうでんな!」と、小郡が言ったとき
「今日は単線だから余裕ですね!」と、鳥飼は言う。
「ちゃんと監視するんやで!新人の子もいるし、しっかりしいや!ミ~ハ~だからふざけるんじゃないぞ!」と、糸魚川は言う。すると
「は~い!新入りの前では、いい先輩しま~す!」と、小郡は返事をした。
加古川駅では5番ホームへ滑り込む。
「場内進行!加古川停車!5番線!分岐器制限15よし!」と、津和野は言ってブレーキをかけて減速する。停車目標ピッタリにマルチプルタイタンパーを停めた。
「やるやんか!津和野君!停目ドンピシャ!」と、小郡は言う。
「そうですね!修業しましたよ!止めるときは緊張するなあ。」と、津和野が返事をする。
「こんばんは。おじゃましまんにゃわ~!」と、言ってある方が来た。
「そうも!私は監視の呉と申します。今夜はよろしく!」と、JR西日本のオレンジ色の服を着てやってきた。
「ほんなら打合せいこか!」と、リーダーの糸魚川は言う。
皆の配置の指示を糸魚川から受けて、指令より無線を待つ。その後、信号が開通し分岐器が切り替わる音が深夜の加古川駅に響く。マルチプルタイタンパーの向きを切り替え、日岡駅よりすこし進んだ先のところへ向かう。
「作業場所に到着。線路封鎖よし!作業場所確認よし!作業開始!総員配置につけ!」と、糸魚川は言う。皆は「はい!」と言った後、配置についた。
「作業開始!突き固め!」と、糸魚川は言うと
「レール固定完了!突き固め開始!」と、津和野は言いながらペダルを踏み込む。機械は轟音を立てて線路を固めていく。
「よっしゃ!3mmほどアゲアゲしよか!レベリング!」と、糸魚川は無線で指示を出す。
「オオライ!」と、津和野は無線で返事をしながらながら、マルチプルタイタンパーでタンピングやレベリングをする。マルチプルタイタンパーは1時間に500mのペースで作業する。
「ある程度済んだから、ちょっと津和野君も来て。車輪ロック確認してな!」と、鳥飼は言う。
「オオライ!車輪ロック作動!よし!」と、津和野は言ってから運転席から線路へ移動した。
「いいか!1時間作業したらこんな感じになった。線路に目を凝らしてみいや!」と、鳥飼は言う。津和野は線路に顔を近づけ凝らす。
「3mm上がると違うなあ。周りといい感じになった。」と、津和野は感心していた。
「ほなら!この調子で加古川駅へつながる高架の入り口までやろか!」と、糸魚川は言う。
「突き固めをすることにより、乗り心地がよくなるからなあ。」と、小郡は言いながらマルチプルタイタンパーの後方を監視し、作業状況を知らせる。5人は午前4時前まで作業する。
「呉ですが、まもなく線路点検に入ります。」と、無線が入る。
「そろそろ引き上げやで!線路点検するから配置ついて!」と、糸魚川から指示が出る。
「さて乗るか!あ!運転は僕がするから交代してや!」と、鳥飼は言って津和野から交代した。一度マルチプルタイタンパーは日岡駅まで行って線路内の点検を行った。
「異常なし!作業完了!西明石まで返回準備!」と、糸魚川は言った。
「加古川線指令!加古川線指令!こちら作業車です。作業終了につき引き揚げます。どうぞ!」と、鳥飼は無線連絡を指令に入れる。
「こちら加古川線指令です。それでは加古川駅到着後、出発信号点灯次第、西明石へ引き上げてください。」と、連絡を受ける。
「津和野君、加古川駅からよろしくな!フルスピードで西明石基地へ引き上げだ!」と、鳥飼は言う。
「西明石基地引き揚げオオライ!」と、津和野は敬礼をして第2エンドへ着席する。
加古川駅で向きを変えて、西明石基地へ引き上げに入る。
「識別点灯!加古川出発!次駅東加古川!制限15!発車!」と、津和野は言ってマスコンを操作する。マルチプルタイタンパーは西明石を目指しフルスピードで走行する。
「ココの路線はコーナーが少ないから、新入りの研修には向いているでなあ。」と、後方のスペースにいた
小郡は言う。
「せやろ!さらに爆走できる区間もあるから、鍛えるのにちょうどええは。」と、鳥飼は答えた。
「場内進行!東加古川通過!」と、津和野は指さし呼称する。
「だいぶ凛々しくなったなあ。」と、鳥飼は思う。
「あんな風に人は成長するんだなあ。」と、糸魚川は答えた。
おおよそ15分ほどで西明石に到着した。ここからはマルチプルタイタンパーを外側留置線へ入れる。
「作業終了。エンジン停止よし!」と、糸魚川は言って確認作業をしていた。
「では皆さんお疲れさん!今日も無事時間内に作業終了したで。」と、皆をねぎらっていた。
津和野は初めての大きな仕事に、達成感を大いに感じていた。
「初仕事を成し遂げると、達成感はひとしおのものです。」と、津和野は言った。
「その気持ち覚えとくんやで!これから困難があるかもしれないが、乗り越えていくことと、鉄道を利用するお客様の笑顔と安全を守るのが、うちの仕事やからな。」と、鳥飼は答えた。
津和野はマルチプルタイタンパーを運転していた時に、気付いたことを話し始めた。
「この車両って、ディーゼル電気式なんですか?」と、津和野は鳥飼に質問する。
「これはな、キャタピラーのエンジンで発電して、電気モーターで走る。その通りやで!」と、彼は答えた。
「どう見て音が静かなので、そんな風に感じましたね。」と、津和野は言う。
「そうやろ!昔はかなりうるさかったけど、国土交通省の基準やら技術革新やらで、静かになったんや!」と、鳥飼は答えた。
一行は始発列車で大阪の基地へ戻り、翌日のスケジュールの確認を取った後、寝ることとなった。
「さて明日も昼から研修やから、しっかり休むんやで!」と、鳥飼は言っていた。
「ではお疲れ様です!」と、津和野は言って仮眠室へ行った。
まだ在来線の狭軌のみだが、今後は私鉄や新幹線の標準軌のマルチプルタイタンパーの操作方法に関して学ぶ必要がある。それに関しても津和野はこれから習得していく必要がある。