東方Project ~異形の玄武が幻想入り~ 作:フジパンホンジコミ
秋姉妹と別れたあと、あかり達は『妖怪の山』の麓より少し進んだ森の中を飛行していた。
「霊夢ちゃん、ほんとに容赦ないわね。」
あかりは地面に倒れふしてボロボロになって気絶している妖怪たちを見ながらつぶやいた。
3人は倒れ伏している妖怪にお気の毒と思いながら先を急いだ。
あれから4、5分が経ち若干森の雰囲気が変わり始めてきた時に雷牙が口を開きこうつぶやいた。
「なんだか嫌な予感がするな。」
「ちょっとやめてよあなたがそういう時に限って本当に起こるんだからね。」
「でも雷牙がいうのも頷けるぞここら辺なんか辛気臭い感じが漂ってるぜ。」
「言われてみれば確かに・・・」
「安全が確認できるまで進むのはよそう。」
雷牙の提案を受け入れた2人は頷き、3人はその場で停止した。
3人は目を閉じ感覚を研ぎ澄ませ辺りを探ってみるとまるで納豆のようなネットリとする陰湿な気配があたり一面に広がっていた。
「うわぁここまで酷いもん見たの初めてだぜ。」
「・・・相当広がってはいるが害意はないみたいだ。」
「なんだろうねこの陰湿な気配・・・」
「おいこの気配森の奥からにじみ出てんぞ。」
大介はその方向を指差した。
3人は顔を見合わせその方向目指して飛行していった。
すると緑の髪をした女性がくるくると回りながら現れた。
しかも陰湿な気配を放つ靄のようなものを纏って。
「こんにちは。」
緑の髪の女性が挨拶をしてきたのでこちらもこんにちはと挨拶を返した。
「あなたたちは確か新聞に載っていた守護神様たちですよね。」
「ええそうよ。」
「悪いことは言いませんこれ以上ここから先に進むことはお勧めできません。」
「それはできんなこちらも依頼で動いているんだ邪魔をするんだったら容赦はしないぜ。」
そう言って大介は相手に向かって一歩踏み出したとたん横からいきなり大木が倒れてきた。
大介は少々驚いたがすぐにその大木を破壊した。
「いきなりとはいい度胸だな。」
大介は指の関節をパキパキと鳴らしたあと、その女性めがけて走り出した。
しかし女性に近づいていくごとに木が倒れてくるのはもちろんのこと、イモムシや木の実などが上から降ってくるなどのことが大介に起こっていた。
それに合わせるようにその女性からも弾幕が放たれ、大介に襲いかかってきた。
大介は両腕を駆使して払いのけ木やイモムシを払い除け、弾幕に対しては能力を駆使して地面の土を隆起させて壁を作るなどして防いでいた。
隆起させた地面の影に隠れた大介は地中へと潜り、相手へと迫っていった。
女性は大介が一向に土の壁から出てこないことに不思議に思い様子を見ていた。
しかし突如後ろからボコンという音がし、後ろを振り返ると―――
地面から飛び出し拳を振り上げる大介の姿が目に映った。
女性は目を見開いて驚いたが直ぐに彼女は自身を回転させ弾幕を放ち始めた。
大介は顔をしかめ、その場から弾幕を避けながら後方へと下がった。
「そう簡単に攻撃はさせてくれないってことか。」
「まさか地面を潜ってくるとは思いませんでした。それでしたら。」
女性は体を中に浮かせ、スペルカードを発動させた。
「厄符『厄神様のバイオリズム』。」
「かなり濃ゆい弾幕だな。だがそう簡単に行かねえぜ。」
大介は片手を地面に向けると地面の一部が隆起し始め、それを鞭のようにしならせて弾幕を破壊していく。
時間が経つにつれて女性の放つ弾幕は徐々に土の鞭に押され始め、ついにはを突破を許してしまう。
女性はそれを見て弾幕を撃つのをやめ、森の上空へと避難した。
しかし大介があとを追ってこないことに気づいた女性は地上に顔を向けた。
すると地上に立ったままの大介がそこにいるのが見えた。
「(もしかして彼は飛べないのかしら。なら上空から攻撃していけばこちらにも勝機がある)疵痕『壊されたお守り』」
地上に向けて弾幕を打ち始める女性。
大介は迫り来る弾幕を土の鞭で打ち落とすがさすがに先ほどよりも弾幕が多いいため、今度はサーフィンするように地面を滑りながら交わしていく。
女性は弾幕を撃ち続けるが大介の動きが早くて捉えきれずにいた。
そうしていたらスペルカードの有効時間が過ぎ攻略されてしまった。
その隙をつき大介は女性目掛け赤色の弾幕を放つ。負けじと女性も通常の弾幕を放ち応戦する。
激しい攻防が続くがやはり戦闘経験の差から徐々に女性の方が押され始めた。
「俺も一つ言ってみますか地神『尖鋭奇岩』!!!」
大介が地面に手をつけると地面から槍のような形をした岩が出現し女性めがけて発射された。
女性は発射された岩の弾幕に向けて地震の弾幕を放つが岩の弾幕は異常に固く2、3発の弾幕が当たってようやく罅が入るくらいであった。
そのため女性は必死の思いで避ける。
しかし上空へと消えていった弾幕が自重によって上から落ちてくるため上と下を気にしなくてはいけなくなってしまい体のあちこちに傷が出来てしまっていた。
なんとか大介のスペルカードを傷を負いながらも攻略した女性は苦しい顔をしながら大介を見ていた。
「(やっぱり実力に差がありすぎる・・・これが守護神クラスの神の力・・・)」
女性は大介の強さに若干恐怖にとらわれ、震え始めた。
「俺が怖いか?」
「っ!?」
「だろうな、君も神だから余計に実力差を感じてる・・・そうだろ。」
「よく・・・わかりましたね。」
「そりゃ俺たちを鍛えてくれた人はこの世で一番すごい人だからな。それぐらいわからないとな。」
ニッと笑う大介。
その表情を見た女性は震えるのも忘れ顔を赤くした。
「大丈夫か、顔が赤いぞ?」
「だ、大丈夫ですから気にしないでください////」
「ならいいけど。」
女性はふぅと息を吐くとあることに気づいた。
先程まで震えていたが今はその感覚がない。
どうしてだろうと思ったが今は気にしないことにした。
「一ついいかい。」
「なんでしょうか。」
「君はなんでここから先に通したくないんだ?」
「一応私ものこの山に住まわせてもらっていますからそれなりには天狗さん達の手助けを買って出ているんです。」
「なるほどね。」
「私からもよろしいでしょうか。」
「ああいいぞ。」
「依頼とおっしゃっていましたがどのような依頼なのですか?」
「『守矢神社』を見つけてそこの神様2柱を捉えろって依頼を受けたんだ。」
「そちらの事情もわかりました。」
「なら『ですがただで通すことはできません』・・・理由を聞こうか。」
「やはり勝負の最中ですからあなたがたが勝てばここを通ってください。」
「負けたらどうすればいい?」
「そうですね私の頼み事を聞いてください。それが終わり次第上へと向かって構いません。」
「どのみち上にいけるんなら戦わなくても良かったんじゃねぇの?」
「それはご都合主義ということで。」
笑いながらそう答えり女性にあははと苦笑いをする大介。
しかしすぐに表情を変え、拳を構える。
「まあ今の君の状況から見てスペルカードはあと一枚ってところが、霊力ももう残り少ないんだろう。」
「それもバレていましたか。でもだからといって手加減は致しません。」
「そりゃそうだろ手加減されても面白くないしな。・・・そうだあんた名前は?」
「鍵山 雛です。」
「雛か・・・いい名前だな。」
二人はスペルカードを構え、発動させた。
「創符『流刑人形』!!!」
「地の神槍『波羅護吽』!!!」
全方位に放たれる弾幕と黄金色に光る槍が中央でぶつかり合い、辺りは光に包まれた。
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―――――――
―――
「やはり勝てませんでした。」
ボロボロになった状態で地面にペタンと座り込んでいる雛。
でもその顔は悔しそうな表情ではなく、すっきりした表情をしていた。
「私の役目は終わりました。どうぞ先に進んでください。」
「そこまでボロボロにしておいてそのまま進めるわけないってーの。後味悪すぎて気になっちまうよ。」
「しかし・・・」
「それにほかの二人が既に先に進んでるからな心配いらない。」
「い、いつの間に・・・」
頬を引きつらせながら雛は大介に問う。
「俺らが弾幕ごっこしている間に。」
「・・・」
「それより腕だしな。」
雛は素直に腕を出し、大介から手当を受けた。
「そういや聞かなかったが一体何の神なんだ雛は?」
「厄神です。」
「厄神・・・道理で俺に厄い事が起きていたわけか・・・」
「すみません。でも今はなぜ大丈夫なんですか?」
「さっき俺の使ったスペカをくらっただろ。」
「ええ。」
「あのスペカはなただダメージを与えるだけじゃなくてだな負の念などを浄化させることができるんだ。」
「ということは。」
「雛の集めていた厄も綺麗さっぱり浄化されたんだ。うまくいくかどうかわからんかったがな。」
あははと笑いながら言う大介。
それを雛はポカンと口を開けて大介を見ていた。
しかしすぐに笑みを浮かべ笑い始めた。
「んじゃ手当も終わったことだし俺もそろそろ行くよ。」
そう言って立ち上がり、地面の一部を隆起させそこに足を乗せ進もうとしていた。
そこへ雛が声をかけてきた。
「あの、まだあなたのお名前教えてもらっていないのですが。」
「すっかり忘れてた。俺は地場 大介だ。」
「大介さんですか、また会えますか?」
「会えると思うぜ。それじゃあな。」
そう言って大介は盛り上がった地面をサーフィンのように滑りながら山の頂上へ進んでいった。