Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
神戸市営地下鉄海岸線のレール削正は、まだまだ途中であった。約8kmとはいえ、上下線で総延長約16kmのレールを削るのは大変な作業である。糸魚川の班は、1日おきに夜勤で作業する。
この日は、前回の上り線の続き区間である、みなと元町~中央市場前間の削正作業をする。かなりのロングランでかつ最深部で行う。
レール削正車は、日中は御崎公園車両基地で待機する。その間に点検や切削片を回収、給油を受ける。その作業を糸魚川と米原が行っている。
「廃材はここのドラム缶に入れて」と、米原は言って出してくると、
「あざっす!」と、糸魚川は返事をしていた。
「ところで、津和野君はどうなんかねえ?女の子なのに様子知りたい。」と、米原が尋ねると
「せやな?まあいい仕事しているよ。やっぱり父親譲りか、運転はすっごい上手。ただマルタイ以外の機械は半人前だね。」と、糸魚川は答えて金属の切りくず(切削片)をドラム缶へ移していた。
「お前はいいよな。危険物あるから。」と、米原は言い始める。
「せやけど、意味あんまないで!まあ整備の作業は、監督できるけどな。金属片も燃料も危険物やからね。」と、糸魚川は答えた。
「そうなんや。まあこっちは機械屋だからね。前回のマルタイ、救援後に福山工場で修理だって。復活はしばらくかかりそう。」と、米原は言う。
「しばらくこっちは、アンダーグランドでレールを削る毎日だね。」と、糸魚川は答えて
「じゃあそろそろ給油するか。コイツ(レール削正車)は、燃料をよく使うからね。ディーゼル満タン満タン!」と、彼は言って作業に移っていく。
この日津和野は、京阪寝屋川車庫で研修を受けていた。彼女の技術を買うものが現れたためであった。
「お前は、おやっさんに似て、運転うまいなあ。経歴を見たら、すっげ神戸の“お嬢様学校”出ているのになあ。ほんまにたまげるわ!!!!」と、現場の指導者のものは言う。
「やっぱり私は、MTTとかよりもこっちが向いているのかもしれないですね。」と、津和野は言いながら起動用モーターカーを運転する。
「せやなあ。これはダンプトロリーを繋いでいるからなあ。まだ運転しやすい方やで!」と、指導のものは言う。
「そうですね。」と、津和野は答える。
「牽引はいろいろある。ロングレール運搬車とかから、破石用のダンプトロリー、低床の重機積載車、機材運搬台車まであるからなあ。」と、指導者は答えていた。
「運転しやすいのは、やっぱりダンプトロリーですか?」と、津和野が尋ねると
「せやなあ。ただ破石を撒くのは、かなり技術がいる操作だね。均一に撒けるように、修行する必要あるからなあ。」と、現場の指導者は答えた。
研修が終わると昼食を済ませ、昼からは会議がある。そこでこんな話題が出た。
「今度京阪本線のある駅で大規模工事があって、バックホウ(ショベルカー)の運搬があるなあ。」と、小郡は言う。
「うちの受注やからなあ。重機運搬トロッコの出番やなあ。」と、作業設計の新宮は言う。
「低床トロッコやなあ。あれで重機を運びこもか。ちょうど山陽電鉄から帰っているよなあ。」と、小郡は言うと
「そうそう!で、今回は津和野君に、搬入車の運転をお願いしていいかなあ?」と、新宮は言う。
「モーターカーの運転ですか?」と、津和野が尋ねると
「せやで!頼むなあ。」と、新宮はお願いした。
「わかりました。引き受けます!安全第一で搬入します。」と、津和野は言った。
「重機の搬入は、大変運転技術が問われるんや。君なら成し遂げられると思うで!がんばってな!」と、小郡も言う。
「あと、今日の神戸市営の作業は、少し離れてもらえるかねえ? 引き抜きだよ。」と、新宮が言うと
「え!そうなんですか!」と、津和野は答える。
「そうだよ。運転のうまい君なら、あんな地下の作業は向いてないと思う。新しいメンバーとも打ち解けられると思うから、ぜひお願いする。」と、新宮は言う。
そして会議が終わること、津和野と小郡は帰宅した。
「仕事、今日は終わるの早いね。これで遊べるし。」と、津和野は喜ぶと
「せやろ!俺の友人なんかパチンコするよ。こんな日は!」と、小郡は答える。
「え!そうなんですか!」と、津和野が答えると
「今度のメンバーにその人いる。そいつがミャンマー行ったときは笑えたで!じゃあな!」と、小郡は言って別れた。
津和野はこの日、17時に会社を引けている。時間があるので、大阪市絵地下鉄に乗って心斎橋のショップへ出かける。そう彼女の大好きな服を買うために向かう。
「いらっしゃいませ。こんばんは。あら保線屋さんの方ですね!」と、店員が言ってくると
「ええ!最近出張とかで忙しかったの!さて新作はどれ?」と、津和野は言う。
「こちらになります。」と、店員は進めてくる。
「う~ん?やっぱりしっくりこないね。あと2万円は高すぎる!」と、津和野が言う。
「ではこちらにします?」と、店員が勧めてきた。
「これよさそうですね?じゃあ検討しようかなあ?」と、津和野は言っているだけだった。結局この日は、何も買わずに店を後にした。
「やっぱり今は、高い買い物は慎もうかなあ?」と、言っていた。
「そうですか?次回はよろしくお願いします。」と、店員が言った後に津和野は店を後にした。
翌日は昼より遅番で出勤した。
「お!津和野君おっは~!」と、小郡は言うと
「え~小郡君もう昼だよ。チャライこと言わないで、すぐにミーティング行くよ。この後、訓練もあるからね。」と、津和野は答える。
「そやねんな!って言うか、今日のお洋服もイケてんなあ!」と、小郡は返す。
今日の会議は、工事個所についての連絡であった。
「いよいよ京阪本線での工事が決まった。重機運搬は明日行う。モーターカーの運転は、津和野君にお願いします。前方監督は小郡君、君にお願いできるかなあ?」と、新宮は言う。
「オオライです!」と、津和野と小郡は答える。
「そやけど、こんな感じの流れなのかなあ?」と、小郡は尋ねる。
「寝屋川車庫を深夜1時半に出区し、一路中書島駅へ向かう。その後木幡(こわた)駅へ向かう。そこが現場や!」と、新宮は答える。
「終電の入区とかがあるから、それが終わってからやなあ。今回は踏切が鳴らないから、通過の際は誘導員の指示に従うんやで。と言うより木幡は京アニやなあ!」と、小郡は言う。
「小郡君は相変わらずやなあ。」と、新宮は答える。
「そうですね。流れはそんな感じですか。」と、津和野は答える。
「編成は、モーターカーのサンドイッチで、重機運搬用のものが4両との6連からなる。運転には運転士の連携協調になる。何しろ発電機2台と重機1台のヘビー級だからなあ。」と、新宮は言う。
「じゃあ私が先頭に。」と、津和野は言うと
「僕は後部補機を担当します。」と、小郡は言う。
「頼むわ!津和野君!小郡君!」と、新宮はお願いした。
そうしているうちに、主役であるコマツの小型ショベルカーが京阪電鉄寝屋川車庫へ搬入されていた。
「泉州のレンタルとこのやなあ。」と、熊山がそう言いながら引き受けをしていた。
「せやで!」と、新京阪物流のトラックドライバーは言っていた。
「これはええ仕事になりまんなあ。」と、道場も言っていた。
「じゃあこれからショベルカーを降ろして、トロッコへ積み込むか。」と、熊山は言ってショベルカーに乗り込み、トラックからスロープまでショベルカーを移動させ、踏み板を慎重に渡り積載した。
「そうやねんなあ。」と、新京阪物流のドライバーは感心しながら答えていた。
「昼間はやり易いけど、終電後は至難の業やで。ホームへはそんなに段差があらへんから心配ないけどなあ。線路内への搬入排出は苦労するで。軌陸式があれば余裕やけど。」と、熊山は言っていた。
「これ済んだら、次から運転メンバーとのミーティング。明日やもんなあ。搬入!」と、熊山は言ってショベルカーを固定する。
「お!進んでおますなあ。」と、道場が来ると
「ちょっと反対側と発電機とバッテラ(バックライトのこと)の積み込み手伝って!」と、熊山は言ってお願いする。
「やりまっせ!」と、道場は返した。
「明日はいよいよ木幡駅で、重機搬入による工事ですね。」と、津和野が様子を見に来る。
「お!ロリータさんのお出ましや!君がこれの運搬やるんやろ!」と、道場は言う。
「そうです!」と、津和野は返すと、
「そんなら一番ええ仕事してやる!」と、道場は答えるのと同時に
「二台目のトラックにある発電機は、これから積み込み?」と、熊山が聞くと
「せやなあ。今からやわ!」と、道場は答えた。そして彼はトラックの荷台に積みこまれた、大型ディーゼル発電機を下すために「玉掛け」をする。その後、トラックにあるクレーンを使ってトロッコへ載せる。
「こっちはモーターカーの整備に入りますわ!」と、小郡は言うと
「では私も入ります!」と、津和野も言った。
「じゃあたのんますな!」と、道場は言った。そして津和野と小郡の二人は、この日の晩に使うモーターカーの整備を始める。
しかし作業を始めて数分、津和野の作業は不手際が見つかった。
「おい!津和野君!そこじゃないぞ!ここだろ!」と、熊山がそう言いながら入ってきた。
「すみません。別のことに気を取られてしまいました。」と、津和野が取り繕う。
「全く!まあちゃんと故障や遅延なしで重機を届けて、ここに戻るのが君の仕事だから、整備はしっかりやるんやぞ!」と、熊山は言って持ち場へ帰った。
「整備は専門家がやるから、二人とも積み込み手伝って。」と、熊山が言いに来た。
「そこのバッテラをこっちのトロッコへ積んでほしいんやけど!できるか?」と、道場は言う。そして津和野と小郡は、言われるがままにバックライトを所定の運搬車へ積み込んだ。
「われ!結構力持ちなんや!」と、道場は津和野に絡む。
「言われた通り、ただやっているだけです。」と、津和野は答える。
「そうなんか!」と、道場は言ってディーゼル発電機を運搬トロッコに積み込みしている。
「そこにある簡易トイレ、小郡君が積み込んで。」と、熊山が指示を出す。
「連絡オオライ!」と、小郡は返事をし、作業に移った。
今回運搬する機材は、バックライト4台、ディーゼル発電機2台、ショベルカー1台、仮設トイレ1基であった。重量はそれなりにある。そして牽引はプッシュプルでないと運べない。
機材の積み込みと固定作業が終わると、運搬編成を車庫で邪魔にならない位置へ移動させる。
「お~い!津和野君!小郡君!今から移動させるで!配置につきや!」と、道場が無線で言うのと同時に、津和野が乗り込むモーターカーへ来る。
「ここで感触を確かめるのが、重要なんや!感覚で覚えとけよ!」と、津和野に対して言う。
「ではモーターカーを発車して、車庫でも中間の地点へ移動させてください。」と、指令から無線が入り
「それでは発車します。」と、津和野は無線を入れ、モーターカーを発進させる。
「モーターカーはマルタイとかと違い、運転台が枕木に直角なんや!だから運転が難しいで!でもこいつは、運転がシンプルな最新型の松山重機械工業製やから運転しやすい。」と、道場は言った。
「そうですねえ。普通の電車と同じですね。」と、津和野は答えた。
「入信まで進行!15km/h!発車!」と、津和野は無線越しに言う。そしてブレーキ弁を緩め位置にし、スロットルを2に入れた。補機の小郡は、スロットルは1にして入れ替え信号まで移動する。
「こちら後方小郡!入信停止時指示よろしく!」と、無線が入る。
「入信まであと100m!」と、津和野は返事の無線をする。
「後部補機、間もなくノッチゼロ!了解!」と、小郡は無線をする。津和野はすぐにスロットルを戻し、ブレーキをかける。そしてモーターカーを停止位置ピッタリに停めた。
「折り返して、定位置へ行ってください。」と、無線指示が出た。
「津和野君、後部補機頼む!」と、小郡から無線を受けて、逆転ハンドルを切り替えてスロットルを入れる。モーターカーは向きを変えて、ゆっくりと分岐器を超えて留置場所へ入線する。
「間もなく停目!減速体制!」と、小郡が無線を入れると、津和野はゆっくりとスロットルを切ってゆく。
「停止位置よし!」と、小郡は言ってブレーキを入れて停車位置ピッタリに停める。津和野は
「今日の作業はここまでですね。」と、無線を入れる。
「せやなあ。エンジン切って今日は終了や!」と、熊山が無線を入れる。
「そやけど、することはいっぱいあるで。」と、道場は無線で言う。小郡と津和野は指さし確認をした後、アイドリング中のモーターカーのエンジンを停止させた。そしてモーターカーとトロッコのすべての車輪に「手歯止め(ハンドスコッチ)」を付けて、逸走事故防止をする。これが済むと作業終了となった。
「みんなお疲れシャン!」と、熊山が言うと
「お疲れ様です!」と、津和野が答える。
「ロリータさんはやっぱりええなあ。明日のミーティングでスケジュール決まるなあ。」と、熊山は言う。
「そうなんですか!」と、津和野が返す。
「明日の深夜は、搬入やなあ。興奮するわ。津和野君との共同作業は楽しみやなあ!」と、小郡は言う。
「いつもしているジャン!」と、津和野は答えると
「せやな。」と、小郡も答えた。
明日の大一番、作業機械搬入は難しい作業。一行はどうやって乗り切るか?