鬼灯の聖杯戦争   作:吾朗

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鬼灯の聖杯戦争⑬

聖杯は最早どうでも良かった

 

 

欲しかったものは手に入ったのだから

 

 

生前欲しくて欲しくて堪らなかったもの

 

 

それの為ならどんな事でもした

 

 

家族を八つ裂きにした事さえもあった

 

 

今私が望むのはこの生活が何時までも続くこと

 

 

この幸せに満たされているこの時を永遠に

 

 

しかしそれを脅かす者が存在する

 

 

ならば私は手段は選ばない

 

 

どんな外道な手であっても構わない

 

 

嫌いで嫌いで仕方ない宝具(もの)を使うのも躊躇わない(ためらわない)

 

 

あの人の為ならば何だってしてしましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

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 この鬼が私の使い魔になりさえすれば、あの厄介な筋肉ダルマ(バーサーカー)も何とかなるかもしれないわね。

 

 キャスターは、とてもテンションが上がっていた。先程までキャスターにとって、一番嫌いと言っても良いほどのタイプの男に言い寄られ、一時は気分が最悪だったのだ。しかし、その男を見逃す代わりにある召喚術を教わった。その術を半信半疑で行ってみると、どうだろうか出てきたのは予想以上に強い力を秘めた鬼神なのだ。それにより不機嫌だったのが掌返しで上機嫌に早変わりしたのだ。

 

 あの男が言うには、ルールの隙間をついて召喚したアサシンと違って、この鬼神には変な制約や代償とかも発生しない、怖い位に美味しい話ね。まあ何かあってもこちらには奥の手がある事だし、ここはさっさと契約をして調伏しちゃいましょう。

 

 キャスターはそう思うや否や、直ぐに調伏の準備に取りかかる。とは言え、ここの調伏とはこちらからの報酬を伝えて、もし働きが良ければ報酬を上増しする等と頑張れば頑張るほど良くなる言い、お互いが了承すれば完了するという簡単に言うとマルチ商法である。

 

「貴方にはこの聖杯戦争のあい

「良くわかりませんが、取り合えず確保します」

 …………はい?」

 

 キャスターが鬼神に対して話しかけた所、鬼神は言葉を遮り、お構い無しと言わんばかりにガチャリ、と音を立てながらキャスターの片手にこの場では不釣り合いな手錠をかける。

 

「……えっ?ちょっ!?ま、待ちなさいっ!!」

 

 予想外の展開にキャスターは一瞬放心状態になり、すかさず目の前の鬼神に待ったをかけるが、その鬼神は相も変わらずに取り合ってくれず、懐から出した携帯で何処かに連絡を取り出す。

 

「このいい加減にしなさい!!」

「あ"?」

「すみませんなんでもありません」

 

 余りにもな対応に頭に来たキャスターは文句をつけるが、鬼神のドスの利いた声と針の様に細く鋭い目付きで睨まれたキャスターは思わず謝ってしまう。

 

「……ですから現世に……はいそうです……」

 

「地獄にまで携帯が浸透しているとは、さすが日本と言った所かしら」

 

 そうして鬼神は何処かと携帯で連絡を取りだし、それを大人しく見ているキャスターは何処か的外れな感想を抱く。

 

 何分か経った後、鬼神は携帯を切りキャスターに向かって話し出す。 

 

「お待たせしました。さああれに乗って、あの世に帰りますよ」

 

 鬼神はそう言いながら、何処からともなくカラスが大量に飛んで来て、その一匹、一匹にヒモが繋がれた椅子を指差す。

 

「まさかの鬼太郎!?」

 

「この状況でそのツッコミが出ますか」

 

「少し乗ってみたい気はするけど、今はそういう時ではないわ!貴方は何なの?ただの鬼神ではないの?」

 

「ただの鬼神って、また凄い言葉ですね。まあいいです。説明しないと言うことを聞かなそうですし。私は簡単に言うと地獄の役人です」

 

 そうして、鬼神こと鬼灯はキャスターに自分の役目を話し出す。それは、この聖杯戦争を止めに来たこと、またキャスター等のサーヴァントをあの世に連れ戻しに来たという事を。

 

「こんな所でしょうか。お分かり頂けましたか?」

 

「ふざけないで!!」

 

 説明を終えた鬼灯に対して、キャスターは怒りをあらわにして反抗する。

 

 そして、そんなキャスターの態度を見て、鬼灯は目を細めて黙る。

 

「折角、夢が叶えられたというのに、ここで邪魔されてたまるもんですか!!」

 

 キャスターは、魔術を使い、己にかけられていた手錠を千切り飛ばし、距離を取る。

 

「どうしてもと言うのであれば、力付くで来なさい!」

 

 そう言うと、キャスターの回りには魔術で作られた高エネルギーを圧縮した球が幾つも漂い、臨戦態勢をとる。

 

「やはりこう成りますか。仕方ありません、気絶させてでも連れ帰りましょう」

 

 鬼灯もキャスターに合わせて拳を構えて、臨戦態勢に入る。

 

 両者がにらみ合い、最初に動き出したのはキャスターからである。

 

 キャスターが上空に手を上げ、それを下に振り抜くとその動きに合わせて、回りに漂っていた魔弾が鬼灯に向かって殺到する。動き遅れたのかそれらは、鬼灯にドドドド、と躱される事無く、音を立てながら命中し、砂煙をあげる。

 やったかと思い、キャスターは砂煙が晴れるのを待つ。  

 

「なっ」

 

 しかし、砂煙が晴れた所には、魔弾を受けた影響で服装等は汚れたりしているものの、当の本人はさしたダメージは受けた様子も無く平然としている。

 

 そして、お返しとばかりに鬼灯は地面を思い切り踏み込み、直ぐ様キャスターの懐に入り込む。余りの速さにその動きに対応仕切れず、鬼灯の拳がキャスターの鳩尾(みぞおち)にめり込み、体がくの字に折れ曲がり後ろの塀まで飛ばされる。

 塀の壁に叩きつけられた衝撃でキャスターは、肺の空気と共に口から血の塊を吐き出す。 

 

「かっ、は!?強いとは思っていたけど、こんなにも出鱈目な強さとは」

 

「これでわかりましたか?抵抗するだけ無駄です。大人しくして下さい」

 

 そう言いながら、鬼灯はキャスターに向かい歩き近づいていく。

 

「嫌よ嫌よ嫌よ!!ようやく望みが叶ったというのにこんな所で諦めてたまりますか!」

 

 キャスターはそう言い放ち、震えながらもなんとか立ち上がり抵抗の意思を見せつける。

 

「先程も気になったのですが、望みが叶ったとはどういう事です?叶えるためにこの聖杯戦争に参加したのでは?」

 

「それを貴方に言って何になるって言うのよ」

 

「内容によると、話が変わるかもしれません」

 

 鬼灯がそう提言すると、キャスターは他に方法は無さそうね、と言いこれまでの経緯を話し出す。

 

「最初、聖杯には「自分の故郷に帰りたい」と願うつもりだったわ」

 

「確か、キャスター……メディアさんは結婚詐欺に合われたんですよね?」

 

「あら、私の事を知っているのね。その表現はどうかと思うけど、大まかには合っているわね。後、私の事はキャスターでいいわ」

 

 そして、キャスターは自身が現世に呼ばれてからの事を話し出す。

 

 初めは、呼ばれたマスターに(つか)えていたのであるが、裏切られて見限りマスターを始末したこと。

 そこから、ランサーに追われ何とか逃げ切るも怪我を負い、魔力もつきかけもう駄目かと諦めかけたこと。

 

「そして、私はあの人に出会ったの」

 

「あの人とは?」

 

「今のマスターの事よ。あの人は、血まみれの私を助けてくれるだけでなく、私の為にマスターになると言ってくれたの。その時私はこの人を愛し、共に暮らしていこうと決めたのよ。願いはそれ以外今は無いわ」

 

「なるほど、そういう事ですか」

 

 鬼灯はそれから何やら一人で考え込む。それに対してキャスターはやはりこのまま、あの世に帰ることになるのではないかと諦めかけた時である。

 

「では、あなたのマスターが亡くなられた後、共に過ごせるかも知れないとしたらどうしますか?」

 

「そんな事が可能なの!?」

 

「まあ、その方に罪が有った場合は刑期が終わってからにはなりますが、それさえ終われば特別に措置しましょう」

 

「嘘では無いとして、何か条件があるんでしょう?」

 

「話が早くて助かります。条件としてはこの聖杯戦争を止める為に手伝って貰うことです」

 

 鬼灯の提案に対して、キャスターは即答でこう返す。

 

「そんな事で宗一郎様と暮らしていけるなら、お安い御用よ」

 

「良かったです。ではこれから宜しくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 こうして、キャスターは鬼灯と共に行動していく事となる。そして、二人でこれからどう動くべきか話し合っている時である。

 

「そういえば、気になっていたのですが、西洋出身の貴女がなぜ、丑の刻参りを知っていたので?」

 

「ああそれは、少し前に白い服を着たチャラくて頭に来る男が来て、見逃す代わりに教えて貰ったのです」

 

「……名前はわかりますか?」

 

「確か、白澤と言ったかしら?」

 

「やはり、あいつか!!」

 

 その男の名を聞くや否や、鬼灯の回りからよからぬ邪気的なものが漂い始める。

 

「し、知り合いだったのね」

 

「本当にあいつは余計な事ばかりする!!結果的には良かったものの。今度会ったら絞めるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はっくしょん!!誰か可愛い娘ちゃんが僕の噂してるのかな?」

 

「本当にあんたって気楽で良いっすよね」

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