Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
これから津和野と糸魚川、鳥飼の3人は、神戸市営地下鉄へ1か月間の出張することになり、海岸線の地下30mでの作業をすることになった。
鳥飼と糸魚川は、神戸市営地下鉄の保線係のものと共に、レール削正車の搬入作業をしていた。
作業員は絶妙なチームワークで、大型の10頭式レール削正車を地下の御崎公園車両基地へ搬入する。搬入が済むと糸魚川と鳥飼は、車両の整備を始める。その作業中に、
「花時計前方面の終電が出発後、発車してください。今日は三宮・花時計前~みなと元町上り線の削正をお願いします。」と、神戸市営地下鉄の保線担当、大橋は言う。
「よっしゃ!今日から地下での作業だなあ。そして久々の削正車!」と、糸魚川は言っていた。
「ところで津和野君は」と、鳥飼は言う。
「せやなあ・・・あいつの出勤は夜からのシフトやし。」と、糸魚川は言っていた。
「うまいもの食ってから来るのか?まあこの後、22時以降になればわかると思う。」と、鳥飼は言う。
「レール削正車は、砥石式とミリング(フライス)式があるけど、地下鉄用は砥石式だからなあ。まあこいつとは長い付き合いになるし。」と、糸魚川は言うと
「そうだったなあ。東海道新幹線のマルタイを7年やっていて、転職で新京阪にやってきて真っ先に任された車両だもんなあ。その時の車両がハラスコのレール削正車でしたね。」と、鳥飼は答えた。
「そうそう。先輩社員からいろいろ言われたよ。削るときの角度注意とか、しっかり砥石をレールに当てろとかと。」と、糸魚川は言うと
「だからコイツとは長い付き合いになるですね!糸魚川君!」と、鳥飼は言う。
「せやな。」と、糸魚川は返事をした。
夜22時になり、津和野が出勤したので打ち合わせを始める。
「今日は三宮・花時計前~みなと元町上り線の削正作業を行う。私が重機のオペレーターを行い、神戸市交通局の川崎君が先頭、津和野君は後方を監視、鳥飼君は添乗でお願いします。」と、糸魚川は指示を出す。
「後方支援といっても、削正の確認とかいろいろあるから、それをしてほしい。きれいに削れなかった場合、再度やり直しが必要。正確にきれいに削るには、妥協は禁物だぞ。」と、鳥飼は津和野に対して言うと
「う~ん、難しいですが、がんばるぞい!」と、津和野は返した。
「先頭の誘導は私が詳しいから、やりますわ。」と、川崎は言う。
「終電は御崎公園を0:05に出発する。そのためレール削正車も同時刻に御崎公園車両基地を出区し、御崎公園駅2番線で待機する。」と、糸魚川は言う。そして3人は最終点検を行い出区に備える。
「ここは京阪神緩行線よりは作業しやすいから、気長にやったらいい。4時間あれば余裕やわ。」と、鳥飼は言っている。
「神戸の最深部の作業、今から楽しみだ。このモグラみたいな車両で作業するのは。」と、津和野は高ぶっていた。
「せやろ!そろそろ出区だな。出発線へ移動するぞ。全員配置につけ。」と、糸魚川は言う。
「オオライ!」と、一斉に言った後、保線車両へ乗車する。糸魚川は川崎とともに第1エンド(先頭側)に、第2エンド(車掌側)は鳥飼と津和野が乗り込み、レール削正車は車庫を後にする。
「機関始動!識別点灯!入れ替え進行!HTT発車!」と、糸魚川は言うのと同時にスロットルを操作する。地下鉄の車庫の留置線の闇の中を、強力なヘッドライトで照らしながら前に進む。
「停目!待機!」と、糸魚川は言うとブレーキを操作し、レール削正車を停車する。
「間もなく作業地点へ移動だね。」と、川崎は言う。
「せやな。」と、糸魚川は言うと
すぐに信号は青になり駅へ向けて出発する。そして終電前の御崎公園駅に入る。駅員がホームでレール削正車の到着を待っていた。
「誘導員確認ヨシ!ホーム中央停車!」と、糸魚川は言うのと同時に停車する。ホームには普段は入らない車両があり、鉄道ファンも撮影に来ていた。仕事帰りのサラリーマンも目を凝らしてみていた。
「こんばんは。これから作業ですか?」と、御崎公園駅長の伊川が声をかける。
「終電後に保線やわ。」と、川崎は言う。
「あ!そうやったんか!じゃあ皆さんは、委託先の方ですやね。これからお気をつけて作業してください。」と、伊川は言う。
「そうですね。」と、津和野は返した。
「まもなく1番線に、三宮・花時計前行最終電車がまいります。」と、放送があり電車が入線する。するとこの電車の運転士が
「お!今日は夜間保線でっか!気を付けてがんばってな!」と、言ってきた。そしてリニアモーターの音を響かせて、走り去っていった。
「いよいよでんな!作業!」と、鳥飼は言うと
「そろそろ作業開始やわ。」と、川崎は言う。そして
「2番線から回送列車が発車します。」と、放送がある。
「ほな!気を付けて削ってきますわ!出発進行!」と、糸魚川は言ってスロットルを入れて出発する。来た線路とは別の線路を走行し、減灯で薄暗くなった和田岬駅を最徐行で通過する。そしてここからシールドトンネルを抜ける。すると津和野が
「なんだか地下鉄をディーゼルで爆走するのは、不思議な感覚ですね。」と、言うと
「海岸線は当たり前と言って、営業車が内燃車で通過することはない。よくあって夜間の保線だけや。」と、鳥飼は言う。
作業場所のみなと元町へ着くと、レール削正車のモードを切り替え、作業を開始する。
「ほんなら配置ついて!始めるぞ!糸魚川君、派手に行くで!」と、無線で鳥飼は言う。
「よっしゃあああ!削正ヘッド設置!高速回転開始!」と、糸魚川は呼称しスイッチを入れて機械を始動する。
「ヘッド角度、確認オオライ!ほんなら削っていくで!このウロコ状レール!」と、鳥飼は言う。レール削正車の床下にある10個の砥石は高速で回転し、レールを火花あげながら削って整えていく。
「いい感じやなあ!」と、糸魚川は言う。そしてレール削正車は100mほど進めて停車する。
「後方、焼けるようにアツアツのレール!いい感じで、出来ていますよ。正しく削正出来ています。」と、津和野は無線を入れる。
「うんならこの調子で、2回目入れるで!逆走配置!」と、糸魚川は皆に無線を入れる。
「後方監視オオライ!」と、川崎は無線を入れると、
「先頭誘導、私やります!!!」と、津和野は無線を入れる。
「よっしゃ!もう1発派手にいくぞ!逆転ハンドル手前!逆走削正開始!」と、糸魚川は無線を入れる。
「前方異常なし!進行してください!」と、津和野は無線を入れる。そして再度同じ個所を、逆走しながら削正する。
「地下鉄のレール削正は2年に1回しかない、だから今しかチャンスはないんや!もう一発派手に行くで!」と、糸魚川は無線で言う。
「第2エンド切り替え作業開始!」と、鳥飼は言って作業補助をする。レール削正車は逆走し、みなと元町へ行く。方向転換後のもと地点に戻りが終わり、レールは3度目の削正に入る。これでようやくこの区間は工事完了となる。
「よしゃ!旧居留地大丸前までこのまま突っ切るで!」と、糸魚川は無線を入れる。
「配置ついてな!」と、鳥飼も無線を入れる。津和野と川崎はレール削正車を誘導する。3回目レール削正車が通ったレールは、新品同様にきれいになっていた。
「こっから難しい、急コーナーの削正だなあ。」と、糸魚川は言う。
「腕で乗り切るしかないもんね。」と、鳥飼は無線を入れる。
「ほんなら派手に行くで!」と、全員へ無線を入れるのと同時、グラインダーヘッドの角度を調整しならが、最適な角度で作業する。その角度は、完全に無駄のない操作であった。暗闇の中、豪快なカミンズ製のディーゼルエンジンの音と金属を削る音、火花を上げて作業する。
「あと少しで旧居留地大丸前、この海岸線で有数のヘアピンカーブをクリアすれば駅やなあ。」と、鳥飼は言う。
「せやな!頼むで!」と、川崎も言う。
削正の難しいヘアピンカーブも、糸魚川は熟練の技と絶妙な機械操作で仕上げていく。
そして旧居留地大丸前の駅へレール削正車は滑り込む。
「やれやれや。ちょっと休憩しょっか!」と、糸魚川は無線を皆へ入れる。
「そうですね。」と、返事の無線を津和野は入れる。そしてしばしの間休憩をする。
4人は駅のホームに座り、飲み物を飲んでいた。
「あともう一度あの地点へ戻り、そこから今度は三宮・花時計前まで作業やなあ。」と、川崎は言う。
「せやな。まだ残りも半分。無事に御崎公園へ戻るのがうちの仕事。」と、鳥飼は答える。
「そうそう。しかし終電後の貸し切りのホームで好き放題やるのもなあ。いい運動だと思う。」と、糸魚川は言って津和野へ缶コーヒーを投げる。
「ちょっと糸魚川さん、いきなり投げないで下さいよ。」と、津和野は驚きながら言う。
「悪いね…それ飲んで頑張れ!俺からおごる!」と、糸魚川は言う。
「いいなあ。津和野ちゃんは!」と、川崎は言う。
「それより津和野君は、フリルやレースの使われた服を着ているよなあ。あれ見ると実家の人形を思う出すんや。僕の実家にあるのを思い出すんだ。」と、鳥飼は言う。
「実家、遠いのですか?」と、津和野は尋ねる。
「せやなあ。まあ会社の借り上げ住宅で一人暮らしだけど、この仕事は休みなしだからなあ。」と、鳥飼は答える。
「そうなんですか。」と、津和野は言うと、
「せやけど津和野君は、中学生の時は東北へおったんやろ。ねえどうやったん!」と、糸魚川は言う。
「好きな人は、いなかったですよ。そして高校からは、神戸の親戚の兄夫婦と一緒に生活。そこがまさかの“牛屋さん”だった!牧場ぐらし!」と、津和野は答えた。
「そうなんや!以外やなあ!」と、鳥飼は言う。
「そろそろ仕事に戻るか。」と、糸魚川は言う。
「そうですね。」と、津和野は言って立ち上がると、
「せやな!」と、鳥飼と川崎は言う。
「残りの削正区間は、旧居留地大丸前から三宮まで。分岐器は別の班が手作業でやってくれているからな。」と、糸魚川は言う。
そしてレール削正車を再始動し、三宮までレールを削る。
「入線前は分岐器速度制限を受けるから、レールがすっごく痛んでいる。4回に分けて削る。総員配置につけ!」と、糸魚川は無線を入れる。
「了解!」と、一同は無線を返し配置につく。
レール削正車は、時速5km/hの速度でレールを削っていく。
「ここはほぼ直線だから、作業はしやすいで。」と、川崎は言う。
「せやなあ。角度気にせんでいいし!」と、糸魚川は答えた。
「後方は異常なしです。そのままやってください。」と、津和野は無線を入れる。
「よっしゃ!派手に行くで!」と、糸魚川は返事の無線を入れた。
そうしている間に、先遣隊の作業を終えた分岐器にかかる。
「ここからはレール削正車の運転が大変になる。引き返す位置が来たら無線くれ!」と、津和野に無線が入る。
「了解!前方に回ります。」と、津和野は無線を入れて移動する。
未削正のレール位置を確認しながら車両を進め、終了地点が来たら津和野は無線で知らせた。その後、鳥飼と共同し痛んだレールを削る。
4回目を削り最後は三宮・花時計前のホーム内のレールを削正していく。
「もうじき終了地点。作業終了やなあ。ここはそんなに痛んでへんから、1回だけでな。」と、糸魚川は指示を出す。そして車止め標識のところまで作業する。
「無事終了したなあ。」と、川崎が無線を入れる。
「ふう!やっと今日の区間は終わった。疲れたなあ。」と、糸魚川は言う。
「あ~これから撤収と点検作業やなあ。」と、鳥飼は無線で言うと
「私も運転してみたいです。HTT。」と、津和野は無線を入れる。
「う~ん、じゃあやってみるか?」と、糸魚川は返事の無線を入れる。
「ありがとうございます。」と、津和野が返事を入れたとき
「旧居留地・大丸前から和田岬までやぞ!分岐器のところは、だめやぞ!」と、糸魚川は言う。
「三宮で作業中の保線車両は、そろそろ御崎公園駅へ引き上げてください。」と、指令から連絡がある。
「合図よし!発車!」と、糸魚川は言うと同時にブレーキを解除し、スロットルを入れて引き上げる。削り終えたレールを進み、分岐器で下り線へ入る。旧居留地・大丸前で最徐行し糸魚川は
「ほら!運転変われ!」と、津和野へ言う。
そして津和野は、運転席へ座る。
「御崎公園へ向け、発車!」と、津和野は言い発車する。4人を乗せて車両は御崎公園駅を目指し走る。
「ATOないから運転ムズいけどお願いね。」と、川崎は言う。
「誘導お願いしますね。」と、津和野はお願いをすると
「ええで!制限速度について言うわ!」と、川崎は答えた。
津和野は急カーブを走行するときは、スロットルを細かく操作し、制限速度に注意しながら進める。みなと元町を通過し、ハーバーランドへ向かう。栄町通りの地下を抜け、駅までの上り坂を上がりハーバーランドを通過する。ここからは中央市場前までの海岸線最長の区間に入る。
「制限90派手に行くぞ!」と、川崎は言う。津和野はスロットルを全開に入れ、高速走行をする。
急こう配を下りながら、ある程度進むとスロットルを戻しブレーキを入れて減速する。
「なかなかやるやん!初めてにしては、上出来やんか!」と、鳥飼は無線で言う。
「この調子だと、甲種内燃車も夢じゃないな。」と、糸魚川も言う。
「てへっ!」と、津和野は言うだけで運転に集中していた。
そうしている間にも、中央市場前を過ぎる。急カーブを抜け、和田岬へ向かう。
「制限35!徐行!」と、津和野は言ってブレーキを入れて減速し、駅へいったん停車する。
「ふう!地下鉄の運転は楽しいなあ。」と、津和野が言うと
「せやな!普段とちゃうからなあ。津和野君、そろそろ交代しよか。入庫は僕やねん。」と、糸魚川は言いいだす。
「すっかり忘れていました。楽しくて夢中になっちゃって!」と、津和野は答えた。
「せやな。」と、笑いながら糸魚川は言って運転席へ座る。
「入庫と分岐器は技術がいる。だから僕やねん。」と、糸魚川は言う。
「そうなんですか!」と、津和野が感心した様子であった。
そして和田岬を後にし、御崎公園駅のホームへ向かう。2番ホームに入るとすぐに運転台を交換し、御崎公園車両基地へ帰りこの日の作業は終了する。
これからまだまだ海岸線のレール削正は続く。別の班に交代や中断を挟みながら、全線のレールの延命工事を行うためにも、大切な工事を彼らは行う。