Rail road girl! レールロードガール! 作:けいはんぐらし!
津和野はこの日より、再びマルチプルタイタンパー業務へ復帰することになった。朝9時から大阪の保線基地でのミーティングがある。
「お!在来線に新型のプラッサーのマルタイ来たんや。といっても納入はまだ先やけど。」と、朝出社して会議室前に居合わせた新宮が言っていた。雰囲気は感心した様子だった。
「そうですね。楽しみなのは楽しみです。」と、津和野が返すと、
「津和野君も近いうちに乗るんやなあ!ええなあ!」と、新宮は言った。
「あと前回の搬入は、何とか時間内に終わりました。」と、津和野が言うと、
「せやねんな。やっぱり君は、こっちがいいかも!」と、新宮は言う。
「え~!まだまだ半人前ですよ!マルタイは!運転はまあまあ上手だと思うのですが?」と、津和野の答えは控えめであった。すると
「おや~!控えめなんやなあ?」と、新宮は言った。その時に
「おっは~!」と、小郡は挨拶してくる。津和野が
「おはようございます。」と、挨拶を返すと
「今日のロリ服、イカしているやん!」と、小郡は言う。
「そうだねえ。まあ無理して買ったからね。まあ家に5着あるけど、これから少しずつ増やすよ。」と、津和野が言う。
「そうなんや!じゃあ君のファッションショーを、楽しみにしているわ!」と、小郡は言って会議室へ入る。
「おはようさん。久々やなあ。」と、糸魚川が言ってくる。
「おはようございます。そういえばそうですね。」と、津和野が言うと
「地下鉄は大変やったで!」と、糸魚川は答える。
「そうですねえ。mm単位でしたもの。」と、津和野が言うと
「せやせや!あれ本当に大変やった!」と、糸魚川は答えた。
「そろそろミーティングやなあ。」と、新宮は言う。そしてこの日のメンバーが、会議室に集まる。
「皆さんおはようございます。」と、入室してすぐに新宮は言う。
「おはようございます。」と、皆が答えると
「今回の勤務より、糸魚川君はマルタイ作業やなあ。」と、新宮は言うと
「そうですねえ。まあ鳥飼君は外れるみたいやけど、今回より津和野君と小郡君たちとチーム組むんやなあ。」と、糸魚川は言う。
「まあ今回の作業場所は、大阪環状線の天満~京橋間時計回りやなあ。マヤチャートを見る限り、沈下が激しいから、そろそろ作業が必要かと思う。今夜の終電後に搬入して4時間作業する。京橋駅北側の待避線に留置する。」と、新宮は言う。
「では車両は今どこへ置いているのですか?」と、小郡が質問すると、
「宮原車庫から新大阪駅に行く。そっから梅田貨物線を経由し西九条へ向かう。」と、新宮は答えた。
「どうして、それだけ遠回りしなければダメなんですか??燃料も時間もかかるのに??」と、津和野が尋ねると
「まあ線路閉鎖の関係上、大阪駅にある渡線は終電後しか使われへんねん!せやけど、行きしなに梅田貨物線を通れば時間が思ったより短縮され、当日も少しは作業ができるんや!」と、糸魚川は答える。
「せやで!でも大阪環状線の沈下は、思ったより進んでいる。電車がひっきりなしに通過する路線では、線路沈下も進む。鋼製車が多いとなおさらや!」と、新宮は言うと、
「103系や201系は鋼製で重いのに、ラッシュになると乗客の重量も加わるから、なおさらで重くなる。」と、糸魚川は言う。
「時間との勝負だなあ。特に夜間でも貨物列車がある路線だけに、遅延は許されないなあ。」と、津和野が言うと
「そやなあ。まあ津和野君は運転得意やし、その辺は問題ないけどね。」と、糸魚川は答えた。
「そんでこっちがテレビ会議で、JR西日本の保線部門の社員にも連絡しておくわ。」と、新宮は言った。
「鳥飼君が諸事情(出張)で抜けているから、やっぱり大変やなあ。まあ運転はうちがやるけど、後方と前方監視は、今回は共同になりそうや。」と、糸魚川は言う。
「せやせや!これ一番連絡が大変やねん。ミスったら重大事故になるからなあ。」と、新宮は言った。
作業予定の流れの説明が終わり昼食休憩となった。昼からはマルチプルタイタンパーの整備のために津和野と糸魚川は、作業着に着替えて点検作業している。
「おや~ガス欠やんか!こりゃ参ったなあ!出区前に給油せなあかんわ!」と、糸魚川は言う。
「そうですねえ。燃料ゲージも低いですね。」と、津和野が運転席で言う。
「この車両は、最大で1100L入る。でもあっという間に消費しちゃうんだよなあ。ディーゼル油大食いなんだ!」と、糸魚川は言う。
「食いしん坊なんだ!」と、津和野が返す。
「そやねん!でも新型は燃費がええんや!」と、糸魚川は答える。
「そうなんですか!」と、津和野が言うと、
「省エネモードやら、いろいろあるんや。」と、糸魚川は答える。
「そうなのか!時代はもうエコですからねえ。」と、津和野が言った。
「この車両は阪神大震災の時に輸入した車両だからねえ。だいぶボロくなっているよ。」と、糸魚川は言う。
「そうなのか!」と、津和野が言うと
「もうじき新車が来るから、それで置き換えかと思う。」と、糸魚川は答えた。
「世代交代ですね。」と、津和野が言うと、
「そやな。」と、糸魚川は答えた。
一通り点検が終わりる頃、一行は仮眠室へ向かう。
「今夜は久々のマルタイ作業やなあ。」と、糸魚川は津和野に絡む。
「そうですね。」と、彼女が答えると
「これからが大変や。今回は過密ダイヤの区間やからなあ。西九条を0:15の終電行ったらすぐ発車や!」と、糸魚川は言って、自分の部屋に入った。
21時に仮眠が終了し、着替えて準備をしてから遅め夕飯を社員食堂にてとる。
「お!津和野君は、がっつり行くんやなあ。」と、小郡が絡んできた。
「そうですねえ。腹ごしらえった大事だもん!」と、津和野が返すと
「せやなあ!わしらもそうやったけど、年は年やもんなあ。」と、糸魚川は答える。
「ほんで糸魚川さんは和食なんや!」と、小郡は言っている。
「こっちは、エビハンバーグですよ!ディナーはこうでなくっちゃ!」と、津和野が言うと
「いいっすね!」と、糸魚川は答える。
そして食事が済むと、車両センターに移動する。
「おや~こんばんわに~!」と、2名の作業員がいた。
「こんばんは。新京阪保線の糸魚川です。」
「お世話になります。同じく新京阪保線の津和野です。」
「小郡です。」
「今夜の前方監視の中島と申します。」と、中年の作業員が挨拶する、
「後方監視の中浜と申すわ!」と、30代前半の作業員も挨拶する。
「最終点検して、これより出区します。23時45分に新大阪へ入線し、機回ししたらすぐに西九条へ行きます。」と、糸魚川は言うと
「そうでんな!まあ踏切は1か所だけあるけど、特に変わりないから巡行速度で突っ切りゃええわ!」と、中島は言った。
「それは助かります。」と、津和野が言うと
「眠らへん路線やから、そんなもんや。」と、中浜は言う。
時刻になり、いよいよ出区し、新大阪駅の和歌山方面の特急が入るホームへ向かう。運転席に座るのは、津和野であった。
「識別点灯!出区位置まで微速進行!!」と、津和野は指さし呼称する。ブレーキを解除位置に入れ、スロットルを開き出場位置へ移動する。反対側の線路は、この日の運転を終えた「289系くろしお」が滑り込んできた。
「最終電車やなあ。」と、小郡は言うと、
「そやな!俺らの仕事の時間到来や!」と、中島は答えた。
「作業車、出区して新大阪駅へ向かってください。」と、指令より無線を受ける。
「識別点灯!出発よし!」と、津和野が言うと、ブレーキを解除しフルスロットルにノッチを入れホームへ向かう。
複雑に入り組む線路をぬけ、新大阪駅の11番線に入る。行先表示の電光掲示板には、「回送」と表示されている。速やかに向きを変え、無線指示を待つ。そうしている間にも、EF210牽引の貨物列車がものすごい速さ梅田貨物線の通過し、東京へ向けて走り去る。
「ここは過密ダイヤやねえ。」と、小郡が言うと
「そやねん。」と、中島は答えた。
「どうやら標準より遅延しているか、あれだけ爆走しているのか。」と、中浜は言う。
「荷役待ちじゃない?」と、中島は答えた。
「こちら環状線指令です。マルタイは0時ちょうどになり次第、西九条へ向かってください。線路閉鎖は30分間。」と、無線が入ると、
「0時ちょうど、出発オオライ」と、津和野が無線を返す。
「もう間もなくやなあ。」と、中島は言う。
「しかし環状線の終電って、おもろいんよなあ。平日より休日ダイヤのほうが遅いって。」と、中浜は言うと、
「そうなんですか。知らなかったです。」と、津和野が答える。
そうしている間にも、時計は0時ちょうどに差し掛かっていた。ホームには回送列車発車を知らせる放送が流れる。
「ほんなら出発やなあ。全員配置について!」と、糸魚川は言う。
来た方向と逆向きのエンドの運転台に津和野が座り、誘導員の中島が指示しながら運転する。
「出発進行!次駅西九条!」と、津和野は言って、フルスロットルにする。マルチプルタイタンパーは力強く加速する。
「場内異常なし!」と、中浜は確認する。
マルチプルタイタンパーは、ゆっくりとした速さで加速する。分岐器を抜け、アンダーパスをくぐり、カーブが続く東海道線と並行する梅田貨物線を走る。淀川の鉄橋を渡り東海道線より離れると、JRバスの車庫を横目に入る。カーブを抜けて、長い直線に入る。
「制限75!」と、中浜が言うと、
「オオライ!」と、津和野は呼称し、スロットルを開く。エンジンが力強い音を立てて深夜の繁華街梅田を抜けていく。再開発が進み、梅田貨物駅の跡地は赤いタワークレーンが並ぶ。それを横目に、マルタイは進む。制限55のカーブを抜け、一つ目の踏切を通過し、東海道・環状線のアンダーパスをくぐる。なにわ筋の踏切を通過する頃より制限解除する。
「制限解除!上りこう配!」と、中浜が言うと、
「フルスロットルで行きますよ!」と、津和野は呼称し、スロットルを全開にする。エンジンがものすごい音を立てて、排気口より黒煙を上げながら、大阪環状線と並行区間に入る。野田駅までの長い直線をフルスピードでマルタイは走ってゆく。
「津和野君は結構やるなあ。」と、糸魚川は後方のマテリアルワゴンで小郡らと話す。
「そうでんなあ。まあおやっさんもJR東日本の機関士やもんなあ。」と、小郡は言うと
「そやねえなあ。だからあれだけ運転がうまいのか!」と、中島は関心した様子であった。
野田を通過すると西九条が見えてくる。
「場内進行!西九条停車!制限40!」と、中浜は言うと
「制限40よし!」と、津和野が呼称しブレーキを操作し減速する。マルタイはエンジンブレーキがかかり速度が落ちる。そして桜島線のホームに入る。終電が終わったホームは、静けさがあった。
「お!保線車両やなあ。これ見たら遅おまで飲んだことになる。」と、ホームにいたサラリーマンがそうつぶやきながら改札へ向かった。
「線路閉鎖連絡の無線があり次第、大阪駅外回り環状線を進む。」と、糸魚川は言うと、
「オオライ!」と、皆が無線で連絡する。
運転台の向きを変え大阪駅方向へ進む。内回りの最終電車が入るのが見えるとき、出発の無線連絡が指令から来た。
「ほんなら、大阪駅へ向けて行くで!」と、糸魚川は無線で全員へ連絡する。
「出発よし!」と、中島が言う。小郡は指示を受けて、スロットルを開きマルタイを発車される。エンジンの力強い音を立てて、長い直線を進む。そして野田駅を通過し阪神高速神戸線の下をくぐり、しばらく走ると緩やかな右カーブになり、行きに通った梅田貨物線が下る場所を横目に入る。そして福島駅が見えてくる。阪神高速池田線の複雑な構造のインターチェンジ下をくぐり、カーブを抜け、いくつもの線路がある東海道線を横目に走ると、大阪駅の大屋根が見えてくる。
「もうじき大阪駅やなあ。」と、後方キャビンにいた中浜が言うと、
「そうですね。梅田は眠らない街ですね。」と、津和野が返す。
「大阪!一旦停車!」と、先頭キャビンの中浜は言うと、
「停車!」と、小郡は呼称しブレーキを操作し停車させる。ホームでは夜勤の駅員がヘルメットをかぶり誘導棒を持って立っている。
「停目確認!」と、小郡は言って駅員のいる位置にマルタイを停車させた。時刻は0時半ぐらいであった。
「運転お疲れ!これからやなあ!今日の作業場所!」と、糸魚川は言う。
「せやなあ。でも手ごわいと思う。コーナー連続区間やから。」と、小郡は答える。
そして糸魚川は後方キャビンに向かう。
「いよいよですね。糸魚川さん!」と、津和野が言うと、
「難易度の高い場所やから、せいぜいがんばるんやぞ!津和野君!」と、糸魚川は答える。
作業場所は近いようで遠いのが、今回の作業場所であった。そして大阪でも難易度が高い路線だけに、苦戦する路線でもあった。そして問題が起きるのは、誰もが予想していなかった。