サイト内初投稿。
 皆様の胸熱な小説に感化されて思わず執筆してしまいました。
 最後まで見ていって下さい。

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実況パワフルプロ野球13~甲子園の激突~

 熱気に当てられて陽炎が舞う、遠くからは響くセミの鳴き声。今年も暑い夏がやってきた。

 

 

 外観が清潔感漂う蔦で覆われた甲子園球場もその例外になく、夏を表現している。

 

 

 大勢の観客が今年の球場に向かって歩く。老若男女問わず、ただ全員の表情は期待で満ちていた。球場の場外では売り子たちが、場内から聞こえる音に負けじと声を上げている。

 

 

 選手たちは今年最後となる主審の宣言を今か今かと待ち望み、両サイドのスタンドからは球場を揺るがす吹奏楽の音や応援団の声が響いている。そしてバックネット裏には、大勢のカメラマンと新聞記者、スカウトマンが選手たちの様子を見定めている。最後にその視線は、腕に付けている時計に視線を落としている主審に向けられる。その主審が顔を上げると声高々に宣言した。

 

 

「集合!」

 

 

「「行くぞ!」」

 

 

「「「「「応!!」」」」」

 

 

 

 両チームのキャプテンがチームを引き連れて、ダイヤモンドの一角に綺麗に整列する。それを大声援と共に見守る一同。

 

 そして主審が一言あいさつし、チームのキャプテンがスポーツマンシップに則って手を交わし合うと、最終章の開幕を宣言した。

 

 場内で響く選手の気合の籠った掛け声、スタンドで鳴る吹奏楽と応援団の声援、観客の無機質ながらに叩きあうメガホンが響かせるように全てが重なった轟音の四重奏(カルテット)と共に最後の夏が幕を開ける。

 

 午後一時、初出場となる「パワフル高校」と前大会優勝校の「帝王実業高校」の対戦。

今年最後となる夏の甲子園の決勝戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両校0対0で拮抗したまま最終回を迎える。

 

 パワフル高校の選手たちが一斉に……出ない。状況にどよめきが走る。しかしそれを打ち消したのは、アナウンスの一声だった。

 

 パワフル高校ここで代わりに出るのは……。

 

 

 

―――9回表、守備の変更をお知らせ致します。ライトの佐々木に代わりまして、羽和(はわ)―――

 

 

 

「佐々木の代わりはパワプロ君の愛称で御馴染みの羽和だぁぁぁああああ!!! 去年の夏に肩を壊して選手生命を絶たれた彼は! 今年の夏、チームがこの場に返ってくることを信じた彼が! ここにきて満を持して登場だぁぁぁあ!!」

 

 ワァァァァァァアアアアアア!!!!!

 

 実況の待望の言葉に場内がさらにヒートアップする。選手とスタンドの歓声が球場を包む。それは、パワフル高校だけでなく、敵チームである帝王実業高校からも歓声が飛び交っていた。

 

 それに応えるように、八人の選手が勢い良くパワフル高校のベンチを飛び出し、遅れて新品のユニフォームを着た一人の選手がグラウンドに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(スタンドからの歓声、みんなの咆哮、灼熱の太陽。風に靡くバックスクリーンの国旗、グランドに立ち上る陽炎、ここにいる全員からの視線。甲子園の土のニオイ。昂ぶる高揚感。最終回のプレッシャー。

 一年前と光景は何一つ変わっていない。)

 

足裏に伝う懐かしい土の感覚は今でも覚えていて、この場にまた戻ってきたことで泣きそうになるのをなんとか堪える。ただ、感動だけは、抑えられなかった。

 

 

「あぁ、懐かしい。俺は帰ってきたんだ。今! この場に!」

 

 

 歩みを止めて後ろを振り返り、投手に戻れないから完全復活ではないが、全力のプレーを魅せるべく、俺はここにいる味方全員に壊していた肩を挙げた。

 

 それに返ってきたのは応援(パワプロコール)だ。一段と今日はみんなの歓声が温かく感じる。そしてマウンドでは全員が俺を迎えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりでやんす」

 

 

 

 

 マウンドに到着して真っ先に声をかけてくれたのは、愛嬌のある瓶底眼鏡の矢部くん。同じ日に入部届を出して以来の付き合いだ。

 

 これまでの三年間。矢部くんが中堅手でいてくれたことで外野の要が強化して中間を打たれることが極端に減った。

 

 打っては走る。投手(ピッチャー)が投げれば盗塁(はし)る。彼が決める時にチャンスを作り出してくれたことで勝てた試合は数知れない、最高の相棒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたぜぇ! パワプロ!」

 

 

 背中を叩きながら大声で迎えたのはここまでの試合全て先で出場している赤いライオンヘアの松田。

 

 気合の籠った一球は野手だけでなくチーム全員に興奮と闘志を魅せてくれた。パワ校随一の剛腕速球野郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~ぁ。先輩が戻ってきちゃったからボクの出番が減りそうだなぁ~」

 

 

 茶色のドレッドヘアーに近い癖毛が特徴の生意気少年、小枝。一々癇に障る言い方だが、これでも彼らしい迎え方というのはこの場にいる全員が理解している。

 

 投手、内、外野手でマルチに戦える武器はこの場においても異彩を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先パイ、遅いっスよ」

 

 

 金髪のガングロ肌で耳と鼻にピアスを付けている座子川。

 

 二年の夏の甲子園後に入部したという経歴だが、足の速さだけなら矢部くんに引けを取らないパワ校の走り屋。矢部くんに劣らずかなりの盗塁数を稼いでいる自慢の足で幾度となくこの大会でホームベースを踏破してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、これで揃ったな」

 

 

 クールで端的に述べたのは、大人しそうな緑の長髪と見た目とは裏腹に、シャープな視線と奥底から感じる熱い心(ハート)の持ち主、東條。

 

 今大会最多本塁打と最多得点を稼ぐ、パワ校の主砲。練習のパートナーであり、打者として尊敬できる選手であり、チームとして最高の選手。

 

 全員を見渡して、闘志を衰えない気合に背を奮わせる。全員で円陣を組み、雄叫びを上げた。

 

 

 

 

「みんな、待たせたな……。この大会、絶対勝つぞ!」

 

 

 

「「「「「「「「「応ッ!」」」」」」」」

 

 

 全員で鼓舞して気合注入する。それだけで会場が更にヒートアップする。

 

 そして全員が準備を整えて捕手がセカンドベースに送球し、打者がバッターボックスに入り、主審が九回表の始まりを宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――プレイッ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ストライク! バッターアウトッ!!―――

 

 

 

 

 

 

 変化球で甘いところを二者連続でヒット打たれるも二番打者を松田自慢のストレートで捻じ伏せて一死二、三塁。次の打者からクリーンナップが始まる。

 

(ナイスピッチ。これでこの回も切り抜けられそうだな……。

 しかし……嫌な場面で三番の猛田か。粘り強く大きい当たりは少ないものの最後には厳しいコースでも見事なバットコントロールでヒットを量産する選手だったな。

 変わらず壁は高いぜ)

 

 だからこそ、闘志が奮える。惜しむらくは自分がマウンドに立てていないことだが、今ここに立っているのだから、これ以上は望まない。

 

 投手の松田の球は九回で百球以上投げているのにいまだに衰えている様子はない。初球ストレートを投げたところで、猛田はボールの上を振って空振る。

 

(タッチアップの可能性として、ライトファールフライも考えておくか……)

 

 それを見て一度、中堅手を担う矢部くんに腕を振って合図。それを察した矢部くんは少しだけ右中間よりに守備を固める。

 

(流石だぜ、相棒!)

 

 右中間を矢部くんに預けることを決意。自分の守備位置をややライト線寄りに移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――カキーンッ―――

 

 

 

 

 

 

 

 二球目にして振り遅れたその球は、ライト線の上空に打ちあがる。あくまで予想していたことは現実となった。右打者の流し打ちによってキレる打球はファーストベースとライトポールの中間、若干ポール寄りのファールへと落球していく。

 

 通常の守備位置ならギリギリ間に合うかどうかの狭間だが、たとえ間に合ったとしてもタッチアップには間に合わないから見逃すという手も使う。しかし予測して守備位置の移動していた俺は見逃さない。落球予測位置より三メートル後方に移動した。

 

(スタート差しは捨てて、走者と全力勝負、か)

 

 猛田の打球が点に届く。打球を取ると決めた瞬間。九回表の、強いてはこの試合の勝ち負けの運命が確定した。

 

(走者を刺せたら俺の勝ち、刺せなかったら俺らの負け。分かりやすいなァ!)

 

 落ちてくるタイミングに合わせて、足を踏み込んで駈け出す。地点まで少しのところで左手に構える使い慣らした道具の相方である(グローブ)を右肩上部に構える。

 

 白球をグローブに収めると同時。

 

 

 

 

 

  三塁走者コーチがスタートの合図を出し

 

 

 

 

 

  走者は目視と聴力でスタートを切り

 

 

 

 

 

  野手全員は走者がスタートしたことを伝え

 

 

 

 

 

  捕手はボールを自分へと呼び込み

 

 

 

 

 

  右翼手は投球ステップを踏み

 

 

 

 

 

  一塁審は打者のアウトを宣言し

 

 

 

 

 

  打者は走りを止める

 

 

 

 

 

 

 それでも、会場全員の注目は一人の人物に集中した。

 

 捕球と同時に遠投ステップを踏み、収まった白球を右手に持ち変え、投手時の自慢だったコントロールと肩力を腕に伝導して、白球(しょうり)を指先にのせて放った。

 

 

 

「届けぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」

 

 

 

 勝利を願って放たれた白球は、線に近い緩やかなアーチを描いた。

 

 放たれた一球はキャッチャーミットを移動することなく、吸い込まれるように収まった。

 

 得点を狙ってスライディングしてきた走者を阻もうとベースを死守する捕手。

 

 滑り込む走者、行く手を阻む捕手。スライディングで立ち上る煙幕が両者の足元を舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――……アウトッ! アウトーーッ!! スリーアウト、チェンジッ!!―――

 

 

 

 走塁阻止成功した俺は、嬉しくてその場でガッツポーズを取った。駆け足でベンチに戻る。

 

 

「復活! パワプロ、完全復活! 唸るレーザービームがランナーを阻止したァァアア! 故障をものともしない送球は見事得点を阻止ッ! これでパワフル高校は一気に流れを引き寄せましたァ!」

 

 

 チームメイトから、監督から背中を叩かれ、頭を叩かれ、それぞれに荒々しい祝福を受け取る。

 

(これが、最後の、攻撃か……)

 

 遠くに見える、バックスクリーンに羅列されたゼロのスコアを眺め見た。

 

(どこも、厳しい戦いだったが、今日が一番厳しい戦いだ。ここで、決める!!)

 

 俺の打順は三席後、内心で熱い闘志を燃やしながらベンチへ足を戻した。

 

 得点を阻止することに成功したパワ校。拮抗した試合が今、閉幕へと動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二死。初回から衰えないノビとキレで打者を三振させて完全試合(パーフェクトゲーム)を決めている投手は……。

 

 

 

 

「待ってたぞ、パワプロ」

 

 

 

「わりぃ、待たせたな。友沢!」

 

 

 

 ドラフト一位確定と言われている、帝王最強の投手友沢。幼少時から共に同じ野球教室に通い、シニアで互いにエースを競い合った。高校は別々になったが早朝ランニングで稀に新聞配達している姿を見かける。そういう時は一緒に走り、極稀には一打席ずつ勝負する時もあった、誰よりも野球交流の深い友人で、俺の唯一無二の好敵手。

 

 去年までの大会での成績は四打席で二安打一本塁打。一年の時は手も足も出なかったが、去年でそれを清算する結果となった。

 

 以来、何かと競い合うことが増えたが、俺の怪我で競争は中止。次の舞台は甲子園でと決めていた。

 

 それが叶った今。友沢は投手として、俺は打者として、打倒すべき壁となった。

 

 以降話すことはなく、互いに投球、打撃フォームを構えた。

 

 初球。キャッチャーミットに向けて投げられたアウトローにノビのあるストレートをじっと見送る。

 

 

 

 

 

 

―――ストライークッ!―――

 

 

 

 

 バックスクリーンに叩きだされた球速は150km/h。おそらく自己最速なのだろう、それで場内は更にヒートアップ。ライトスタンドは盛り上がり、レフトスタンドは悲痛に叫ぶ。

 

 好敵手の成長に思わず、身が奮える。

 

(やっぱ、楽しいな……)

(あと、二球、か……)

 

 パワプロが身震いしていることはわかった。恐らく興奮でもしたんだろう。最後の打席というプレッシャーにも関わらず怖気づかなかったアイツに対して俺はあと二球しかない事を悔しがっていた。

 

(球速最速なんて、どうでもいい。真剣勝負だ。パワプロ!)

(安心しろよ。次はバットを振るからよ……)

 

 大きく振りかぶった右腕のオーバースローから、インローにストレートが放たれ、それを叩きつけるようにバットを振った。

 

 

 

 

 

 

―――カッキィーーン!!!―――

 

 

 

 

 快音を響かせてボールがレフト線上に飛躍した。ライトスタンドからはどよめきが、レフトスタンドからは歓声が。サードベンチからは思わず打球の方向を確認するため数人が飛び出していた。

 

(クッ! 打ち負けた!)

(タイミングは合わせられたかッ!)

 

 しかし打球を見送ることなく、二人はフォームに戻った。

 

(なぁ友沢。三年間、楽しかったか?)

(何を当たり前なことを。これが楽しくなかったら何が楽しいんだ?)

 

 高く上がったボールは最高頂点へ届く。

 

(本当にな。お前と最後に戦えて、本当に楽しいぜ!)

(サンキュー。最後に戦う相手がお前で良かった。でも、終わりだ)

 

 ボールは大きく左に反れて行く。

 

(あぁ。俺は三年間で培った力で、お前を超える!)

(後にも先にも、お前の先を行くのは、この俺だ!)

 

 打ち上げたボールは、レフトの応援席のスタンドへ運ばれた。

 

 

 

 

 

 

―――ファール!!―――

 

 

 

 

 三塁審のジャッジで両スタンドの声は落胆の声に変わった。

 

(俺はこの球で決める)

(何だろうと、お前の全力球を打ち返してやる!)

 

 二人を見ていたキャッチャーがサインを出さずにミットを構える。

 

「来い! 友沢!」

「パワプロ。これで最後だ!」

 

 握る白球に、バットに力を込めて。

 

 

 

 

 

 

  互いに、全力のストレートを、スイングを。

 

 

 

 

 

 

   振り返るは、自分を高めてくれたライバルたちへ。

 

 

 

 

 

 

   今まで戦ってきた数々のライバル校に。

 

 

 

 

 

 

   全力で答えてくれた選手全員へ。

 

 

 

 

 

 

   何よりも、最後の最後に応えてくれた。最強のライバルへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   最大級の感謝を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボールを当てられたバックスクリーンに、新しく1xの文字が追加された。

 

 

 

 俺はバットを放り出して、27.431メートル四方のダイヤモンドを悠々と歩き出した。

 




 初投稿です。

 皆様の胸熱な小説に感化されて思わず書き出してしまいました。

 内容は「実況パワフルプロ野球」シリーズの13です。

 ちなみに異様に間が広いのは作者の好みです。


 
 ☆野球技術☆


 スタート差し
   →キャッチのタイミングを遅らせて、打者のタッチアップフライングを誘う技術



 ☆世界観☆


 この世界の友沢は肘を壊していません。蛇島を出していないのも理由の一つにあります。



 ☆ネタ晴らし☆


 本作ですが、オープニングムービーに沿ってシナリオを書き起こしました。
 主人公の回想シーンですが、主軸をパワ校と帝王に置いたため、今回は涙ながらに友沢のストレートと共に見送りました……。
 野球チームの紹介は省いています。




さて、最後になりますが、今後の予定として。

・時系列無視での決勝戦シリーズ

を予定しています(投稿時未定)。

(例)

・パワプロ(打者)VS久遠ヒカル(投手)
・みずき&パワプロ(投手)VS世界編
・藤乃なつき(13シリーズヒロイン)に捧げる勝利編……
・その他。

という組み合わせのシナリオもみたい、という方。
どうぞ感想に送りつけてくださいませ~。

通常の感想も受け付けております。

また、他サイト(某小説家サイト)様でも小説を投稿しています。
よろしかったらそちらもどうぞ~。

ではまたどこか(又は感想欄)でお会いしませう。

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