鬼灯の聖杯戦争   作:吾朗

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鬼灯の聖杯戦争④士郎side1

「これは一体どういう事なんだ」

 

 衛宮士郎は、今日一日でもう何回考えたか分からない疑問を口にする。しかし、その言葉は自分の目の前で行われている、金髪少女と全身青タイツの男の壮絶な剣と槍の合いによる剣戟の音により、あっさりと掻き消されてしまう。

 どうしてこうなってしまったのだと、衛宮士郎は目の前の殺し合いから目を反らす為にも今日起きた出来事を思い出していく。

 

 あれは確か夜中の九時位だったはず。

 

 友人の頼みの為に弓道場の掃除をしていて、それが思ったよりも時間がかかってしまい、気付いたら夜中の九時になってしまっていた。今日は藤ねえも桜も家には来ないとは言っていたので、一人暮らしの身としては困る事は無いが、学生としてはこんな夜遅くまで学校にいるのは些か気が引ける。

 昔から一度集中しだすと、回りが見えなくなる程で、自分の特技ではあるのだが今回の様な事が今までも多々あった為に気を付けないとも思う。

 そんな事を考えながら、少し早く歩き学校を出ていこうとすると、キンッ!と普段聞き慣れない音が急に聞こえてきた。こんな時間に一体何だと思い、不良の喧嘩でも起きているのかと考え、気になり音が聞こえてくるグラウンドの方へと足を向ける。

 

 思い返せばこの時、素直に家に帰ってしまってさえいればこんな事にならなかったのでは?、と思わずにはいられない。

 

「なんだ?あいつら?」

 

 そこで士郎が目にしたのは、訳が分からないの一言につきた。遠目ではっきりしないということもあったのだが、行われていたのがどう見ても人間離れをしていた。

 グラウンドに居たのは、双剣を持った赤い服装の男と赤い長槍を持った全身青タイツの男であった。その二人は士郎からでは目にも止まらない速さで動き合い、聞こえてくる剣戟の音は大きく響き渡り、その戦いがどれだけ激しいのかを物語っていた。

 その様な光景を目の前にした士郎は、その場から一歩も動けずに見ていると、

 

「誰だっ!?」

 

「…………っ!!」

 

 槍を持った男が気付いたのかこちらを見て歩いてくる、そこで士郎はようやくここにいては危険だと気付き走り出す。

 

 あれは巻き込まれたら絶対にやばいやつだ。訳が分からないがとにかく逃げないと、でもこのまま真っ直ぐに学校から出ていってもあの速さなら直ぐに追い付かれてしまう!取り敢えず一回校舎に逃げ込んで隠れて巻かないと!

 

 そう考え士郎は、こけそうになりながらも校舎の方へと走っていく。このまま外に出た所であの青タイツの先程見た通りの動きで来られたら直ぐに捕まるだろうと思い、一度校舎の中で隠れて隙を見て逃げようと考えたからだ。

 

 校舎に入り二階の所まで来たところで士郎は足がつまづき転がってしまう。

 

「はぁ、はぁ、……すぐ後ろには来てないみたいだな。一体あいつらは何なんだよ。絶対普通の奴らでは…………」

 

 立ち上がり廊下を移動していると、それは急に目の前に現れた。走って来たとかそういうことではなく、言葉通りに目の前の何も無いところから急に先程の青タイツの男が。

 

「よお、また会ったな」

「い、一体何の様なんだよ。俺には関係のないことだろ」

 

 そう士郎が恐る恐る青タイツの男に聞いてみると、青タイツは少し何かを考えている素振りをした後、なにか面倒臭そうな顔をしながら頭をかきながらこう言ってきた。

 

「あーまーなんつーか、すまん。見られたからには部外者は排除することになってんだわ。悪いが諦めてくれ」

 

 一体こいつは何を言っているんだ?排除?それって…………!!!

 

 言われたことを考えていると、青タイツはどこからか出したのか分からないが紅い槍を取り出して、それを自分の方へと突きだしてくる。とっさの事で反応出来なかった士郎は流れるがままに心臓に突き刺されてしまう。

 

『嘘、だろ……?ここで俺は死んでしまうのか?』

 

「運が無かったな坊主。死人に口無しってな、運も力も無かった手前の人生を呪って逝きな」

 

 そうして、衛宮士郎は短い生涯を終えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 遠い昔の記憶を見ていた、これは確かじいさんが亡くなってしまった日の前日の事だ。

 

 縁側に座っている昔の俺とじいさん。いつもは特に何かを話す訳でもなく、只々庭等を見続ける時間。当時の自分にとっては、それだけでとても心が満たされる時間だった。

 

 そしてその日じいさんは言った。昔自分は『正義の味方』になりたかったのだと。

 

 子供だった自分は、じいさんがなぜ『正義の味方』になれなかったのかを聞いてもいまいち納得が出来ていなかった。しかし、それを聞いた時から俺の夢は始まったのだ。

 

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「おい、坊主!さっさと着てるもんそこの木に引っかけて銭を渡しな!早くしないと後ろがつっかえて来るんだよ!」

 

 そして今、死んだはず(?)の俺は気が付いたら、知らない場所で知らない婆さんからかつあげされているのであった。

 

「…………………………なんでさ?」

 

 


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