我が第二の人生・・それは底辺から   作:光帝

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第五話 譲歩と依頼

 

俺は、追いかけてきたお嬢様を気絶させた。

方法は至ってシンプルだ。木の上からスライムボディプレスをかまして窒息寸前で意識をブラックアウトさせた。今は、窒息しないように顔の部分だけのぞかせるような形にしている。うーん、実にありふれたスライム的行動だと自分でも思う。

でも、殺したくないのだから仕方ない。死なれたら気分悪いし、何よりも利用するためには死なれたら非常に困る。

 

「お嬢様!!」

 

気絶した女を追って、武装した従者風の女が追いついてきた。

警戒度MAXだと言わんばかりにナイフを構えて俺を射殺さんとするように隙をうかがっている。だが、人質を取った俺の方が有利であるのに変化はない。

このままじわじわと追い詰めるのもありだろうが、ここは譲歩案を出すためにも交渉であろう。俺は考えを口に乗せる。

 

「武器を捨てろ!そうすれば命はとらない。」

「しゃべった?!スライムが」

 

ああ、やっぱり普通じゃないんだ。しゃべるの。

だが、言葉は通じるようなので好都合だ。転生前に聞いてた情報で種族によっては通じない例外もあると聞いてたので心配していたが、どうやら大丈夫なようだ。

もっとも、考えてみればこの前冒険者の声が普通に聞き取れて内容も理解できたから話す方でもおそらく大丈夫だとは思っていた。だが、ようやく確信が持てた。

 

「武器を捨ててこの場を去れ!そして、二度とここに来るな。そうすれば見逃す。だが、もしまた俺を狙いに来たら容赦しない。そして、その要求をのめないならばこの女を食う!」

「き、貴様!!」

 

正直、人を食うのはいやだ。だが、できなくはないはずである。スライムだから。

だが、俺の人間時の記憶がストップをかけてくれている。

それに、別の思惑も今回は含まれているのでこれでいいはずだ。

 

「後、10秒以内に決めろ。1、2・・」

「!待て、わかった。武装を解除する。だから」

「言ったはずだ。命までとる気はない。武器は俺の前に投げてよこせ。妙なマネはするなよ。後、鎧やアイテム類もだ。」

 

女は俺の言う通り、武装を解除してもくもくと俺の前においていく。それが確認されると俺は、女を解放した。ただし、体力を削っているのでしばらくは目を覚まさないだろう。

魔法を使われるのは厄介だから故の対処である。

 

「お嬢様!貴様、お嬢様に何を!!」

「気を失っているだけだ。後、少し疲れているようだから半日は目を覚まさないはずだ。だが、それ以外は問題ない。不安ならば治療院なりそれに類似する場所に運ぶことだ。」

 

俺の言葉を受けて従者風の女は足早に去っていった。さて、これでいろいろ試せる。

目の前には俺にとっての宝の山。盗品にあたるモノが山のように積まれていた。

 

 

 

一方、スティア救出が一応成功し治療院での検査を終えたバルティナは安堵の吐息を漏らしていた。

 

スティアが目を覚ますか不安であったため、すぐに森の外にある治療院に担ぎ込み、治療を依頼した。失った装備は侯爵家の必要経費で十分補填できるが、その愛娘は違う。

幸いにも、診断結果は過労と魔力枯渇とのことで命に別条なしとのことだ。

正直一安心である。だが、これでしばらくは家に閉じ込められることが確定した。

証は手に入らないし、期限まではもう猶予が無い。次の機会をうかがうしかないだろう。

恐らく一年は半ば軟禁に近い状況に置かれるはずだが、今の状況は必ず帝国の侯爵本家にも伝わる。言い逃れは不可能だ。

 

(お嬢さまは悔しがるだろうが、無事で何よりだった。しかし、あのスライムはなんだったんだ?我々と普通に意思疎通が取れた。)

 

バルティナとしては困惑の連続であった。

ゴブリンやオークなどの中には言語を理解する種もいると知られている。

だが、スライムは知性に乏しい存在だ。一説によれば現在の生体のルーツをたどるとスライムに辿りつくと言われるほど原種に近い存在であり、言語を解するほどの知識は無いはずである。なのに。

 

「怖いな。得体がしれない。」

 

そうぼやきながら、もう遭遇したくないとつくづくそう思う。

そんな時、治療院にさらに担ぎ込まれるものがいた。若い男だが、全身血まみれだ。

 

「血を流しすぎてる。すぐに治療魔法を!それとありったけの薬草とポーションをそろえてくれ。そこの君、手が空いてるならギルドに頼んで薬草を届けさせてくれ。」

「ギルドにですか?」

「薬屋の方はもう在庫が無いと先ほど連絡を受けてる。ギルドには依頼による在庫があるはずだ。」

「わかりました。それでは、お嬢様を頼みます。目を覚ましたら不在の理由を説明しておいてください。」

 

バルティナはそう言って治療院から飛び出していく。本当に忙しい日であると実感しつつも、命があるだけましなのだろうと思いなおすのであった。

 

 

 

そんな時、俺はさっそく鎧をムシャムシャと食っていた。

素材は『メビルラビットの皮』なるものを加工した物らしい。ここにはいない動物もしくはモンスターの皮を素材にしているようだ。

味はどちらかというと鶏肉だったのには驚いた。そっち方面の動物なのだろうか?

後、ナイフやら火打ち石、羊皮紙なんかも食してみた。その結果、条件解放こそなかったがスキルが追加されていた。

 

スキル『武器化(原子クラス限定)』というものだ。

なんのことかと思いさっそく試してみた。武器と聞いて咄嗟に斧をイメージしていたら触手の先端が斧状に変化した。色まで金属的に変わっている。

試しに木目掛けて振り下ろしてみると、見事に斧だった。木にはくっきり跡が残っている。

さらにステータスを確認するとSPの数値が3消費されていた。

 

「なるほど、一回の使用でSP値を3も消費か。燃費が悪い。」

 

そう言いながらも、いろいろ試してみる。クールタイムを入れて一日かけて分析したが、飛び道具などへの変化は無理だった。銃や弓矢への変化は想像しても無理。

さらに値が1回復するのに5分かかることも特定できた。武器化の持続時間は最大で5分程度。値の消費で継続は可能だった。現在のところでは、斧とナイフへの変化ができる。そして、気づいた。変化できたのは俺が捕食した武器だけだ。

 

(つまりは一度捕食した武器に変化させているということだろうか?)

 

だが、ゴブリンが持っていた弓矢も何度か捕食したことがある。

それでも変化できなかった。これは能力名の(原子クラス限定)とかいう部分が原因かもしれない。俺はそう結論づけた。だが、とにかくも新たなスキルの獲得である。

俺はいい気分のまま一角ラット狩りを再開するのだった。

現状はまだ未知数である『進化』を果たすために。

 

 

 

一方、冒険者ギルドでは新たな依頼が掲示板に張り出されている。

 

『依頼者:ラトロフ村長 内容:スライム討伐依頼 報酬:銅貨10枚』

 

ギルドの面々は首を傾けたものだ。

スライム自体の討伐依頼は多い。だが、大半は数減らしなので個数指定がなされることが多く、容易な依頼として知られているのだ。

 

「受付さん。なんですか、この依頼?」

「例の森で目撃されるようになった亜種らしきスライムを討伐してほしいそうです。なんでも、あれのせいで周りに狩りの対象がよって来なくなってきているからとか。」

「普通のスライムとの違いは?」

「現在のところは不明。ただ、知性があるという話も聞くので油断はしないようにとの警告をお願いしますとギルド長からも言われております。」

 

そのような会話が冒険者と受付でたびたび交わされることになった。

なお、不動がいる近辺には確かに村があるのだが、彼としては『村に余計なモンスターが来ないように』という半分親切心からだったのだが、それを知る由もない村人は害にしか思っていない。

そして、皮肉にも討伐依頼へと発展していることを当人は知らないのだった。

 

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