貧乏人がプロデューサーになったようです   作:ひもP

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プロローグ

 

 

 

訳ありアパート、家賃1万円なり。

 

全力でジャンプをしたら着地した瞬間に抜けて下の階に落下しまいそうな耐久性ゼロにも等しい床に、夏は蚊の地獄に冬は隙間風に体を震わせる事になるガタガタの窓。冷蔵庫などあるはずもなく、食事を作る際の材料はクーラーボックスへ直行。娯楽と言えば自前のスマートフォンか家を追い出された時に何とか死守できた21インチの液晶テレビくらいしかない。寝床はもちろん地べた。敷布団はなし、枕もなし。毛布をかけて寝るだけの簡易式睡眠である。自慢じゃあないが、俺はこのアパートに住んで約3ヶ月、まともに熟睡できた事はない。

一応社会人でやっていける歳ではあるが、学歴共に資格もうんこ並みなので雇ってくれる職場など、一攫千金を狙い上京したての東京にあるはずもなく、夜勤のコンビニバイトでどうにか首の皮を繋いでいる状態だ。夢破れたりである。そして追い打ちを仕掛けるように、現実は非情である。給料の半分以上は借金の返済にあてられているのだった。俺が負った借金じゃないよ。俺を見捨てた上に闇金から借りたのは紛れもなく血の繋がった両親だよ。闇金だから利息も半端ない。借金は残り1600万。はは、笑えねぇ。

 

(あー、死にてぇ)

 

季節は春。時刻は午前7時半。俺は夜勤から帰宅して、ジャージ姿でカーテンで閉め切ったくそボロいアパートの中で大の字になって寝転がっていた。今までのあらすじみたく、現在に至るまでの過程を思い返してみたら軽い鬱気分に陥った。親に借金押しつけられて捨てられるわ、闇金の取り立てで臓器売買されそうになるわ(家を売るアンド家具全部買い取りで臓物バザーは免れたが)、闇金の方から言われた通り一攫千金を胸に秘め東京へ来たものの、現実は甘くないゾ☆ と言わんばかりに世間の皆様から顔面グーパンチを精神的に頂くわで散々な人生である。

 

(いっそマジに臓器売るか? 結婚とか叶わぬ夢だしタマキンの一つくらい……)

 

……はっ!?

いやいやいや! ダメだダメだ何考えてんだ俺はいくら金に困っているからってそれを売ったら色々と終わってしまう!

今日の昼に給料が振り込まれるんだ、それまで何とか邪念を取っ払って取っ払って‼︎

 

「そうだ、テレビ見よう!」

 

電気代がもったいないが余計な考えをして取り返しがつかなくなるよりかはマシだ。俺は半身を起こして床に転がっていたリモコンを拾い電源を入れる。

朝のニュース番組がやっていた。ゲストとして今話題のアイドルが出演している。どうやらCDのお披露目会的な催しをするらしい。

 

『それでは、話題のカリスマ女子高生、城ヶ崎美嘉さんによる「お願い! シンデレラ」です。どうぞ』

 

アナウンサーが合図をすると同時に場面が切り替わり、城ヶ崎美嘉ちゃんにスポットライトが当たって曲の前奏が流れ始める。

うむ、やっぱり可愛いな美嘉ちゃん。このスタイルで女子高生はすげぇわ。

しみじみと頷きながら、俺は曲を聴いていた。

 

「お願いしたいのは俺の方だよシンデレラ」

 

ほんと、何かの奇跡が起きてチャラにならないだろうか借金。ほら、シンデレラストーリー的な。

まあ、ないわな。都合が良すぎるか。

とりあえず、12時まで寝て待つとしよう。俺は美嘉ちゃんの曲を聴き終えてからテレビを消して、再び横になった。

 

 

 

朝飯は抜き。12時になる10分前にアパートを飛び出して俺は渋谷の街にある銀行へと旅立った。嬉しい事に、給料はかなり振り込まれていた。夜勤アンド週6のシフトだったからな。働いた甲斐があったというものだ。家賃、水道ガス電気代その他諸々を支払っても15万のおつりが返ってくる素晴らしさ。闇金さんには10万手渡しても5万も残る!

 

「今日のお昼はご馳走にしよう」

 

牛丼屋行くぞ牛丼屋。

久しぶりに道端のキノコとか雑草の炒めもの料理から解放される。俺は浮き足立ってるんるんと歩き出した。渋谷の街中でジャージ姿+スキップはさすがに不審者として見られてしまうのか、道行く人々の目線が突き刺さるが気にしないぜ。俺は最高に良い気分だった。

なのに。

ドン! と、前方から走ってきたマスク男とぶつかって転びかける。

 

「いって! メッチャ痛い!」

 

意外とダメージを受けた。肩を抑える。文句の一つくらい言ってやろうかと思ったものの、当の激突ミサイル男はすでに走り去っていた。全力全開の猛スピードだった。男の背中が見る見るうちに遠ざかる。ちくしょう、何だったんだ。忌々しげに舌を鳴らしたら、またもや前方から人が走ってきてぶつかってしまう。相手は制服を着た女の子だったので転ぶ事はなかったが、例の激突ミサイル少女が衝撃に負けて尻餅をついていた。

 

「おい、大丈夫?」

「……っ! 平気!」

 

差し伸べた手は握らず、自力で起き上がる黒髪の女の子。うへー、素っ気ないなあ。ちょっと傷ついたぞ。

「というか、アンタこっちに走ってきた男見なかった⁉︎」

切羽詰まっているのか、睨みを効かせるようにこちらを眺めて黒髪の女の子が問いかけてくる。

俺は後方を指差して、

 

「たぶんあっちに行ったと思うよ」

「そう、ありがとう」

「何かあったの?」

「引ったくり! 私急いでるから!」

 

びゅーん! と、少女が嵐のように去って行く。つか学生が平日の昼間に何しとるねん……しかも引ったくりに遭うとは、ご愁傷様。俺は心の中で合掌しつつ左手の給料袋を握りしめた。

握りしめた。

握りしめ、た。

……………………、……………………………………。

 

 

「……あれ、ない?」

 

確かめるために左手を前にやる。

ない。

給料袋が、ない!

えっ、ちょ、何で⁉︎ どこかに置き忘れた? いやあり得ない、さっきまで持っていたはずだ!

だったら何故なくなっている?

俺は、先ほどの黒髪の女の子の言葉を思い返していた。

引ったくり。

……そういや、引ったくり犯にぶつかられたなぁ俺。

…………。

 

 

「あんのクソ野郎! やりやがったな!」

 

回れ右して全力スタートダッシュ。俺はかつてないスピードで走り始める。

闇金さんにお金まだ返してないのに給料袋をなくしたらヤバい! 終わる! 人生!

 

「待てやゴラァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

叫びながら走る。ひたすら走って走って走ると、数10秒もしないうちに黒髪の女の子に追いついた。前には8メートルくらい先に例の引ったくり犯もいる。

彼女は並走する形になった俺を二度見すると、驚愕したのかこう言ってきた。

 

「ちょ、アンタ何やってるの⁉︎」

「引ったくり! 俺もやられた!」

「う、嘘でしょ……?」

「嘘ついてまで徒競走やるか! 15万持ってかれたんだよ! あれないと死ぬの! マジで!!」

「……カバンやられた私よりひどいって、アンタ運ないね……」

 

うるせーばか。

そんな言葉を吐き捨てて体力を消費するくらいなら走った方が良い。俺はさらにアクセルを全開にして足を動かす。

残り5メートル。

まだまだアクセルを踏む。

残り1メートル。

黒髪の女の子は俺の後ろ。引ったくり犯はすぐ目の前。

俺は歯を食いしばって、アスファルトを蹴った。ジャンプである。そして引ったくり犯の腰を抱え込むように両腕で捉え、体重を前へとかけると滑るように地面を転がった。

 

「捕まえたぞこのクソ野郎!」

 

馬乗りになって、俺は顔面蒼白気味の引ったくり犯の胸ぐらを掴んだ。

顔を近づける。

 

「さあ、俺の給料袋を返してもらおうか……」

「ちょ、やっと追いついた……」

 

黒髪の女の子が俺の横までやってきて、両膝に手をつけて呼吸を整えている。引ったくり犯の肩には学生カバンが引っさげられていて、右手には俺の給料袋が握りしめられていた。

 

「か、勘弁してくれ!」

 

と、ギャラリーが集まる中で引ったくり犯が声を震わせながら叫んだ。

 

「会社をクビになって、お金がなくて、家族も養わなきゃいけないんだ!」

「だから見逃せってか? アホかお前。こちとら2000万の借金押しつけられたあげく親に捨てられたんだ! 三年経ってようやく1600万だぞ、その給料袋をはいどうぞって手渡した日にゃもうゲームオーバー確定なんだよ分かったかあァン⁉︎」

「ひっ……」

 

うわあ、という同情の目を黒髪の女の子とギャラリーから頂いた。

俺は邪悪に笑いながら、

 

「それとも何か、テメェが俺の代わりに闇金とこ行って臓器売ってくれんの?」

「か、返します! すんませんしたァ!」

 

突き出された給料袋を搔っ払い、俺はジャージの懐に仕舞う。ついでに黒髪の女の子のカバンも奪って立ち上がり、何となくムカついたので引ったくり犯の横っ腹に蹴りを一撃入れてからスマホで警察に通報した。ギャラリーがまばらに去っていく中で、引ったくり犯を足裏で縫い付けるように踏みつけて逃げ出さないよう抑え込みながら、俺はスマホをポケットに突っ込んで少女にカバンを投げ渡す。

 

「ほら、返すよ」

「わっ……」

 

両手でカバンを受け止める黒髪の女の子。

 

「もう取られんなよ」

「アンタもね。……ありがと」

「礼ならいらない、現金くれるなら別だけど」

 

何言ってんだこいつ、といった風に黒髪の女の子がかすかに笑ったような気がした。

 

「ねぇ、アンタ名前は?」

 

と、唐突に女の子が聞いてくる。名前なんて知られても別に困らないので、俺は即答した。

 

「芹岡。お前は?」

「渋谷凛。……本当に、今日はありがとうね」

 

軽く頭を下げて、渋谷凛ちゃんが感謝の態度を示す。

俺は指を鳴らしてこう答えた。

 

「いいって事よ。貧乏人はつえーからな!」

 

そう言って、俺は笑った。

 

 

 

あの後、引ったくり犯を警察に明け渡して数時間の事情聴取ののちにようやく解放されたので、近場の牛丼屋で空腹を満たすために俺は再び渋谷の街中を歩いていた。凛ちゃんは警察がやってくる前に現場から離れさせた。何分、事情聴取は時間がかかるからな。学生の彼女に無駄な時間を使わせるのは酷というものだろう。

(借金の取り立ては夜の7時だから、それまでに帰れば良いか)

パチンコ屋とかを見ると現金を増やしたい気持ちになってしまうが、実際に実行すれば泥沼にハマるのは確定なのでパス。素直に牛丼屋を探す。

 

「……お? おーい、まさかお前、芹岡か?」

 

声をかけられた。何だよもう、と面倒くさげに振り返ると、黒いスーツに身を包んだ青年が近づいてくるところだった。

ん? こいつは、確か……。

 

「おまっ、小鳥遊か⁉︎」

「やっぱり芹岡か! 久しぶりだな!」

 

こいつは、俺の知り合い……というか学生時代の親友だ。高校を出た後、東京に上京したというのは知っていたが……再会するとは夢にも思わなかった。連絡を取ろうにも、うちは貧乏で携帯電話を契約するほど余裕はなかったし、色々事情もあって俺は高校を中退していたからだ。

 

「7年ぶりくらいか。変わってねぇなあ芹岡」

「お前はずいぶん変わってしまいましたね」

「は? ……って、あぁ、これの事か」

 

小鳥遊が黒いスーツに目をやる。

 

「俺、プロデューサーやってんだよ」

「プロデューサーって、あの芸能関係の?」

「おう。今は外回りで出てたんだ、で偶然お前を見かけたって訳」

 

なるほど。

……すげえな小鳥遊、プロデューサーなのか。

超エリートじゃん。

 

「よかったら喫茶店にでも入らないか? 積もる話とかあるしさ」

「仕事中じゃないのか?」

「終わったよ。担当アイドルを待ってるとこだから、その子も同伴する事になるけど大丈夫か?」

「別に構わねえけど」

 

担当アイドル、って事はアイドル事務所属席か。ますますエリートじゃねぇか。

比べて俺はなんだ、夜勤のコンビニアルバイト?

比べるのもおこがましい。

 

「ごめんごめん★プロデューサー待ったー?」

 

自己嫌悪に陥っていると、小鳥遊が言っていた担当のアイドルが大きなビルの入り口からやって来た。深く被った帽子の中からは、桃色の髪が見える。露出度の高い服は、ひょっとして今の流行りなのだろうか。分からんが。

 

「いや、待ってないよ。むしろ昔の友人と再会して喜んでいたところだ」

「友達?」

 

小鳥遊の担当アイドルの顔が、こちらに向く。

ん? この子、最近見かけたような気がするんだが。

 

「あぁ、疑問いっぱいって顔だな芹岡」

 

あたり前だろ馬鹿野郎。

小鳥遊はおかしそうに笑い、それからこう告げてきた。

 

「紹介するよ。俺の担当アイドル、城ヶ崎美嘉だ」

「よろしく★プロデューサーのお友達さん」

 

城ヶ崎、美嘉?

…………。

 

 

「はあァァァあああああああああああ⁉︎」

 

直後に、俺の雄叫びが渋谷の街で炸裂した。

 

 

 

「城ヶ崎美嘉、城ヶ崎美嘉ねぇ……」

 

喫茶店。向かいに座っている小鳥遊と話題のアイドルを交互に見渡しながら、俺はケーキをフォークで突っつきつつ呟く。あの有名人、城ヶ崎美嘉が目の前にいて、親友の担当アイドルときたもんだ。ぶっちゃけ、喫茶店に入って1時間経ったけど未だに現実味がない。

 

「もう、芹岡ちゃんさっきからそればっかり。そんなにびっくりしたかな?」

 

美嘉ちゃんが、にししと笑みを浮かべながら問うてくる。

かわいい。

 

「かわいい」

「……へ?」

「テレビで見るよりもずっとかわいい」

「……あ、ありがと芹岡ちゃん★」

「おい、俺の担当アイドル口説くなお馬鹿」

 

口説いてねーよ。あとお馬鹿じゃねぇ。

だってさだってさ、ほんとにかわいいんだから仕方ないだろ。俺、初めて見たよこんなにかわいい女の子。凛ちゃんもかわいかったけど。てか東京の女子レベル高くね? 今まで自分の事でいっぱいいっぱいだったから、周りとか良く見てなかったけど東京の女子レベル高くね⁉︎

と何とか思いながら、俺は「スマホ出して」と小鳥遊に言われたので懐から取り出して渡した。小鳥遊は自分のスマホと俺のスマホをいじりながら、

 

「アドレス交換っと」

「ほい、ほい★アタシも完了、と」

「おい美嘉、アイドルなんだから軽々しく交換すんな。しかもプロデューサーの目の前で」

「いいじゃんいいじゃん、これも何かの縁って事でさ☆」

 

がみがみ、とお説教をするプロデューサー小鳥遊くんを上手い事かわす美嘉ちゃん。

さりげに大人気アイドルのメールアドレスゲットである。

呆気に取られたまま、俺はスマホを仕舞い込む。

 

「ったく、アイドルなんだから美嘉は……」

「分かってるって。というか芹岡ちゃんだからアドレス交換したんだよ? 良い人っぽいし!」

「まあ、良いヤツなのはその通りだが。……いいか、芹岡だし。間違いも起こさないだろうしな」

 

間違いって何やねん。

ケーキのイチゴをフォークでぶっ刺して、俺は口の中に放り込む。

てか流行りの服装である美嘉ちゃんにスーツの小鳥遊の中にジャージの俺場違いじゃね?

 

「で、芹岡は今何の仕事をしてんの?」

 

コーヒー入りのマグカップを手にして、小鳥遊が聞いてくる。

 

「言いたくねぇ」

「何でさ」

「自分の情けなさを実感して死にたくなるから」

「はは、なんだよそりゃ」

 

子供のように笑い、小鳥遊がコーヒーに口をつける。美嘉ちゃんはスマホの画面を眺めていた。友人とSNSでもしているのだろうか。

 

「……大丈夫か? 芹岡」

 

何が、と俺が言う前に小鳥遊が呟く。

 

「心なしか、疲れてるように見えてさ。あと目が死んでる気がする」

 

目が死んでる、か。

給料はスケジュール詰めなきゃロクに貰えず、さらには借金まで抱えて手元に残る金額はわずか。未来なんて見えず、俺は今を生きるので精一杯だ。

だから、目が死んでいても何ら不思議ではない。疲労で倒れたりしたが、金がかかるからと病院にも行かなかったし、いつ死んだっておかしくはない状況だろう。

 

「……芹岡ちゃん?」

 

ぼーっとしている俺を気にしてくれたのか、美嘉ちゃんが声をかけてくれる。

俺は何も答えなかった。答えられなかった。

 

「……、」

 

小鳥遊がマグカップをテーブルに置いて、沈黙していた。何かを考えているのか、顎に手をやって目を瞑っている。しばらくすると考えがまとまったのか、やがて意を決したように目を見開いて彼は言い放った。

 

「芹岡、お前プロデューサーに興味はないか?」

 

俺は多分、目を点にして首を傾げていたと思う。

 

「あ! プロデューサー、あの話だよね?」

「そうそう、あの話だ」

「あの話? ???」

 

クエスチョンマークを浮かべまくる俺に、美嘉ちゃんと顔を見合わせてから小鳥遊が続けた。

 

「うちの芸能事務所、346プロダクションと言ってな。会社ん中で各事務所を構えてアイドルを育てるって方針なんだ。だが、最近手が足りなくてな……専務から、優秀な人材がいるなら声をかけてみてほしいって言われてたんだよ」

「それが俺?」

 

うんうん、と小鳥遊が頷く。

ちょっと待て。

 

「優秀って、俺はそんなご大層な人間じゃあないぜ? 知っての通り、高校は中退してて学歴は使えないものでしかない。今だって、コンビニでバイトをするのがやっとなんだ。なのに」

「けどさ、芹岡って中学でイベントとかあった時は率先して企画とか練っていただろう?」

 

まあ、イベントとか祭りは大好きだったしな……ワイワイと騒ぐの楽しいし。

それが、どうした?

 

「コミニュケーション能力も高いし口も回る、頭の回転も、悪知恵の方向だが早い。お前の能力はプロデューサーとして生かすべきだと俺は思うんだ」

「……、」

 

黙って、俺は小鳥遊の話を聞いていた。芸能事務所のプロデューサー、か。確かにこいつの言う通り、俺は自己評価でしかないがコミニュケーション能力は高い方だと思うし、闇金を相手にしているので昔よりかは口も回る。悪知恵だって良く思いつく。

 

「もちろん、面接は受けてもらうぞ。学歴は問わない、とにかくプロデューサー向きであるかどうか見極めるための面接だ」

 

と、小鳥遊は名刺を胸ポケットから取り出して、

 

「プロデューサーになる気はないか、芹岡」

 

……コンビニのアルバイトかプロデューサー。

どちらを取れば良いのかは明白で、どちらが明るい未来を迎えられるのかは火を見るよりも明らかだ。さらに俺にはもう先がない。どう転んだって破滅だ。

そもそも、俺は何のために東京へやって来た?

一攫千金のチャンスを掴むためだろう。

であれば。

選択肢なんて二つに一つでしかない。

 

「……分かった、やってみるよ」

 

俺は、小鳥遊の名刺を受け取る。

 

「誘った俺が言うのもなんだが、楽な道じゃないぞ」

「少なくとも今よりマシだ」

「心が折れそうになる事だってたくさんある」

「だろうな。だけど、」

 

俺は。

にやりと邪悪に笑って、挑むように言い放つ。

 

「貧乏人をなめるなよ。底辺見てる分こっちは簡単にくたばるようなたまじゃねーぞ」

 

こうして。

俺はプロデューサーとしての階段を上る事になったのだった。

 

 

 




導入部分です。

モバマスとデレステをごっちゃにしたような世界観で、いわゆるアニデレとは別世界のifです。一応武内Pや美城専務も出てきます。

感想、質問、誤字脱字の指摘などお待ちしておりますので良かったらそちらの方もお願いします。
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