Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
いよいよ今夜、京阪宇治線の木幡(こわた)駅へ機材搬入配給がある。作業は新京阪保線サービスが請け負う。作業するメンバーは、津和野、小郡、道場、熊山、鳥飼の5人と誘導員の粟津と江若に決まる。一行は昼13時に大阪北区の本部へ召集され、会議室で作業の打ち合わせをする。
「今日は木幡駅ホーム工事に伴う、機材搬入配給やなあ。時間はこの通り。」と、新宮は言いながらスケジュール表とダイヤグラムを見せる。
「え!結構タイトなとこある!」と、小郡は言うと
「せやろ!MPV検測とかぶった!」と、新宮は答える。
「出力フルでないとアカンなあ。特に淀川橋梁ら辺やなあ。」と、鳥飼は言う。
「そうそう!この日やないと検測作業は、でけへんねん。」と、新宮は言う。
「深夜も保線作業が被ると大変やで。」と、熊山も言う。
「速度全開で淀川の鉄橋を抜けて、中書島まで逃げ切る。これしかない。」と、道場はアドバイスをすると
「それでいきますか。」と、新宮は答える。
「じゃあ頑張りますか。運転士の娘として、精いっぱいやります!」と、津和野が言いだす。
「お願いしまんにゃわ!」と、新宮は冗談交じりでお願いした。
「タイトな京阪本線を中書島まで逃げ切れよ。津和野君!」と、熊山は言う。
この日作業する5人は、夕方に食事を終えると夜に備えて休憩する。仮眠室で休みをとるとき、津和野はかわいらしいロリータワンピースを着ていた。すると小郡は
「お!津和野君はフリフリのワンピやんか!」と、彼が言うと
「いいでしょ!これ!かわいいし仮眠ファッションかも!」と、津和野は一回転し広がった裾を見せてから答える。
「せやねんなあ!」と、小郡は答える。
仮眠室では絶対に津和野ワールドであった。お気に入りのバラの花柄ブランケットを、お腹にかけてからクマのぬいぐるみを抱いて寝る。それが彼女流であった。
仮眠終了は21時。エアーで膨らむ自動起床装置が展開し、体が持ち上がりアラーム音が響く。さっきまでロリータであった彼女であったが、今度は作業着に安全靴、そしてヘルメット姿であった。
「お!津和野君!今から作業でんなあ。」と、鳥飼は言う。
「そうそう!搬入!」と、津和野が返す。
「こっちも参加するで!僕は誘導員やるわ!」と、鳥飼は自慢げに言うと、
「お願いします。私は京阪本線での先頭機関車の運転をやります。宇治線では後部補機を。」と、津和野は答えた。
「ムズいけど頑張りや!」と、鳥飼は言って行った。
22時になり点呼をとる。その後、最終打ち合わせが始まる。日付も変わり、0時になると留置線へ移動して、この日搬入するモーターカーの最終点検をする。
「異常なし!機関チェック!エンジン始動!」と、言って津和野はモーターカーのエンジンを始動する。
「こっちも異常なし!エンジン始動!」と、小郡は無線を入れてくる。
「ほんならそろそろワシらも行くか!」と、熊山は言う。
「そうでんな!」と、鳥飼は無線で言うのと同時に、先頭の津和野がいる車両に乗り込んだ。
「出区は0時45分。最終の萱島行が入区する。それ行ったら出発やで。」と、鳥飼は無線で全員に言う。
その間、熊山と道場は缶コーヒーを飲んで目覚ましをしている。二人が飲み終わる頃、13000系が車庫へ滑り込んだ。
「こちら京阪線指令です。重機配給車は出場してください。」と、無線連絡が入る。
「よっしゃ!今から出区や!総員配置につけ!」と、鳥飼は無線で言う。
「オオライ!」と、全員が無線で返す。
「津和野君、小郡君、あとは頼むで!」と、熊山は無線を入れる。
「わかりましたよ。」と、小郡は返事の無線を入れる。
「こっちもがんばるぞい!」と、津和野も無線を入れる。
そうしている間にも、入れ替え信号は出区に変わる。そして車庫出場位置へ向かう。
「識別点灯!入れ替え進行!逆転ハンドル手前!出場位置へ進行!!」と、津和野は言うのと同時に出発する。すると
「発車確認!後部補機無動力進行!」と、小郡は確認復唱をする。
モーターカーは機材を載せて、寝屋川車庫出場位置へ移動する。
「工事列車、出発を許可します。運用都合により、萱島駅へ行ってください。のぼり入庫線の封鎖をしています。」と、輸送指令から無線連絡がある。
「了解です。配慮感謝します。作業主任の熊山。」と、彼は返事の無線を入れた。
「津和野君、しょっぱなから補機頼む。小郡君は先頭お願い!」と、熊山は指示の無線を出す。
「オオライ!逆転ハンドル手前!進行!」と、小郡は指さし呼称し、ブレーキハンドルを解除位置に入れ、スロットルを4段に入れる。
「補機進行!2段!」と、津和野も小郡は指さし呼称し、スロットルを2段に入れる。
2台のモーターカーは息を合わせながら、重量物の建設機材を載せたトロッコを牽引する。車輪をきしませながら分岐器を超えて、入庫線を逆走する。スピードはゆっくりとしていた。
「こっちはフルで行くから、4段お願いね。」と、小郡は津和野へ無線指示を出す。
「じゃあ後押しします。」と、津和野は返事の無線をするのと同時に、スロットルを4まで上げた。ディーゼルエンジンは力強い音を立てて、高架島式ホームの萱島駅を目指し急勾配を進む。
上り線ホームが見えてくると減速をする。補機はこの時点でノッチをゼロにする。
「補機ノッチオフ確認!停目目視よし!」と、小郡は言ってブレーキをかけて減速する。
そして萱島駅の2番線に、6連の運搬車が滑り込んだ。駅員が旗を持ちそこを停目としていた。
「やれやれ運搬は難しいなあ。」と、小郡は言うと
「せやろ!バックホウは重からなあ。」と、熊山は言う。
ホームには駅員以外誰もいないと思っていた。しかし現実は違った。数名の鉄道ファンがカメラを構えていた。
「さっそくお出ましですなあ。テツオタ。どっからともなくやってくる。」と、熊山は言う。
「せやせや!まあ悪いことせえへんように、わてが見てまんねん。これから作業気を付けてなあ!」と、駅長の四宮が言った。向きを切り替え中書島駅へ向かうようにハンドルを切り替える。そうしているうちに、ホームに出発の放送が流れ、運搬車は発車する。
「先頭。発車します。」と、津和野が無線を入れると
「後方。オオライ。」と、小郡は無線で答える。そして一路、中書島をめざしクスノキがある萱島駅をあとにする。
ここからはモーターカーの本当の力が発揮する。二軸ではあるものの、スピードは45km/hは最高速度で出せる。排気口からは真っ黒の黒煙が上がり、強力な加速をする。ノッチは最大1つ手前にセットする。高規格路線である高架線内は、最高速度で抜ける。津和野はフルスロットルにセットする。ディーゼルエンジンは大きくうなりをあげ、深夜の京阪本線を疾走する。カーブが続く区間を抜けて寝屋川市を通過すると下り坂が続く。ノッチを切ってエンジンブレーキをかけつつ、速度を維持したまま走る。終電の直後とあって、踏切は鳴る状況であった。カーブを抜け、直線を加速する。香里園までは距離がある。この区間はスピードを出せる状況なので、後部補機は最適なノッチを入れる。
香里園駅は分岐器があるので、徐行する。その後、上り坂を抜けカーブを曲がる。枚方市で一旦停車し、熊山と道場が機材の点検をする。そしてMPV検測車の待ち合わせをする。間もなくすると、凸型の旧式のMPV検測車が退避中の隣のホームに滑り込む。
「お!今日は搬入でっか!」と、検測車の運転士が言う。
「せやねん!これから宇治線までこれはこぶんや!」と、熊山は言う。
「せやけど、お嬢さんが運転とは、たまげるなあ。」と、検測車の運転士が言はじめる。
「そうです。まあ私もこの仕事が憧れなんです。」と、津和野は言う。
「そうなんやなあ。じゃあ時刻だし検測いくわ!」と、運転士は言ってMPV検測車は出発していった。
「津和野君、そろそろ出発やで。信号変わったら発車して!」と、道場が無線を入れてくる。
「オオライっす!」と、津和野は返事の無線をする。そうしていおる間に、分岐器が切り替わり、信号も青になる。
「出発良し!発車!」と、津和野が呼称し、スロットルを入れて加速する。
途中の区間の長い直線では、後部補機の力を借りてフルスピードで走り抜ける。静まり返った枚方公園を通過、急カーブと登り勾配があるので、後部補機は出力全開で上がる。
「今4段にノッチ入れているから、先頭は3で!」と、小郡から無線を受けた。
「オオライ!」と、津和野は返事の無線をし、スロットルを3に落とす。坂を登っていくと、大きな分岐器を抜け枚方市を通過する。誰もいないホームを軽快な車輪の音を響かせ通過する。駅を抜けると始発を待つ2600系が留置線で寝ていた。すぐに今度は下りこう配がある。軽快な音を響かせながらひた走る。御殿山を通過する。そして減速を開始する。この先に踏切があるからだ。一旦停止し、熊山と鳥飼が線路に降り、誘導棒を持って踏切を封鎖、そして無線で津和野に支持をだす。そして鳴らない踏切を通過した。
直線区間はスピードを出して通過し、踏切があれば停止し、誘導員が確認後の通過、これを繰り返す。牧野駅を通過するとき、買い物へ行く夜町をふらふらしている男性がいた。それを見つけた熊山は停止指示を出す。そして踏切へ向かいその人に止まるように指示を出す。
「深夜にこんなもんが走るんか!たまげたなあ。」と、その人は言って、モーターカーが通過する様子を感心した様子で見ていた。
その後、深夜の京阪本線をフルスピードで走ると、また大きな駅が見えてくる。ここが樟葉だった。そこを通過する。比較的踏切も少ない区間になるため、スピードはそこそこ出すことができる。ノッチを調整し、津和野は最適な速度で走行する。小郡も後部で押す。カーブを抜けると、橋本駅が見えてくる。石清水の山があり、この駅だけは異様な空気が流れる。そんな中をかまわず通過する。橋本を抜けると今度は下り坂カーブ、左に住宅地、右に石清水の山、それらの間を縫うように走っていく。八幡市駅を境に今度は登り坂に入る。カーブ上の曲がったホームを通過し、小郡へ津和野は
「ノッチ補助お願い!」と、無線を入れる。そして4段にノッチを入れる。
「こっちも4弾と3段を最適に入れるわ!」と、小郡は無線を返す。坂を上り切り、ここからはノッチをフルにして、木津川橋梁を通過する。それを抜けると、カーブを通過し近代的な高架区間を疾走する。淀車庫や競馬場を横目に走ると、近代的な屋根の淀駅が見える。この駅を過ぎると、下り坂を抜ける。時折直線とカーブを繰り返しながら走ると、中書島の駅が見えてくる。減速し宇治線のホームへ滑り込む。ここで一旦停車し、機材を点検する。時はすでに2時半であった。
「おっしゃ!みんなお疲れシャン!特に津和野君、小郡君、ええ仕事やったで!」と、道場は言う。
「せやせや!」と、熊山も合わせて言う。小休憩後、すぐにへ向けて出発する。ここで一旦停車し、機材を点検する。時はすでに午前2時であった。10分休憩後、いよいよ搬入場所の木幡(こわた)駅へ向かう。線路が複雑に入り組む中書島を出発し、ゆっくりとした速度で宇治線を進む。複雑な分岐器を慎重に超えるつすぐに踏切が現れ、一旦停止し安全確認後に出発する。きつい急カーブを超えるとまた踏切がある。一旦停止し再び加速する。分岐器や踏切が多い区間、慎重にモーターカーを津和野と小郡は運転する。近鉄のアンダーパスをくぐりしばらく走ると、宇治川が見えてくる。それを横目に進むと観月橋駅がある。そこを加速しながら通過する。緩やかな川沿いのS字カーブを、軽快に車輪を軋ませ通過する。前に登りこう配があったので、小郡はちょうど良いノッチをいれる。
「補機の小郡君もいい仕事するなあ。」と、熊山も感心していた。
直線を抜け、踏切を徐行して通過すると、桃山南口駅が見えてくる。この駅を通過すると作業場所の木幡駅まであと1駅であった。直線をフルスピードでモーターカーは走る。緩やかな長いカーブを抜け、六地蔵駅を通過する。カーブを抜けきり、しばらく直線を走るとついに作業場所の木幡駅に着く。ホームにはほかにも作業員の姿があった。
「停止位置確認!」と、津和野は言ってブレーキを操作し停止する。
「やるやんか!」と、熊山は言って津和野の肩をたたいた。
木幡へ着いたのは、午前2時15分であった。そして機材を降ろす作業を、ホームに居た3人とすることになる。始発までは時間との勝負である。
「ちわ~す!おつかれっす!」と、ホームに居た監督らしい30代後半の男が声をかける。
「機材運搬したので、よろしくお願いします。」と、津和野が言う。
「じゃあやっていくっす!」と、その男は答えて配置についた。
「ほんなら手歯止め付けて、確認後にバッテラからおろそか!」と、道場は言う。
「津和野君と小郡君は、それ降ろすのをやって!僕はあのバックホウを降ろすわ!」と、熊山は言う。
「上下線列車往来なし!」と、小郡は言って線路へ降り、手歯止めをすべての車両の車輪とレールの間に咬ませる。
いよいよ機材の搬入が始まる。そして上り線を逆走し、中書島の待避線までの返却もある。無事始発列車までに作業を終わらせられるかは、作業者の腕にかかっている。