「さあ、こちらです離れずに着いてきて下さい」
「「はい!」」
鬼灯、唐瓜、茄子の三人が歩いているのは、閻魔殿のとある所、曲がり角が多く廊下の至る所に同じ扉が存在し、新卒で慣れていない唐瓜、茄子には迷ってしまう様な所である。
「確か、ここにある扉を潜る事によって地獄の色々な所に行けるんですよね?」
「その通り、これから行く阿鼻地獄は勿論の事ですが、ここ地獄では物理的には遠い場所は少なくありません。そのためにすぐ着けるように八百万の神々の皆様にお願いし、一種のワープホール的な物を作ってもらったのです」
「ワープホール?」
「簡単に言うと、ドラ○もんのどこでもドアと考えてもらえばいいです」
「なるほど~」
「神様の力の事を簡単に言い過ぎてません!?ていうか、すごく気になるんですけど、どうやって22世紀の技術を再現してるんですか?」
「私も仕組みの方は詳しい所まで把握している訳では無いのですが、これらを創られた神様達を挙げていくと、主に『道の神』『間の神』その他百柱ほどの方達に協力してもらい創りました」
「鬼灯様も仕組みまでは、わからないんですね。これぞ神のみぞ知るってやつですか」
「唐瓜上手い事言うな~」
「はいはい、無駄話もそこまでにしてさっさと行きますよ」
そう言って三人がまた目的の所まで行こうとした所である。
「あらぁ、鬼灯はんやないかぁ」
少女の声なのだが、どこか艶のある声に呼ばれて鬼灯達が振り返るとそこには角が二本生え、殆どはだけている格好の鬼の少女と、サングラスをかけ金の装飾品を付けた体格の良い男が立っていた。
「おや、これは酒呑童子さんに坂田金時さんじゃないですか。お久しぶりです。お二人が一緒にいるのは珍しいですね」
「久しぶりだな鬼灯の大将。まあなんつうか、成り行きでよぉ」
「そやそや、花街の妲己の店に酒を届ける事になってたんやけどなぁ、茨木に頼もうとしてたんやけど捕まらんくて難儀しとった所にそこの金髪碧眼の小僧が通りかかってなぁ。丁度ええと思て頼んだんやわぁ」
「まあ大まかそういうことだ。てか、酒呑っ!俺の事をいつまでも小僧呼ばわりすんじゃねえよ!ちっともゴールデンじゃねえ!」
「あらぁ、ええやないかぁ。いつまでもうちにとって、あんたは小僧なんやからなぁ」
「……ったく、そおかい、そおかい」
からかうのが楽しい様で、見た目相応に可愛らしく笑う酒呑童子に口では勝てないと悟っているのか、苦虫を噛み潰した様な表情の坂田金時。
会話だけを聞いてるだけなら、お姉さんが子供をからかっていて楽しんでいるだけの場面であろうが、それが自分達と同じ位の背の高さの少女とサングラスをかけた体格の良い男がしているということで、唐瓜と茄子には少し違和感を感じられるやり取りに感じられた。
「鬼灯様、あの坂田金時ってもしかしてあの有名な?」
「ええそうですよ。想像している通りにあの
「やっぱりそうなんですね!あの坂田金時なんですね!どうしてあんな事に!?」
唐瓜が取り乱すのも無理は無いのだろう。なぜなら坂田金時の見た目は、絵本に描かれているような金という文字が入った赤色の腹かけを着ている訳では無く、かと言って、平安時代の人ということで着物を着ている訳ではない。
今坂田金時の服装は、黒いズボンに上は裸に白ワイシャツとかなりカジュアルな格好になっており、金の装飾品を幾つか着けている。さらに金髪でサングラスをかけており、とても平安時代の人物には見えないのだ。
「あの方、とにかく派手な特にゴールド的な物が好きな方で、ああして俗世に染まってしまってるんです」
と、小声で金時達に聞こえない様に返答する鬼灯。
「そういえば、坂田金時さんは歌や俳句などをゴールデンじゃ無いとか言って、毛嫌いしてるんですよね」
「……?確かにそおだが、なんでそれを大将が知ってるんだ?」
「いえ、この間
「あ~なるほどな、言った通りに歌を詠むのはオレには合わねえ、二度とゴメンだね。そんなものより今の時代はバイクだよバイク!あれはいいもんだぜ!」
と、男子小学生の様にテンションをあげて話出す坂田金時、
「そういえば、
「そうなんだ!火車の姉御とは良くツーリングしたりするんだが、あの人のバイクはオレのゴールデン・ベアー号に負けず劣らずに良い音鳴らして走るんだよなぁ!」
「なるほどわかりました。坂田金時さん、その話はまた別の機会で」
オタク特有の長話になりそうになった所で鬼灯が遠慮もなしに話を切り上げる。
「坂田金時って思ってたよりもぶっ飛んだ人だったんだなぁ」
ついこぼしてしまう唐瓜であった。
「鬼灯の大将に小鬼のボーイ、あんまりオレの事を坂田金時、坂田金時ってフルネームで呼ばないでくれ」
「え、どうしてですか?」
「そ、そりゃあアレだよ、アレ。分かれよ。…………だせえだろうが、金時とかよぉ。」
「…………」
もう何からツッコメば良いのか解らなくなる唐瓜。
「ええやないやんかぁ、うちは好きやでその名前可愛らしくて」
「う、うるせえ!ていうかお前はオレの事、いつも小僧としか呼んでねえじゃないか!」
「名前で呼んで欲しいんやったら、うちとちゃあんと目を合わせて喋れる様になってから言うとよろし」
「~~~~っ!!?」
「どうやっても金時さんは、酒呑さんに
「ほんまやわぁ。このうちを退治しはったんやからもっと自信もってやっていったらよろしおすのに」
「……!!……それとこれは別だ。てか、そろそろこの酒届けに行くぞ!じゃあな鬼灯の大将。また機会があったら呑もうや」
「あん、待ってや。うちの事をおいていかんといて」
二人はそう言いつつ衆合地獄の方へ去って行った。
「……なんかキャラが凄く濃い二人でしたね。そういえば、酒呑童子さんってどんな方なんですか?なにやら金時さんと訳ありって感じでしたけど」
「彼女今は地獄で酒を造っている方ですけど、昔坂田金時が生きていた頃に現世で人を喰ったりしていたんですよ。それで、源頼光さんと坂田金時さんを含む四天王の人達に退治されたのです」
「そんな二人がよく今あんな仲良くしてますね」
「な~、そんな事があったんなら普通仲良く出来ねえよな」
「その事ですが、前に彼女に聞いた所なんですが
『まあ、うちもあの時は退治されてもおかしない事を好き勝手にやってはったからなぁ。退治された事はなあんも思うてないわ』とか、おっしゃってましたね」
「なんかほんと大物というか凄い方ですね」
「そうですね。そうして、退治されて彼女は命からがら地獄に駆け込んで今は退治されたときに使われた酒の味が忘れないからと言って、主に亡者を使用した酒を造っている訳です。彼女、毒の酒も造られているので買わしてもらって、刑に使わさせてもらったりしています」
「やっぱり鬼灯様が一番ぶっ飛んでると思います」
「俺もそう思う」
「思わぬ道草を食ってしまいましたが、そろそろ行きますよ」
「「はい!」」
そうして、目当ての亡者が落ちている近くの所から鬼灯達三人は地獄の穴に飛び込んで行くのであった。
本編はあんまり進んでませんが、お読み頂いてありがとうございました。
酒呑ちゃんと金時さんの絡みが好きなのでぶっこんじゃいました。
早くタイトル通りに、鬼灯様が聖杯戦争に絡める様に頑張ります。