鬼灯の聖杯戦争   作:吾朗

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鬼灯の聖杯戦争⑪

(時間は戻り深夜の衛宮邸)

 

 士郎と凛が話し合っている時、鬼灯とセイバーもまた別室で話し合う為に移動している。

 

「では私たちも話し合いましょうか」

 

 そう言って鬼灯は床に座り、それに続きセイバーも腰を落とす。

 

「あなたも現世に来たばかりで分からないことも多いでしょう。質問はそちらからどうぞ」

 

「そうですか。では、単刀直入に聞きましょう。あなたは一体何なんだ?初見で私の正体を看破しましたが、貴方もサーヴァントで良いのですか?」

 

「鬼ですよ」

 

「鬼ですって?」

 

 鬼という聞き慣れない単語にセイバーは戸惑う。

 

「ああ、西洋でしかも貴方は正式な死人では無いので、知らないですよね。簡単に言うと日本のあの世を管理している者です。後、私は聖杯戦争の参加者では無いですよ」

 

「……!?」

 

「厳密に言うと、この聖杯戦争を無かったことにするために来たのです」

 

「なんですって!?」

 

 流石にこれは予想外だったのか、セイバーは声を荒げその場に立つ。そして、目付きも攻撃的な物になり、激怒しているのが目に見えてわかる。

 

 そんなセイバーに鬼灯は、冷静で座ったまま続きを話す。

 

「あの聖杯はとても危険な物なんです。あれは現世にあっては良いような物ではないのです」

 

「確かにあれは悪しき物の手に落ちれば、酷い事になるのかも知れない。だが、私は絶対に勝ち残りそんな事に聖杯は使いません!!」

 

(はぁ、面倒臭いですね。根本的に違うのですが、説明しても信じなさそうですね。他の二人は難なく説得出来たので甘く見てましたか。セイバーさんは当事者ですし、あれを見せてみますか)

 

 そう思い、鬼灯は手のひらサイズの鏡を取り出す。

 

「これは?」

 

「うちの開発局に作らせた。ミニ浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)です。簡単に言うと現世にあった今までの事を見ることが出来ます」

 

「それが本当なら凄い事ですが、なぜそれを?」

 

「まず見てください」

 

 そうやって、鬼灯に流された映像を見てセイバーの顔は蒼白となっていく。

 

 そうなるのは無理も無いのだろう、それは彼女にとってはトラウマに近い出来事。後少しで念願の聖杯に届きそうな所であった筈であるのに、事情はあったとはいえそれを自分の手で壊してしまったのだ。

 

 その映像は第四次聖杯戦争の最後の場面であった。

 

 これを見たのがセイバーで無かったのならば、偽物だと言い張れたのであろう。しかし、その場にいた自分はこの映像が本物だと分かってしまう。

 

「なぜこれを自分に?」

 

 絞り出すような声でセイバーは問う。

 

「私が見てほしいのはこれから先の事です」

 

「どうして!?聖杯からこんな物が!?」

 

 そうして、続いた映像にセイバーは声を荒げる。

 

 その映像は、セイバーが宝具を放ち現世から消えた後の物で、宝具を喰らった聖杯は破壊され、そこからこの世の物では無いような黒い泥が生まれ、瞬く間に戦いの場であった冬木の地一帯に広まり、泥に触れたところは崩壊したり火が上がったりと正に地獄と化していた。

 

「お分かり頂けましたか?今の聖杯はこの様に穢れており、本来の働きをしません」

 

「…………」

 

 この信じられない映像で、しかしそれが本物だと直感してしまっているセイバーは黙りこんでしまう。

 

「あなたの元パートナーの衛宮切嗣さんは分かっていた上でしていたそうですよ」

 

「……っ!!」

 

 自分に悲願であった聖杯を壊すという行為をさせられ、最後の最後で裏切られた男の名に、セイバーは一瞬動揺する。

 

 しかし、あの映像を見た後で考えてみると、自分が仮に勝ち残ったとして、魔力が完全に貯まった穢れている聖杯に自分の願望を叶えて貰う所を想像するとぞっとする。

 

 そうだ、あの人は騎士の立場から見るとやり方は今でも気に入らないし、実際にその場にいると止めるかも知れない。今この場に居たら顔面の一発は殴ってしまうかもしれない。しかし、アイリスフィールも言っていたように切嗣は決して悪人ではない。あの人なりの正義のやり方だったのだ。切嗣は正しかった。彼は、私を裏切ってなどいなかったのだ。

 

 セイバーは、かつて自分のマスターで最後までお互いに解り合えなかった人を思いだし、ほんの少しではあるが彼は彼なりの道を進んでいたのだと、見直す。

 

 であるなら、この冬木の聖杯ではどう転んでも私の願いを叶える事は出来ないでしょう。今回は諦めるとします。なに時間は幾らでもあるのです。いつか私の願いを叶える事の出来る聖杯戦争が起きるまでの我慢ですね。

 

 そう、セイバーが思い至った時、それを見透してか鬼灯は話を進める。

 

「ある程度現状を飲み込んでくれたと見てお願いします。聖杯の封印の為、力をお貸ししてくれないでしょうか?」

 

 セイバーはそう言ってきた鬼灯の顔を見る。感情を読み取れず、正直に言ってどこまで信じて良いのか分からない。

 

 しかし、切嗣と同じで根は悪い人では無さそうだ。それに今回のマスターは切嗣とは違い素直で良い人そうなので恐らく反対はしないでしょう。

 

「良いでしょう。最終的にはマスターに決めてもらいますが、マスターさえ良ければ、私は貴方の言っている事を信じ、協力することを誓いましょう」 

 

 そう言い、二人は手を取り合った。

 

「一応付け加えときますが、これとは違う聖杯戦争に参加した時は、どうなっても知りませんからね」

 

 と、鬼灯は話しながら目では、容赦はしないからな、と言外で告げ。

 

 己の心の内を見透かされたセイバーは、ただただ冷え汗をかくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、場面は戻り遠坂が士郎にあらかたの説目を終えた時である。

 

 二人のいた襖の戸が開きそこから、鬼灯とセイバーの二人が入ってくる。

 

「お待たせしました。そちらはどうですか」

 

「こちらは説明を終えた所で返事はまだです」

 

「そうですか、セイバーさんはどうするかはマスターの士郎さんに委ねるそうでここで答えを聞きましょうか」

 

 そう言って、三人の視線は士郎に注がれる。

 

「正直に言って、聖杯戦争とか色々信じられない所はあるし、こんな自分がって思う所はある。それでも手伝える事があって、誰かを救える事が出来るなら是非協力さして欲しい」

 

 そう言った士郎の目は、やる気に満ち溢れており本心から言っているのだと伺える。

 

「この様な素晴らしいマスターを持てて私は誇りに思います」

 

「そう言ってくれると思ってたわ。これから宜しくね衛宮君」

 

「これからお願いします」

 

 こうして、士郎達は聖杯戦争を止めるべく、鬼灯達と行動を共にする事になる。

 

「はぁ、一息ついたらお腹が空いてきたわね。ねぇ、衛宮君何か摘まめる物は無いかしら?」

 

 今の時刻は深夜の3時少し前である。女子高生といえど、こんな時間まで起きてると小腹も空いてくる。

 

「確かに俺も色々あって夕飯は食えて無かったな。えーと、今あるものだとおにぎり位だがそれで良いか?」

 

「良いわねおにぎり!具は鮭でお願い!」

 

「りょーかい」

 

 返事をしたところで士郎は何か思ったところがあるようで遠坂をまじまじと見る。

 

「な、なによ?」

 

「いやなに、学校であんなに優等生なお前が今だと想像出来なくてな」

 

「~~~っ!!」

 

 恥ずかしい所をつかれたのか、遠坂は途端に顔を赤らめさせ見るからに狼狽える。

 

「う、うるさいわね!あれは外行きの顔なのよ、ずっとあんなだと疲れはててしまうわ!」

 

「そ、そうか、聞いて悪かったな」

 

「ふんっ!」

 

「鬼灯さん達も何かリクエストあります?」

 

「よろしいので?なら梅干しでお願いします」

 

「なんでもマスターにおまかせします」

 

「分かりました。セイバー言おうと思ってたんだが、俺の事はマスターとは呼ばないでくれ」

 

「ではなんと?」

 

「名前でいいよ」

 

「では士郎と」

 

 そんなやり取りもありつつ、士郎は台所に下がり炊いていたお米で人数分のおにぎりを作りお茶と一緒に持ってくる。

 

「沢山あるから遠慮無く食ってくれ」

 

「中々綺麗な形ね。衛宮君って意外と料理上手?」

 

「意外かどうかは分からないが、そこそこ出来る方だと思うぞ」

 

「ではいただきます」

 

「ありがとうございます、士郎」

 

 そう言って、四人はおにぎりを食べ始め、皆が美味しく完食する。

 

 そうやって、食休みを挟んだ所でこれからの事を話し出す。

 

「これからどうするかの指示はこれらから出すことで構わないですか?」

 

「自分は魔術とか詳しくないので、それでお願いします。セイバーもそれで構わないよな?」

 

 セイバーは言葉は出さずに首を縦に振って首肯する。

 

「では、あなた達にはもう一組の協力者達と会ってもらいます」

 

「それは一体誰なんです?」

 

「柳洞寺を拠点にしているキャスター組です」

 

 




fgoの信勝が良いキャラすぎて思わず話にぶちこみたくなってしまった(笑)

予告ですが、また時間は戻って鬼灯様が現世に来た辺りを書きます。

話が進まなくて、申し訳ないです

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