Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
いよいよ積荷の機材を下し所定位置へ搬入する。パイロンや棒など軽いものを先に津和野と小郡は降ろす。熊山と道場は、バックホウとバックライトの固定具を外す作業をしていた。
「ほんなら作業かかって!二人とも!」と、道場が指示を出す。
「ほんなら搬入のための踏板置いて、機材を順次おろしまひょか!」と、熊谷は言う。
「オオライ!!」と、津和野と小郡は返事をし、バックライトを降ろした。
「右は俺やるから、左頼む!」と、小郡は言う。
「せやけど、結構重いなあ。車両から降ろすのは積み込みと違い難しい。」と、津和野は言う。
そして息を合わせて、重さ15kgある渡り用の踏板を機材と積んだトロッコとホームの間に設置する。
「段差があるからなあ。」と、現場監督は答えた。そして
「手伝うわ!」と言って、丸刈り頭の作業員が津和野と小郡に駆け寄り作業補助をする。そして板が設置されると、今度は積み込まれたバックライトをホームへ上げる。45kg近くあるバックライトを3人で、所定のホームの場所まで運ぶ。
「われ、力あるなあ。」と、その男が津和野のことを褒めると
「そうですね。保線は重量物ばっかりです。」と、彼女は答えた。
「そうそう。レールなんかとてつもない重さでっせ。」と、小郡も言った。1つ運び終わると、小郡と津和野はバックライトの発電機を起動し点灯させる。
「異常なし。」と、津和野が指さし確認をすると、
「こっちもやって!」と、熊山も言う。重機を運び込むために、高さを調整する作業であった。
「高さがかなりあるからなあ。あ!指令から架線通電解除連絡あった。」と、熊山は言う。
「監督さんも言っていましたが、2時から4時半まで宇治線は停電だそうです。なので万一架線接触しても、感電はしないと思います。」と、津和野は言った。
「それやったら安心して作業できるな。1.6tのショベルカーを運び込むのは至難の業やからなあ。」と、熊山は言う。
その頃、小郡は2台目のバックライトの搬入作業を行っていた
「これがこの日搬入する最後のヤツやなあ。」と、道場が言うと
「せやなあ。明日は残りのバックライト2台を搬入。大型ディーゼル発電機1台をといった感じ。作業は上下線で行うから、少し大変やと思う。」と、現場監督は言う。
「スケジュールがタイトだから大変でんな。」と、小郡が言うと
「せやせや」と、丸刈り頭の作業員は言っていた。
早朝の新聞配達が始まる頃でも、まだ搬入するものはあった。
熊山は黄色のバックホウに乗り込みエンジンを起動する。
「今からイッチョ派手にやるぜ!発進!」と、彼が言うとバックホウがホームをめざし動き始める。
「おおお!」と、津和野が感心した様子で見る。けたたましいクローラとエンジンの音が深夜のホームに響く。
「右無限履帯接地よし!左無限履帯接地よし!ホームへ進行!」と、熊山は言いながら慎重に保線トロッコからホームへバックホウを進ませる。
「津和野君架線へ接触してへん??」と、熊山が津和野へたずねると
「大丈夫です。接触していません。」と、懐中電灯でつわの若線を照らし確認しつつ言う。搬入してばかりのバックライトが強い光でホームを照らす中、ゆっくりとしたスピードでバックホウはホームへ上がった。そのまま乗降の邪魔にならない位置へ移動する。
「君たちはある程度済んだら、その車両を基地へ引き上げる準備して!始発もあるからなあ。」と、現場監督は言って後にした。
「ありがとうございます!」と、二人は言った。
「やれやれうまくいった!じゃあ最後に、あのデカいディーゼル発電機をホームへ搬入やなあ。わてクレーン免許あるから、やるから津和野君は補助頼むわ!」と、道場は言う。
「了解です。何すればいいですか?」と、津和野が答えると
「作業車を少しホームの端へ移動させて、そこでアウトリガ(クレーンの転倒防止の足)を操作する。そこでクレーンを動かす。」と、道場は言う。
「了解です!では発進準備をします。」と、津和野が言って中書島寄りのモーターカーへ乗り込む。
「手歯止めを僕と小郡君が解除してきます。」と、鳥飼は言う。そして小郡と共に線路に降りた。
「では私はアウトリガの台設置をやるわ!」と、熊山は言って線路内へ降りて準備をする。
「津和野君、手歯止め解除完了!僕が誘導棒を振っているところまで進んで!」と、鳥飼は無線を入れる。そして彼は駆け足で中書島方向へ走り、停止位置に立って誘導棒を振る。
「それでは、日中にバリケードするホーム端まで進行!」と、津和野は言ってモーターカーを走らせる。非常に低速にするために、1ノッチで停止位置まで走る。そしてブレーキを使い停止し、手歯止めをする。
「決めるなあ!やるやん!」と、鳥飼は言って手歯止め作業する。
「そうでもないです!」と、津和野は返事をしつつ、クレーンのカバーを外す。ディーゼル発電機には、あらかじめ玉掛けがしてあるので、現場では固定具を外しモーターカー搭載のクレーンで下ろすだけに省力化されてある。
モーターカーのアウトリガ(転倒防止の足)を枕木に垂直に下し固定する。それを道場は確認する。
「アウトリガ固定よし!作業開始!」と、道場は言って定位置につく。深夜の駅に油圧の危機のエンジン音が響く中、長くクレーンのアームが伸びる。
「ほんなら回収する。」と、現場監督は言ってモーターカーへ乗り込む。それを鳥飼は補助する。
「道場君!フック下して!」と、鳥飼は無線で指示を出すと
「オオライ!」と、返事が入りフックがゆっくりと2両目に下される。
「吊り下げフック固定よし!引き上げろ!」と、現場監督が指示を無線で出すと、クレーンはゆっくりと発電機を釣り上げる。120度旋回し、所定の位置へ慎重に下す。1台設置には、おおよそ15分ほどであった。
「よっしゃ!この調子で、もう1つ設置しようか!」と、現場監督が言うと、
「せやなあ!ちょっとでも軽いほうが楽やもんなあ。」と、道場は言う。
「作業予定にも余裕があるし、2台目の設置場所は線路内だからなあ。」と、鳥飼は無線を入れる。
「津和野君、再度発進や!運転頼む!総員配置につけ!」と、熊山は指示の無線を全員に入れる。
「小郡、手歯止め配置よし!」
「鳥飼、誘導配置よし!」
「津和野、発進準備オオライ!」
それぞれが位置につくと、モーターカーを移動させる作業に入る。そして100mほど進んだ場所に停止し、作業に入る。
「もうイッチョやろか!」と、道場は無線を入れる。そしてモーターカーのクレーンで作業に入る。
「あと同時に、引き上げ準備もよろしく。手の空いているものは、たのんます!」と、熊山は無線を入れる。
「じゃあバリケード作業はやるわ!」と言って、丸刈り頭の作業員は現場監督と共に、始発に備える準備をする。
午前4時半に、この日行うすべての搬入が終了する。そして寝屋川車庫への帰還がこの日は困難なため、中書島駅の乗り越し分岐器のある留置線へ帰還し、この日の作業は終了となる。
「機材は全部定位置に入っているので、最終点検にこれから入る。津和野と小郡は、発進準備して。」と、熊山は無線で言うと
「もう機材は残ってないから、これから出発します。」と、津和野は無線で言うと、
「後部補機も準備はいるわ。」と、小郡も無線を入れる。
「せやなあ。助かるわ!」と、鳥飼も言う。そして線路内で鳥飼は、ブルーシートで予備機材に水がかからないようにする。
「ほんなら“おいとま“でんな!」と、現場監督が言う。
「ではあとはよろしく!あつかれしゃん!」と、熊山は言って現場監督へ返事をする。そして
「全員配置につけ!これから中書島へ戻る!」と、熊山は無線で言っていた。
「引き上げ機材の確認をして!クレーンはワイヤーで車両へ固定した!」と、道場は言う。
「全部積み込み済んでいるで!」と、小郡は無線をする。
「それでは、すぐに引き上げや!」と、鳥飼は言う。
「宇治線指令!宇治線指令!こちら木幡作業車両、引き上げに入ります!」と、津和野が無線連絡を指令にすると
「宇治線指令です。それでは中書島へ上り線を逆走して引き上げてください。線路封鎖手配完了しています。司令員川藤。」と、無線許可が下りる。
「それでは、発車します!」と、津和野が無線をする。
「総員配置!中書島へ引き上げ!」と、熊山が全員へ無線をして配置させる。
「後部補機は無動力でっせ!津和野君たのむね!」と、小郡は無線を入れる。
「オオライ!」と、津和野も返事を返す。そしてスロットルを開き、ゆっくりと荷台トロッコが空で軽くなった車両をエスコートして、早朝の京阪宇治線を逆走する。直線をフルスピードで走り抜け六地蔵駅のカーブを、速度を落としながら抜け、直線区間を再びフルスピードで走り抜ける。桃山南口駅に差し掛かるころ、空には朝の訪れがわかる色にうっすらと染まる。
「お!そろそろ日の出近いなあ。」と、熊山は言うと
「そうですねえ。」と、津和野はスロットルを握りながら答える。
「始発には何とか間に合ったなあ。このまま無事に中書島へ戻れそうだ。」と、熊山は言った。
そして行きに通った川沿いの線路をモーターカーは走り抜ける。緩やかな坂を抜け、観月橋駅を通過、急カーブをゆっくりと通過し、いよいよ中書島の4番ホームへ滑り込む。
「場内進行!中書島停車!」と、津和野が呼称する。クロス分岐器が切り替わり、車輪をきしませ、ホームへ入線する。
「今日の搬入、無事全部終わったなあ。」と、熊山は安堵の表情を示し無線をとる。
「せやなあ。ひやひやもんやわ!」と、道場も言う。
「津和野君、よくやったなあ!せやけどこの後、乗り越し分岐器のある留置線への搬入やなあ。」と、鳥飼は言う。
「そうですねえ。」と、津和野が答えると、
「じゃあ準備するわ!駅員も配置についているし!」と、鳥飼は言って分岐器の準備をする。
「俺もじゃあ支援するわ!」と、小郡は言った。
「あ!そのまま4番線の前にある待避線へ進んで!」と、駅長が駆け寄る。
「番線変更か!」と、鳥飼は言う。
「せやなあ。ほんなら鳥飼君は津和野君と共に行って、小郡君は手歯止めをしてね。」と、駅長は言う。
「オオライっす!」と、津和野は返事をする。
「じゃあ放送あったら発車して!」と、駅長はお願いした。
そして発車の放送が流れ、モーターカーをその留置線へ進める。
「識別点灯!入れ替え進行!」と、津和野は言ってスロットルを開き、ゆっくりと留置線へ進む。
「停目確認!減速!」と、津和野は呼称しブレーキを操作し減速する。そして停車位置にぴったりとモーターカーを停めた。
「やるやんか!ドンピシャ停車!おやっさん似やなあ!」と、鳥飼は駆け寄る。
「そうですかねえ?まあこれでも普通に操作しただけなので。」と、津和野は答えた。
「じゃあエンジン停止して、こっちは点検にはいるわ!」と、鳥飼が言うと
「それから手歯止めで電車がGO!せんようにするわ!」と、小郡も言う。
津和野は車両のブレーキを操作し、迷走防止の手ブレーキのハンドルを回し作動させる。一連の作業が終わり、最後に「手歯止め留置中」の車止め標識と車輪止めを、保線車両の宇治寄りの合流点付近に設置する。これで縦列停車が可能となり、搬入作業は終了となった。
「やっと終わりましたなあ。」と、鳥飼は言うと
「どうでんなあ。やれやれや!」と、熊山はタオルで汗を拭きながら言う。
「ほんまにここまでサクサク搬入できるとわね!」と、小郡は言うと
「そりゃ俺のクレーン頑張ったし!」と、道場は答える。
「まあ私も、正確な運転頑張ったし!」と、津和野が話すと
「新入りがここまでうまい運転するとわなあ。上出来やもん!」と、熊山は答えた。
そうしているうちに寝屋川へ帰る始発電車がやってくる。
「やっぱり夜間の保線で一番ええのは、この作業終了後の始発ですもんなあ。」と、小郡はヘルメットを脱いで抱えながら言う。
「そうそう!達成感あるもん!」と、道場は答える。
「作業終了して、引き上げの始発は達成感あるんよなあ!」と、熊山は言う。
「そうですね。」と、津和野は言うと、
「そしたら寝屋川車庫で引き継ぎして、搬入は終了や!」と、熊山は言った。
無事に搬入が終わりモーターカーの返却は翌日の深夜、第二班の社員が寝屋川車庫へ持ち帰った。そして津和野と小郡、鳥飼は、また在来線のマルタイ業務へ戻ることになる。季節は夏へ向かっている。季節特有の問題に対する作業もある。